マクレガーのX理論・Y理論

性善説と性悪説に基づく

 

 マクレガーのX理論・Y理論とは、マズローの法則(欲求の5段階説)を準用して、1950年代後半にアメリカの心理学・経営学者ダグラス・マクレガーによって提唱された、人間観・動機づけに関わる2つの対立的なモチベーション理論です。1960年に著書『企業の人間的側面』で、2つの人間観をもとに、X理論・Y理論というモチベーション理論を提唱しました。
 低次の欲求に基づくX理論では「人間は生来怠け者で、命令されたり強制されなければ仕事をしない」としている一方、高次の欲求に基づくY理論では「人間は生まれながらに嫌いということはなく、条件次第で責任を受け入れ、自ら進んで責任を取ろうとする」という人間観で構成されています。

 

X理論:性悪説に基づく人間観

 X理論は伝統的な科学的管理法に基づく人間観をベースにしている。

 ・生来怠け者で仕事嫌い
 ・命令・強制されないと仕事をしない
 ・責任回避をしたがる、命令されたい

 X理論では、大多数の人間は命令されることを好み、責任を負うことを好まず、なによりも安全・安定を望むものだと仮定します。人は金銭と金銭以外のかたちの手当、および罰へのおそれによって行動を動機づけられると考えます。X理論を是とする管理者は、統制を厳しく行い、細かく指示・監督する必要があると考えます。

運用方法:

 命令・強制で管理し、目標が達成できなければ処罰といった「アメとムチ」によるマネジメント手法が有効。

 X理論の人間は、低次の欲求しか持たないため、アメが有効であり、放置すれば怠けるため、命令と強制などムチが必要となる。

 

Y理論:性善説に基づく人間観

 Y理論はマズローの欲求段階説に基づく人間観をベースにしています。

 ・生来仕事好き
 ・目標達成に向けて自ら努力をする
 ・条件次第で責任を取ろうとする

 Y理論では、人間は適当な動機づけさえあれば、基本的に自律的に職務を遂行するものであり、かつ、創造的であると考えます。そこで、管理者は個々人の内にある潜在的可能性を触発することをめざさなくてはなりません。正しく動機づけられることによって、誰でも努力を組織目標の達成に向けながら、しかも自己の目標を最上のやり方で達成することができるようになるのです。

運用方法:

 魅力となる目標と責任を与え続けることにより、従業員を動かしていく「機会を与える」マネジメント手法が有効。

 Y理論の人間は、高次の欲求でのみ動くため、意思決定に参加させるなど、能力を認め、評価し、よりスキルを必要とする任務に着けるなどが必要となる。

 

 生活水準が高いレベルで安定し、生理的欲求や安全欲求などの低次欲求が基本的に満たされている現代の日本において、X理論は対象人物の欲求に適合しないことから、Y理論に基づいた管理方法の必要性が高いと考えられます。

 

 マクレガーは、X理論に基づく人間観はマズローの欲求5段階の低次の欲求を求めるものであり、命令され、統制されなければ成果を出せない ということになります。

 しかし、現代の組織構成員は、そのような低次の欲求を満たしていることが多いので、彼らの欲求を満たしていくためには、Y理論に基づくモチベーション管理が必要である としました。

 そのような具体的な手法として、目標管理(MBO:Management by Objectives)を推奨しました。目標管理(MBO)は、組織の方針に基づき、それぞれの組織構成員が主体的に目標を設定し、その目標に向かって、自らを律しながら業務を遂行していこうとする制度です。

 

本人の期待と上司の期待の合致がモチベーションを向上させる

 人間は誰でも心の中にいろいろな要求(動因=motive、drive)を持っています。そのなかのなんらかの要求が、仕事の達成から得られることが期待される成果と結び付けば、やる気が起きるものです。どんな要求が仕事の達成と どんな誘因で結び付くのかを説明したのが要求(動因)の理論と誘因の理論です。人間の内的要求にはいろいろなものがあるのですが、そのうちのどれが最も強いかは、生活水準や個性によっても異なります。動因を「やる気」に発展させる誘因も、個々人が持っている最も強い要求に合致しなくては、有効な誘因にはならないのです。そこで、内的要求にどんなものがあり、何が一番強く現れるかということについて、現在最も一般化している説が2つあり、一つは本人の期待(例えば、昇給や昇進)であり、もう1つの期待が上司の期待です。多くの場合、部下は上司の期待に沿って行動します。優秀なマネージャーほど、部下を信頼し、部下に高い業績を期待できるという能力を持っており、部下を信頼して新しいものに積極的にチャレンジさせ、それを支援するのです。マネージャーは「思いつきで言うな」「対案なしに反対するな」が基本です。

 認められることが動機づけ要因として最も大きいのですが、それは目標設定から最終的な意思決定(PDCAサイクル)への参加の度合いが強く作用します。

 

 

従業員の参加意識を高めるために、従業員に経営情報を積極的に公開しているか

 自分が経営に参画しているとの意識は、企業のいろいろな情報にアクセスできる立場にあるかどうかで大きく変化します。部外者ではなく、当事者であるとの意識を植え付けることで、参加意識はいやがうえにも高まります。それには、従業員に経営情報を積極的に公開するのが効果的です。企業はどのような部分で伸びていて、どのような部分が弱いのかといったことが全員に徹底できていれば、全社的な対応が素早くなります。

 日米の成長型中小企業を調べた結果、従業員に経営情報を公開しているほど 業績のよい企業が多いことが統計的にも確認されています。

 

 

重要事項の決定には、社員代表や労働組合の役員と協議をしながら決めているか

 労働者には労働基本権が憲法で保障されており、団結権、団体交渉権、団体行動権(争議権)は労働三権として知られています。高度経済成長下では、毎年のように繰り返された春闘でのストライキとか労使紛争が起こりましたが、連合が結成され、経済も安定成長路線へと切り替わり、それほど過激な運動はなくなりました。むしろ、労使協議の場を通じてインフォーマル(非公式)な情報ルートとして労働組合ルートも重視され、労使は協調的な関係を構築してきました。また、労働組合がない企業でも、社員代表制によって選ばれた従業員が経営者と話し合うことで、実質的な労使協議の役割を果たすようになっています。大規模な出向・配置転換や事業の再編などで、従業員の理解を得るためにも、労働組合や社員代表との事前協議が無用な混乱を防ぐものです。

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