経営課題の解決方法

分解して考える

1 わからないことはまず分解して考えてみる

 経営課題の解決手法を身に付けるにあたっての第一歩は、わからないことはまず分解してみるということです。

 日々起こる問題を漠然として捉えるのではなく、なぜそうなっているのかをさまざまな可能性に分解して考えてみるのです。たとえば、「3ヵ月連続で利益が対前年比割れしている」という事態が生じた場合、単純に「利益が落ちている」ということを問題として捉えるだけでは、その課題としては「利益を上げる」ということになってしまい、先に進みません。このような場合、「ロジックツリー」というツールを使うと問題の原因を触り下げて考えていくことができます。

 

 ロジックツリーとは、起こっている問題の本当の原因を探るために、問題を何段階にも網羅的・体系的に掘り下げていくためのツールです。

 たとえば、「新規顧客」が減っている場合、小売店であれば、来店客数が減っているのか、来店客数は減っていないが実際に買ってくれる客が減っているのか、といったことも掘り下げるべきポイントになります。

 問題が発生するたびにこのようなロジックツリーを作ってもよいのですが、過去に起こったさまざまな問題を整理して、あらかじめ自社にとってもっとも有効なロジックツリーを作っておけば、問題の早期発見と迅速な解決につながります。

 顧客数の変動が激しい業種では、顧客分析に関するロジックツリーは広くかつ深くなりますし、仕入れ変動の大きい業種では原価に関するロジックツリーは広くかつ深くなるでしょう。また、同一の業界であっても、最適なロジックツリーは会社の置かれている状況によって異なってきます。自社に適した実践的なロジックツリーを作ることが大切です。

 なお、現実には次から次に新しい問題が発生しますので、いったん作ったロジックツリーがずっと有効なわけではありません。新たな問題が発生したら、ロジックツリーを必要に応じて修正することが必要です。

 

2 管理指標の活用で問題を事前に回避する

 あらかじめロジックツリーを作っておくメリットは、問題が発生したときに解決の道筋が早く見つかるということだけではありません。むしろ、ロジックツリーを活用することによって、大きな問題になる前に事前にそれを回避できるメリットのほうが大きいのです。

 たとえば、小売店で女性客が主要ターゲットの店の場合、女性客の来店数、購買単価などがロジックツリーの重要な管理項目になります。

 管理項目が決定したら、業績の変動に関係なく、その項目を管理指標として設定し、データを定期的に取り続けます。

 データを定期的にチェックし、来店数の減少傾向などが見てとれた場合には、販促策を立てるなどによって大きな売上ダウンを事前に回避できます。

3 事業拡大の検討材料としても活用できる

4 「問題」と「課題」の違いを理解する

 「問題」は、あるべき姿と現状のギャップのことであり、「課題」はそのギャップを埋める方策のことです。

 

緊急性と重要性に分解して考える

1 問題を「緊急性」と「重要性」で評価する

 会社経営にはさまざまな問題が次々に発生します。放っておくとあっという間に問題が山積みという状況になってしまいます。手当たり次第に対応していたのでは全部の問題にはとても対処できません。

 そこで、対応する問題に優先順位をつける必要が出てきます。そのようなときのひとつの方法が、問題を「緊急性」と「重要性」に分解して評価してみることです。
 「緊急性の高い問題」とは、今すぐ対応しないとデメリットが生じる問題です。

「重要性の高い問題」とは、対応しないと大きなデメリットが生じる問題です。

このように評価した結果、緊急性も重要性も高い問題、つまり、「今すぐ対応しないと大きなデメリットが生じる問題」に対して、最優先で取り組むことになります。

2 評価結果をマトリクスで考える

 

 実際に評価結果をマトリックス(表)にしてみます。縦軸が緊急性、横軸が重要性を示す。

 それぞれ、矢印の方向へいくほど、対応すべき度合いが高いことを表します。

 緊急性、重要性ともに高い領域、つまり、マトリクスの右上の太線で囲まれた領域に属する問題は、最優先で、できれば社長自身で対応すべき問題ということになります。

 問題が発生したら、頭の中でこのマトリクスを描いて、優先度に大体の検討をつけると、問題対応の方針を決定することができます。

 自社にとっての「緊急性」「重要性」の評価のポイントを考えて、それにふさわしいマトリクスを作成しましょう。

3 課題の優先順位付けにも活用できる

 このマトリクスは、「問題」の優先順位付けだけではなく、「課題」に対する優先順位付けにも活用できます。
 このように評価した結果、緊急性も重要性も高い課題、つまり、「今すぐ対応することによって大きなメリットが生じる問題」に対して最優先で取り組むことになります。

