自社のファンづくりのポイント

 

 日々変化する市場環境、個別化・多様化していく顧客ニーズに応える製品を開発し、より多くの顧客に販売するために、企業は業界や市場の動向・顧客ニーズの調査などに基づいた製品開発や販売促進方法を展開しています。

 一方、市場環境や顧客のニーズは常に変化し続けます。市場調査や顧客ニーズの把握、それに基づく自社の製品・サービスの見直しなどをおろそかにしてしまい、自社の商品・サービスを「作りっぱなし」の状態にしておけば、たとえ発売当初は市場環境や顧客ニーズに合った商品だったとしても、時間の経過とともに「顧客ニーズに合わない」製品やサービスになってしまう恐れがあります。

 そこで、開発当初の状態で放りっぱなしにしておくのではなく、既存の商品が今の市場環境や顧客ニーズに合っているのかどうかを今一度確認し、改良を加えながら、さらに顧客に望まれる商品へと成長させていく取り組みが必要になってきます。

 

購入・活用を促進するための手順

 まず、既存の自社商品の「機能」「販売ターゲット」「販売方法」などを改めて把握し直します。

 次に、自社の商品を取り巻く市場環境や顧客ニーズの実情を洗い出し、現状を把握します。

 把握した既存商品の機能などと、市場環境や顧客ニーズの実情を比較して両者の間に差異があった場合は、両者の距離を縮めるため、機能などの改善を行います。

 こうすることで既存の自社の商品が「顧客が本当に望んでいる商品」に近づいていきます。

 また、自社の商品が顧客に購入されたら、常にアフターフォローを忘れてはなりません。

 このプロセスを繰り返すことによって、既存の自社商品は常に市場環境や顧客ニーズの実情に即した形となり、結果として顧客により多く購入・活用してもらえる可能性が広がります。

 

自社の商品(製品・サービス)の洗い出し

1 自社の商品を3視点から把握

 初めに、「自社がどのような商品を、どのような顧客に対して、どのような方法で販売しているのか」ということを認識しておかなくてはなりません。

 そこで、これらを把握するための調査を行います。

 この調査は、主に以下の3つの視点に絞って実施します。

 ・What:何を?→既存製品・サービスの機能や性能の洗い出し

 ・Who:誰に?→既存製品・サービスの販売ターゲットの洗い出し

 ・How:どうやって?→既存製品・サービスの販売方法の洗い出し

 以下で、製造業(ジーンズ)のケースを考えてみましょう。

 What(何を?)を洗い出す際には、製造部門あるいは製造担当者に対して、製品の機能や性能について調査を実施します。

 Who(誰に?)、How(どうやって?)を洗い出す際には、営業部門あるいは営業担当者に製品の販売ターゲットや販売方法などを調査します。

 こうした調査の際に、作り手である製造部門あるいは製造担当者に対して「この製品やサービスは誰をターゲットに販売しているのか」「この製品はどんな方法で販売しているのか」を調査してみたり、売り手である営業部門あるいは営業担当者に対して、「自分が営業している製品の特徴やセールスポイント」を調査したりもします。

 作り手が、「誰のための製品なのか全く知らない」「どんな方法で販売している製品なのか関知していない」などという状態では、顧客により多く購入・活用してもらえる製品が生み出される可能性は低いといえます。

また、売り手が「製品の長所も弱点も知らない」などという状態では、販売力が十分とはいえません。

 

2 What(何を?):機能や性能の洗い出し

 自社商品の機能や性能について洗い出し、現状を分析します。

 方法として「SWOT分析」を用います。

 具体的には、自社商品にはどのような長所(強み)と欠点(弱み)があり、自社商品の今後の市場における可能性(機会)にはどのようなものがあるのか、そして自社商品の今後を脅かすのはどのような外的要因(脅威)があるのかを分析し、把握しようというものです。

 

 Who(誰に?):販売ターゲットの洗い出し

 次に、自社では商品(製品やサービス)を、いったい誰に対して販売しているのかを把握します。

 商品を販売する際、販売ターゲットを絞らずに漠然と販売しているケースは考えにくいでしょう。

 例えば、服飾品の場合は「10代後半~20代前半の若い女性をターゲットにしている」「30代以降の男性で富裕層をターゲットにしている」などがあるでしょう。

 食料品では、「ターゲットは30代~40代で、働き盛りのビジネスパーソンの晩酌のつまみ」、あるいは人材紹介の場合は「ターゲットは医療関係機器を製造販売している中堅・中小企業」などにです。

 

 How(どうやって?):販売方法の洗い出し

 自社商品の販売方法あるいは提供方法を確認します。

 店頭販売か、インターネットを通じた通信販売か、あるいは、訪問販売かなどです。

 また、販売方法を洗い出す際には、店頭での販売・インターネットによる販売などの「販売の手段」だけではなく、「顧客管理を徹底し、それに基づいて季節ごとにDMを送付している」「プリントアウトするとクーポン券になるメールマガジンを定期的に発信している」「地元の情報誌に広告記事を掲載している」「定期的に訪問して活用方法や活性化策を提案している」といったような「販売促進方法」も併せて洗い出しておく必要があります。

 

