差別化を図るには顧客の心理をつかむ

顧客の心理

1 なぜ顧客は自社を選ぶのか

 顧客はなぜ自社と取引をしてくれているのか?

 昔からよく知っているからか、顧客の利益(メリット)につながっているからか。

 「昔からよく知っている」ということは、長く継続して取引があるという面では良いことです。

 長くお付き合いをしていることによって、自社が以前とは違う商品・サービスを取り扱っていても、顧客の頭の中には昔のイメージが残っており、「あの会社ができる範囲はここまでだ」「あの会社が提供できる商品・サービスはこれだけだ」と決め付けられている場合が多々あります。
 顧客は、あなたが思っているよりも自社について知らないことが多い。

 顧客が自社のできることを知らなければ、顧客の頭の中にイメージされた「自社のできること」以上に仕事は膨らまないでしょう。

 顧客は、自分の頭の中にあるTPO(Time:時間、Place:場所、occasion:場合)によって、付き合う先を選別している。
 その結果によって、顧客内における自社のインストアシェアが決まってくるのです。

 要は、今以上に自社を選ぶ理由が、顧客の中にあるかどうかです。

 その理由がなければ、今以上に自社の業績が上がらないのは当たり前です。

 「既存顧客の売上げが減ってきた」「新規開拓が進まない」という声を耳にするが、これは顧客側から見れば、あなた(自社)を選ぶ理由がないのです。

 選ばれる理由を顧客に伝えることが必要になるわけです。

では、売る側は何をしなければならないか? まずは、顧客から選ばれるために必要なことは何かを考えることから始めよう。

 

2 顧客が選ぶ理由をつかむ4ステップ

(1)顧客が過去どのような理由で取引先を選んできたのか
 自社を取引先に選んだ理由を考える際は、顧客が今まで付き合ってきた先と自社を必ず比較するはずです。

 要は「過去」と比べるので。

 顧客が取引先を選ぶ物差しを把握することが第一ポイントである。

(2)ライバルが顧客に提供している利益をつかむ
 顧客が今まで取引している先、自社よりもインストアシェアが高い先は、「どのような利益を提供しているのか」について考えてほしい。

 「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」である。

 これをつかまなければ、差別化するためにどのような情報が必要なのかが分からないからです。

(3)顧客が自社と取引をしたときの利益を考える
 商品・サービスを売る側が陥るワナは、自社の利益を中心に考えてしまうことです。

 「これをあの顧客に売れば目標達成できる」などと、身勝手なそろばん勘定をはじき過ぎるとミスをする。

 顧客が望んでいないもの、買いたくないものを勧めても、利用したい気持ちや買いたい気分にはならない。

(4)顧客の利益を最大化するために必要なことをつかむ

 「顧客の利益(メリット)とは何か」を考える。

 次に、「どうすれば自社が顧客の利益を最大化できるのか」を考える。

 この順番を間違うと、顧客に提供すべき情報を間違えてしまう。

 顧客は入ってくる情報で判断します。それがテレビCMなのか、ウェブ検索なのか、SNSなのか、店頭POPなのか、クチコミなのか、調査資料なのか、見積もりなのか。
 情報を届けるツールは さまざまあります。

 多くの会社から見積もりを取れば取るほど、購入の際の選択肢が増えれば増えるほど、個々の特徴や利点、利益は顧客の頭に残らない。

 そして、残るのは往々にして価格だけである。

 顧客の頭の中に価格の情報しか入っていなければ、顧客は価格でしか選ばない。つまり、顧客は頭の中に入ってくる「情報」により、どこと付き合うのか、何を買うのかを決めているのです。    
 したがって、「自社が提供する利益 > ライバルが提供している利益」となるよう顧客に伝え、納得させることが必要となります。

 自社の提供する価値がライバルを上回るために何が必要かを考える。

 その際のポイントは、「顧客が聞きたいことは何か」を常に考えることです。

 商品説明や機能説明だけでは顧客は動かない。

 利益(メリット)を感じたときに動く。

 行動する理由が見つかれば顧客は行動する。

 顧客に理由が伝われば選ばれるのです。

 それ故、顧客に選ばれる理由は、売り手側が用意し、伝えていかなければならない。

 

3 「見せる」・「売りたい」・「売れる」商品で選ぶ理由をつくる

 売れ筋ばかりを集めても売れないという。一見、売れないモノは、無駄のように思えるが、売れ筋の横に売れない商品(見せる商品)を置くことで よく売れるのだそうです。顧客の頭の中で比較が行われ、売れ筋商品を購入する理由が明確になるためです。

 売りたい商品を売るときも、この「見せる商品」が必要となる。売りたい商品のフェイス(買い物客から見える商品陳列)を取るだけでは売れない。その横に見せる商品を置き、売りたい商品を顧客が選ぶように仕向けるのです。引き立て役の役割は大きいのです。

 

4 あなたの会社のウリ(選ばれる理由)は何か

 自社のウリ・強み何か?

