ビジネスモデル

 会社を取り巻く経営環境が急速に変化し、厳しさを増していく中で、自社が売り上げや利益を確保して生き残りを図るためには、明確な経営戦略を策定し、それを確実に実行していく必要があります。

 「ビジネスモデル」とは、端的にいえば事業の構造を表す言葉です。この言葉は今でこそかなり普及した感がありますが、実際にはそれほど歴史のある古い言葉ではありません。1980年代までは、ほとんど使われることがありませんでした。
 この言葉がビジネス社会に登場するようになったのは 1990年代、それも半ば以降のことです。しかし「ビジネスモデル」という 言葉こそなかったとはいえ、あらゆる住宅に構造があるのと同様、あらゆる事業にも構造があります。たとえば、江戸時代にはすでにあった蕎麦屋ですが、 蕎麦屋と聞けば、「蕎麦粉を仕入れ、蕎麦を打ち、ざる蕎麦やかけ蕎麦にして顧客に出し、お金をもらう」という事業の構造を、ほとんどの人が想像するはずです。
 では、 なぜ「ビジネスモデル」という言葉が比較的最近までなかったのでしょうか?それは、 それまでたいがいの事業の構造が前述の「蕎麦屋」のようにシンプルで分かりやすいものだったため、わざわざ説明する必要がなかったからです。「蕎麦屋」「スーパーマーケット」「バス会社」といった「一言」で、ビジネスの構造を表現することができたからです。
 ところが、近年になり 、テクノロジーの高度化が進むにつれ、複雑な構造の事業が誕生するようになりました。「○○屋」「○○会社」といった一言だけでは説明できない事業が次々と出現するようになります。とくに ITインフラが爆発的に広がった以降(1990年代半ば以降)、その傾向が加速されます。
 自社のビジネスを拡大していくためには、現状を分析し、経営戦略や事業戦略を立案し、その戦略を行動に移していくことが求められます。しかし、しばしば経営戦略や事業戦略は思ったように実行されません。それは、現状分析や戦略立案の担当者と実行者が異なるために、「担当者が、現場の実情を理解せずに(実行できない)戦略を立案している」ことがあるからです。
 この他にも、「実行者の戦略に対する理解度が低く、行動に移せない」といったことも理由として挙げられます。

 こうした問題を解消するために、ビジネスモデルは役立ちます。

 経営戦略や事業戦略だけでなく、それをどうやって動かしていくのかという仕組みも一緒になっているからです。
 ビジネスモデルがあることで、どの部門、どの社員がどう動き、何をしなければならないかを理解したり、迷った場合に参照したりすることができます。

 経営戦略を策定する上で重要となるのが、自社のビジネスモデルの認識です。

 ビジネスモデルの定義については様々ありますが、例えば、自社が提供する価値とそれを誰に販売するのかを明確にした上で、市場における競争優位性を発揮し続けることができるように設計された一連の企業活動です。
 また、その企業活動は硬直的なものではなく、会社経営を取り巻く環境に応じて柔軟に見直されるものであり、価値を収益に変える施策までが含まれたものということがいえます。

 自社のビジネスモデルを明確にすることで、進むべき方向性がみえてきます。

 そして、市場環境に応じた適切なビジネスモデルを策定することが、景気後退時にも迷走しない強い組織作りの基礎となります。

 

ビジネスモデルを構成する要素

1.顧客セグメント
 自社が対象とする顧客グループについて、検討し明らかにする。     

2.価値提案(バリュープロポジション)
 顧客セグメントに向けて、価値を生み出す商品・サービスを検討し明らかにする。

3.価値提供方法(チャネル・顧客との関係)
 自社が顧客セグメントに対して、どのようにコミュニケーションをとり、価値を伝えるのかについて、検討し明らかにする。     

4.顧客との関係
 自社が顧客セグメントに対して、どのような関係(パーソナルな対応をするのか、セルフサービスなのかなど)を結ぶのかについて、検討し明らかにする。

5.収益の流れ
自社が顧客セグメントから受け取る収益の流れについて、検討し明らかにする。

6.リソース(資産)
 ビジネスモデルを実行するのに必要な資産について、検討し明らかにする。

7.主要活動
 ビジネスモデルを実行する上で必要になる重要な活動について、検討し明らかにする。

8.パートナー

 ビジネスモデルを実行する上で欠かせないサプライヤーなどのパートナーについて、検討し明らかにする。

9.コスト構造
 ビジネスモデルを実行していく上で発生する全てのコストについて、検討し明らかにする。

 

