人に感動を与える

顧客の心をつかむ

 必要なのは、いかに顧客の心をつかむかということ。

 そのためのコツは、自分のことだけに夢中になるのではなく、逆の立場で自分を見ることができるかどうかです。
 つまりは、「自分たちの立場でなく、相手の立場で見る」という目を持つことである。

 幸福の科学大川隆法総裁は、『経営入門』で以下のように説かれました。

「そば屋の店員は、店の主人から、「出前を注文した客から催促の電話がかかってきたら、とにかく『今、出ました』と答えなさい」と教わることがあるそうです。しかし、客を待たせるようなことを続けていると、商売は傾いていくでしょう。そういう嘘は、一回目は騙されても、二回も三回も騙されはしないからです。まったくお客様中心の仕事になっていないと言えます。
 私の住んでいる東京都港区のあたりは、家賃が高いこともあって、商売はけっこう難しく、同じ場所で、一年の間に二回も三回も店が潰れて替わったりすることがあります。ここでも必要な考え方は、「いかに顧客の心をつかむか」ということです。「自分たちの立場でなく、相手の立場で見る」という目を持つことは、とても難しいことなのです。
 それは、ピザ屋やパン屋などの店だけに当てはまることではなく、テレビに出ている俳優やタレント、歌手などでも同じです。自分の側の視点でしかものが見えない人は、やはり消えていきます。
 芸能人も、実力のある人ほど、「全国の人が、テレビの画面を通して自分をどう見ているか」という総合的な評価を感じ取っています。テレビでも、ときどき、全国の視聴者から集計を取り、タレントの人気を競わせるといった番組がありますが、自分の今の人気度、知名度、信頼度について、そのような集計結果に似たようなものを何となく感じ取れる人が、有名なタレントになったり、有名な司会者になったり、有名な歌手になったりしているのです。
 たいていの人はそれができずに、自分のことだけに夢中になってしまいますが、「逆の立場で自分を見る」ということができるかどうかです。これが顧客の心をつかむコツなのです。
 同業者同士が激甚な競争をし、激しく戦っているような業種では、自分たちの立場ばかりを主張していたら駄目なのです。外の目で見なければいけません。
 ところが、なかには、「うちのやり方はこうなのだ」と、客に説教を垂れるような店もあります。そういう店には、「もう行きたくない」と思うでしょう。
 私は、長崎に行ったときに、数人で地元の郷土料理の店に入ったことがあります。何種類かの料理が出てきて、食べるときに、「取り皿を幾つかください」と言ったら、店の人は、「長崎では、同じ皿で食べ続けることになっています」と言うのです。こちらが、「それだと味が混ざるではありませんか」と言うと、「前の味、次の味、その次の味と、混ざっていくのがいいのです」と言います。
 よほどの高級料亭で、「この食べ方以外は許さない」というしきたりがあるのならともかく、そうではないのですから、「少しぐらい、こちらの要望をきいてくれてもいいのに」と思いました。
 そういう店には、二度は行く気になれないので、その店はリピート客を逃がしたことになります。」
(34~41ページ)

 

真心のこもったサービス

 オリンピック招致のプレゼンで有名になった「おもてなし」の言葉は、今や世界の共通言語になりつつあります。
 どのような職業の立場においても、目に見えないところで、さりげないサービスや心遣いが見られます。

 大川隆法総裁は、以下のように説かれました。

「サービス精神というものを、何か、軽薄なこと、上っ面だけのこと、あるいは金儲け主義のように捉える人も多いでしょう。しかし、サービス精神の奥にあるものは、やはり愛の心だと思います。
 自分の仕事を機縁として、より多くの人々に満足していただき、「よかった」と言っていただく。こうした精神で仕事をするのは大事なことです。
 他の人々を気遣う心。真心を込めて仕事をすること。仕事に誠意がこもっていること。これらは大事なことです。したがって、何か一つでも人に愛を与えんとする人は、まず、自らの日々の仕事のなかに真心を込めることです。
 「きめ細かさも愛である。そして、愛には、『他の人の要請を見失わない』という、賢明なところがある」ということを、どうか知っていただきたいと思います。」
(『仕事と愛』)

