原価管理

 「原価管理」とは、広義では、「利益を増加させ、企業を安定的に発展させていくような原価引き下げ活動(目標設定、計画策定、統制)のすべて」を意味します。

 この「広義の原価管理」は次の2つの段階に分類することができます。

(1)原価目標の設定・計画の策定(コストプランニング)

 原価引き下げの目標を設定し、その実施のための計画を策定するという段階です。

 単に「原価計画」ともいいます。

(2)原価統制(コストコントロール)

 計画したとおりの原価で製品ができるよう、日常の生産・製造活動を統制する段階です。

 具体的には、まず、製造部門別・製品別の原価計画と実際の原価を比較して、原価計画の達成度を分析します。

 そして、比較の結果、差異が発見された場合は、原因を探し出して、改善策を検討します。

 上記のうち、(2)の「原価統制」を「狭義の原価管理」といいます。

 

原価管理(原価統制)の手順

 原価管理における費用の概念は原価の構成体系に基づいています。

 この体系では、製造原価は「材料費」「労務費」「経費」で構成され、それぞれ製品1単位についてかかった金額が明確な「製造直接費」と、明確でない「製造間接費」に分類されます。

 原価管理においては、まずこれらの金額を明確に算出して、それを製造部門別・製品別に割り振って、製品1単位当たりの原価を算出します。ここまでの手順を「原価計算」といいます。

 そして、算出された単価(実際原価)を計画値(標準原価)と比較してその違いを分析するという手順を踏みます。

 一般的に、原価計算期間は1ヵ月となっています。

 標準原価は、過去の実際原価や原価計算期間の受注予測を考慮して、適切な備に決定します。

 

原価計算の方法

 原価計算は、実際原価・標準原価ともに、

 1.費目別原価計算

 2.部門別原価計算

 3.製品別原価計算

といった手順で行なわれます。

1 費目別原価計算

 まず、会社の費用を原価計算に使う費用と使わない費用に大きく分けます。

 原価管理では製造原価を利用するため、販売費や一般管理費は原価計算には使いません。

 そのほか、次のようなものも原価には含みません。

 ・製品の製造に関連しない費用(投資目的の不動産の減価償却費、寄付金等)

 ・火災・風水害等による損失

 ・法人税・所得税・地方税

 ・配当金・役員賞与等

 原価計算に必要な費用は以下のものになります。

<製造直接費>

 直接材料費
  主材料費、買入部品費等
   消費量×購入価格 で計算する

 直接労務費
  直接工の賃金
   作業時間(または作業量)×賃率 で計算する

     直接経費
       …外注加工費等
        原則として、発生額で計算する

<製造間接費>

 間接材料費
  燃料費、工場消耗品費、消耗工具器具備品費等
   原則として、原価計算期間の消費額で計算する

 間接労務費
  間接工の賃金、健康保険料の事業主負担分等
   原則として、原価計算期間の要支払額で計算する

 間接経費
  減価償却費、賃借料、電力・水道使用料等
   原則として、発生額で計算する

2 部門別原価計算

 原価管理を行なうためには、どの部門の効率が悪いのかを明らかにして適切な処置をとっていくことが望まれます。そのためには、費目別に計算した原価を製造部門ごとに振り分けて集計し、各部門で発生した原価は、その部門の担当者が責任を持って管理するという仕組みをつくることが必要です。

 なお、費目別に明らかになった製造間接費を部門別に配賦・集計する際には、製造間接費の費目ごとに「配賦基準」を設けて各部門に割り振ります。

 たとえば、建物の減価償却費や固定資産税は各部門の占有面積、間接材料費は各部門で使用する直接材料費など、原価の発生ともっとも関係のあるものを配賦基準にして、その割合に応じて名間接費を各部門に割り振ります。

3 製品別原価計算

 企業では製品の価格設定や市場からの撤退等の意思決定をするために、製品別の原価計算も必要です。

 製品別原価計算では、部門別に集計した原価を、各製品の製造にかかった作業時間等を配賦基準にして、製品別に割り振って集計します。

 そして、製品別に集計された原価を生産量で除して1単位当たりの製品単価を算定します。

 

差異を分析する

 以上のような手順で製品1単位当たりの単価が算定されると、それにかかる直接材料費(単価・消費量)や直接労務費(賃率・作業時間)等が明らかになります。

 この実績値や需要の見通しなどから、特定の原価計算期間における原価の計画値(標準原価)を決定します。

 そして、原価計算期間終了後、実際原価を算出して、標準原価との差異を分析します。

発生したおもな差異の種類には、次のようなものがあげられます。

<直接材料責>

 価格差異:

見込価格と実際の価格が異なったことから生じた差異
 

消費量差異:

実際の消費量が見込みと異なったことから生じた差異

<直接労務費>

 賃率差異:

見込賃率と実際賃率が異なったことから生じた差異
 作業時間差異:

実際の作業時間が見込みと異なったことから生じた差異

   差異が特定されたら、その原因を探求します。

 消費量差異や作業時間差異の原因としては次のようなものが考えられます。

<消費量差異の原因>

 ・製品の仕様、製造工程、方法が変更された
 ・規格外の原材料を使用した
 ・原材料の歩留まりや仕損の発生度が変わった
 ・原材料の減損、盗難が生じた

<作業時間差異の原因>

 ・作業員の作業能率が変化した
 ・機械や装置が故障した
 ・作業員の交代や異動が行なわれた
 ・作業条件や環境が変化した

 このようにして考えられる原因を検討した後、明らかになった事項は、管理可能なものと管理不可能なものに振り分け、差異が生じた責任の所在を明らかにし、それぞれの管理者に適切な処置をとるように指示します。

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