ビジネスモデルの検討手順

 何の分析、準備もなく、いきなりビジネスモデル構築の検討はできません。ビジネスモデル構築には前段階を経ることが欠かせません。

(1)現状分析
 まずは、現状分析によって自社が現在置かれている状況を知り、経営理念 および経営計画に基づいた「あるべき姿」とのギャップを認識します。

 この場合、現状分析はSWOT分析などのフレームワークを利用するとよいでしょう。

(2)ギャップの解消と経営戦略の策定
 現状分析で認識されたギャップを解消して、あるべき姿を具現化するための経営戦略を策定します。

(3)成功要因の洗出し
 経営戦略を成功させるためのCSF(Critical Success Factor:重要な成功要因)を、可能な限り洗い出します。

(4)外的要因の分析
現状分析や経験や知識および各種の調査結果から、企業の外的要因を導き出します。

(5)内的要因の分析
 CSFおよび外的要因から内的要因を導き出します。

 現状分析などを行う場合には、コンサルタントなどの社外人材に協力してもらうことにより、客観的に分析できることもあります。

 

ビジネスモデルを検討する際のポイント

1 顧客セグメントの検討
 ターゲットとする顧客セグメントの現状を洗い出し、それを的確に把握・分析する仕組みを構築します。

 顧客の環境は常に変化しますが、企業がその変化に気付くのが遅れることもあります。特に、既に顧客から好評を得ていたり、ヒットしていたりする商品・サービスを持つ企業の場合、その成功体験にとらわれて外的要因の変化に対する視野が狭くなりがちです。それを避けるため、企業は視野を広げたり視点を変えるなどして、外的要因の分析を可能な限り客観的に行い、トレンドをつかむことが重要になります。

 製造業であれば、卸売業や小売業などの直接の顧客ばかりでなく、最終消費者の動向についても外的要因の分析対象になります。

 社会・政治・経済の変化、競争状態・競合状態および市場の変化を見落とすことなく、自社との関係を調べ、把握・分析することが求められます。

 こうした外的要因の分析を定期的に行える体制を整備しておきましょう。

2 価値提案(バリュープロポジション)の検討
 顧客が何を求めているのか、何に価値を見いだしているのかを確認し、価値を生み出すための具体的な仕組みや手段を見直します。

 外的要因の分析を行い、自社が顧客に提供している商品・サービスを再確認することから始めます。

 商品・サービスの再確認の切り口は、例えば次のようなものがあります。

・顧客の噂好が変化している状況で、自社が提供する商品・サービスが顧客ニーズからずれてきていないか
・顧客ニーズに対して、商品・サービスの品ぞろえは十分か
・競合商品・サービスとの比較で、価格や性能は見劣りしていないか
・商品・サービスのライフサイクルの観点から、陳腐化していないか

 

 そもそも、事業の目的は、顧客に自社商品・サービスを購入してもらい、消費・利用することで満足を与え、その対価として収益を得ることにあります。そのためには、単に商品・サービスを販売するだけでは不十分です。商品販売に付随するサービスを付加価値として提供するなどして、価値を高めることが求められます。

 次に、内的要因の分析として、新たな価値の提案を検討します。

 まずは、顧客が望んでいるもの、つまり真のニーズは何かということを分析します。

 そして、自社の経営資源を踏まえて、顧客のニーズに対して、どのような価値を創造できるかを検討することになります。

 価値提案の検討に当たっては、自社の経営資源を踏まえた上で、他の商品・サービスとの相乗効果が期待できるものや、同業他社にはない独自の価値を付加するなどの方向性が考えられます。

