企業変革の条件

 グローバル化、技術変化、市場ニーズの変化、競争のタイムスパンの短縮などが進む中で、変革をいかに進めるかが問われる時代となっています。

 企業変革は、組織規模が大きくなればなるほど難易度が高くなります。

 加えて、過去の成功体験がある組織ほど、方向転換を果たすことは難しくなります。

 よって、企業を変革していくためには、いかにマネジメントしながら進めるかが肝要となります。

 

企業変革の例

 コンピュータの世界を支配してきたIBMがダウンサイジング、オープンシステム化、サービス化の時流の中で、自社を変革し、コンピュータなどのハードを売却し、ソフトの会社として生存しています。

 この裏側には、自社を変革するのにもがき続けてきた歴史があります。

 企業変革において、何をどのように変えるのかといったアイデアは、インターネットでも調べられる時代となっています。

 しかし、変革を実際に進めるプロセスは非常に難解となっています。

 変革を成功に導くためのポイントは3つあります。

・言葉のパワー

 ものの考え方にインパクトを与え、組織を動かす説得の技術

・人々のアイデンティティ

 組織の構成員の様々な関係や関心を深く理解し、そこにインパクトを与える技術

・行動

 結果を志向して実行を推進するための技術

 

事例:企業変革に苦しむキリンビール

 ビールの国内市場が縮小傾向にある厳しい環境下において、キリンビールとして再成長を目指すべく自分たちが目指す姿を描き、そこに向けて企業変革を推進する組織を立ち上げました。しかし、企業変革は簡単ではありません。

 キリンビールにおいても、この一大プロジェクトに携わる人員が「やらされ感」で進めていたために生産性が悪く、思うように計画(目指す姿への計画)が描けていませんでした。

 このキリンビールの姿は、日本企業が環境変化に苦しむ姿と重なっています。

 日本の企業が変革を進めるためのポイントは3つあります。

1 経営トップが本気度を伝える

 企業変革は、経営層(トップである社長)の本気度が組織に伝播することから始まっています。

 トップが自らリスクを取って現状を打破していこうとしなければなりません。

 過去を否定するということは、歴代経営層の行ってきたことを否定することであり、ましてや自分自身が推し進めてきたことを否定することにもなります。

 これによって、従業員の心が離れ社内的なパワーを失う恐れもあります。

 キリンビールの社長は、就任早々自らが新聞や広告に登場し、「ビールは味が大事だ」と主張しました。

2 本音の議論

 組織プロセスの形骸化が企業革新を進める上で問題となります。

 本音の議論が欠如した場合、状況判断を曇らせて意思決定を誤らせる場合があります。

 そして、本音で議論する目的は消費者のためか、会社のためか、従業員のためかを明確にしておく必要があります。

 キリンのような大手企業が本音の議論を行えないのは、失うものが多い立場にあるからです。

 従来の成功例に反して変革するのは得策ではないと考えてしまうことが多いのです。

3 ゼロベースの発想

 企業変革の足かせとなるのは、発想が硬直化して戦略設定の自由度が奪われてしまうことです。

 特に、ビール業界のような規制業界では、非効率な価格競争などは行わないなど暗黙の了解が多くあり、柔軟な戦略策定を行えない傾向にあります。

 しかし、近年のキリンビールでは、発泡酒などの低価格商品への参入を行うなど、これまでになかった戦略を打ち出しています。

 

 企業変革においては、むやみに改革を進めればよいというものではありません。

 環境変化が求めている要因を的確に把握し、かつ、経営としての基軸を失わないアプローチが必要となります。

 環境変化に対応した新しいビジネスモデルを構築できるかによって、企業変革は実現します。

 これを成功に導くためには、変化への対応、トップのリーダーシップ(本気度)、変革の構図、変革を推し進めるマネジメント力が重要な要素となります。

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