市場環境・顧客ニーズの実情の洗い出し

1 業界・市場の動向や顧客のニーズは常に把握

 自社商品の洗い出しを実施したら、次に、業界の動向や実際に自社商品を購入している顧客のニーズや特性などを洗い出します。

 自社の商品を気持ちよく購入・活用してもらうためには、業界の動向や顧客が何を望んでおり、どのように活用しているのかという実情を把握しておかなくてはなりません。

 「どのような機能の商品が消費者に支持されているのか」「どのような商品を販売している会社が伸びているのか」、などをとらえておくことによって、自社の既存の商品を見直したり、販売促進する際のヒントを得ることができます。

2 業界・市場の動向や顧客ニーズを把握する

 業界や市場の動向、消費者のニーズなどを把握する方法には、一般的に以下の方法があるといわれています。

・質問法  ・観察法  ・実験法

 質問法とは、顧客に対して自社の商品(製品・サービス)について質問し、その回答によって顧客ニーズなどを把握するものです。

 質問法には、実際に顧客と相対して面接形式で実施する方法や電話で実施する方法、アンケート調査用紙を作成して顧客に郵送し、回答を記入してもらうなどの方法があります。

 観察法は、顧客の購買行動や商品の動きなどを観察し、その動きを分析するものです。

 例えば、自社の店舗での顧客の購買行動、商品がどのようにして動いているのかを観察するほか、自社だけではなく同業他社の店舗に「どのような顧客が来店し、どのような商品を購入しているのか」などを観察します。

 そのほか、展示会や見本市、新製品の説明会などで顧客に注目されている製品などを観察するのも有効でしょう。

 自社の商品のみならず、業界においてどのような商品がどのような顧客に望まれているのか、といった業界の特徴を知ることができます。

 実験法は、地域などを限定して実験的に開発した新商品を投入し、その成果によって顧客のニーズを把握するものです。

 あるいは、既存の製品のある機能をリニューアルさせたり、商品は既存のままで販売方法を変えて市場に投入し、変える前と後で購入された数や金額、購入した顧客の属性、販売方法の有効性などを比較検討するなどの方法も考えられます。

 

自社の商品と実情の距離感を短縮

1 距離感の短縮が自社商品の購入・活用のチャンスへつながる

 自社の製品・サービスと、市場環境や顧客ニーズの実情を洗い出した結果とを比較して、その距離を縮める方法を検討します。

 両者の距離を縮めることができれば、自社の商品が市場環境や顧客ニーズに則したものとなり、購入・活用されるチャンスは必ず拡大します。

 

2 距離感を短縮する方法を検討

 距離を縮めるための方法として、次のような3つの方法が考えられます。

(1)機能や性能の改良

 自社の製品・サービスの機能や規格そのものに改良を加えリニューアルしていくものです。

 例えば、掃除機や洗濯機などの電化製品の場合には、省エネ機能や地球環境に優しいエコ機能などを付加するケースがあるでしょう。

 また、機能をリニューアルするのではなく、デザイン性を追求してカラーバリエーションを増やすなどの改良方法も考えられます。

(2)販売ターゲットの改良

 自社の商品の販売ターゲットを変更する方法です。

 例えば、ビジネス街で法人向けに昼食の訪問販売を実施していた業者が、販売ターゲットを大学や高校に変更したり、福祉施設向けにホームヘルパーなどの人材を派遣していた業者が、ホームヘルパーの派遣先を高齢者がいる個人宅に変更する例などが考えられます。

(3)販売方法の改良

 店頭販売、インターネット販売、訪問販売といった「販売方法」 や、顧客への送付、定期的な訪問による活用提案、懸賞やノベルティーの活用といったような「販売促進方法やアプローチ方法」を改良するものです。

 小規模な総菜屋さんが、地域限定でインターネットによる冷凍総菜の販売を始めたり、スーツとのコーディネートを提案して販売促進していたネクタイ製造販売業者が、シーンごとの贈答品としてネクタイを活用して喜ばれる方法を提案して販売促進を実施するなどの例が考えられます。

 これら3つの方法は、個別に実施するだけではなく、うまく組み合わせて実施するとより効果が期待できるでしょう。

 例えば、「販売ターゲットを中高年層に設定し、機能性に優れた実用的な冷蔵庫を製造販売していたが、最近では20代の若い単身者の間でデザイン性を追求したおしゃれな冷蔵庫に対する需要が増加している。販売ターゲットとする年齢層を若い世代に下げると同時に、カラーバリエーションを増やすという規格の改良を実施した」などのようにです。

 

アフターフォローを充実させる

 既存の自社の製品・サービスに改良を加え、より多く購入・活用してもらえるようになったからといって、「売りっぱなし」であってはなりません。

 購入・活用してもらった後の顧客に対するアフターフォローを充実させることは、より一層の購入・活用を促すことにつながります。

 電話やDM、定期的な訪問などで、「自社製品を購入していただいてありがとうございます。使い心地はいかがでしょうか?」「既存の製品の新しい活用方法をご提案します」「先日ご購入していただいた製品の新色バージョンが登場したのでご案内します」などのフォローは欠かせません。

 また、こうしたアフターフォローは、製品やサービスの販売促進につながるだけではなく、「製品・サービスの改善点の発見」「自社の顧客管理」に役立つという効果があります。

 そして、アフターフォローによって得られる効果として、最も大切なのは、アフターフォローを充実させることによって、顧客に「購入後もこんなにアフターフォローを親身に実施してくれるなら、またあそこで何か買おうかな」と思ってもらえるようになることなのです。

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