人材採用 成功の秘訣

 人材採用において最も大切なのは、組織そのもののあり方や考え方、待遇・福利厚生などを改善し、本質的に選ばれる企業になることです。そのうえで、求職者目線に立ち、求職者が知りたいと思う情報がもれなく伝わるよう情報設計を行うことが大切です。

 企業そのものの魅力や仕事のやりがい、社会貢献への取り組みなど、求職者のモチベーション要素となる情報を適切な言葉で伝え、他社と差別化された自社優位性の理解から選ばれる取り組みを行うことが肝要です。さらには、内定通知までのスピード感や情報の伝え方、採用フェーズに合わせた計画的な情報提供なども選ばれる要因の一つとなっていきます。

 

何を伝えるか どう伝えるか

 自社ならではの「違い」をデザインする際、「どう伝えていくか」も重要なポイントとなります。

 大切なのは、「どう伝えたか」ではなく、「どう伝わったか」です。伝え方を間違えると、本来伝えたいことが正しく伝わらないばかりでなく、誤解を受け、ネガティブに伝わりかねません。情報提供を行う際は、企業側の一方的な押し付けにならないよう、社会のニーズや学生の思いを念頭に、相手の立場で物事を考え、業界の専門用語は極力使わずに、理解しやすい直感的な言葉で伝えていくことが大切です。

 

当たり前のことでも もれなく丁寧に伝える

 業界では当たり前のことでも、社会人デビューとなる新卒学生には全てが新鮮に映ります。また、本当は整えられている制度であっても、もれなく伝えていかなければ求職者には伝わりません。自社優位性を少しでも高めていくためには、事業のこと、制度のこと、教育のこと、福利厚生のこと、そして、考え方についてなど、その一つひとつを掘り下げ、自分たちの言葉で丁寧に伝えていくことが大切です。

 

学生の求める「義」と「利」を理解する

 就職氷河期にあった安定志向の就活生は今や少数派となり、多くの新卒学生が「仕事の意義や意味」を考えるようになりました。同時に、売り手市場が続く新卒採用において、優秀な学生は多くの企業から内定を受け、福利厚生や給料などの待遇を比較・検討します。
 「やりがいのある仕事」というだけでは優秀な学生の採用は難しく、「待遇が良い」だけでは採用が難しい時代にあります。自社の商品・サービスにおいて、自社がやるべき、自社だからできる、そして、人のためになるという「義」の観点と福利厚生の充実や給料面での高待遇など、スキル形成と正当な評価(先行投資)が両立して初めて優秀な学生を獲得できる時代であることを理解して、採用活動に挑まなければならないのです。

 

試す前に試されていることを理解する

 今、人材市場は完全な売り手市場です。優秀な新卒学生は多くの企業から内定を受けます。そして、その内定は、業種・業態を問わないことから、新卒学生の採用を行う企業の全てがライバルだと言えます。
 企業が発展するためには、優秀な人材が不可欠であり、優秀な人材こそ企業を発展される唯一無二の経営資源だからこそ、どの企業も新卒採用に多大な労力をかけるのです。優秀な学生達はそのことを理解しています。だからこそ、「選ぶ前に、選ばれる取り組み」に真摯に取り組まなければ、採用活動の本当の成功を得ることはできません。
 学生を試す以前に、学生に試されていることを理解し、自社の魅力を、まっすぐ、強く、伝えるための採用施策に取り組まなければならないのです。

 

内定後・入社後のフォロー体制確立

 合同説明会から会社説明会、一次面接、二次面接、そして、最終面接を終え、内定から内定承諾を得た時点で、採用活用が完結する訳ではありません。現代では、承諾後の内定辞退や、入社後即時の早期退職が当たり前に起こることから、企業は内定後・入社後のフォローが必要不可欠となっています。

 内定者とできる限り多くのコミュニケーションを図り、心変わりによる内定辞退や入社前・入社後のギャップによる早期退職を未然に防ぐことが大切です。

 

内定後のフォロー

 当然ながら、採用活動は内定を出して終了ではありません。求職者が内定を承諾しただけでは入社が確実でないため、内定期間中も自社に惹きつけておくためのフォローが必要です。内定者に対するフォローは、内定者の期待や不安を慮って施策を考えることが肝要です。
 一般的には、定期的な連絡に加え、内定者同士で顔合わせを行う懇談会、先輩社員との懇談会、ビジネスマナー研修会などが多くの企業で行われています。これらのようなイベントを通し、内定者の情報欲求を満たし、不安を解消することが「この企業に勤めたい」という想いを育み、内定辞退を回避することに繋がります。