3 価値提供方法(チャネル・顧客との関係)の検討
 顧客へ価値を提供する方法としてのチャネルや顧客との関係などを見直し、新たな仕組みを検討します。

 具体的には、顧客の利用用途・利用パターン・利用場所を分析するとともに、商品の受け取り方法や代金の決済方法を検討します。

 検討内容の観点は、大きく分けて「チャネル」と「デリバリー」があります。この2点は、大きく変化しています。

 よくあるのは、商品をインターネットで検索して購入し、コンビニエンスストアや時間指定の宅配サービスを利用したりして受け取るケースです。また、スーパーマーケットが24時間営業を行うケースも増えており、消費者の生活時間帯の変化に対応したチャネルやデリバリーが登場しています。

 決済についても、電子マネーの出現で現金を持たなくても買い物ができる時になっています。

 価値提供の方法を検討する際には、顧客の利便性向上という視点が欠かせません。

 顧客の利便性向上以外の視点としては、QCT(quality Cost Time)の最適化の観点から、自社が採用すべき手段を検討するとよいでしょう。

 例えば、製造業が小売業と情報連携を組み、自社商品の品ぞろえを確実にするSCM(Supply Chain Management)や、企業が顧客情報を蓄積・分析して、優良顧客を囲い込み、商品開発や販売戦略に生かすCRM(Customer Relationship Management)の考え方も参考になるでしょう。

4 収益の流れの検討
 価値提案の対価としての売上高や商品構成の見直しを行い、それを獲得するための費用について検討します。

 収益とは売り上げから費用を引いたものです。収益を拡大するには、売り上げを増やす方法と費用を減らす方法があります。

売り上げとは、製造業や小売業を例にとると「商品単価×販売数量」となります。

 つまり、売り上げを増やすための施策としては、次に挙げる方法などを検討する必要があります。

 ・高付加価値化で商品単価を上げる
 ・新商品を開発して商品数を増やし、販売数量を増やす
 ・既存顧客への販売数量を増やす
 ・新規顧客を開拓し、販売数量を増やす

 一方、費用を減らす方法は、いわゆる「コスト削減」です。

 コスト削減の対象は広範囲に及びますが、特に製造業では企業活動の全ての過程がコスト削減の対象になります。

 具体的には、設計コスト、資材調達コスト、製作コスト、物流・在庫コスト、販売コストなどです。

5 経営資源の調達や配分方法(リソース・主要活動・パートナー・コスト構造)の検討
 「顧客の獲得」から「収益獲得」までを実践するために必要となる経営資源を見積もり、現有資源との対比から不足している経営資源を洗い出します。そして、保有する資源をどのように配分し、不足している資源をどのように調達するかについて検討します。

 経営資源を再配分するときには、経営資源の見直しと併せて現状業務の見直しが必要になる場合もあります。その際には、現在の業務が自社にとって本当に欠かせないものか検討が必要です。

 自社にとってのコア・コンピタンスとは何なのかを再度見直し、コアコンピタンスとの関連性が薄い業務については、パートナーなどに思い切ってアウトソーシングすることも検討します。特に、IT関連の業務については、かなりの部分をアウトソーシングすることが可能になっています。

 

ビジネスモデルは5W1Hで考える

 儲かるビジネスモデルを構築するためには、まず、ビジネスモデルとは何かということを理解する必要があります。ビジネスモデルを考えるうえで役に立つのが「5W1H」です。

 以下の枠組みでビジネスを捉えていきます。

 ・WHO(WHOM):誰に

 WHAT:何を

 ・WHEN:いつ

 ・WHERE:どこで

 ・WHY:なぜ

 ・HOW:どのように

 そして、この6項目の後ろに「売るのか?」という言葉を足します。次の6つの質問に答えることが、ビジネスモデルを考えるということです。

 ・誰に売るのか?

 ・何を売るのか?

 ・いつ売るのか?

 ・どこで売るのか?

 ・なぜ売るのか?

 ・どのように売るのか?

