従業員満足度の向上はワークライフバランス

ワークライフバランス
 ワークライフバランスという言葉が社会に広く浸透してきました。一般的に、「仕事と生活の調和」を意味し、これが実現された社会では、1人ひとりが自ら望むバランスで仕事・家庭生活・趣味・地域活動などに取り組むことが可能になると考えられています。

 日本で大きく注目されるようになったのは2002~2003年からのことです。当時は少子化対策としての印象が強かった。しかし、最近ではいわゆる「偽装管理者(十分な権限などが与えられていない名ばかりの管理者)」などの問題を背景に、適正な労働条件の確保の面からも重視されるようになっています。 
 企業においては、従業員に対する企業の社会的責任であるとの認識が広まりつつあり、大企業を中心に取り組みが進められています。

 最終的には、1人1人が就業環境や家庭環境に応じて決めていくべきものといえるが、少なくとも、「慢性的な長時間労働がない」「パワーハラスメントや社内いじめがない」など、心身ともに健康で働くことができる職場環境が求められていることは間違いないでしょう。そうした円満な職場環境を実現する上で重要なポイントとなります。

 

ワーク・ライフ・バランス実践

1 企業がワーク・ライフ・バランスを推進する際の考え方 
 ワーク・ライフ・バランスを実現する上では、従業員が多くの時間を費やす仕事と家庭生活や地域活動とのバランスを取ることが重要なポイントとなります。
 仕事と家庭生活のバランスを取ることは基本ですが、これは かねてより「両立支援」として多くの企業が取り組んでいる分野です。
 両立支援とは、法定以上の育児休業など従業員の仕事と家庭生活の両立を支援するための各種の取り組みを指します。 
 企業がワーク・ライフ・バランスの実現を進める際には多面的な取り組みが必要となりますが、必ずしも全く新しい取り組みが求められているわけではありません。ワーク・ライフ・バランス推進のための取り組みの中心は、これまで多くの企業が何らかの形で取り組んできた両立支援の延長線上にあるからです。
 ワーク・ライフ・バランス推進において重要なのは、両立支援の取り組みの実効性を高めることであります。
 ワーク・ライフ・バランス推進について、大企業ほど時間とコストをかけることが難しい中堅・中小企業にとっては、全く新しい取り組みを開始するよりも、既存の休暇制度の取得率向上などを目指したほうが効率的だといえます。

2 企業がワーク・ライフ・バランスを推進するための主な取り組み 

 企業がワーク・ライフ・バランスを推進するための取り組みはさまざまですが、少なくとも、育児休業や介護休業のようなものは整備しなければなりません。万一、未整備である場合は法令違反となるため早急に対応しなければならない。

3 ワーク・ライフ・バランスの推進によって従業員満足度を高める 
 企業がワーク・ライフ・バランスの推進によって従業員満足度を高めるためには、さまざまな制度を新設して充実したメニューをそろえることが大切だという考え方もあります。
 しかし、制度があっても、利用することができなければ、従業員にとっては絵に描いた餅であり、意味がないのです。
 従業員の立場では、メニューの数もさることながら、実際に利用しやすいか否かのほうが重要なのです。

4 社長のリーダーシップ 
 実際、ワーク・ライフ・バランス推進を決断するのは社長にほかならないのです。

 ワーク・ライフ・バランス推進では、少なからず会社にも負担が生じます。
 しかし、そうした取り組みを通じて従業員満足度が高まれば、従業員はそれまで以上に積極的に業務に取り組むようになるなど、最終的には企業のメリットにもつながるのです。
 会社がワーク・ライフ・バランスを実現するということは、従業員にとって働きやすく、会社にとっても利益になる職場を作り上げることだといえます。社長はこの点を認識した上で、ワーク・ライフ・バランスを推進していくとよいでしょう。 
 中小企業がワーク・ライフ・バランスを推進する上で、大企業のように多くの時間とコストをかける必要はないでしょう。
 大切なのは、メニューの数ではなく取り組みの実効性を高めることです。

 