「マニュアルというのは、標準的な人をつくるためのものであり、実際に、マニュアル主義で仕事をすることも多いのですが、それだけでは、もう一歩を踏み出し、顧客に感動を与えるサービスは出てきません。もう一歩を踏み出したサービスは、やはり、個人の心から出てくるものなのです。
 「お客様のことを考えているのだ」という気持ちを、言葉や態度で伝えることです。そうすれば、どんな業種の会社であっても伸びていくはずです。その点に気をつけないと、顧客から離れて単なる合理主義的な考え方をしたり、業績の数字だけを見て考えたりしがちになります。
 基本的には、最初に組織を立ち上げたり、小さな会社を大きくしたりするためには、ものの考え方や道理をつくり、マニュアルにして社員に勉強させることが大事ではありますが、それだけでは、やはり仕事やサービスが標準レベルを超えることができず、同業他社が多数ある場合には勝ち残れません。「感動を与える」というところまで、踏み込まなければいけないのです。その感動は、やはり、個人の気持ちから出てくるものです。」
(『経営入門』)

「優秀な方は“自己中”になりがちです。自分中心に物事を判断し、自分を基準にして、「成功だ」とか、「失敗だ」とか、「嫌だ」とか、いろいろなことを考えるわけです。しかし、仕事には、それを見る側、感じる側、サービスを受ける側、ものを買う側といったように、必ず相手側がいるものです。
 成功や失敗、あるいは、「打率がどのくらいであったか」ということを考える際に、自分中心に考えるのではなく、「サービスを受ける側、ものを買う側、さらには、それを見ている側の人から見てどうか」という見方を忘れてはならないでしょう。
 例えば、失敗しても、丁寧に謝り、そのあとでフォローし、サービスをすることで、かえって信用を得ることはあります。つまり、こちらの視点を変え、「相手側の立場」というか、「自分がしてさしあげる側の立場」から、ものを見る視点を得るところに、すべてのものを成功に転じていけるきっかけがあるのです。」
(『創造する頭脳』)

「「愛の原理」との関係で述べると、営業的な仕事においては、人と接する販売活動が多いので、サービス精神の部分が最も大事だと思います。それは、売上実績をあげるためだけの、見せかけのサービス精神ではなくて、相手の立場に立ったものでなくてはなりません。顧客オリエンテッド(志向)の考え方でサービス精神を発揮すれば、相手の役に立つ仕事ができるでしょう。
 自分の全身全霊を傾けて研究し、「これがよい」と思うものを相手に勧めることは、サービス精神の発揮でもあれば、実際に相手のためになることでもあるのです。相手に与えた製品やサービスが、本当によいものであるかどうかが大事です。」
(『人格力』)

 企業のサービス理念に「お客様のために」という言葉があります。しかし、それは自己を中心としたものの見方、考え方に陥りがちである。本当に真心のこもったサービスとは、常に「相手側の立場」を意識しなければなりません。

「サービス産業においては、単なるコストカッターが黒字を出して成功するとは限りません。やはり、必要なコストは維持すべきですし、サービスをよくすることでリピーターがつくような業界であれば、「もっとよいサービスを提供していく」という努力も必要です。
 いくら、「よい旅館だ」「よいホテルだ」と言われても、料理が冷めていたら、そういうところには行かなくなるものです。当たり前のことです。そのあたりの兼ね合いをよく見て、矛盾するものを克服し、「いかに、よいサービスをするか」ということを考えなければ、生き残れないでしょう。
 単なる、「売上を最大にし、経費を最小に抑えれば、利益は最大になる」というやり方だけでは駄目です。やはり、それぞれの業界において、リピーターをつくり出す努力を執念深くやらなければ駄目なのです。決して自分本位になることなく、「なぜ、お客様は繰り返し来てくださるのか」「なぜ、お客様は逃げていくのか」ということについて、追求していかなければいけません。」
(『経営戦略の転換点』)