 これらの質問に明確に答えられれば、ビジネスモデルを構築することができます。

 

誰に売るのか(WHO):ターゲット市場を考える

 これからビジネスを始める人にとっても、新規事業を計画している企業にとっても、市場の選択は最重要となります。マネジメントの父と呼ばれるP.F.ドラッカーは、「真のマーケティングは顧客から出発する」と言っています。

 正しい市場(顧客)を選択しなければ、ビジネスは最初から躓いてしまうのです。そして、新しくビジネスを始める際には、ターゲットを絞ることが大切です。需要が多様化している現代では、誰にでも売れるモノなどありません。自社商品の価値を理解してくれる一部の人々に向けて、商品を販売していくのです。

 資本も知名度もない中小企業にとっては、ニッチ市場をターゲットにすると良いでしょう。

 

何を売るのか(WHAT):売れる商品を考える

 「誰に売るのか(WHO)」が明確になったら、次は「何を売るのか(WHAT)」を考えていきます。

 まず、商品やサービスを設計するうえで考慮すべきことは、売れないモノを売ってはならないということです。

 ここでいう売れないモノとは、世の中で普通に販売されている高品質な商品やサービスです。しかし、その中でも売れるモノと売れないモノがあるのです。その違いは、商品やサービスが製品ライフサイクルのどの時期にあるかということです。

製品ライフサイクルを理解する

 製品ライフサイクルとは、製品が市場に登場してから退場するまでに、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つの段階を経るという理論です。通常の製品ライフサイクルは、販売数を縦軸に、時間を横軸にプロットした場合に、S字の曲線を描きます。

導入期

 導入期は、まだ市場に製品が認知されていないので、広告費などの莫大なマーケティング費用がかかります。この時期に参入してしまうと、コストがかかりすぎて、利益が出せず赤字になってしまうことが多いでしょう。

成長期

 成長期は、導入期で行ったマーケティング活動の結果、製品が認知され始める時期です。そのため、これまで鳴かず飛ばずだった商品が急に売れ始めます。成長期は、黙っていても商品が売れていくので、顧客獲得コストも下がり、顧客の獲得に最も適した時期だといえます。

成熟期

 成熟期は、市場のほぼ全ての購入者に製品が行き渡り、成長が止まる時期です。各企業のマーケットシェアも固まっていき、パイの奪い合いになります。また、新規参入が難しくなります。

衰退期

 衰退期は、製品の売上が減少していき、製品が市場から退場に向かう時期です。

 全ての商品・サービスにはライフサイクルがあります。そして、自社の商品が製品ライフサイクルのどの時期にあるのかを把握することはとても重要です。製品ライフサイクルの中で利益を得られる時期は限られているからです。

利益は成長期と成熟期のみで得られる

 製品ライフサイクルを見てみると、販売数はS字カーブを描きます。しかし、利益は販売数と同じようなS字カーブを描きません。商品から得られる利益は、製品ライフサイクルの中で曲線を描きます。

 導入期では、商品の市場浸透を図るために、莫大なマーケティング費用がかかるので、利益を得ることは難しいのです。衰退期は、売上自体が激減していく時期ですので、同じく利益は出ません。

 利益は成長期と成熟期のみで作られるのです。しかし、成熟期では値下げ競争などで、利益率がどんどん落ちていきます。そのため、実質的に十分な利益を得られるのは成長期であると言えるでしょう。このことから、成長期にない商品であれば、新規参入をしても成功する確率が低いということです。そのため、商品を選択をする際は、成長期にある商品を扱うことが重要なのです。特に、成長期の前期にある商品は、顧客獲得コストがとても低いため、顧客リストを構築するにはうってつけと言えます。

 賢い経営者は、商品の成長期に売りまくり、まずは顧客リストを構築します。そして、その後にバックエンド商品を顧客リストに向けてセールスをすることにより、利益を上げていくのです。

 ビジネスモデルにおいて、何を売るのか(WHAT)を考える際には、まず「成長期にある商品」であるということを大前提として選択することが大切です。

既存商品がすでに成熟期にある場合の対処法 

 これから起業する場合や新規事業を始める場合は、扱う商品を選択することが可能です。しかし、既存の商品、既存のビジネスが成熟期に入ってしまっていて、打開策を探っているということもあるでしょう。

 既に自社の商品やサービスが製品ライフサイクルの成熟期に入ってしまっている場合は、次の3つの施策を行うことによって、再び成長曲線を描くことができるようになります。

1 専門化する

 入口となる商品を専門化して、まず顧客を獲得します。その後、既存客に対して、他の商品もすすめていけばよいのです。入り口となる商品(フロントエンド)を専門化することにより、既存商品であっても、新たな成長カーブを描くことができます。

