ビジネスマーケティング(生産財マーケティング)

ビジネスマーケティングとは

 ビジネスは、大きく分類すると、一般顧客を対象とする「BtoC(Business to Consumer)」と法人顧客を対象とする「BtoB(Business to Business)」に分けられます。

 両者の違いは、文字通り顧客の種類ですが、いずれにしてもマーケティングの基本的な考え方が有効であることには変わりはありません。

 対象顧客が個人であっても、法人であっても、製品戦略や価格戦略などのマーケティングの4P、顧客との関係性づくりを意識することは大切です。

 また、近年では、法人顧客についてもソフト化が進んでいるという背景がありますので、分けて考える必要はより薄くなっていると言えるでしょう。

 ビジネスの垣根が低くなっているという実態もあります。そう考えると、法人を主要顧客にしている企業においても、マーケティングを実践することは大切です。いわゆる「ビジネスマーケティング」です。

 意識するべきなのは「顧客」と「製品」それぞれの特徴です。 

 ビジネスマーケティングにおける顧客の特徴は次のとおりです。

  1.エンドユーザーと購入意思決定権者が異なる
  2.購入を決定付ける要因は「企業価値の向上」である
  3.組織ならではの特徴を加味しなければならない
  4.主要顧客は限られている
  5.スイッチングコストが大きくなる
  6.事業の業績に左右されやすい

 いずれも、法人という組織が相手だからこその特徴です。

 これらについて意識しておかないと、ビジネスマーケティングをより効果的に実践することは難しいでしょう。

 相手が個人ではなく組織ということを前提にしておけば、これまでに学んだことを応用しつつ、最適な成果に結びつけることができるはずです。

 また、製品についてはいかがでしょうか。

 個人が購入する製品と法人が購入する製品とでは、若干の相違点があります。

 次のとおりです。

 1.専門的な製品が多い
 2.価格が高額になりがちである
 3.差別化には「ソリューション」が重要となる

 普段の買い物と会社で行う購買を比較してみると分かりやすいかと思いますが、両者では以上のような違いがあります。

 「何に使うのか?」ということはもちろん、「それが会社にどのような恩恵をもたらしてくれるのか?」という視点が欠かせませんし、事業を前に進めるためにはある程度大きな金額を支出することも検討するはずです。

 このような違いをふまえて、マーケティングの基礎は押さえつつ、ビジネスマーケティングについて考えていくことが大切でしょう。

 マーケティングの基本的な要素は、一般顧客を対象にしていようと、あるいは法人などの組織を対象としていようと有効に機能します。

 それは、マーケティングの本質が市場に適合するということからも明らかでしょう。

 ただし、それぞれの違いをしっかりと把握しつつ運用しなければ、より高い成果を得られないことは言うまでもありません。

 

ビジネスマーケティングにおける顧客

 ビジネスマーケティングにおいては、一般顧客を対象とするマーケティングと比較した時に、

 「顧客」および「製品」に関してその特徴が異なります。

 顧客に関しては次のような相違点があります。

1 エンドユーザーと購入意思決定権者が異なる

 一般的な消費活動と異なり、BtoBの現場では、エンドユーザーと購入意思決定権者が異なる場合がほとんどです。 

 たとえば、パソコンを購入する場合においても、個人であれば好みに合わせて検討することができますが、企業の場合には実際に使う人が購入者と一致するとは限らないので、対象者の意見を斟酌しなければなりません。

 また、高額なものを購入する場合には、役員がその是非を検討するという場合もあります。

 購入するのは一般社員だったとしても、社長を含めた重役が意思決定者であると考えられるのなら、マーケティング手法も自ずと変えなければなりません。

 ターゲットが異なれば、価格や製品特性も変える必要があります。

 

2 購入を決定付ける要因は、「企業価値の向上」である
 一般の人が日常的に行う購買行動、その意思決定の要因となるのは、個人的な理由がほとんどです。

 お腹がすいたからご飯を買う。

 好みの洋服を着たいから洋服を買う。

 意思決定の背景にあるのは、個々人の欲求を満たすか、あるいは不満を解消するためというように、ごくごく個人的なものなのです。

 一方、企業の場合にはどうでしょうか。

 社員が個人的な理由で何らかの設備投資をすることは許されません。

 備品ひとつとってみても、社員の個人的な理由で購入することはできないでしょう。

 では、何が意思決定の要因となっているか。それは、「企業価値の向上」です。企業価値を向上させるために、企業は製品やサービスを購入しているのです。

 