「有名な超一流ホテルになると、従業員たちは、「いらっしゃいませ」と「お帰りなさいませ」の使い分けができます。
 すでにチェックインを済ませ、泊まり客になっている人を、フロントなどの従業員たちが覚えていて、これからチェックインをする人と区別しているのです。
 すでに一泊している人が、二日目に外出から帰ってきたとき、「お帰りなさいませ」と言われたら、「ああ、私の顔を覚えているのだ」と思います。これは一種の感動体験でしょう。しかも、一日目に、実際に受け入れて案内してくれた担当者とは違う人から、「お帰りなさいませ」と言われたならば、そのときの衝撃は、もう一段、大きいでしょう。このへんが実は隠し味のところなのです。このようなサービスを行っているホテルは、ホテル利用者による評価で、好感度が日本のナンバーワンになっています。」
(『不況に打ち克つ仕事法』)

「消費者の購買意欲をそそることができれば、「デフレ」イコール「不況」とはなりません。
 デフレ下で、消費者の購買意欲をそそるような企画や商品、売り方、サービスなどを工夫すれば、十分に生き延びることができますし、よそが潰れていくなかで、シェアを取っていくことさえできるのです。
 ただ、安売り合戦になった場合には、一般に、体力の強いところが勝ち、体力の弱いところは敗れるので、気をつけなければいけません。
 すべての面で戦えば勝てなくても、どんな大手百貨店や大手スーパーにも、弱い部分は必ずあるので、その弱い部分に対し、自分のところの強みをぶつければ、大きい相手を破ることはできるわけです。そうした「弱者の兵法」も十分に知っておいたほうがよいでしょう。これからの時代を生き延びるのは、なかなか難しいことですが、「商品やサービスをよくしながら値段を下げていき、シェアを取る。占有率を上げて勝つ」という方法が一つあるのです。」
(『未来創造のマネジメント』)

「最終的に、「自己防衛型」になってはいけませんし、「会社防衛型」で、会社の立場ばかりを一生懸命に説明するようになっても、長い目で見たら、繁栄がなくなるでしょう。やはり、会社の立場ではなく、「お客様第一」でなければいけないと思います。
 『希望の経済学入門』のなかに、「自社の役員を店から追い出してでも、私を店内に招き入れ、商品を買わせた店員の話」を書きました。そうしたことは、社内秩序から見るといけないことだとは思うのですが、「顧客第一主義」という意味で、こちらを優先したのだと思います。
 会社や自分の立場を一生懸命言いたくなる気持ちが出てくることもあるでしょうが、しかし、それは最終のことで、それを先に出してくるようではいけません。「わが社の方針」や「わが店の方針」などということばかりが先に立つようでは駄目であり、基本的にはお客様の考えが優先なのだということです。」
(『実戦マーケティング論入門』)

 

商売繁盛のコツ 人に感動を与えること

 商売繁盛のコツは、一言でいうと、人に感動を与えることである。

 どんな不況のときにでも、つぶれないどころか、逆に大発展している企業はあるわけです。

 自分のやっている商売、会社、仕事などにおいて、どうやって自分の顧客に感動を与えられるのか。今日も昨日と同じように漫然と仕事をするのではなくって、どうやって自分の顧客に感動を与えることができるのか。それも1回きりではなくって、日々与え続けることができるのか。

