実力主義人事

成功者を喜ぶカルチャーが大事

 幸福の科学大川隆法総裁は、『社長学入門』で以下のように説かれました。

「新しいスタイルの事業を起こして発展させていくときには、必要なものはどんどん変わっていきます。必要な能力や仕事で求められる成果が変わっていくのです。

 今年は「こんなに出来て素晴らしい」と言われたことが、来年になると もう陳腐化していきます。今年は素晴らしいリーダーだった人が、来年になると そうではなくなっていきます。

 これは発展企業にのみ起きる現象であり、発展しないところでは起きません。

 発展せず、停滞しているところは、基本的に農耕社会と同じで、発展しない停滞社会と同じになり、「出る杭は打たれる」というかたちになります。そのため、なるべく出ないようにして、皆なで共同体を大事にします。そういう発展しない社会は だいたい嫉妬社会になりやすく、少しでも出ると打たれるのです。

 停滞社会は平等性もつよいのですが、嫉妬が非常に強く、突出する者を許さないところがあります。発展を目指すと差が生じてくるので、この調整が非常に難しいのです。

 この嫉妬型社会では、発展を目指しても、「誰かが成果をあげれば嫉妬する人がたくさん出てくる」というカルチャーがあるため、やはり発展はかなり阻害されると言ってよいと思います。

 やはり、成功者が出ることを喜ぶカルチャーが大事です。この点は、日本に比べてアメリカの優れているところだと思います。アメリカでは、個人や企業の成功を非常に喜びます。「成功する人からは それなりのオーラが出ている」というような考え方に近いわけです。

 ところが、日本では、どちらかというと「なるべく成功しないで、平々凡々、可もなく不可もなく生きる」ということが大事なのです。

 また、上司の受けをよくするためには、上司を脅かさないほうがよいのです。「上司を脅かさないほうが上司は喜ぶ」ということになると、だんだん無能な人が上司の下に付いて上がってくることになります。有能な人は うるさいので嫌がられ、無能な人が上がってくるのです。

 無能な人を引き上げるような上司がたくさん並ぶようになると、だいたい組織が大きくなってきて、そのあとは傾いてくるのです。必ずそうなってきます。

 そして、ごますり型の人や毒にもならない人、害にならない人だけが出世するようになります。そうなると、だいたい組織としては末期になってきつつあるのです。」(P-148~151)

 

良い遺伝子は強い遺伝子を評価する

 「出る杭は打たれる」組織は発展せず、衰退することがわかっていても、経営者にとって、実力主義と年功序列人事の調整は悩ましい問題である。

 「良い組織では「強い遺伝子」というものを評価します。そして、その強い遺伝子に引っ張られて、他の遺伝子まで強くなっていきます。そのように強さが遺伝していくことが大事です。

 強いものを異質なものとして外に出してしまうのではなく、「強いものが出てきたら、それに感染して他の組織までが強くなっていく」という組織をつくると、発展型の強い組織になります。この意味で実力主義を採るべきだと思います。

 この実力主義を、必ずしも肩書主義と考えるべきではありません。やはり、仕事そのものが実力の報酬だと思うのです。実力のある人に仕事が集まるような運営の仕方がよいのです。仕事そのものが報酬です。肩書やお金などは結果であり、残りかすの部分なのです。それだけを目当てにすると、また違った種類の人が出てきます。

 やはり、「仕事のよく出来る人のところに仕事が集まってくる。仕事自体が報酬である」という考え方が大事なのではないかと思います。(社長学入門』P-151~152)

 

実力主義ではローマ軍方式を

 実力主義を実施するうえで、抜擢人事と併せて考えておくべきなのが「敗者復活主義」である。

「変化する組織においては、要求されるものがどんどん変わっていくため、「今評価されている人が来年は評価されなくなる」ということがあります。

 それは必ずしも本人の責任ではない面もあります。求められるものが変わり、カルチャーが変わってくるのです。今評価されているのが間違っているわけではないのですが、「来年 評価されなくなる」ということは、現在とは違ったものを組織が要求し始めるということなのです。

 そういう意味で、今は評価されている人が、来年は評価されない場合がありますが、それは流れが変わってきたために、そうなっていることもありうるので、その人を違う立場に持っていくと、また能力を発揮することもあります。

 したがって、変化する社会においては、敗者復活が何回でも可能であるような組織をつくらなくてはいけないと思います。

 勝負は1回きりで、敗者復活の出来ないかたちでいくと、イノベーション型の組織においては危険もあります。なぜなら、ボトルネックの部分の体系的廃棄が行われることにより、発展速度が速いとそうなるのです。」(社長学入門』P-152~153)