 2 ローコスト化 または 高級化

 ローコスト化によって、新たな客層を取り込むことができる場合もあります。反対に、高級化では極端に価格を上げます。これには、ブランドの構築が必要なので、さらなるマーケティング費用がかかります。しかし、その分値上げをすることにより、「高いけれど良いもの」というイメージを作り上げるのです。高級化路線のメリットは、富裕層を相手にすることができるということです。

 富裕層をターゲットにしたビジネスは、少ない顧客数でも収益を得ることができるので、効率の良いビジネスモデルを作り上げることができます。

3 市場を変える

 市場を変えるとは、既存の商品を新しい市場に投下するということです。

 従来とは異なる市場に既存商品を投下することによって、新たな成長曲線を描くことができるのです。

 

いつ売るのか(WHEN)、どこで売るのか(WHERE)

 5W1HのWHENとWHEREの部分、つまり、「いつ売るのか」「どこで売るのか」に関しては業態に規定されます。

 いつ、どこで、というのは、あなたの会社の業態に依存するのです。しかし、時間的、空間的な制約がないほうが購買機会が増えます。そのため、売上のことを考えるのであれば、インターネットを活用して、「24時間どこでも買える」という体制を取り入れられると有利なのです。

 

なぜ売るのか(WHY):企業理念を考える

 優れた企業には、必ず優れた企業理念があります。企業理念とは、創業者の想いと言い換えてもよいでしょう。ビジネスを行う理由であり、事業を運営する目的となるものです。

 企業理念で共通しているのは、「社会への貢献」を目的としているということです。どの企業もお金を儲けるためにビジネスを行っているのではありません。お金を儲けることは、目的を達成するための手段なのです。

 「お金儲け」を目的としたビジネスは長続きしません。社会への貢献であったり、自身が情熱を持てる何かを得るために、ビジネスを行うのです。「なぜ売るのか(WHY)」を考えるにあたっては、この企業理念を明確にする必要があります。

 大企業の企業理念を見ると、とても立派に感じるので、自身も同じような理念を掲げなければならないと思うかもしれません。しかし、そのように気負い過ぎる必要はありません。

 あなたが、なぜビジネスを行いたいのか、なぜその商品やサービスを扱いたいのか、少し立ち止まって考えてみましょう。確かに、最初は「お金持ちになりたい」「起業ってかっこよさそうだから」などの動機があったかもしれません。しかし、それだけではいつか挫折してしまいます。ビジネスを行うことは、つらいことの方が多いです。そのときに、「お金」や「見栄」だけではモチベーションを維持できません。情熱を持てるものを見つけましょう。お金がなくてもやり続けられるほどの情熱です。それは、子供の頃からの夢であったり、社会的なミッションであったりすると思います。そのような夢やミッションを企業理念として紙に書き出し、どのような逆境でも忘れないように心に刻み込みましょう。

 

どのように売るのか(HOW):ジェイ・エイブラハムの売上の方程式

 5W1Hの最後は、「どのように売るのか(HOW)」です。つまり、どのように売上を上げていくのかということです。これには、全米No.1コンサルタントと呼ばれるジェイ・エイブラハムの売上の方程式を理解する必要があります。

 ジェイ・エイブラハムの売上の方程式とは、以下のようなものです。

  売上=クライアント数(何人)×客単価(何円)×取引回数(何回)

 この方程式からわかることは、ビジネスを成長させる方法は、以下の3つしかないということです。

 ・クライアントの数を増やす

 ・クライアント一人当たりの平均販売額を増やす

 ・クライアントの購入する頻度を増やす

 売上を上げるためには、この3つの方法のいずれか、もしくは全てを行えばよいということです。

 

ビジネスモデルの成功事例

GoogleおよびFacebook

  広告モデル

 GoogleおよびFacebookは、ビジネスモデルの中でも広告モデルの成功事例です。どちらも、下記2つに重点を置いて成功させた企業です。

 ・どのような仕組みを構築したらより多くの人を喜ばせることができるか

 ・どのような仕組みを構築したら利用者数を増加させることができるか

 とりわけ、Facebookの場合、利益が伴わない期間が4年間続いたにもかかわらず、設定したビジネスモデルをもとにサービス向上や利用者の増大に注力して、大きな成功をつかみました。