 それを徹底的に考え抜いて実行することこそが、商売繁盛のコツであるのだと。

 総裁は、『経営入門』で以下のように説かれました。

「「商売繁盛のコツとは何か」ということについて、結論を一つだけ述べるなら、それは、「人に感動を与える」ということです。
 商売が繁盛し、利益が大きくなるようにしたければ、人に感動を与えることが大切です。これが、業界や業種を問わず、社長から末端の従業員、あるいはパートの人に至るまで、どのような立場の人にも通じる、商売繁盛のコツなのです。
 結論はこれだけです。あなたの言葉や態度、あなたが売った商品やサービスなど、さまざまな仕事を通して、相手に感動を与えることです。
 これに成功し続けることができた人は、どのような業種であっても、仕事が上向きになっていくことは確実です。
 大勢の人に感動を与えることができる社長の下、その影響を受けて、社員も同じように一丸となって、お客様に感動を与えることができるようになれば、その会社は確実に発展するでしょう。」
(18~19ページ)

 

顧客は「商品」ではなく「付加価値」を買っている

 大川隆法総裁は、著書『経営が成功するコツ』の中で、「顧客が『何のためにそれを欲しがっているのか』を考えることが大事」という趣旨のことを述べています。

 例えば、宝石を買うにしても、顧客は宝石という「モノ」が欲しいのではなく、それによって得られる「価値」を買っています。プレゼント用であれば、相手への愛や感謝の気持ちを伝えたい。自分用であれば、その宝石で素敵な自分を演出したい。顧客が、商品やサービス、またはセミナーなどを通して、どのような「価値」を求めているのか考えることで、顧客をより満足させることができます。

 経営者は、「製品」「流通」「サービス」の面で顧客を満足させるものを提供し、付加価値の総合点を上げることが求められます。経営とは「付加価値の創造」あるいは「総合芸術」であり、事務管理ではありません。さらに言えば、この創造には終わりがないのです。環境や時代は常に変化し、経営もその中で新しいものを創造していく必要があるからです。「無限の創造」という意味では、経営は神や仏のそば近くにある仕事だと考えるべきでしょう。参考

 ドラッカーは、「人間は精神的な領域でしか付加価値を生めない」と言っています。「心」は未来を拓いていく原動力であり創造力です。

 ヒット商品やまだ存在しないものを生み出すには、未来をイメージするような「心」「思い」の力が必要です。「まず思いがあって、それが具体化していく」という「思いの先行性」を知っている経営者と知らない経営者とでは、発展の速度や規模がまるで違ってくるのです。

 

 

どうすれば感動を与えられるか

 顧客に感動を与えるために必要なものは、「情熱」である。

 総裁は、『智慧の経営』で以下のように説かれました。

「顧客に感動を与えるために必要なものは何であるかというと、言い古された言葉ではありますが、やはり「情熱」です。
 社長であろうと、部長であろうと、課長であろうと、一社員であろうと、熱意がなければ人に感動を与えられません。どんな会社であっても同じです。
 例えば、部長に熱意があれば、その部長のもとで働いている部下にも、熱意がビリビリと伝わっていくのです。
 その熱意の元にあるものは、「仕事が好きである」ということです。自分の仕事が好きでなければ熱意は出てきません。好きな仕事であればこそ、熱意が出てくるのです。したがって、好きな仕事に打ち込むことが、人間としていちばん幸福なことなのです。
 さらに、「好きな仕事だから熱意が出る」という考えとは逆に、「熱意を込めて仕事をすると、どんな仕事でも好きになってくる」という面もあります。
 誰でも、仕事が面白ければ、熱中するのは当然です。しかし、面白い仕事が回ってくるのを、ただ待っているだけでは駄目であり、自分から仕事を面白くしようとしなければいけません。
 仕事を面白くするには、その仕事のなかに、「使命感」というべきものを感じなければいけないのです。「この仕事を通じて、私は世の中に奉仕していくのだ」という気持ちです。
 仕事にはいろいろなものがありますが、原則として職業に貴賤はありません。
 私自身は、職業のなかでは、宗教家の仕事が最も尊いと思っていますが、例えば飛行機のパイロットだって尊い仕事です。
 日本では、飛行機が無事に着陸しても拍手は起きませんが、外国では、着陸に成功したら、乗客から拍手が起きることがあります。
 「普通に離陸して、普通に着陸する」というのは、パイロットの仕事としては当たり前のことです。その当たり前の仕事に対して、乗客は数万円の運賃を払っているわけです。命を預けているのですから、ほんとうは数万円以上の価値があると言ってよいでしょう。もし墜落などしたら、数百人の乗客の人生はそこで終わることになるので、無事に着陸したら拍手ぐらいはしてもよいのではないかと思います。
 そのように、飛行機のパイロットも尊い仕事ですし、情熱を込めて仕事をすれば、客室乗務員も尊いし、コンビニの店員や、そば屋の店員も尊いのです。」
(283~284ページ)