 WLBは「仕事と生活の調和」を意味し、これが実現された社会では、一人ひとりが自ら望むバランスで仕事・家庭生活・趣味・地域活動などに取り組むことが可能になると考えられています。

 取り組み例として、フレックスタイム制、育児時間、ノー残業、年次有給休暇、手当(出産、保育、家族)などがあります。

 CSはもちろんですが、その前にESについての実践が重要となります。

 顧客不満足のほとんどは、人為的過誤や失敗(ミス)などのヒューマンエラーによるものです。これらのエラーはESに起因していることが大です。

 顧客の不満は、「不満を持つ1人の顧客の背後には、29人同じように不満足を感じている顧客がいる」ことを常に念頭に置き、従業員満足度の向上を目指しましょう。

従業員満足度の調査

 従業員の満足度を測る調査には、「モラールサーベイ(意識調査)」「従業員満足度調査」などがあります。

 調査では、従業員の満足度を測るために、従業員に対してアンケート調査を行います。これにより、従業員の意識がどのようなものであるかを統計的に把握し、労働条件や組織体制などの見直しに役立てます。

 主な調査項目は、経営の方向性や仕事、福利厚生など幅広い分野に及びます。

 調査方法は、従業員にアンケート用紙を配布して、後で回収する方法が一般的です。

 

モラルサベイにおける主な調査項

・経営の方向性 
 経営ビジョン・経営者のリーダーシップ、組織風土など

・上司
 上司の人間性、上司からの動機付け、上司との人間関係など

・仕事
 仕事量、仕事に対するやりがい、権限や責任の範囲など

・コミュニケーション 
 チームワーク、他部門との連携、問題解決支援など

・能力向上
 教育トレーニング、自己啓発支援、仕事を通じた成長など

・職場環境や福利厚生
 設備機材、遊休休暇、安全対策など

・人事制度
 報酬、昇進昇格、人事評価、転勤など

調査結果の分析

 調査の結果、自社の従業員が働くうえでどのような要素を重要視しているかが分かります。

 モラールサーベイの調査結果を分析したところ、従業員は報酬や福利厚生には満足しているが、経営ビジョン・経営者のリーダーシップへの満足度は低いといった結果が出たとします。

 企業は、「経営ビジョンを明文化して従業員へ浸透させる」「経営者と従業員との意見交換の機会を増やす」といった対策を取ることが考えられます。

 また、従業員を全体としてではなく、部門別や役職別にとらえれば、部門ごとあるいは役職ごとの固有の課題を発見することができます。

 「生産部門の従業員は教育トレーニングの充実を望んでいる」「課長職は報酬に大きな不満をもっている」、といった個別の意識を把握することができます。

従業員満足度を成する各種報

・金銭、待遇:

給与、福利厚生、休暇、その他優遇制度

・仕事の環境(条件):

職場の環境・設備・機器、勤務時間、上司のマネジメント力(状況)、情報伝達(コミュニケーション)、社内のルール・諸制度

・所属、帰属意識:

会社(経営トップ)に対する信頼感、知名度(評判)

・人間関係:

職場の風土、同僚・上司との関係、チームワーク

・評価、承認:

上司・同僚からの評価、人事考課、褒賞、昇進

・業務そのもの(モチベーション):

達成感、充実感、成長感、貢献感

 上記の各種報酬を基に、自社独自の従業員満足(ES)の仕組みを構築してみましょう。 

 

従業員満足で組織を活性化

 「従業員満足度(ES)」とは、従業員の仕事や会社・職場に対する満足感の総称として使われる用語です。
 「満足」という語句の厳密な意味から言えば、「仕事に従事することによって得られる各種の報酬が自分自身の期待している水準に達している、もしくは、それ以上であることよって得られる快感情」といった定義ができると考えられます。
 「ESを向上させることは、個人・組織のパフォーマンスを向上させていく上である程度機能する」と言えそうです。
 しかし、「だからESを向上させなければいけない」ということだけではありません。
 「ESの向上は、本来それだけでもおおいに意味のあることである」という考え方を持つことも重要なのです。