 

俺のフレンチ

  物販モデル

 高級フレンチを手頃に提供する俺のフレンチは、物販モデルの成功事例です。

 フレンチを安く・美味しく食べたいと考える顧客のニーズをとことん追求した結果、「コストを抑える」「食材の質を維持」「味を保証する」に注力しました。

 コストを抑えるために店舗面積を小さくして回転率を上げ、高い原価率を達成させるというビジネスモデルを構築し、実践しました。その結果、俺のフレンチは顧客から高い支持を得て収益を伸ばしているのです。

 フレンチはゆっくりと楽しむものという従来の概念を打ち破る「立ち食いフレンチ」という発想で成功を納めています。

 これによって「ゆったりできなくてもいいから、安くて美味しいフレンチを食べたい」層にリーチしました。

 俺のフレンチは立ち食いスタイルによって、以下のようなメリットを生み出しました。

 ・長居があまりできないため回転率が上がる(日3回転以上)
 ・顧客一人当たりの占有面積を小さくでき、狭い場所でも多くの人数が入れる

 また、高級フレンチ料理店のフード原価率が20%に満たないのに対し、俺のフレンチでは60%の原価率を実現。

 その分食材にお金をかけられるため、こだわりを持つ一流シェフを惹きつける魅力にもなっています。

 俺のシリーズの店が顧客ターゲットにしているのは、「立食でもいいから低価格で本格的な料理を食べたい人」たちです。俺のシリーズで出される料理の質は、一般的な店で出される料理と遜色ありません。しかし、同じ商品を提供していても「顧客」と「価値提案」によって差別化を図っているのです。

 また、俺のシリーズには収益構造にも秘密があります。高級食材を使いながらも、リーズナブルな価格で料理を提供しているため、飲食業界では異例の「原価率60%」を超えています。しかし、立食により収容人数を高めるのと同時に、回転を早めることで利益を生み出すビジネスモデルを実現しているのです。

 

トランククラブ(ファッションサービス提供企業)

  サブスクリプションモデル

 ファッションサービス提供企業であるトランククラブは、サブスクリプションモデルの成功事例です。「自分に合う洋服のコーディネートを知りたい」「限りある予算内でおしゃれがしたい」というニーズをもとに、月額料金制度を活用して、「スタイリストが用途や予算に応じてコーディネート」「その洋服をボックスに詰めて発送」といった仕組みを構築しました。現在、流行に敏感でおしゃれな若者の間で人気を高めています。

 

メルカリ

 出品者と購入者をプラットフォームで結ぶCtoC(Consumer to Consumer)サービスの一つです。

 出品者はメルカリで売りたい商品を出品し、購入者は買いたい商品をメルカリで購入します。メルカリのビジネスモデルは手数料モデル。サービス利用自体は無料ですが、取引が成立した時に販売手数料として売上金の10%が差し引かれます。

 出品者と購入者との間にメルカリが入ることによって、以下のようなメリットが生まれます。

・料金未払いや商品未発送などのトラブル防止
・匿名配送サービスによる個人情報保護

 そして、何より「自宅にいながら出品できる」という手軽さがあります。

 最近では、商品バーコードを読み取るだけで商品情報が入力されるサービスも開始。より手軽に商品を出品できるサービスとして成長を続けています。

 

サマリーポケット

 株式会社サマリーと寺田倉庫株式会社が提供するクラウド収納サービス。自宅の「すぐには使わないもの」を倉庫に保管できます。

 サマリーポケットは、サブスクリプションモデルです。利用することによって、顧客は以下のようなメリットが得られます。

 ・「今使うもの」に自宅収納スペースをあてられる
 ・送るだけで保管物をリスト化してもらえ、スマホでいつでもチェックできる
 ・不要なものはお任せヤフオク出品で断捨離可能
 ・預けているものをそのままクリーニングに出せる

 保管物はいつでも1点から取り出すことが可能。その際に送り出し送料が発生します。

 

ジレット

 ヒゲを剃る男性ならご存知だと思いますが、現在売られている男性カミソリは柄と刃が別々になっており、刃だけを買い換える仕組みになっています。この販売方法を生み出したのが、アメリカのジレット社。それまで柄と刃が一体となっているカミソリが一般的でしたが、刃だけを買い換えるようになったことで買い替えが安く済むようになったのです。