 

リピート客を逃さないために

 マネジメントの父、P.F.ドラッカーは、著書『マネジメント』の中で「企業の目的の定義は一つしかない。それは顧客の創造である」と述べています。

 その「顧客」とは、商品やサービスへの関わり(コミットメント)の度合いによって、以下の5つの段階に分けられます。

(1)潜在顧客:必要性に気付けば、顧客になり得る人

(2)見込み顧客:購買時期が近付いている人

(3)顧客:商品・サービスに出会い、実際に購入した人

(4)リピーター:商品・サービスを繰り返し利用してくれるファン

(5)ロイヤル・カスタマー:商品・サービスに惚れ込み、購入し続けてくれる人

 はじめて利用した店のサービスにがっかりして、「二度と行く気になれない」ということがある。しかし、その理由を相手に告げることは稀である。したがって、リピート客を知らないうちに逃すこととなっている。

「お客様というのは、「あなたのここが気に入らないから、この店にはもう来ない」とか、「店員の態度が悪いので、今日を限りにここで買うのをやめます」とか、はっきりとは なかなか言ってくれないのです。

 例えば、「この歯医者は痛いからもう来ません」とは言ってくれず、黙って他の歯医者に切り替えるんです。「きょうは痛かったなあ。とても乱暴な治療だった」「抜かなくてもよい歯を抜かれた」というようなことがあっても、「よくも俺の葉を1本余分に抜いてくれたな」と啖呵を切ってから歯医者を替えたりはしません。黙って替えるのです。」(『感動を与えるために』P-51~52)

 このような形でリピート客を逃さないためには、「感動を与える」「顧客の立場に立つ」「外の目で見る」ことが重要である。

 商売繁盛のコツとして大事なのは、リピート客(リピーター)をつくること。リピート客を取れなければ、どんな業種でも、現状維持さえ難しい。それに加えて新規の客が取れたら、商売が拡大していく。

リピート客が減っているなら、商売としては潰れる傾向が出ているので、なぜリピート客が減るのかを考え、反省する必要がある。

経営者(特に社長族)は、反省できない人が多いが、しかし社業を発展させたければ、トップ自ら、反省に反省を重ねることが大事である。反省から智慧が生まれて、発展が始まる。