3 組織ならではの特徴を加味しなければならない

 企業が相手の場合には、その企業特有の性質も加味しなければなりません。

 意思決定に時間がかかる場合もあれば、基本的に付き合いのある会社を変えないという場合もあるでしょう。

 そうした特性を理解しておかなければ、より最適なマーケティング活動を行うことはできません。

 また、企業の担当者は失敗を恐れがちです。

 だからこそ、ネームバリューやブランドに流されやすいという傾向があるのです。

 いくら自社の製品やサービスが良くても、知名度で劣っている場合には、それを覆すだけの証拠を提示しなければならないということを肝に銘じておきましょう。

 

4 主要顧客は限られている

 一般消費者と違い、ビジネスにおける顧客は、ある程度限られています。

 とくに、主要顧客となりそうな大手企業は、数えるほどしかないでしょう。

 そう考えると、不特定多数のマーケティングではなく、特定ターゲットへのマーケティングが有効だと分かります。

 主要顧客のことをしっかりと分析し、対策を練ることが大切です。

 

5 スイッチングコストが大きくなる

 企業によっては付き合いのある会社を切り替えない場合がありますが、その原因のひとつには「スイッチングコスト」があります。

 既存の手続きやあるいはシステムを変更しなければならない場合も多く、そう考えるとコストはかさみます。その点を考慮して、より魅力的な提案をしなければなりません。

 

6 事業の業績に左右されやすい

 業績が好調な事業部では、あまり深く考えずに製品を購入してくれるかもしれませんが、反対に業績が芳しくない事業部では、必要なものでも資金を出し惜しみするということが想定されます。

 価格設定の際には、そうした点にも配慮しなければならないのです。

 

ビジネスマーケティングにおける製品

 製品に関しては次の3つの特徴があります。 

 1.専門的な製品が多い
 2.価格が高額になりがちである
 3.差別化には「ソリューション」が重要となる

 この3つの特徴から分かることは、ターゲット企業ごとに個別の戦術を練り、しっかりと営業をかけなければ、どんなに良い製品もなかなか売れないということです。

 一般消費者と違い、適切な営業活動をしなければ、自社の製品やサービスはなかなか理解されないことでしょう。

 

ビジネスマーケティングのポイント「俯瞰思考」

 ビジネスマーケティングにおいては、一般的なマーケティングとの相違を意識することが大切です。

 「顧客の性質」および「製品の性質」の観点から違いを認識しておくことで、どのような視点からマーケティングを行えば良いのかが見えてくることでしょう。

 もっとも、基本的な部分は同じです。 

 マーケティングの本質が市場の要求をつかみ取ることにあるとすれば、相手が一般顧客であっても企業であっても、考えることはそう大きくは変わりません。

 市場から選ばれるということは、選ばれるだけの理由を備えているということです。

 つまり、競合他社のものよりも魅力的な何かがあるということです。

 それが価格なのか、それとも製品の性能なのか、あるいはサービスなのかはさまざまです。

 自社の強みを把握し、上手に生かしつつ市場に適合することができれば、それだけでマーケティングの大きな目的は達成されることでしょう。

 あとは、時代の流れに応じてカスタマイズをくり返すことになります。

 ただし、ビジネスマーケティングの場合は、相手が単体ということはありません。

 つまり、ペルソナとしての個人を描くことが難しく、ターゲティングはより複雑な工程を経てなされることになります。

 そのときに、必要なのが「俯瞰思考」です。

 俯瞰思考とは、高いところから全体を見渡して考えることです。

 この俯瞰思考ができないと、ビジネスマーケティングはうまくいきません。

 個人を相手にするのと同じように市場化を目指そうとしても、その全体像を把握できていなければ、最適な手法を導き出すことはできないのです。

 誰に営業をかければいいのか分からずに、どうやって製品のプロモーションをすればいいのでしょうか。

 だからこそ、ビジネスマーケティングにおいては、まず対象となる組織あるいは企業を俯瞰で見ることからはじめるべきなのです。

 簡単に言えば、全体を視覚的に明らかにするということです。

 物や人の流れ、あるいは決定のされ方などについて、マッピングするというのもひとつの方法でしょう。図式化すれば、共有も容易になります。また、フレームワークを活用するという方法もあります。

