ルートセールスにおける営業活動の効率化

求められるルートセールスにおける営業力

1 これまでの営業活動の効率化だけでは限界がある 

 従来、ルートセールス活動は、定期的に得意先をまわって定番商品の在庫を確認し必要に応じて発注し、その際、商品の代金を回収したり、新しい商品の注文をとったりする仕事が中心でした。ルーティンワークをいかに効率的に行うかということが営業活動の大きなテーマだったわけです。しかし、EOSの普及などにより、このような「ご用聞き営業」の比重は小さくなりました。

 一方、規制緩和などにより競争が激化した結果、得意先各社は生き残りをかけてさまざまな売上拡大や経営改善の方策を求めるようになり、納入業者に対しても情報提供や経営力強化策の提案など、具体的な支援を求めるようになってきました。

 したがって、ルートセールス活動の効率化を考えるときには、自社の新しい営業のあり方を考えたうえで、従来の業務をいかに効率化するかという視点が必要になります。

2 リテールサポート力が営業力を決める

 

 各社は生き残りをかけてさまざまな経営努力を行っています。

そのため、注文した商品を届けてくれるだけの納入業者では物足りなく感じるようになってきています。

 各社は、自分たちと一緒になって自社の経営力向上に努力してくれる経営パートナーを求めています。

 個別各社では発見しにくい改善課題などを指摘し、その解決に向けて支援を惜しまないパートナー業者を探しているのです。

 単に売れ筋商品を確実に提供する といった狭い範囲ではなく、得意先の経営全般を支援する活動を「リテールサポート」と呼びます。

 リテールサポートを行ううえで、重要なことは、「自社の取扱商品を増やすためにとにかく商品を押し込む」のではなく、あくまで得意先の経営改善を第一義に考えるということです。

 リテールサポートは短期的な売上増をめざすものではありません。

 徹底した得意先支援によって、強固な信頼関係を構築し、得意先にとって なくてはならない存在になることがその目的なのです。

 また、今後のリテールサポートは、加速する消費者ニーズの変化に対応するために、メーカー、卸、小売の三者が それぞれの強みをいかして行う「協調型」であることが一層求められるでしょう。

 そして、そのなかでリーダーシップを発揮できる企業こそが同業他社に打ち勝っていけるでしょう。

 

従来の業務のあり方を見直す

 ルートセールス活動を効率化していくためには、営業パーソンがリテールサポートに注力できる環境を整えていかなければなりません。

1 無駄な時間や雑務が多くないか

 

 商品の配送も営業パーソンが行っている例が多数みられます。

 また、得意先のEOS導入が進んでいても、実際の発注作業は営業パーソンが行っているというケースもあります。

 これらの社外業務に加えて、伝票作成からミーティングなどまで こなさなければならない社内業務も多く、その結果、肝心の新規取引先の開拓やリテールサポート活動に十分な時間が費やせないという状況に陥ってしまいがちです。

 従来、営業パーソンが行っていたこれらのルーティンワークは、マニュアル化することでその多くをパートやアルバイトに任せることが可能になるはずです。

 担当の社員は、その確認のみを行うことによって、ルーティンワーク以外に時間を振り分けることができます。

 営業マンからこれらのルーティンワークを「取り上げる」ことによって、営業パーソンはリテールサポートという新しい仕事、頭を使う仕事に取り組まざるを得なくなります。

 「雑務で忙しいから」という言い訳ができない状況を作ってしまうことが大切なのです。

2 取引先の状況に応じた労力の配分ができているか

 「営業活動の強化=訪問回数の増加」という単純な目標設定により、ただやみくもに得意先を訪問する営業パーソンもいますが、これは効率的な営業活動とはいえません。

 得意先のなかには、取引規模の大きなところと小さなところ、将来の成長が見込めるところとあまり見込めないところなど、状況に違いがあるはずです。

 にもかかわらず、どの取引先に対しても均等な時間を割くのは得策とはいえません。

 自社との取引状況や、先方の成長力などに応じて、「最優先顧客」「優先顧客」「一般顧客」といった具合に、顧客の重要度に応じてランク分けを行い、ランクに応じた時間の使い方を工夫するようにしましょう。