人材育成システム

 企業が成長するということは、売上高や利益が増加し、規模・組織が充実することです。その際には、顧客満足度(CS)の向上が必要となります。

 CSを向上させるためには、製品・サービスを提供する社員の満足度(ES)を高め、組織活力を向上させることが重要となります。

1 組織活力とは

 会社が指示や命令を出し、社員がそれに従って実行しているように見えても、それは表面上である場合が多い。

 「人は自分の仕事量を自分で決めている」と言われるように、到達点を自分で決めているものです。

 社員の本音の多くが、「目標は○○ですが、△△が限界ですよ。それなりに頑張ります」「『1日5件営業せよ』とは言われていますが、3件で十分だと思います」など、会社が示した目標や方針の内容とは違う到達点を個々に持っていることが少なくない。

 社員のモチベーションが組織として機能しているかを、目に見えるカタチで示す「組織活力サーベィ」というものがあります。

 モチベーションが正しく機能する組織になっているか、成長を妨げる要因はないかなど、組織としての活力を探ります。

 また、仕事内容・評価に対する従業員の満足度はどうか、ロイヤリティー(帰属意識)や今後の向上意欲はどうかなど、従業員のやる気・やりがいを5つの着眼で診ていきます。

 成長優良企業では、仕事へのやりがいや評価が高く、進んで自己啓発する人材であふれ、経営側も従業員のキャリアパス制度や教育支援制度を完備している。このような会社では、組織活力サーベイを実施すると、「社員が会社で働く喜びを持ち、会社のビジョン・目標を十分に理解している」という結果が出ている。

 社員一人ひとりが自分の役割を認識し、成長意欲もおう盛であるからこそ、顧客に対しても常に高いモチベーションで対応できるのです。

 一方、低迷不振企業は、「会社の方向性が分からない」「キャリアアップできる環境でない」「いつまでもこの会社にいたいと思わない」、などの意見が多く、不平不満に満ちている状態である。

 会社がどうしたいのかを理解していない上、仕事に不満を持って日々を過ごしている社員が、顧客に満足してもらえる高品質なサービスを提供できるはずがない。

 まず、企業は将来の方向性とビジョンを社員に浸透させ、仕事の喜び・やりがいに気付かせて、自分から成長しようとする社風を築かなければならない。

 そして、この会社と共に頑張りたいと思えるような環境をつくることです。

 会社(組織)には、育った環境、年齢・性別、知識・技能・態度の善し悪しなど さまざまな人材が存在する。そこで、一人ひとりの価値観の違いを前提として、自社の発展のため、お客さまのために自社に最適な環境をつくり上げなければならないのです。

 社員が会社での仕事を通じ成長し続ける仕組み(システム)が必要なのです。

 

2 教育体系のシステム構築
 このシステムの核となるのが人材教育です。

 最高の資産、最大の戦力である人材を計画的・継続的に育成し続けることが自社にとって重要なのです。

 会社が社員に期待する知識・技能・態度と その社員が保有する知識・技能・態度にはギャップがある。教育とは、職務で要求される資格要件と彼らの保有する能力とのギャップを補うために必要なものです。このギャップを埋めることによって、人材は育ち、職務を遂行し、会社の発展に貢献できるようになる。そのために、採用から退職までの会社生活において一連の人材育成システムを構築し、人材の能力を最大限に高めるための教育体系システムをつくり、運用することが重要なのです。

 教育体系のシステムとは以下の4つです。
・会社の経営理念・哲学を理解させる
・職種別・階層別に教育ニーズを整理する
・オリジナルの教育体系として設計する

・教育カリキュラムを開発する

 これらにより、ピントの合った「モチベーションアップ」「モラールアップ」がもたらされ、効果的かつ効率的な人づくりができる。

 

教育体系システム

 組織力を高めるには、「社員満足向上(ES)」と採用から退職までの企業生活における一連の「人材育成システムの構築が必要です。そのためには、人材の能力を最大限に高めるための「教育体系システム」が重要です。

 

