モラール・サーベイ

 モラール・サーベイとは、士気調査あるいは意識調査のことで、仕事・職場・同僚・上司・待遇などに関する従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)の実態についての測定調査を行い、満足度を定量的に分析・評価することです。

 モラール・サーベイは、個々の従業員そのものではなく、従業員が集まってできている「集団」を対象にしています。したがって、会社全体、特定部門、特定の役職者層などそれぞれの集団が抱えている問題点を明らかにして改善していくことがモラール・サーベイの最大の目的です。

 モラール・サーベイの結果、特定部門の従業員の士気が著しく低下していることが判明した場合でも、その責を個々の従業員に求めるのではなく、なぜそのような状況が生まれてしまったのかを組織面から解明していくのです。

 

従業員満足度の重要性

 

 厳しい経営環境のなか、他社との競争に打ち勝っていくためには、顧客満足度(CS)を高めることが重要です。

 そして、顧客満足度を高めるためには、商品やサービスの提供者である従業員の満足度を高めていかなければなりません。

 やる気に満ちた(モチベーションが高い)従業員たちこそが、「顧客は何を求めているか」ということを自主的に考え、日々の業務のなかで実践していくからです。そのため、「CSを高めるためには、まずES向上から」という考え方をする会社が増えています。

 従業員満足度とは、たんに従業員が現在の処遇や職場の雰囲気が気に入っているかで決まるものではありません。それらに加えて、「会社の将来性はどうか」「自分自身は成長できているか」など、将来の安定性や、やりがいなども従業員満足度向上には重要な条件です。

 従業員満足度向上に取り組むためには、直接的な処遇制度などはもちろんのこと、会社の経営理念や経営戦略、管理体制など経営の屋台骨に関わる部分まで、従業員にとって魅力的なものに変えていく必要があるのです。

 いくら従業員の待遇を改善しても、次のような状態が続いていては、従業員満足度は十分に向上しません。

 ・経営理念が不明確であり、従業員の行動基準もバラバラである
 ・社長の意思決定があいまい、または遅く、組織機能が働いていない
 ・同じ問題に対して幹部によってまったく異なる指示を出すことがある
 ・指揮系統があいまいで、指示・命令が行き渡らない
 ・権限と責任の所在が不明瞭である
 ・労務管理に関して、管理者個人の意見・主観が優先され、明確な基準がない
 ・教育体制が整っておらず、自己成長が見込めない
 ・目標管理が行われておらず、自分の役割や目標が不明瞭である

 モラール・サーベイによって、さまざまな視点から自社の従業員満足度向上を阻害している要因、従業員不満足を引き起こしている要因を明らかにし、適切な対処をすることが必要です。

 

モラール・サーベイの効果
 モラール・サーベイの最大の目的は従業員の満足度を上げていくことですが、実施するプロセスを通じて、次のような効果も期待できます。

・会社が従業員のモラールを大切にしているという姿勢を示すことができる
・従業員に経営への参画意識をもたせることができる
・社長・管理者の管理意識が高まる
・改善活動において全社一丸となった取り組みが期待できる

 モラール・サーベイ実施においては、これらの効果も享受できるように、計画的かつ慎重に進めていく必要があります。

 

モラール・サーベイの進め方

 一般に、モラール・サーベイは次のような手順を踏んで行います。

 初めて行う場合は外部のコンサルタント会社の手を借りるのもひとつの方法ですが、実施主体はあくまで社長であることに変わりはありません。

1 モラール・サーベイ実施宣言
 全社的なモラール・サーベイを行うことを宣言します。その際には、社長自身の口から次のような点についてはっきりと説明する必要があります。

 ・なぜモラール・サーベイを行うことに決めたのか
 ・モラール・サーベイの成否は会社の将来や従業員の幸福に大きな影響を及ぼすこと
 ・社長は従業員のこと大切に思っていること
 ・改善のための忌憚のない意見、前向きな意見を歓迎すること
 ・結果は集計・分析後公表すること(個人名は出さない)
 ・結果を受けて必ず改善策を実施すること

