訪問計画の立て方

訪問計画の必要性

 営業情報を収集して分析したら、それに基づいて訪問計画を立てる。なぜ訪問計画が必要かというと、一番目の目的は、営業活動の効率を高めて無駄な時間を減らすことです。

 ただやみくもに訪問しても業績が上がらないのは、誰が考えても当たり前です。しかし、計画を立てないまま、場当たり的に訪問している営業担当者が多いのではないでしょうか。

 その日の優先訪問先・訪問ルート・訪問順序を把握し、効率良く訪問することが業績アップに直結するのです。

 二番目の目的は、訪問する得意先の重要度(ランク付け)に応じて、訪問頻度・先方での商談時間(滞在時間)を標準化します。

 得意先ランクに基づいて、月の訪問回数や訪問1回当たりの滞在時間の目安を決める。

 標準化することで、重要顧客への接触不足をなくし、個人の好き嫌いによる訪問を防ぐことができます。

 三番目の目的は、計画を立てると営業担当者の量的な目標が明確になり、訪問計画をクリアする達成感を味わい、モチベーションアップにつながる。

 「とにかく回れ、1件でも多く回れ」という指示より、基準を明確にすれば訪問件数に対する受注確率もデータとして残せる。

 重要なのは、計画はその日の朝に立てるのではなく、少なくとも週間計画を立てて、変更があればその時点で修正をすることである。

 

得意先訪問の基本的な回り方(訪問順序の原則)

 得意先を訪問する順序として、得意先の規模・内容とその得意先に対する自社のシェアを考慮しなければならない。

 この2つの組み合わせが前述のランク付けになるのです。

 規模が大きく、自社のシェアも大きい得意先はVIP(最優先)顧客であり、訪問順序も最優先としなければならない。

 次に、規模は大きいが自社のシェアはまだ小さく、この先シェアを伸ばせる可能性がある得意先。

 そして、規模はそれほどでないが自社のシェアが大きく、そのシェアの維持のために訪問をする必要がある得意先と続く。

 このことを踏まえて、ABCランク付けをする。

 優先順位の高い得意先から、朝一番・午前中・午後一番・夕方と時間帯を変えて訪問する。

 先方に特別の事情があれば別だが、上得意ほど早い時間に訪問するのが基本である。

 もちろん、その日のルート設定や交通状況など諸条件によって変わることはあるが、基本は「上得意から訪問」です。

 とはいえ、得意先の日常業務の中での決まりごと、例えば、朝礼やミーティングなどの時間帯を把握し、その時間を外す配慮は必要である。

 なぜ上得意から順に訪問するかと言えば、上得意に対して取り組み優先順位が高い点をアピールすることと、ランクの高い得意先ほど自社に有益な情報を提供してくれる可能性が高いためです。

 内容の濃い情報を早い時間に得られれば、対応も素早くできる。

 

ランクに応じた訪問の量的バランス

 月あるいは週に訪問する回数や1回当たりの滞在時間についても、AランクとCランクの得意先では差をつけるべきです。

 例えば、Aランクの得意先は月4回訪問で1回の滞在時間は1時間、Bランクの得意先は月2回訪問で滞在時間は30分、Cランクの得意先は月1回訪問で滞在時間は15分というように配分を変えて差をつける。

 ランクが高い得意先ほど、情報収集やフォロー訪問などルーティン以外の訪問が必要であり、訪問回数が増えると密着度は高まります。

 ランクの低い得意先は、集金や配達などルーティン訪問が中心になる。

 当然、情報収集では、いかに得意先から話を聞き出せるか(情報を引き出すか)が勝負になるため時間がかかる。

 一方、配達だけでは時間はかからないので、訪問回数、1回の滞在時間に差をつけなければならないのです。

 特に、訪問回数については、ルーティン以外の訪問の場合、いわゆる「ご機嫌伺い」のように「売り」の行為が全くない訪問も意外と重要である。

 売りの行為がないと言っても、先方に「売り込まれている」という意識を持たせないだけで、売る気もない訪問が良いのではない。

 わざとアポイントを取らずに「近くに来たので」などと言って訪問し、さりげなくいつもと違う商品やサービスの案内を置いてくるといった訪問活動です。

 アポイントなしに訪問するため、ターゲットが不在の場合もある。

 ただ計画性もなく訪問するのではなく、あらかじめターゲットの在社予定をつかんでおけば、面談率は格段に上がる。

 訪問順序の原則と同じで、得意先の日常業務の把握が必要となります。

 また、自社の役員や上司との同行訪問も、普段の訪問活動とは違うプラスアルファの効果をもたらします。

 

