ハーズバーグの動機付け・衛生理論

 アメリカの行動科学者F.ハーツバーグ(Herzberg)は、人間の欲求は2つの要因により促進されると言っています。1959年『作業動機の心理学』で発表されました。

 ハーズバーグの動機付け・衛生理論(二要理論)とは、仕事における満足と不満足を引き起こす要因を2つの独立した欲求に分類し、人間が仕事に満足感を感じる要因と、不満足感を感じる要因は全くの別物であるとする考え方です。

 2つの独立した欲求には、衛生要因(苦痛を避けようとする動物的な欲求)と、動機づけ欲求(心理的に成長しようとする人間的な欲求)があり、モチベーション向上には後者の動機づけ欲求を高めるべきであると唱えています。

動機づけ要因

 満足をもたらし、モチベーション向上から積極的な態度を引き出す要因。具体的には、達成感、承認、仕事そのもの、責任、昇進、成長などが挙げられます。

衛生要因

 不満を防止することはできるが、満足をもたらしモチベーション向上までは至らない要因。具体的には、会社の方針と管理、上司の監督、監督との関係、労働条件、給与、同僚との関係、個人の生活などが挙げられます。

 不満要素となる衛生欲求をいくら取り除いても、満足感やモチベーションの向上にはつながりません。また、満足感をもたらし、モチベーションを向上するには、動機づけ要因を満たす必要があります。ハーズバーグは動機づけ要因を特に重視していますが、決して衛生要因を軽視しているわけではありません。衛生要因と動機づけ要因を理解したうえで衛生要因を満たし、動機づけ要因にアプローチすることが大切であることを説いています。

 

 ハーズバーグは、仕事に対するモチベーションを上げるためには、衛生要因よりも動機付け要因を重視すべきと説きました。その具体的な手法としては職務充実があります。

 「職務充実」とは、これまで従業員が実施していた作業に加え、その作業に関する計画や統制といった要素を加えることにより、権限と責任を拡大し職務の充実を図るものです。

 現在の職務に変化を取り入れるなどして、仕事の範囲を広げる「職務拡大」との違いを押さえておいてください。

 

外発的な動機と内発的な動機

 外発的要因による動機は あまり長続きしません。満たされた時には一時的に不満は解消されますが、すぐに不足感に見舞われます。 反面、内発的な動機による欲求は長く続きます。ある段階が満たされても、先への期待となって欲求を高めていくことができます。内発的な欲求による動機で動く方が、心身ともに健全な前進が図れるわけです。

 マズローの欲求5段解説に、ハーツバーグの外発的・内発的動機付け要因を合わせて、更に「利他」の想いの大小を加味しています。そして、動機が内発的で欲求のレベルが自己実現的で、しかも、その想いが利他的である欲求を『志』と呼んでいます。逆に、欲求のレベルが第1段階の生理的欲求で、動機は外発的であり、「利自」(利己的な想い)の欲求を『欲望』と呼ぶのだと思います。

 本当の自己実現、それは「利自即利他」、すなわち、自分の自己実現を成し遂げることが、社会や人々の役に立つ奉仕の観点に裏打ちされていることが条件となります。そのような自己実現の夢を、志と言ってよいと思うのです。

 「自利利他」とは、自らの悟りのために修行し努力することと、他の人の救済のために尽くすこと。この二つを同時に行うこと。また、自らの努力により得たものを他人にも還元する、他人の為に動くことで自分も成長し何かしらのものを得ることです。社会・組織の構成員同士が互いに助け合う相互扶助にも通じるところがあります。

 「自利利他」は、修行の有無、僧俗問わず、すべての人々を救う事を目的にする大乗仏教の根幹であり、他者に対する慈悲を重視し、悟りに到達しようとする宗教的実践でもあります。この実践を専門用語で「菩薩行」と言います。日本に伝わる大半の仏教は大乗仏教であるので、古来より日本仏教において重要視されてきました。

 何から始めれば良いのか、思いやりある言動とは何でしょうか。

 思いやりのある行動とは一口で言うのは難しい。他人のためとは言っても、相手にとって良かれと思ってやっても本当に相手の為になるのかわからないことも多々あるのも現実。

 利他の実践とは言うものの、実際に他人を救う、困ってる人を助けるのも専門的なスキルが必要になる場面も多々あり、ハードルが高いと思われるかもしれません。

 ですが、難しく考える必要はありません。色々ありますが、まずはこの3つから

・他人の幸せを祈ったり、他人の成功を称賛する

・他者をねぎらい、些細なことでも感謝の言葉を口にする

・なるべく笑顔でニコニコして過ごす

 これで十分。利他は行えます。そして、徐々に自分なりの利他行を実践してください。

 「他人の幸せ」は「自分の幸せ」「自分の幸せ」は「他人の幸せ」

 さすれば、自利利他の真髄「自利とは利他をいふ」「利他を以って自利と為す」に到れるかと思います。

 

モチベーションの向上

 従業員のモチベーションを高めるには、「尊敬への欲求」や「自己実現の欲求」といった高次の欲求を満たし、「動機付け要因」が多く整備されている制度が必要であると言えます。従業員の「個人の目的が達成できるような仕事がしたい」という思いを叶えることで、従業員のモチベーションは向上するのです。

 目標管理は「個人目標と組織目標の共存ができる」マネジメント手法であるため、結果的に従業員のモチベーションを上げることができる、とドラッカーは説明しています。

 

従業員のスキルアップ

 人間は、大なり小なり目標を持つことで、計画的、精力的に行動をすることができるようになります。またその目標を達成することで満足感を得ることができます。

 「目標管理を導入し、高い目標を設定して挑戦させること」によって、従業員は精力的に行動するようになり、自ずとスキルの向上を図るようになります。

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