 BMCで言えば、「収入の流れ」に工夫をもたらした一例と言えます。それまで「売り切り」だった収益モデルを、継続購入するモデルにシフトさせました。ジレットは柄の部分をおまけとして無料にする代わりに、消耗品の替刃で利益を獲得したのです。このビジネスモデルは「ジレットモデル」「レーザーブレード」とも呼ばれ、様々なビジネスに応用されています。

 例えば、コピー機業界にはゼロックス社がこのジレットモデルを持ち込みました。コピー機本体は低価格で導入できるようにし、コピー枚数に応じた月々の使用料金やインクトナーの交換によって利益を上げています。また個人宅で使うウォーターサーバーも、本体は無料で提供し、毎月の水の料金で利益を獲得しています。

 本体を無料または安価で提供し、消耗品で利益を獲得するジレットモデルは、ビジネスモデルに組み込みやすく様々な業界で応用されています。

 

西松屋

 「コスト構造」で参考にしたいのが子供服を販売する「西松屋」です。

 西松屋は、子供服業界の「当たり前」を廃止することで、徹底したローコスト戦略により成長しました。例えば店頭のワゴンセールの廃止。ワゴンセールは集客に有効だと思われていたため、どの店でも行われてきましたが、子どもの世話をする親にとってワゴンの中から服を漁るのは大変でした。またマネキンやPOPも壁面陳列にすることで廃止し、子どもがぶつかる危険を減らしたのです。

 そして、西松屋が廃止した最も大きなものが「接客」です。小売業で接客を行わないのは非常識と言うしかありませんが、ゆっくり子どもの服を選びたいという親にとっては接客は邪魔でしかありません。それに加えてオペレーション管理を徹底することで、西松屋では一つの店舗を2人で運用できる体制を整えました。

 ここで注目したいのは、BMCで言う「主要活動」です。主要活動で差別化を図る際には、つい「加える」ことを考えがちですが、実は「減らす」ことも立派な差別化です。西松屋は接客をはじめワゴンやマネキンの準備といった仕事を減らすことで、コスト削減に成功したのです。これを「マイナスの差別化」と言います。

 同じように、マイナスの差別化で成功した企業に「QBハウス」があります。「1時間かけて調髪やひげ剃りまで行う」のが一般的な理髪業界で、「10分でカットだけを行う」ことで差別化し成功しました。ビジネスモデルを工夫する際には、足すだけでなく減らすことも考えましょう。

 

オフィスグリコ

 オフィスにお菓子専用のボックスを置き、100円均一でお菓子が買える「オフィスグリコ」は「チャネル」に注目したいビジネス。お菓子の購入者の男女比は「圧倒的に女性優位」が定説であり、コンビニのデータを見ても菓子を買う客の7割は女性でした。

 しかし、オフィスグリコでお菓子を買うのは7割が男性という結果になったのです。その理由は、お菓子を買いにコンビニにまではいかない男性たちが、オフィスグリコだったらお菓子を買ったからです。既存チャネルとのカニバリゼーションも懸念されていたオフィスグリコは、新しいチャネルによって新規顧客層を獲得しました。

 チャネルを変えることで成功した事例は他にもあります。お店で買うのが恥ずかしい下着などの商品が、オンラインでよく売れる事例は少なくありません。同じ顧客と同じ商品でも、チャネルが違うだけで売れ行きは大きく変わります。今のチャネルが本当に適切か見直してみましょう。

 

 全体戦略や状況分析が出てきたら、それを具体的なビジネスモデルや戦略、戦術にしていきます。

 前段階の分析と結びついて、自社の製品・商品やサービスが競合他社と差別化ができており、販売の伸びが期待出来ることを示すことになります。よって、前段階の分析が不十分であると事業の魅力が半減します。または、前段階の分析が生かされたビジネスモデルや製品・商品でないと「魅力がない」となってしまいます。さらに、ビジネスモデル、戦略、戦術に基づいて具体的な行動計画まで落とし込みます。これにより、「想い」の部分から始まって、「環境分析」を行い、「ビジネスモデル」を考えた後、実際に行動ができる「計画」となっていきます。

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