全社戦略 事業戦略 機能分野別戦略

経営戦略の階層性

 経営戦略とは、企業が何を為すべきか、それを如何にして実行するかと言う方向と方法とを示す一連の行為を伴うものであり、その行為が戦略策定と呼ばれる。したがって、大きく捉えれば、経営戦略とは総ての企業が持つべきビジョンであって、企業の在るべき姿、在りたいと願う姿を示したものと言うことができる。しかし、それは余りにも大きく、かつ、漠然としたものになり、これを具体的に示したものが戦略目標であって、これをどのようにして達成するかと言う手段を示したものが戦略計画に他ならない。

 このように考えると、経営戦略とは、企業のトップ・マネジメントのみの問題として捉えられるかも知れない。しかし、トップ・マネジメントの策定した経営戦略は、各階層のマネジメントを通して現場の活動の中に忠実に展開され、具体的な成果とならなければならない。その場合、経営規模が大きく組織管理が分権化していればいる程、ミドル・マネジメント及びロワー・マネジメントも、独自の責任と権限の範囲において それぞれの立場での経営戦略を展開しなければならなくなってくる。そこで、現在では、管理階層と関連して企業の事業部制組織のように、3つの階層があると考えられている。

   企業戦略・・・全社レベル

   事業戦略・・・事業部レベル

   機能別戦略・・・部門レベル

  企業戦略(全社戦略)とは、財務構造と組織構造ならびにプロセスの基本設計に関する意思決定であり、領域と事業間の資源展開がその主要構成要素である。

 事業戦略とは、特定の産業ないし製品・市場セグメントでの競争に焦点を当てるものであり、企業の独自能力と競争優位性がその最も重要な構成要素である。

 機能別戦略とは、企業の各事業に共通の機能分野である製品ライン、市場開発、流通、財務、人事、研究開発ポリシー、および製造システム設計の選択を含む意思決定である。

 これらの機能分野の資源生産性の極大化に主要焦点を当てるものです。その戦略構成要素のカギは、シナジーと独自能力の開発であるという。

 この3つの階層の経営戦略は、それぞれ具体的な戦略によって実現できる。

 

企業戦略

 企業戦略とは、事業の撤退や新規参入も含めたトップ判断のための行動プログラムです。

 例えば、製造販売事業と仕入販売事業を行なう企業では、「今後は製造販売事業を縮小し、仕入販売事業にカネとヒトを集中する」という戦略は全体戦略になります。

 業績不振の製造販売事業の責任者が設備投資が必要だと思っても、勝手に金融機関に融資を申し込むわけにはいきません。

 資金調達は全体戦略に基づいて行なわれなければならないからです。

 このように、事業ドメイン(事業領域)の決定、経営資源(ヒト・モノ・カネ)の配分、資金の調達を方向づけるのが企業戦略です。

 企業戦略は、経営上の目標達成に向けて、会社全体で遂行する戦略です。 

 具体的には、下記にあげた項目を決めます。 

 ・事業ドメインの範囲(どの事業を運営するか)

 ・経営資源の配分(どの事業に、どの経営資源を、どのくらい配分するか)

 ・新規事業への参入、既存事業からの撤退

 ・経営理念・ビジョンの共有と徹底 

 企業の成長に直結するため、「成長戦略」とも呼ばれます。 

 

事業の基本構成と経営資源配分の方向づけ

 事業の基本構成と経営資源配分の方向づけにおいては、全社レベルでの市場・顧客と商品・サービスの違いから、戦略的事業単位(SBU:Strategic Business Unit)を設定することが必要です。

 会社が取り組むべき事業領域の決定が「企業戦略」です。

 規模が大きくなればなるほど事業を多角的に経営するケースが増えますが、それらの各事業をどのように展開していくかを決定する重要な戦略となります。すでに事業展開している状況でビジョンの再設定を行う場合もありますし、これから新規事業を立ち上げるにあたりビジョンを明確化させる場合もあるでしょう。

 具体的な事業展開のビジョン確立だけでなく、会社全体のイメージを会社内外に発信する役割もあります。まず全社戦略を固めて基軸としなければ、他の戦略立案は成り立たないと考えて良いでしょう。

