生産性
自社の生産性を考える
企業が資本、人材等の経営資源をどのように活用し、その結果としてどれだけの成果が得られたかを把握することで、生産性の良否を判断することができます。
生産性は基本的に以下のような算式で表わすことができます。
生産性=成果(産出)/経営資源(投入)
生産性は、経営資源の投入高と成果としての産出高との比で測定され、投入高に対する産出高の割合が高くなればなるほど生産性が高いということになります。
投入される経営資源には、多種多様なものがありますが、代表的なくくりとして、労働と資本が用いられます。
どちらが重要かは時と場合によって違ってきますが、多くの企業では、1人の労働力を投入したことによってどの程度の成果を得ることができたかという「労働生産性」を重視する傾向にあります。
その理由としては、以下のような点があげられます。
・労働力はどんな経営活動にも必ず共通するものであること
・賃金、従裳員数、労働時間等、投入量の測定が容易であること
一方、分子の成果に用いられる要素には、企業の生み出す付加価値が入ります。
労働生産性をさらに深く分析する
労働生産性をさらに深く分析するには、労働分配率をみるとよいでしょう。労働分配率とは、付加価値のなかからどのくらいの割合で人件費に回されているかを示すもので、業種などによって差異がありますが、これが60%を超えると、企業の収益は厳しくなるといわれています。
この指標は、企業からみた良否と従業員からみた良否が違ってきます。企業の収益を考えれば労働分配率が低いほどよく、従業員からみれば、高いほどよいことになります。しかし、お互いが対立するものではなく、労働生産性を向上させることで、人件費の絶対額を確保しながら労働分配率の低下をめざすことが、企業および従業員の双方にとって最善の道なのです。
労働分配率(%)=人件費÷付加価値額×100
付加価値
付加価値とは、企業が一定期間、経常活動をすることによって得た成果のうち、当該企業が新たに生み出した価値のことをいいます。
企業は、外部から仕入れた原材料、仕入商品等を元に、自社の技術力、営業力、ノウハウ等を駆使して新たな商品・サービスを作り上げます。
この新たに付け加えた価値のことを付加価値といいます。
付加価値を求めるには、さまざまな考え方がありますが、基本的な考え方としては、売上高から新たに付け加えられた価値以外の金額を除くことで求める方法があります。
売上高から原材料、仕入商品等、外部から購入した価値を引くことで、付加価値額を算出します。
この付加価値が売上高に占める割合を「付加価値率」といいます。
付加価値率の求め方は以下のとおりです。
付加価値率=(付加価値額/売上高)×100
付加価値額は、「経常利益+人件費+金融資産+賃借料+租税公課+減価償却費」または「純売上高-当期製品仕入原価」「生産高-(直接材料費+買入部品費+外注加工費+間接材料費)」で求められます。
1人当たり付加価値を計算する
1人当たり付加価値は、従業員各人がどれだけの付加価値を獲得し、自社の利益獲得にどの程度貢献しているかをみるものです。
1人当たり付加価値は以下の算式で表わすことができます。
1人当たり付加価値(円)=付加価値額/従業員数
1人当たり付加価値は効率的な経営が行なわれているかどうかを測る重要な指標であると同時に、現在の財務状況からみた従業員数の妥当性を判断するために用いることもできます。
また、部門間での比較や時系列による比較を行なうことで、より詳細な生産性の分析が可能となります。
1人当たり付加価値(生産性)は、上の式を以下のように分解することでより詳細に分析することができます。
1人当たり付加価値額(円)=付加価値額/従業員数
=(売上高/従業員数)×(付加価値額/売上高)
=1人当たり売上高×付加価値率
上の式のように、1人当たり付加価値は、「1人当たり売上高」と「付加価値率」に分解することができます。
このことにより、生産性の問題に関しては、その原因を
・売上高が低下しているのか
・人員が多すぎるのか
・売上原価が高すぎるのか
・利益率が低すぎるのか
といった視点から検討することが可能となります。
資本の生産性を検討する
1人当たり付加価値は以下の算式でも表わすことができます。
1人当たり付加価値額(円)=付加価値額/従業員数
=(有形固定資産/従業員数)×(付加価値額/有形固定資産)
=労働装備率×設備投資効率
1人当たり付加価値は「労働装備率」と「設備投資効率」に分解されます。
労働装備率は、企業の設備投資の充実度を表わしており、設備投資効率はこの投下された資本設備の有効利用度を表わしています。
減価償却をほとんど終えて老朽化した設備をフル稼動させている場合は、労働装備率が低く、設備投資効率が高くなりやすくなります。
新型の設備を新たに購入している場合は、労働装備率が高く、設備投資効率が低くなりやすいといえます。