 たとえば、新規取引先との詰めの交渉などは、マトリクスの右上の領域に属することになるでしょう。また、会社の事業計画の策定などは、今日明日という緊急性はありませんが、策定することによって将来的に会社に大きなメリットをもたらすということで、マトリクスの右の中段あたりに属することになります。

 

効果と難易度に分解して考える

 実現までに長期間を要するような比較的大きな課題解決の考え方であっても、基本は「分解して考える」ことになります。

 STEP1:問題の掘り下げ

 STEP2:具体的施策の設定

 STEP3:施策を『効果』と『難易度』に評価

 STEP4:実行策の選択

 最終的に実行策を選択する際には、それらを総合して「利益率低下を脱するための打開策立案」という総合的な視点で行います。

 そして、どのくらいの期間でどのような体制で行うかという基本プランを策定していきます。

 

人の行動や心理から課題を解決する

 法人は社会の一員であり、人間の集団で構成されています。そのため、人と組織の課題から逃れることはできません。

 企業経営における「人の問題」とは、従業員と顧客、それ以外の一般大衆といった区分ができます。これらの分析をするにあたって、心理学の観点から「行動」「表層心理」「深層心理」に分けて考えてみます。

 

人的課題に対処するためのフレームワーク

 それぞれの個別課題に対応するためには、従業員の仕事に対する態度を改善するためにリーダーシップ論を深めたり、顧客の分析を行うときにはブランド志向の有無を調査したり、最適な方法を検討します。

 

事実を把握する方法

 人がどのような行動をとるのか、その事実を把握するためには、観察・記録・調査・実験などの方法があります。

 営業担当者が商談の場でどのような発言をするか、消費者が商品をどのように使用するか、といった行動に関わることは、観察することで実態がつかめるものです。

 時間分析をしたい場合には記録が必要になります。機械的にログデータを取得できる場合は良いのですが、各自の行動を手作業で記録する場合には記入や集計の手間がかかるでしょう。そのため、内容に応じて、1週間分の行動記録を参考に1ヵ月分を推計するなどして、おおよその実態をつかめるようにします。

 アンケートやインタビューは、調査により実態を把握する方法です。うまくサンプルをとれば、個々に状況を把握することなく、全体を推計することができます。

仮説ができたならば実験が可能です。コンビニやスーパーの食品配置が同じようなのは、仮説検証の繰り返しの結果で最も売上が伸びる配置が生み出されてきたからだと考えられます。

 

行動の背景にある心理的な情報を得る方法

 人の課題に取り組むためには行動の観察のみでは不十分です。その背景にある意識や、気質を考慮しなければならないことがあります。

 従業員の場合には、当事者に直接話を聞くことができます。また、複数の従業員を集めて、自由に発言をしてもらったり、何かしらのテーマにそって会議をしてもらったりすることで、信頼性の高い情報を集めることができるでしょう。

 顧客の場合であっても、グループインタビューを実施することが背景を探るのに役立ちます。

 

データや情報を用いる工夫

 人の課題解決のために、仮説を立てテストケースなどでシミュレーションを行います。その際には、評価できるデータを取得し、改善の後に本番環境で実施するのです。

 店内の商品配列と導線、営業担当者のルートなどは視覚化できます。所要時間の検討と合わせて行うと効果的で、視覚化された情報は思考を助けるでしょう。

 全国展開する前にテスト販売をして、広告と消費の関係性をより正確に検討したり、一部の店舗で改装した結果をもって全社に展開したりすることができます。

 

先人の知恵を活用する方法

 兵法を経営に応用したり、最新の行動科学の研究から経営判断をしたり、人の心理と行動に関わる先人の知恵を活用する方法があります。

 マズローの欲求階層説では、人の心理的特性を探るため、その動機に着目してピラミッド構造になることを提唱しました。人々のニーズが置かれた状況により変化することがまとめられています。

 従業員をめぐる社会的背景をさかのぼれば、戦後の衣食住に困った状況から脱し、高度成長期には会社への帰属意識も芽生えてきました。

 組織が拡大すれば、ポジションが多くでき、地位が上がっていきます。自らの成長を実感できたころ、バブルの崩壊で企業と従業員の関係も安定したものではなくなっていきました。しかし、リストラや望まない配置転換は、従業員に対してどのような影響を与えるのでしょうか。

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