未訪問・失注を防ぐには

 現実には、計画通りの訪問活動ができないことの方が多い。

 原因は、行きにくい得意先が未訪問になるから。

 具体的には、
 ①自分より知識や技術のレベルが高い
 ②競合が激しい
 ③訪問に不便な立地
 ④遠い
 ⑤要求ばかり多く、自社のメリットがあまり期待できない

などの得意先である。

 ⑤の場合は状況に応じてランクを下げればよい。それ以外は、ライバルにとってもマイナス要因になっていると考え、クリアできればチャンスにつながるよう対処しなければならない。

 それが可能であれば、他社のシェアを奪うことはあっても、奪われることはなくなるはずです。

 以上のことを考慮し、ABCという顧客ランク付けと訪問のバランスを図り、常に最良の計画を立てられるよう、訪問活動のルールを標準化することが非常に重要となる。

 

販売目標の立て方

 

1 販売目標についての考え方

 本来、販売目標は販売割当とは違う。

 目標とは、予算策定において最低でも経費を上回る売上げを上げるものでなければならない。

 これが必要最低限の必達目標となる。

 目標を拠点別・担当者別に振り分けると、販売割当額、いわゆる販売責任額となる。

 もちろん、経費をカバーできるだけの売上げを上げれば それでよいというものではない。

 しかし、設定された目標数字の根拠が不明確であれば、「何とかしろ」「気合で頑張れ」といった精神論になってしまう。

 これでは計画とは言えず、戦略もない状態で販売活動を行うという状況に陥ってしまいます。

2 目標を立てる時の注意点

 大半の会社は、目標を立てる時に、前年の実績や経費、利益について検証せずに、対前年比だけで目標を設定している。単純に前年より売上げを伸ばすことだけに着目して、目標を設定しているのです。

 会社は業績を伸ばしていかなければ成長しないが、現場の担当者が納得できる目標でなければ、常に成長を目指すモチベーションを高く保つことは難しいでしょう。

 現場担当者のモチベーションを維持するためにも、営業活動に携わるすべての人が販売割り当ての目標決定に参加する仕組みにすることが望ましい。

 「これだけの実績を上げろ」とトップが一方的に目標を与えるのではなく、担当役員から部長・幹部、一般社員にいたるまで全員が目標額を提出する機会を与える。

 順序としては、現場担当者から順に上司に目標額を提出していきます。

ほとんどの場合、少しでも自分が楽に達成できるようにとの心理が働いて、低い目標数字を出すため、段階ごとに目標額の加算調整を行う必要がある。そうした調整を経た後、最終的にトップの承認を得て、上から順に戻す。

その手順の中で、必ず目標の根拠を明示し、必達数字であることを全員の共通認識としなければならない。

3 目標数字の割当基準

全社の目標数字がトップから示された後、目標数字を拠点ごとに振り分ける。

 各拠点は、戦略的にその構成メンバーで担当地域の全顧客を回れる範囲をエリアとして設定すべきです。

 そして、そのエリアにおける販売可能額を割り出し、拠点の人員数を設定することになる。

 さらに、その拠点の責任者が営業担当者の実績やキャリア、能力などを考慮し、担当者から出た目標額が妥当か否かを判断して、拠点全体の目標額を算出することとなる。

 過去の実績を見る場合は、「対象期間が短すぎないか」「外部要因(環境)がどの程度の影響を与えているか」「実績は実力に応じた必然的なものか(偶発的なラッキー受注はどの程度の割合か)」「今後の成長可能性(伸びシロはどのくらいあるか)」などを考慮して、調整しなければならない。

4 営業担当者のモラール低下を招かないために
 営業担当者に目標数字を割り当てる際、明確にその根拠を示す必要がある。これを怠ると、「頭ごなしに数字を押し付けられた」「前年同期に比べて、ただ単に数字を上乗せされただけだ」といった不満が必ず発生します。このような状態であれば、最初に担当者から出る目標数字は上乗せを前提にした低い数字となってしまう。

 「どうせ上乗せされるから、実際の80%程度の数字を出しておけば、最終的に自分が考えているところに落ち着くだろう」となる。「100%達成できる数字を出す」ことを前提とした考えしか出てこなくなり、営業活動に求める方向性にズレが生じてしまう。

 業績の評価は それとは別に考えなければならないが、混同されてしまうことになる。

 こういった傾向は、経験を積んだベテラン営業担当者ほど顕著に現れます。

 厳しい状況の中で目標設定を行っても、担当者が目標をきちんと理解・納得し、自らの意思で達成に向けて具体的に何をすべきかを考えれば、高いモチベーションを維持しながら日々の営業活動に取り組めるものです。

 そのために、トップは、売上げ増に向けた目標数字の根拠や会社が健全に成長するために必要な活動は何か、を明確に説明する必要がある。

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