 

最後はトップの器で限界が来る

 実力人事と人材の入れ替えをして イノベーションを続ける場合に、見落としてはならないことがある。それは、トップ自身の器が限界を迎えることがあるということである。

「「脱皮できない蛇は死ぬ」と言われています。蛇が大きくなるためには、古い皮を脱がなければいけないのです。脱皮するときには痛みを伴いますが、脱皮できなければ、それ以上に大きくなれず、蛇は死んでしまいます。蝉も、羽化するためには殻を脱がなくてはなりません。

 組織において、この脱皮に当たるのがイノベーションです。組織レベルを大きくするためには、このイノベーションが必要なのです。

 組織をつくった人の天運というものもありますが、一生懸命にイノベーションしていかないと駄目で、会社などでは、最後はトップ自身の能力の限界も当然ながら出てきます。それを避けるためには、常に勉強し続ける以外に方法はないのです。

 小さな町工場をやっているときには、「人との付き合いをよくする」「ニッチ産業、隙間産業的な機械をつくる」というような、町工場としてのやり方でよいのです。

 ところが、会社の規模が大きくなってくると、使うお金も発生してきます。さらには、海外との取引が始まると、英語で商売が出来なければいけなくなります。そのように、どんどん変化せざるを得ないのです。

 その変化についていくためには、人材の入れ替えということもありますが、それだけではなく、上にいる者が勉強を続けなくてはなりません。そうしない限り、変化を遂げることは出来ないのです。

 勉強し続けることができないならば、発展は止まるし、また止めるべきです。止められなければ組織が崩壊します。自らの器を知り、一定の限度で発展を止めることも 一つの方法かと思います。」(社長学入門』P-155~159)

 

抜擢人事のリスクと必要性

 実力主義人事とは、抜擢人事と降格人事を断行することである。優秀な人材は抜擢しなければならないし、能力的に落ちこぼれてきた場合は、降格人事が必要になることがある。

 抜擢人事の問題点は、「やらせてみなければわからない」ということである。事前に判定するのは不可能と言われる。

「部長であれば仕事がよく出来たのに、役員になったら能力的に駄目になる人が数多くでるのです。ただ、役員にしたことが失敗であったかと言えば、そうではありません。その立場に就けてみなければ分からないのです。

 部長のときに同じぐらいの能力だった人を何人か役員に昇進させると、そのなかで成功する人もいますが、三、四割は失敗します。しかし、昇進させたこと自体は失敗ではないのです。昇進させて役員に就けてみたからこそ、出来ないことが分かったわけであり、逆に役員が出来る人も出てくるのです。」(社長学入門』P-374~375)

 抜擢の成功率は、一般的には四割程度と言われるが、失敗したとしても、その失敗自体が一つの経験となって、次第に人材が成長することもある。

 抜擢に際しては、いくつか違う場所で評価されて複眼的な目ができた人が経営人材に向いているため、そういう人を経営人材として育てていくという考え方と、一つのところで突出して評価された人をエキスパートとして育てていくという考え方の、両方を持っていなければならない。

 抜擢人事の背景には、出来るだけ長所を見つけて評価し、使っていくという考え方があるが、その次には、「この組み合わせでチームワークがつくれるかどうか」ということに着目する必要がある。長所を認められた者同士が引き上げられてチームを組んでも、仲良くなれない場合があるからです。

 チームを組んだら、どのような成果を生み出すかというところが次の着眼点となってくる。

 組み合わせによっては、嫉妬されて力が発揮できなくなる場合もあるため、抜擢した人材を守れるように調整する必要が出てくる。嫉妬心をどうコントロールするかというところを組織カルチャーとしてある程度持たないと難しいのである。

 

 実力人事の注意点として、昨今では「ブラック企業批判」の問題がある。共産党系や左翼系のマスコミの影響もあって、平等な社員の処遇を求める考え方は根強く、アップダウンのある人事は批判されやすい。しかし、その風潮に乗って厳しい経営判断を避けていると、結果的に社員の生活に責任を負えなくなる。

「経営者には、一定の厳しさが要るだろうとは思うのです。その厳しさのところを、単に『ホワイトか・プラックかと考えるようでは甘いと思います」(『経営が成功するコツ』P-89)

 この意味で、実力主義人事の断行は、経営トップの信念が問われることになる。

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