自社の存在意義(価値)
企業の存在意義(価値)は経営理念とは異なるものです。
「地域社会に貢献する」などの経営理念をよく見かけますが、存在価値とは、こうした経営理念とは異なります。
『経営理念』は、経営者の心の中の叫びといえます。
心の叫びが実を結ぶためには、自社の行っている事業が、理念に合致した存在価値を持たなければいけません。
また、心の叫びが、経営目標、たとえば「売上の○%を地域の○○に寄付する」といった具合に具体化されていなければ、地域社会に貢献するという言葉はウソになります。
事業に存在価値のない会社が、一種、見栄のため、このような目標を立てた場合、一定期間は続くかもしれませんが、確実に短命に終わります。
「うちの創業は江戸時代です」を存在価値としていた和菓子店があります。しかし、周知のとおり、暖簾(のれん)だけで商売ができる時代ではなくなりました。暖簾はもはや過去の信用になってきたからです。大切なのはこれからの新しい信用の構築です。これこそが必要となる存在価値です。そして、その存在価値は、たとえば和菓子店であれば、和菓子という製品に表れてきます。そして製品の製造販売に携わっている人の行動に表れてきます。
だから、存在価値が明確な会社は、みな元気がいいのです。
仮に、存在価値が明確にならない場合でもあきらめる必要はありません。考え抜くことです。その際、嘘偽りの存在価値だけは掲げてはなりません。存在価値は、会社にとって重要な資産だからです。
企業の存在価値
会社の原点は「存在価値」にあります。
会社存在価値とは「社会が求めていることと、その会社の持ち味の接点」である。
いくら自社が得意とすることであったとしても、それが社会から求められていなければ存在価値はありません。
事業の目的と手段は異なります。
目的を達成するための手段は時代の変化とともに変わっていくが、本質的な目的は短期間ですぐに変わるものではありません。その目的の達成が、企業の存在価値につながっていくのです。
創業時の精神から見た自社のあるべき姿
自社が創業時にどのような想いを持って事業をスタートしたのか自社の存在価値である創業の精神を忘れかけてはいないだろうか。迷いや壁にぶつかったとき、創業の原点に立ち返ることが必要です。その創業の精神、自社の社会的存在価値を「あるべき姿」とした時の、「現状の姿」とのギャップが課題であり、問題なのです。
問題を解決するということは、すなわちこのギャップを埋めることにあります。
企業を取り巻く環境が大きく変化する今だからこそ、目先の変化に振り回されてはなりません。
じっくりと構える意味でも、創業時の精神に立ち返り自社の「あるべき姿」を考えてみてもよいのではないでしょうか。
「ヒトなし、モノなし、カネもない、実績がないから信用もない。」ないないづくしの創業経営には創業の精神という素晴らしい財産があります。
熱意、創意、誠意の結晶が創業精神であり、創業精神を大切にする企業は繁栄し、粗末にする企業は粗末な末路を辿るのです。
創業の原点づくりのポイント
原点主義で考えるに当たって、押さえるべきポイントは次の7点にあります。
1 主力商品の提供する価値は何か
ここで言う主力商品とは、限界利益(売上高から変動費を引いたもの)の大半を稼ぐ商品のことです。
その商品が顧客に対し、どのような価値を提供しているのか。
2 真の顧客は誰なのか
いくらよい商品やサービスを持っていたとしても、提供する顧客を誤ると真の価値は発揮されません。
自社の強みを理解し、受け入れてもらえる顧客は誰なのかを押さえることです。
3 日常業務処理のやり方の原点は何か
属人的業務処理では業績をつくることが難しいです。
仕組み、システムとしての業務処理の流れでなければなりません。
真の商品の価値、真の顧客が分かっていたとしても、提供の方法を誤れば成功はありません。
また、あくまでも全社視点からの業務処理の仕組み、システムでなければならないのです。
たとえ営業部門だけがよくても、ほかの部門で問題があれば、正しい企業価値を発揮することはできません。
4 人づくりの原点は何か
商品、顧客、提供するやり方が正しいのであれば、残る課題はそれらを運用する「人」です。
自社にとって「あるべき社員像」を明確にします。
5 地域社会に対する責任は何か
企業も地域社会の一員です。
納税や雇用といった形で地域に貢献するだけでなく、場合によっては一企業が地域を変え、活性化させる事例も多くあります。
こうした責任についても、意識する必要があります。
6 創業の精神は何か
社是、社訓、経営理念、社歌といった中に、「あるべき姿」として判断基準を表現することも多いでしょう。
日常、当たり前のように目にしている社是や経営理念にも、存在価値のエキスが込められているのです。
また創業の想いや、使命感を描いたものも多くあります。
7 1~6以外の押さえるべきポイント
品質、技術、サービス、ブランドといった自社固有の特性を押さえる。
1~6の例のように、推測や抽象論ではなく、事実として押さえることが重要となります。
これらの事実を集約し、自社の「あるべき姿」、社会的存在価値を明確にします。
あるべき姿の判断基準(モノサシ)
人は判断するとき、必ず何らかのモノサシを使います。
日常で何かを判断する場面においても、何種頼ものモノサシを使い分けているはずです。
今日の昼食は何を食べようかという場面でさえ、「昨日は何を食べたか」「今日の体調はどうか」「財布に入っている現金の額は?」といった複数のモノサシではかろうとします。
そうして、最終的に食べるものを判断し、意思決定しています。
1 企業原点の判断基準
まずは、出てきた事実に対して、全社的な視野から見て、何が重要な判断指標になるのかを考えることです。
それは、真の商品価値、真の顧客、あるいは創業の精神になるのかもしれない。日常の意思決定や行動を行うための「判断のためのモノサシ」として優先順位を決めるのです。
顧客の視点で整理するのであれば、単に顧客第一主義や顧客満足だけではなく、何によってそれを具現化し、何を事業の目的とするのかも、押さえます。
例えば、
・なぜお客さまは自社を選んでいるのか?
・どこに魅力を感じ、取引をしているのか?
・もし自社がなくなってしまったら、お客さまは何に因ってしまうのか?
・その中で自社が行動し、判断するために、何を-番重要と考えればよいのか?
こうした一連の「問いの先」に自社のあるべき姿があり、この世に存在している価値があるのであるのです。
これらが理念の体系として整理され、それに沿って全社員が行動するところに、企業としての強さが生まれます。
「御社の特徴は何ですか」と問われたとき、あなたならどのように答えますか。この世に存在する以上、必ず何らかの価値があるはずです。その価値が自社の特徴であり、企業存続の原動力になっているのです。
もし、内部からの視点で見つけられなければ、先に述べた顧客の視点で考えてみると、発見できる可能性は高くなります。
2 「あるべき姿」や「理念」を使う
「あるべき姿」「行動するための重要指標」が決まったとしても、お題目だけでは何も生まれません。
「行動する」、すなわち、あるべき姿、理念を活かすことが必要です。