 

事業戦略

 企業戦略はコーポレート部門(経営層や経営企画部門など)が担当し、経営資源をどの事業に配分すべきか ということに主眼を置いて策定します。これに対して、事業戦略は、各事業部門が担当し、配分された経営資源を基に事業単体における適切な打ち手は何かということに主眼が置かれます。

 事業戦略の視点は、各事業部について個別で成長・改善させていくことになります。全社戦略の視点で、どの事業に、どれだけ投資すべきかの配分を考え、その後、投資された各事業においては、想定している利益率を目指してどのような戦術で達成するかを考えていきます。

 企業戦略を策定したら、次はその内容を踏まえて事業戦略を策定していきます。事業戦略とは、自社が取り組む各事業について領域や資源配分などを定める戦略のことなのです。

 

事業戦略の主な決定事項

・各事業のビジネスモデル

 全ての事業に関して、収益性のあるビジネスモデルを確立する。

・経営資源の細かい分配

 各事業に分配する経営資源を決める。

・開発する新製品の内容

 新製品を開発する場合は、開発の方向性やプロジェクトの内容などを決める。

・既存事業の修正

 既存事業に関しては、さらに収益を高められるように内容を修正する。

 

機能別戦略

 事業戦略を実行するために必要となるのが「機能別戦略」です。

 機能別戦略は、社内の機能組織を最適化させるために策定する戦略です。

 研究開発や営業、生産、マーケティング、人事などの分野に分けて、それぞれの機能組織で実施する施策などを考えていく。

 具体例としては、マーケティング戦略や営業戦略、財務戦略、人事戦略、研究開発戦略、購買戦略、生産戦略、物流戦略などが挙げられる。

 機能別戦略は、事業戦略の戦略目的や目標を達成するために、必要な機能ごとの戦略目標を達成するためにあります。

 さらに、実施しようとしている機能戦略が、最終的にどのように経営理念まで繋がるのか、戦略策定・立案メンバーで共有しておく必要があります。

 機能戦略の目標は、一般的に事業戦略から降りてきます。その目標を元に、状況の分析を行い、現場の経営資源で達成できる方法を考えましょう。

 事業戦略から与えられた機能戦略のための経営資源は、絶対的なものではありません。経営資源が絶対的に足りない場合は、事業戦略のミスであることもあります。

 経営資源が不十分な場合は、事業を統括する責任者と十分なコミュニケーションを取りましょう。本当に経営資源が不十分であれば、機能戦略の目標を考え直すか、経営資源の配分を変えるかのいずれかが必要です。

 機能別戦略では、主に以下のような事項を決めていきます。

・具体的なプロセス

 生産工程や営業方法など、各機能のプロセスを決定する。

・プロセスの改善策

 各機能がすでに存在している場合は、課題を見極めたうえで、プロセスの改善方法を考える。

・各機能のシナジー効果

 各機能がどのように連携し、どういったシナジー効果を発揮するか分析する。

 

機能別の戦略課題 
 事業(製品)戦略に対し、生産、物流、品質管理、安全環境保全、情報、人材配置育成などの機能別の戦略も必要です。

 機能別の部門課題は、全社的にみれば事業戦略課題を遂行するための方策になります。

リスクの評価と予防策 
 戦略代替案が失敗したときの対処の方法を予め考えておきます。特にこれまでやったことのない事業に進出するときには必要です。 
 事業に固有なリスク(競争会社の値引きなど)のほかに、以下のようなことを考えておきましょう。 
 ・政治的なもの:海外進出の場合の政変、政策の大幅変更
 ・経済的なもの:為替の大きな変動、原油騰貴など
 ・技術的なもの:革新的な技術の出現
 ・モラルハザード:品質保証の手抜きによるクレーム続発
 ・災害:地震、爆発、テロ

 リスク予防の考え方はほぼ決まっています。可能性のあるリスクを列挙したあとで、その一つ一つについて次の判断基準で評価することです。  
 ①起こる確率の高さ
 ②影響力の大きさ
 ③対策の容易さ(費用の小ささ)

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