組織を活性化するリーダー

 組織を常に活力とヤル気に溢れた状態にするのは、リーダーの力如何にかかっています。
 特に現場の第一線で活躍しているリーダーの力量が重要です。
 組織のトータルパワーを最大にするには、何を、何時、どのようにやったらいいのかというマネジメントの基本的なノウハウを身につけていなければなりません。
 そのためにはリーダーとは一体何をなすべきなのか、という基本をまず押えることです。そうしないとマネジメントのノウハウはなかなか修得できないでしょう。

 

リーダーの条件

 リーダーに必要な基本的な条件は以下の5点です。

1 業績向上に貢献する
 リーダーは業績向上に貢献する働きが要求されます。
 業績とは、各々リーダーが果たすべき機能を充分に果たしているか否かということです。
 業績向上に貢献しなければならないのは一般社員とて同じことですが、リーダーの場合は業績の上げ方が一般社員とは違います。
 一般社員は、自分の担当業務を一生懸命やって成果を出せば、それでこと足れり ですが、リーダーの場合は、他人を使って業績を上げなければなりません。自分一人が頑張って業績を上げるのではなく、沢山の人を活用して業績を上げると言う点で、一般社員とは大きく違います。

2 上意下達、下意上達

 リーダーは、経営陣と一般社員の間に挟まれて「上と下とのジョイント役」としても重要な存在です。
 上の意向を噛み砕いて下に伝えなければならないし、同時に、下の意向を咀しゃくリファイン(洗練)して自分の考えとして、上に伝えなければなりません。それによって方針が下までストレートに伝わり、下の意見や改善点、不平不満等々が上まで伝わることになります。風通しのよい組織ができるわけで、全社員が一致団結しやすい組織風土ができるのです。
 風通しの悪い組織は当事者で語り合うことを避けますので、不平不満が鬱積したり、上への不信感がつのったりしてトータルパワーが損なわれてしまいます。従って、リーダーが上と一般社員の間に立って風通しのいい組織を造る努力が重要です。

3 部下の育成

 いつ自分が辞めても仕事に支障が出ないように部下を育てることがリーダーの務めでもあります。
 仕事を全部一人でかかえ、部下に任せない人がいます。もし、その人が休んだりすると業務が止まってしまい、大変です。そんなリーダーは実は失格なのです。

 自分の保身を考えれば、仕事を一人占めして部下に任かさないほうがよいかも知れません。
 会社もそんな人を異動させると業務が止まってしまいますからなかなか動かせないからです。しかし、それでは部下は成長しません。
 部下を育てるコツは部下に判断する機会を多く与えることです。
 もし、部下が「この件はどのように処理したらいいでしょうか」と指示を仰ぎにきたら、簡単に答えないことです。
 まず「君の考えはどうだね」と逆に部下の考えを聞いてください。もし部下の答えが自分と一緒なら、「その通りにやればいいよ」と指示すればよいのです。
 もし違っていたら、その時が教育のチャンスです。
 「君の考えは これこれ の点で違うんじゃないか。私はこう考えるんだが、どうだね」と言う具合に、部下の判断の不足部分を指摘し、正解のヒントを与える指導をすれば部下は伸びるでしょう。そして、次からは、「私はこうしたいと思いますが、如何でしょうか」と自分の考えを先に出して指示を仰ぐように指導すれば、更に大きく伸びるでしょう。
 判断の機会をできるだけ多く与え、適切な指導をすれば、部下は必ず大きく成長します。

4 補佐役の立場

 社長以外のリーダーは直属の上司を補佐する役割があります。
 上司が不在の時は、その代理として業務遂行ができる実力がないと、補佐役は務まりません。従って、各リーダーは、常に一段高い立場でものごとを考え、判断するように心がけることが必要です。
 もし課長なら、もし部長なら、どんな風に考え、判断するのだろうかと、自分の役職より一つ上の上司の立場に立って実践してください。
 そんな訓練の中から段々と高度な判断力が身についていきます。
 上司が、「俺がいなくても彼に任かせておけば安心だ」 と思うレベルになれば昇進も間近になります。
 もし、全リーダーがそんな考え方で努力するなら、会社のレベルはグーンと上がるでしょう。
 リーダーが一段下の立場でものごとを判断しているレベルの会社と比べ、トータルパワーはグッと差がつきます。
 リーダーの精鋭化こそ今の時代を勝ち抜く一番のポイントと言えます。
 各リーダーは、「何時でも直属上司にとって代ることができる」という体制こそ最強の集団になるでしょう。