2 事前ヒアリング
 社長は、モラール・サーベイ実施を決意するにあたって、すでに従業員がどのような点に不満を感じているか、そのためにどのような不具合が起こっているかなどについてある程度問題意識をもっているはずです。

 この点についてね人事担当役員やその他の幹部陣(場合によってはキーとなる一般社員)に確認します。

なお、幹部陣自体に問題がある場合も考えられるため、ヒアリングの際には余計なバイアス(偏り・偏見)がかからないように注意します。

3 質問項目の設定

 従業員全体にアンケートを行うための質問票を作成します。

 従業員の満足度全般にかかわる項目を幅広く設定するほか、事前ヒアリングで確認した問題についても質問項目に反映させます。

 会社の状況やモラール・サーベイの狙いによってさまざまなパターンが考えられるが、一般的には、次のような分野ごとに複数の質問項目を設定することが考えられます。

  ①会社・経営陣  ②やりがい  ③人事制度  ④人間関係  ⑤職場環境

 質問ごとに、その満足度を、「満足」「ほぼ満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階で評価させます。

4 アンケート実施
 全従業員を対象にして従業員満足度のアンケート調査を行います。

 実施にあたっては、アンケートの主旨を十分に説明することが大切です。

 また、従業員の正直な意見を得るために、アンケートは無記名方式にします。

 時間をおいてバラバラにアンケートを行うと、回答者はすでに回答済みの従業員からさまざまな情報を聞いて回答の際に何らかの影響を受ける可能性があります。

 アンケートはできれば全社一斉に行うのが好ましいでしょう。

アンケート結果の分析

1 全般的な傾向分析
 回収したアンケートを集計して全般的な傾向を見いだします。

 それぞれの分野において満足度の平均がどのようになっているかを確認します。

2 属性による傾向分析

 次に、属性ごとに分類し、その傾向をみていきます。

 アンケートでは、「性別」「年齢」「職位」「職種」「勤続年数」について属性を取っています。

 それぞれの属性ごとの満足度の傾向を分析します。たとえば、年齢別に次のような平均点の分布になった場合、若手従業員ほど満足度が低いことがわかります。このような場合、若手従業員が特にどのような問題を抱えているかを掘り下げていきます。

 また、年齢だけではなく、その他の属性別にも分析を行います。

3 重要度による傾向分析
 アンケートでは、それぞれの質問項目の重要度についても聞いています。

 「第1位」にあげた項目は重要度5、「第2位」は重要度4、・・・「第5位は重要度1」)として、全回答者分の重要度ポイントを積み上げて、それぞれの質問項目を重要度順に並べます。

多くの従業員が重要と認識しているにもかかわらず、満足度が低い項目については最優先で対応策を講じる必要があります。

4 フリースペース欄の記入を重視する
 アンケートの一番下に設けたフリースペース欄に記入された事項についても丁寧にみていきます。

 そこからはアンケート策定段階では想像できなかったような新たな満足度向上の視点が得られる可能性があります。

 また、従業員が特に「不満足」と感じている事項が記入されることも多く、質問の各項目への回答では示せなかった従業員の生の声を聞くこともできます。

 

対応策と実施状況を従業員に示す

 モラール・サーベイの分析結果がまとまり次第、従業員に公表します。

 その際には、次のような点について明確に示す必要があります。

 ・結果全般(従業員にわかりやすい見せ方の工夫が必要)
 ・結果から抽出した重要な問題点
 ・問題点に対する経営者の認識
 ・問題点解決のために会社としていつまでに何をやるか
 ・問題点解決のために従業員にも協力してほしいこと

 さらに、問題点解決のための施策の進捗状況についても定期的に告知します。

 従業員から質問があった際にも確実に答えるようにしましょう。

 モラール・サーベイでは、調査そのものよりも、それを踏まえた改善策を立案して、実際にそれを実行していくことが大切です。

 万一低い満足度結果だったにもかかわらず、それを放置した場合、さらなる満足の低下につながることが予想されます。

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