高付加価値の創造

会社が脱皮する時には厳しい処遇も必要になる

 幸福の科学大川隆法総裁は、『社長学入門』で以下のように説かれました。

「仕事というものは、組織が大きくなってくると いろいろ出来てくるものです。昔つくった仕事がそのまま残り、さらに新しい仕事ができてきます。そして、その調整のためのセクションがつくられます。そこがまた仕事をつくり始めます。こうして、仕事は基本的に増えていくのです。

 仕事というものは、屋上屋を架すがごとく、仕事のための仕事が出来やすいので、最大のコスト削減法は、経費を減らすことを考えるというよりも、むしろ「そもそも、この仕事は要るのかどうか」ということを考え、無駄な仕事自体を失くしてしまうことです。要らない仕事が生んでいるコストが膨大なのです。

 利益が少なくなってくると、「コストダウンをしなくてはいけない」などと、いろいろ言うのですが「仕事そのものが無駄である」という場合も多いのです。その仕事は、ある時期においては必要だったのでしょうが、現在では要らなくなっているわけです。最大の経費節減は、無駄な仕事、やらなくてもよい仕事をやめてしまうことなのです。

 これはイノベーションとも関係しますが、大きくなっていく組織においては、常にこれをやらないと危険です。仕事の見直しをして、要らないものは大胆に辞めることです。

 やめても大丈夫なのです。やめると困るようなものは、やめようと思ってもやめられません。やめられるようなものは、やめてしまっても大丈夫なのです。」(P-174~177)

 無駄な仕事、無駄な陣店は、常に増え続けていく傾向があるため、定期的に見直しが必要になる。

 「放置していると、仕事の真の必要性とかかわりなく、雇用される者の数は増大する」という現象は、「パーキンソンの法則」と言われる。人の数が増えれば、本来必要のない仕事も増大していくことになる。元々はイギリスの海軍省に見られた現象から導き出された法則だが、今日では広く適用されている。

 

しなくてもよい仕事はやめて、付加価値の高い仕事に集中する

「会社でも同じで、「やらなくてもよい仕事は やめてしまう」ということが一番大事です。「やめてしまうと仕事がなくなり、職業の危機になる。クビになるかもしれない」ということで、それが怖くて やめられないでいることが多いのです。しかし、やらなくてもよい仕事は、やはり大胆にやめるべきです。

 そして、新しい仕事を探さなくてはいけません。もっと生産性の高い、付加価値の高い仕事をつくらなければ駄目なのです。

 今、自分が抱えている仕事について、「自分のような給料の人間がやるべき仕事ではない」と思ったら、その仕事を、もっと安い給料の人のほうに下ろさなくてはいけません。そうすると、自分の仕事は空いてきますが、それで遊んでいたらクビになります。その空いた時間で、次は もっと付加価値の高い仕事、生産性の高い仕事、研究開発的な仕事をしなくてはいけないのです。

 このように、常に手持ちの仕事をなくしていく方向で努力しなくてはなりません。」(社長学入門P-177~178)

 

会社が潰れるということの意味

 大川隆法総裁は、『経営入門』で以下のように説かれました。

「物の値段が下がっていくトレンドに打ち勝つためには、以前よりも高付加価値のものを生み出す以外に方法はありません。高品質、高性能のものを、従来の製品と同じぐらいの値段で出さなければ勝てないのです。これが今の企業にとっての戦いです。」(『経営入門』P-339)

 ダイエーは、新店舗を出すときは、地価の上昇を見込んで土地を購入し、その土地を担保にして銀行から多額の借金をし、その借金で新しい店舗を出すというビジネスモデルであった。

 しかし、このモデルは破綻すると予測していたのです。

「ダイエーは、商品の値段を下げ、「物価二分の一革命」を掲げていました。

 しかし、私は、土地の値上がりを見込んで借金をするやり方と、「物価二分の一革命」とは通常両立しないので、いずれ破綻するのではないかと見ていました。

 「土地の値上がりによる担保価値の上昇」ということを梃子にして出店し、もう一方で「物価二分の一革命」を掲げて商品の値段を下げ、業容を拡大していくためには、そのどちらかしかありません。