 ウリとは自社の強みです。

 自社の強みとは、自社ができることである。

 自社ができることで顧客から選ばれる理由を自社が顧客に伝えなければならない。

 自社の強みが伝わらなければ顧客には価格しか見えない。

 自社のウリ(強み)を伝え、顧客の利益を最大化することで、自社が選ばれるのです。
 顧客は安く買いたいのではなく自身の利益を最大化したいのです。

 売る側も売上げを上げたいのではなく利益を上げたいのです。

 売上げは利益を得るための手段なのです。

 利益を出し会社の永続性を高めていくためには、顧客から選ばれ続けなければならない。

 「自社の利益を最大化してくれる重要なパートナー」である顧客としての位置付けを構築していただきたい。

 

ライバルが言えないことを発信する差別化戦略

1 戦略を理解しているか?

 「情報発信を行っているのに売れない」ということがある。

 情報発信の方法を間違えているのか、メッセージの内容に問題があるのかなど、現場では脳に汗をかくような苦労をしながら、売るための試行錯誤を行っている。

 メッセージとは、自社を選んでくれる=自社の良さを理解してくれる=自社を必要としている企業(個人)に、自社を選んでもらうための理由を発信するものです。

 つまり、発信しているのは、自社の強みであり、それがライバルでなく自社を選ぶ理由であるため、「売れる」ことにつながるはずである。なのに 売れないのであれば、発信しているメッセージが間違っていることになる。その原因は、メッセージが自社の戦略と合致していないことにあるのです。戦略とメッセージに一貫性がない。つまり、戦略をうまく現場に落とし込めていないのです。

 ・戦略を理解しているか?
 ・惰性で行動していないか?

 惰性での行動は「作業」であり、戦略の成果は出てこない。

 考えない行動は無価値である。

 

2 今のやり方で顧客から選ばれるのか?

 全ては顧客から始まる。

 顧客を見据え、戦略を構築し、自社が勝てる場と勝てる条件(自社が顧客から選ばれる理由)を整備し、現場に落とし込みを行う。これが正しい方法です。

 しかし、戦略から現場へ落とし込む戦術の段階で一貫性が崩れることは多い。

 自身の行動に再度目を向けてほしい。
 ①今、行っていることで、顧客から選ばれるのか?
 ②今のやり方、考え方、行動で、利益は出るのか(儲かるのか)?
 ③今のやり方、考え方、行動で、顧客の要望以上のことができるのか(勝てるのか)?
 ④今のやり方、考え方、行動に、信念を持っているのか?

 ①~④のうち一つでも崩れると、戦略は機能しなくなる。

 担当者自身が「こんなことをやっていても、顧客から選ばれないのに…」と思って行動する限り、顧客から選ばれないのは当然です。

 顧客ごとに、自社の強み=自社のできること=顧客が望むことを伝えていく必要がある。

 現場こそが それをメッセージとして伝えていかねばならないのです。

 

3 琴線に触れるメッセージで差別化を図る

 「この商品はとても使いやすくなっております」「ご使用になっていただければ ご理解いただけると思います」など、通り一遍な独自性のないメッセージは、顧客の琴線に触れることはできない。

 これは誰にでも言えることで、自社の強みではなく、顧客が自社を選ぶ理由にならないのです。

 あなたは「ライバルが言えないこと」を顧客に伝えなければならない。もちろん、「自社ができることを」である。粗悪品を売ってはいけない。

 

4 信念を持って行動する

 顧客から自社を選んでもらうための行動を信念を持って行っているだろうか。

 何も考えず、「やれ」と言われたからやっているだけの全く気持ちが入っていない提案シーンをよく目にする。

 そうした提案になってしまうのは、戦略の納得性が不足していることと、行動に対する迷い、勝てるかどうかの不安に起因する。

 しかし、信念のない行動では顧客は何を言っても振り向かない。

 ここで、社長に考えていただきたい。「信念を持てないのは、経営理念が事業化できていないからではないか」と。これは、理念先行型の経営者に多いことである。顧客や社会のお役に立ちたいという思いは理解できる。しかし、行動や商品・サービスが、売上げと利益につながっているのかを、再度検証していただきたいのです。

 社長の思いが事業化できていないと社員は不安になります。社長の言う通りにやっても、売上げや利益に結び付かないから、「やる意味があるのか」と不安になるのです。

 社長は思いを事業にしていかなければならない。

 さらに、付き合うべき顧客や売るべき商品、価格は、社長が決めなければ社員が勝手に決めることになる。付き合うべき顧客を定めなれば、担当者は行きやすい顧客だけを訪問する。売るべき商品も分からない。

 また、値決めは経営である。その価格で利益を出し、自社の経営や資金繰りにどのように影響するかも考えなければならない。値決めを営業に任せているようでは、勝てる場をつくり出せていない可能性が高い。

 「戦略的である」ということは、「計画的である」ということです。営業活動は有限、時間も有限、お金も有限。これらを何に集中させ、いかに効率的に回収するのかを、社長も現場も考えなければならないのです。

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