総裁は、『経営入門』で以下のように説かれました。

「商売繁盛のコツとして、「感動を与えよ」ということを述べましたが、もう一つ述べるならば、来た人に感動を与えるだけでなく、その人に、繰り返し来てもらうこと、リピート客になってもらうことが重要です。デパートであろうと、飲食店であろうと、タクシー会社であろうと、リピート客をつくることが大事なのです。
 いつも新規の客ばかりで回しているのでは、やはり駄目です。「いったんつかんだ客は放さず、さらに新しい客もつかみ続ける。来た客が次々とファンになる」というかたちになると、売り上げが増えて会社が大きくなるのです。
 しかし、「新しい客は来るが、繰り返しては来ない」ということであれば、商売の規模が大きくならないか、潰れるか、どちらかです。
 あまり理解されていないことも多いのですが、リピート客を取れなければ、ホテルでも何でも、現状維持さえ難しいのです。リピート客が取れて、やっと現状維持が可能になります。さらに新規の客が取れたら、商売が拡大していくのです。
 顧客に、「このホテルは駄目だ」「この店は駄目だ」と見限られたら、現状の規模は維持できません。厳しいことですが、それが現実です。
 リピート客が減っているなら、商売としては潰れる傾向が出ているわけなので、「なぜリピート客が減るのか」を考え、反省しなければいけません。これは、お店でも何でも同じです。
 経営者は反省をしなければいけません。「あの客は、どうして来なくなったのだろう」と、反省に反省を重ねることが大事です。反省から智慧が生まれて、発展が始まるのです。
 反省をしている経営者は立派です。一般に、経営者は“天狗”になってしまうことが多く、胸を張っていばっている人が少なくありません。基本的に反省できないか、反省したくない人たちなのです。そういう人が経営者になり、従業員を使って、いばっていることが多いわけです。
 したがって、経営者に反省を勧めても、そう簡単には反省しません。いばっていたり、うぬぼれていたりするからです。「宗教家は偉いかもしれないが、金儲けの力は、おれのほうが上だ」などと思っています。そのうぬぼれをかち割るのは大変です。
 特に、社長族というのは、極めて反省をしない“種族”と言えます。従業員が十人もいたら、もう反省しなくなります。自分を特殊な人間だと思って、いばっているのですが、それでは駄目なのです。社業を発展させたければ、反省をしてください。よく反省をし、改善をしようとする経営者のいるところは発展します。
 「お客様が減り、苦情が来る」という状況があるならば、必ず問題点があるはずなので、それを反省しなければいけません。
 従業員だけのせいにしてはなりません。「従業員の出来が悪いから、客が来なくなった」などと言っているうちは駄目であり、トップが反省をしなければいけないのです。」
(42~47ページ)

 

「サプライズ」で感動を与える

 顧客に商品やサービスを好きになってもらうためには、ちょっとした「サプライズ」が効果的です。

「やはり、人というのは、『自分のことを覚えてくれている』とか、『名前を覚えてくれている』とか、『自分の趣味を覚えてくれている』とかいうことに対しては、驚きを感じることがあります」(『経営の創造』)

 売り手である店長やマネージャーは、顧客の名前や職業、以前に買ったもの等をよく覚えているといいます。高級ホテルのフロントやベルボーイは、顧客の顔と名前を覚え、顧客に「特別感」を提供しています。このような「気配りのサプライズ」の奥にあるのは、相手を喜ばせようという気持ちではないでしょうか。「ここまでやるのか」という驚きがあると、「また来たい」と思う顧客は多いでしょう。

 

毎回が一期一会の「真剣勝負」

 また、「人との出会いは一期一会」という気持ちで、毎回の機会に最善を尽くす心構えが、顧客満足を高め、リピーター獲得につながります。提供するサービスがマンネリ化したり、手抜きをすると、顧客は敏感に感じ取り、何も言わずに買わなくなってしまうこともあります。

「松下幸之助さんの言葉を使えば、これは、『経営は真剣勝負だ』ということです。彼は、そのような言い方をいつもしていましたし、繰り返し述べていました。『真剣勝負というものは、道場における竹刀での打ち合いとは違うのだ』ということです。これは、私も、折に触れて肝に銘じたものです。私は、今までに、いろいろな行事等を、二千二百回以上行ってきましたが、やはり、一つひとつ、真剣勝負というつもりでやってきました。それは、聴く人にも自然と伝わっていったのではないかと思います」(『「経営成功学の原点」としての松下幸之助の発想』)

 どのような商売でも、つきつめれば顧客に「幸せ」を提供することで成り立っています。自分中心の考え方ではなく、「顧客にどのような『幸せ』を提供できるか」という視点で振り返り、改善を積み重ねることが、顧客からの信用につながります。顧客を愛し、顧客からも愛される関係を目指していきたいものです。

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