 したがって、このやり方は理論的に破綻するのです。実際にその通りになりました。

 また、ある面では、ダイエーは、もう少し小回りの利く安売りの専門店などに負けたところもあるかもしれません。

 物の値段が下がっていく時に、高付加価値の商品を生み出すことなしに、座して眺めているだけの企業は潰れていくのです。「そうした企業は、同業他社を競争で潰していくか、人口が増えるか、そのどちらかでなければ、基本的には倒産する」と言うことを、理論として知っていなければなりません。」(『経営入門』P-340~341)

 冷戦の終結によって、戦後のインフレトレンドが転換したことが読めなかったために、借金先行型の経営スタイルを転換できなかったわけです。

 なお、「同業者を食う」方法は天国的な考え方ではなく、幸福を生み出す考え方とは言えません。

 

中小企業は高付加価値の商品開発を

 厳しい経営環境にあって、経営者の大多数を占める企業は、どのようにして生き残りをかけていけばよいのでしょうか。

「中小企業が生きていくために考えなければならないことは、「基本的に、安売り競争をしたら大企業に負ける」ということです。「価格を安くしてほしい」というニーズは当然ありますが、安売り競争をしていくと、中小企業は大企業に必ず負けるのです。

 あるいは、大手の下請けになっている場合、そこに買収されることがあります。中小企業が「オンリーさん」と言われるような完全な下請けになり、「もっと値段を下げよ」と言われて、赤字になって苦しくなり、最後は吸収合併されてしまうのです。

 大手企業は、こういう手法で下請けの会社を買収して組み込もうと狙っています。「値下げの嵐」のなかでは、中小企業は必ず潰れていくことが予想されます。

 したがって、「人口が増えない社会において、中小企業が発展・繁栄しつつ生き延びる道は何か」ということを考えると、基本的には、高付加価値の商品、あるいはサービスを開発する以外に道はないのです。」(『経営入門』P-345~347)

 こうした大企業のM&A戦略は、中小企業から見れば無慈悲で強引に見える。当然、違法性があれば否定されるべきだが、多くの場合、大企業も多数の雇用を抱える責任から生き残りに必死になっていることが その背景にある。「大企業のせいで潰される」という考え方は、一面において事実であっても、被害者意識が大きくなり過ぎると、生き残りのための健全なアイデアが発想できなくなるので注意を要します。

 世の企業の大部分は年商1億円の壁を越えられずにいます。この1億円の壁を突破するカギは「人を育てる」ということなのです。

 一つは高付加価値商品を発明するということです。一見人を育てることとは関係ないように思われますが、人を育てられない原因は、そもそも人を雇う余裕がないからです。なぜ人を雇えないかというと、競争相手が多く、薄利多売をしていることが多いからでしょう。利益がなければ、人に投資する余裕は当然なくなります。

 利益を出すには、値上げをすればよいのですが、競争相手が多い市場では、何か特徴や創意工夫がなければ値段を上げても顧客はついてきません。

 したがって、差別化に基づいた高付加価値商品を編み出さなくてはならないのです。まったく新しい商品を発明するのは大変ですが、今の商品に付加価値をつけて出す工夫が必要です。

 また、アイデアは出し続けないといけません。真似されやすいものだと すぐに他社にも追随されることにもなりますから、考え続けなくてはいけないのです。

 これが小さな会社から脱出していくための一つのポイントです。

 

美の探求によって高付加価値のものをつくる

 ブランド戦略において、他社との差別化を考える上で一つ指摘しておきたいのが、「美の探求」ということです。これから新しい商品やサービスを世に送り出すにあたって外せない観点だからです。

 大川隆法総裁は、『経営とは、実に厳しいもの』で以下のように説かれました。

「経済のなかにも「美」はあります。次の時代の経営の生き筋のなかには、「美」という観点があるのです。同じようなサービスは どこでもできるし、同じようなものは どこでもつくれるでしょう。しかし、経営者としては、そのなかに「美の探求」を趣味として持っておかないと生き筋が見いだせないと思います。

 例えば、不細工な車や不格好なテレビなど、こんなものは消えていく運命にあるわけです。そして、携帯電話であろうと何であろうと、いかに美しいか、いかに気が利いたものになるか、ということが大事になってくるでしよう。

 今後、実用性だけでは生きていけない時代が来ます。工夫を凝らして、より美しいものをつくっていくことが求められるのです。それは「形体美」でもありましょう。また、「機能美」、機能の美しさというものもあります。あるいは、サービスにも「サービスの美しさ」があると思うのです。