3 営業担当の分類基準が適切か

 通常、営業担当の分類基準は、取引先の業種別や地域別になっています。

 業種別で決められている場合、取引先の業種に精通できるため、顧客のニーズにきめ細かく対応できるというメリットがありますが、その一方で、取引先の所在地が分散してしまうため、効率的な訪問活動ができないといったデメリットもあります。

 地域別で決められている場合は、メリット・デメリットが反対になります。

 いずれの基準で営業担当を分類してもメリット・デメリットはあるため、双方を考え、より効率的に営業活動が行える分類基準を選ぶ必要があります。

 たとえば、大手競合企業の地方進出に対して地方の会社が対抗するためには、地域に特化したきめ細かな対応が求められています。

 こうした環境もふまえて、より自社の強みを発挿できるように、現在の営業担当の分類基準を見直す必要があります。

4 勤務体制が硬直化していないか

 いったん出社してから取引先へ向かうのでは、通勤や取引先への移動に無駄な時間がかかります。

 直行直帰の勤務体制を導入することにより、移動に費やす時間を減少させ、その分、営業活動に時間を振り分けられるようになります。

 かつては、直行直帰では情報交換がしにくい、業務を管理できない といった問題もありましたが、最近は携帯端末などの情報機器の導入でこういった問題も解決されています。

 また、日報などで報告を義務づけることにより、毎日出社しなくても営業マンの営業活動を把握することはできます。

 

リテールサポート力強化のための環境整備

 従来の業務のあり方を見直したうえで、営業パーソンが有効なリテールサポートを行えるように新たな施策を打つ必要があります。

1 リテールサポートメニューを整備する

 リテールサポートには さまざまなメニューが考えられます。

 店舗業務を手伝うという日常的なものから、商品ごとの売上情報を提供する、販促企画を支援する、経営相談に応じる、などさまざまです。

 また、顧客の状況によっても提供すべきリテールサポートメニューは違ってきます。

 たとえば、顧客ランクによっても、リテールサポートをどこまで手厚く行うべきかが違ってくるでしょう。

 顧客の状況に応じてどこまでのリテールサポートを行うか、あらかじめ検討し、営業パーソン全員が共通認識をもっておくことが大切です。

2 営業パーソンに新しい知識を吸収させる

 

 「ご用聞き営業」から脱皮し、本当に顧客に喜ばれるリテールサポートを行っていくためには、営業パーソンは さまざまな知識を身につけなければならない。

 リテールサポートとは、顧客の経営全般の支援活動ですので、身につけるべき知識は、商品知識、業界知識のみならず、消費者ニーズを収集し分析するための知識、企業経営に関する知識など多岐にわたります。

 自社で教育プログラムを作る方法もありますが、専門機関が提供している教育訓練を利用すれば、比較的容易に教育プログラムが作れます。

3 リテールサポートに使える情報やツールを整備する

 営業パーソン各人が取引先の役に立ちたいと考えていても、売れ筋情報や効果的な棚割りなど有効な情報が社内に整備されていなければ、効果的なリテールサポートは行えません。

 このため、携帯端末を導入する企業も増えているようです。

 企業によっては、携帯情報端末を全営業パーソンに配布し、取引先へのタイムリーな情報提供だけでなく、日報管理に利用しているところもあります。

 このように、情報機器など営業支援ツールを効果的に使うことで、情報提供力を高めたり、営業活動を効率化したりすることができるのです。

 機器類と同様に、情報などのソフト面の充実も不可欠です。

 棚割りソフトや売れ筋・死に筋商品情報など、リテールサポートに必要なソフトウエアや各種情報を取り揃えることでリテールサポート力強化につなげることができます。

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