5 職場、業務の改善・改革

 職場や業務の改善・改革は永遠のテーマです。
 リーダーは常に改善・改革の実践者でなければなりません。特に第一線のリーダーは現場と直結していますから、改善・改革の宝の山の中にいます。
 特に期待したいことは、機会損失を芽の内に摘み取るということです。
 問題点は大きく三つの側面があります。
 一つは誰にも明らかな目に見える損失です。例えば、誰も使っていない会議室に電気がついている等です。これは、気付いた人がスイッチを切ればよい訳で、会議終了後は必ず電気を消すという基本動作の徹底が問題解決の根本になります。
 もう一つは機会損失です。
 これは、無知の損失と選択ミスの損失による機会損失があります。例えば、ある資料を作成するのにA君が3時間かけて一生懸命頑張っていました。それを見たB君が「馬鹿な奴だ。あの資料ならこれとこれを組み合わせれば1時間でできるのに」と笑っていました。すると、A君は知らないために2時間も損をしている訳です。無知の損失とはそういうことです。
 選択ミスの損失とは、あることをやるのに二つの方法があり、第一の方法はコストが50万円で済みそう、もう一つはどうも100万円くらいかかりそうとの判断で、前の方法を選択してやってみたら、予期せぬ障害が出て実際は200万円もコストがかかってしまったというケースです。これが選択ミスによる損失です。
 リーダーは特に機会損失を撲滅する努力が必要です。
 最後は、今はいいがこのままにしておくと将来必ず会社にマイナスを与えるという問題です。
 これは主に社長以下上級管理職が取り組むべき問題です。

 リーダーはこの5点を充分認識して、マネジメントの実践の中で如何に効果を上げるかを考えて努力すべきでしょう。

 

マネジメントの実践

 どんなによい考えや役割認識をしていても、それを 実践の中に活かさなければ絵に描いた餅になってしまいます。
 マネジメントの実践とは、次の4つの基本的な機能を実践することです。

1 業務遂行の計画を立て実践する
 仕事をする上で、「Plan(計画)‐Do(実行)‐Check(点検)‐Action(改善)」の「P‐D‐C‐A」が大切です。
 しかし、リーダーの中でそれを実践の中に意識して取り入れて実行している者はどれぐらいいるか疑わしいものです。言葉としては知っていても、実行して成果を出さなければ宝の持ち腐れです。
 業務遂行の計画とは、誰が、何を、何時までに、どうやるかということをクリアにして、スケジュール化し、その進行状況を管理していくことです。
 実務の上でリーダーに最も要求されるのがこの業務です。

2 各人の役割分担を明確にし、権限と責任の所在を明らかにする

 誰がどの業務を分担し、権限と責任を持って遂行するかということを明確化することは大変重要です。
 例えば、8人のチームが総務関係の仕事をやっているとしましょう。誰が事務所の設備や機械の保繕や維持管理を担当するのか、近隣からの色々な苦情や諸問題に誰が当るか等が決まっていないと、一から十まで全てリーダーが解決に当ることになってしまいます。
 まず、分担をしっかりと決め、どの程度までなら担当者の裁量で決裁できるかを明確にすべきです。
 「権限は全くないが責任だけ持て」では上手くいきません。これらは、組織づくりということです。
 リーダーが上手に組織づくりをすれば、チームの連携がスムーズになり、全体としてイキイキと組織が動きます。
 マネジメントの実践とは、組織を上手に創り、運営することです。

3 リーダーとしての指示・命令を徹底する

 リーダーとはチームを指揮する人です。必要に応じてチームのメンバーに ああしろ、こうしろと指示・命令をします。その指示・命令が効果的に実施された時に良い結果が出る訳です。
 指示・命令がそれを受けた人に本当に正しく理解されたのか、また、納得を得たのかを確認しなければなりません。
 理解され納得を得るには、指示・命令を受けた人の考えや意見を聞く必要があります。
 指示・命令を下す前に、当人の意見や考えを聞き、それも汲んで指示・命令を行う演出が時には必要です。
 リーダーが自分を尊重してくれていると本人が感じれば、指示・命令は受け入れられ易くなります。
 反発心が強いほど、面従腹背で肚の底では抵抗して実践する力が低くなります。

4 仕事の進行状況や問題点をチェックし、調整する

 仕事が上手く進んでいるかに目を光らせることが、成果に繋がる重要なポイントです。
 どんな仕事でも途上で支障が生じてきます。
 リーダーは如何に早く問題点を発見し、早く手を打つかで力量の差が出てきます。
 ひょっとしたらこんな問題が起こるかも 知れない、過去にこんな問題が生じているという視点が大切です。
 万一の時に備えて事前に対策を講じておけば、問題が生じても即対応できますし、問題が生じなければそれはそれでよしと言うことになります。
 『三国志』の中に、赤壁の戦いで大敗した曹操が逃げに逃げ、途中休むたびに大笑して、「自分が玄徳の軍師・孔明ならここに兵を伏せ追討してくるものを、まだまだ孔明も浅慮だ」と言った舌の根も乾かぬ内に陣太鼓が鳴り響き、曹操は命からがら逃げに逃げたという下りがあります。孔明は、先手必勝でここに逃げてくるに違いないと読んで手を打っていた訳です。
 リーダーも問題点を先読みして、必要に応じ、役割や仕事内容を調整しながら事に当れば難局も切り抜けることができますし、攻撃に当っても大いなる成果を出すことができます。

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