1 教育体系システムとは
 教育体系システムとは、義務教育のような画一的なものではなく、その企業の持っている哲学まで教育することを指す。

 どのような会社であるべきか、そのためには社員は何を意識し、日々何を磨いていくべきかを浸透させなければならない。

 企業教育とは、あるべき姿に近付くための「不足能力の開発と必要能力の強化」である。

 教育体系システム構築は、次に挙げる三つの手順によって成り立っています。

 

2 教育体系システム構築   

(1)自社人材能力の把握
 まず、自社風土、人材の棚卸しによる人材基盤の総点検をする。

①働く意識・ロイヤリティーを診る

(社員モラール実態分析)階層別、職種別などのモラール実態と風土の詳細を分析・調査する。

②人材の高業績者の行動特性(コンピテンシー)、姿勢・態度・特性・適性を診る

経営哲学の理解度
 経営理念、社是・社訓、経営方針書、トップの新年度所感など、至るところで発信している情報を集め、あるべき社員像について理解を深める。

あるべき成果を生み出す能力や姿勢
 個々の特性と人事考課資料などを組み合わせることで、人材の棚卸し(社員の適性把握)を行う。

③職種別・階層別知識や技術、能力の棚卸しを行い、不足能力を診る

 職種別・階層別スキルマップ(テクニカルスキル マネジメントスキル ヒューマンスキルの不足能力の明確化)を作成する。

テクニカルスキル(専門技術)
 例:職種においての知識・技能はどうか

マネジメントスキル(管理技術)
 例:計画性はどうか チェック機能はどうか

ヒューマンスキル(社会技術)
 例:プレゼンテーション能力はどうか 問題解決能力はどうか

 たとえば、営業社員にはどのような能力が必要なのか、何を鍛えないといけないのか、係長はどんな能力を身に付けないといけないのかを作成し、現在の人材がどのレベルにあるのかを診る。

 レベル1:ほとんど実施したことはない、または数回補助的に実施したことがある
 レベル2:指示を受ければ何とか実行できる
 レベル3:内容を理解し1人で実行できる
 レベル4:経験もあり、高い品質で実行できる
 レベル5:熟練であり、ほかの社員を指導できる

④人事考課表から階層別不足能力を診る(人事考課表分析)

 階層別、職種別に人事考課表を分析し、不足能力を把握する。

(2)スキル化のための教育体系の設計   

教育体系の設計
 職種別・階層別スキルマップ(能力開発図)の策定
 「営業10年目なら、プレゼンテーションスキルはレベル4まで達成しないといけない」「係長なら、問題解決スキルはレベル3が条件」、といった条件を各職種、階層に設定する。

 不足能力を補うためのオリジナル階層別・職種別教育プログラムの策定コスト対効果の観点から、能力開発のプライオリティーを決め、年間能力開発計画をつくる。

例:対象職種・階層、教育方式、対象人数、開催時期、カリキュラムなど

教育カリキュラムの策定
 現状認識に基づく重要度・緊急度の高い教育対象層とカリキュラム設計

OJTカリキュラム設計
 社内研修 

例:理念浸透研修、考課者訓練、面接訓練、テクニカルスキル訓練など

Off-JTカリキュラム設計
 外部派遣・社外研修 

例:中間管理職研修、コーチング研修、メンタルヘルス研修など

(3)用の仕みづくり(自己啓発力向上)    

あるべき人材像に基づく採用基準の明化と略の策定

の特性を活かすキャリアパスの策定

 キャリアアッププランで目標設定し、職能要件やスキルマップで現状認識をする。このことにより、目標とのギャップが明確になり、明日からの行動が明確になる。

 この設定は、「キャリアアッププランシートを用いて行う。

 会社における目標、個人の目標を1枚のシートに記述することで目標が明確となる。

 その目標に向かって前向きに業務に取り組むことにより、自発的な行動が生まれる。

 上記の手順(1)~(3)によって、教育体系システムを構築・運用していく。

 会社と社員が成長する喜びをつくっていくことが組織力を高めることになるのです。

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