 経営戦略の場面で一般的に使われているような「バリューチェーン分析」や「ファイブフォース分析」などを応用して、その企業や関係組織を明らかにするのです。

 そうすれば、どこに対してどのようにアプローチすればいいのかが明らかになります。

 そのような俯瞰思考が根底にあれば、具体的な打ち手が明らかになります。

 ビジネスマーケティングという大きなくくりの中で、個別の戦略、あるいは戦術が見えてくることで、はじめて現場への指揮命令も機能することでしょう。

 もちろん、現場の人間にも俯瞰思考を浸透させることが大切です。

 営業パーソンひとり一人が俯瞰思考をもって営業活動を行えれば、それだけで効率は上がります。

 闇雲に営業をかけても、あるいは広告を行っても、効果が限定的なのは一般的なマーケティングでも同じです。

 ビジネスマーケティングにおいては、取引の額が大きいということもあり、その差は顕著に表れます。

 俯瞰思考によって明らかにすべきなのは、対象企業に関係する業者を洗い出すことが一点。そして、もう一つは社内の関係性を把握することです。 

 その2つの工程を経て、ビジネスマーケティングのはじめの一歩が踏み出せるようになります。

 そうした分析を事前に行わずにマーケティングを実施しても、表面的な成果しか得られないということを あらかじめ認識しておきましょう

 マーケティングの本質を理解していれば、実践をとおしてビジネスマーケティングへと応用することも可能です。

 もちろん、専門家やプロフェッショナルのアドバイスも加味しつつ、自分たちのマニュアルを構築していけば、現場思考のビジネスマーケティングがより具体化されます。

 その内容を日々高めていけば、誰でも実践できる普遍的な営業活動が導き出されるのです。

 

関係者を把握する 業者

 次に、ビジネスマーケティングに欠かせない俯瞰思考について、2つの視点から見ていきます。

 一つ目はターゲット企業、および業界をとりまく「業者」についての関係者を把握することです。

 そこで役立つのは、物や資源、あるいは支持伝達系統を俯瞰できる「バーリューチェーン」にもとづいたマッピングです。

 ここで大切なのはターゲットに関係する業者を俯瞰することで、全体を大まかに把握することです。

 枝葉末節にこだわっていては全体像は見えてきません。

 ビジネスマーケティングの俯瞰思考、そのゴールにあるのは、より最適なマーケティングを展開することです。

 調査の専門機関のように、細かく状況を分析し、その結果を報告することではありません。

 ある程度の時間や労力は投下するべきですが、最終的に目指すべき目的を見失わないように注意したいものです。

 

関係者を把握する  社内状況

 

 関係する業者と、もう一つ確認するべきなのは、ターゲット企業の「社内状況」です。

 いくら業界全体を俯瞰できたとしても、相手の社内がどのような構造になっているのかを知らなければ、的確なマーケティング施策を打ち出すことはできないでしょう。

 もっとも意識するべきなのは、社内における「決定権者」の存在です。

 最初に接触する相手は、ターゲット企業の営業担当、もしくは購買担当ということが多いでしょう。しかし、その担当者に決定権があるかというと、必ずしもそうではありません。その部署の長や役員などが決済権限を持っていることが多いでしょう。その場合、いかにその決裁権限を持った人間を交渉の場につかせるかが鍵となります。

 しかし、ただそういったことだけでなく、できるだけ全体を把握するようにしましょう。

 組織の大きな改変だけでなく、移動によって力関係が変わってしまうこともありますので、完璧を求めるのではなく、可能な限り全体像を描くことが大切です。

 その点においては業界の把握と相違ありません。

 この作業は、ターゲットとする企業が大きくなればなるほど難しくなります。

 単純にスタッフの人数が多くなるということもありますし、組織の構造がより複雑になります。

 そうした場合には、仮説ベースでマッピングすると良いでしょう。

 組織の基本形態はある程度同じなので、他社の事例などを参考にしつつ、マッピングを勧めてみてください。

 その過程において、新しい事実が判明したときには、改変していくと良いでしょう。

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