 ちなみに、これが例としてさわしいかどうかは分かりませんが、宅配サービス系で言うと、佐川急便の配達員は、真冬でも半袖で働いています。あの横縞の制服は囚人のようにも見えるので、「ちょっと どうかな」と思うのですが、夏でも冬でも半袖で走っているわけです。おそらく、忙しそうに半袖で走っていることで、商売が賑わっているように見せているのでしょう。

 私は、「走る人も大変だな」と思いながら見ているのですが、あれも一つの美なのだろうと思うのです。つまり、「飛脚は忙しくしなきゃいけない」という感じの美学なのでしょう。

 あるいは、宝飾店の場合、いろいろなところの店員の手つきを見ると、やはり、ティファニーなどは格式があります。例えば、箱にリボンをかけるときの女子社員の指先の美しさは、ほかとは違うわけです。あれは社員訓練のおかげでしょうから、指導している人の腕がよいのだと思います。リボンをかけるときの見事な手の動きを、客はジーッと見ているのですが、これが本当に美しいのです。

 もちろん、こうしたことは値段に関係ありません。しかし、高級感をつくるのには役に立ちます。「包んだら終わりでしょ」と言えばそれまでかもしれませんが、やはり、「宅配便の荷物と同じではない」というところはあるのです。

 いずれにせよ、「次の時代のコンセプトとして、「美」というものをどこかにおいておかないといけない。機能性、実用性だけでは高付加価値のものはつくれない」ということです。」(P-284~287)

 経営者における美の探求とは、単にアートやデザインの勉強をすればよいというものではありません。腕利きのデザイナーを起用して、商品や製品のデザインを頼めばよいというわけでもありません。勿論、そうした努力も必要なのですが、もう少し本質的な部分において美を追及していく必要があります。「真・善・美」を探求していくなかに、人間としての成長、経営者としての成長があるのです。

 

「値下げしない」という値上げもある

 値上げして増えた利益は、あくまで品質の向上や従業員の給料、販促費などに充てて、「善の循環」を生み出していくためのものです。したがって、値上げは決して悪ではありません。むしろ無理に値引きして、倒産してしまえば、商品を気に入ってくれていたお客さんはがっかりします。

 ただし、売れなかったらすぐ値下げするような、安易なことをすべきではありません。顧客の信用を失うからです。

 値下げはすべて善かというと、実際には不要な値下げがたくさんあります。たとえば、客が見積もりを黙って読んでいると、「もうちょっと下げましょうか」と自分から言い出す営業マンがいます。これは自社商品の良さを腑に落とせておらず、自信がないのが原因です。

 不要な値下げを止めるのも、実質的な値上げであり、それを徹底するだけでも収益が改善する会社は多くあります。営業マンの教育にひと手間かけているか否かでも差がつくのです。

 利益を上げることは、経営者も従業員も顧客も、皆を幸せにします。本来、経営は人を幸せにするものであるはずです。そのためには、値下げだけでなく、時には「100円の商品を150円にするには、どのような付加価値が必要なのか」を考えることも大事ではないでしょうか。

 

付加価値の創造こそ対デフレ戦略

 消費増税後は、これまで以上にターゲットやコンセプトを練り込んだ商品や、それを使う人のきめ細かいニーズにミートするサービスが求められる。消費者からの選別は厳しさを増すであろう。それは、消費者が企業の努力を見逃さない時代でもある。

 実際、長引く不況にもかかわらず、発展を続ける企業は、人々の満足や喜び、不満解消のために、自社にできることは何かを考え続けている。顧客の気持ちや願いに関心を集中させ、人を動かす動機づけや、付加価値を創造するという経済の原点に立ち返って、その能力を磨き続けることが求められる。

 デフレ下の経営戦略について、大川隆法総裁は、法話「忍耐の時代の経営戦略」の中でこう指摘している。

「社員一人ひとりが、企業内起業家として自分の部署等で、いかにして新規事業を立ち上げ、利益部門をつくり上げるかを考えなければなりません」「次から次へと押し寄せてくるように、ヒットがサイクル的に続いていくことが基本的に大事です。勤勉に、コツコツと堅実な努力を積み上げていく方針は外してはならないと思います」

 総裁の経営戦略をもとに長引くデフレ下で成長している企業は数多い。まさに「知は力なり」である。

 企業に勤める一人ひとりが起業家精神を持ち、顧客のニーズを発見・創造して、ヒット商品を送り出していく。その成功の連鎖を作り出した企業が、増税下を生き抜き、日本経済を支えることになるでしょう。

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