 

入社後のフォロー

 内定者フォローと共に入社後のフォロー体制確立も重要です。入社前・後のギャップが大きいと離職リスクに直結しますので、長期的に活躍してもらうためには、新卒・中途の如何を問わず、社内の受け入れ体制を万全に整えておく必要があります。
 具体的には、教育担当を配置し、人間関係の相談に乗る、慣習を教える、人事やマネジメントと定期的に面談する機会を設けるなどの施策が考えらます。入社後のフォローも内定者フォローと同様、新入社員の不安やストレスを解消・軽減させることを目的とする必要があります。

 

採用担当者がすべき5つのこと

自社を深く理解する

 採用担当者がまず行うべきことは、自社事業・文化・組織体制など、過去・現在・未来について理解することです。「今さら言われなくとも充分に理解している」と感じる方も多いかもしれませんが、採用企業側の観点からではなく、マーケティングの観点(求職者や潜在求職者からの視点)での企業理解が採用マーケティングを行う上で不可欠となります。

 また、自社分析では、求職者の行う企業研究の調査ポイントを念頭に、客観的な視点で自社を深く理解することが肝要です。

・企業概要

 設立年  資本金  株式公開  事業拠点  業績(売上高・営業利益:率)

 同業他社との比較の際に不可欠な企業の基本情報です。また、求職者は、企業概要の情報から歴史や事業規模、あるいは転勤の可能性などもイメージしています。

・事業内容

 商品・サービスの詳しい内容(現状と今後の方向性)

 商品・サービスの対象者(個人消費者・法人/年齢層別/男女別 など)

 企業が、何をどのように市場へ提供し利益を得ているのか、仕組みを理解します。

 さらに、売上・営業利益の基盤となる商品・サービスは何か、新規展開されている事業は何かなど、内訳まで細かに調べることで企業の強みの理解が深化されます。

 ビジネスの対象により業態や領域は異なりますので、企業や法人を相手にする「BtoB(Business to Business)」企業なのか、あるいは一般消費者を相手にする「BtoC(Business to Customer)」企業なのかなど、ビジネス対象の違いにも着目して、同業他社と比較しましょう。

・業界内での位置づけ

 業態(商品の売り方・サービスの提供方法)

 企業規模(売上高・営業利益・従業員数・株式公開・資本金など)

 資本(独立系・系列系・外資系など)

 商品・サービスの対象(個人消費者・法人/年齢層別/男女別/国内向け・海外向け など)

 自社と競合を「業態」「企業規模」「サービスの対象者」などの大まかな切り口で分類した場合、競合と比べどの位置に分類されるのかを検証します。

 切り口ごとに分類・比較することで、同じ業界の企業同士の位置づけを俯瞰して把握することができます。

・企業・代表者の特徴

 経歴  座右の銘

 代表者の経歴や座右の銘などは、経営者の考え方や価値観、企業風土などにも多大な影響を及ぼしているため、自社を深く理解する上で有用な情報です。

・企業理念

 企業理念  創業以来の理念・精神

 企業の掲げる理念や創業以来引き継がれてきた精神などは、企業の重んじる点そのものであり、企業の文化・風土などを理解する上で有用な情報です。

・成長性

 売上高・営業利益の伸び率  新規事業・事業拡大の展望

 企業の経営状態を見極めるうえで重要な数字です。

 株式を公開している企業であれば、一般に財務諸表といわれる損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を見ることで経営状態を知ることもできます。

 求職者からは、「今」だけでなく、「成長性」も見られていることを意識しましょう。

・景況・経済動向による影響度

 売上高・営業利益の過去推移  円高時・円安時の売上・営業利益の状況

 企業の経営状態を見極めるうえで重要な数字です。

 株式を公開している企業であれば、財務諸表といわれる損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を見ることで経営状態を知ることもできます。

・競争力

 商品・サービスの開発力・技術力・品質  商品・サービス提供のネットワーク

 新商品や新サービスの開発について、どのくらい意欲的かも成長性を推し量る上で重要なポイントです。

 特に設立後間もない企業では、新商品・サービスを意欲的にリリースし、早い段階で柱となる事業を確立できるか否かが重要なポイントです。

 また、長い歴史を持つ老舗企業でも顧客のニーズを発掘し、新しいコンセプトの商品・サービスを開発したり、既存商品・サービスについても絶えず改良を重ねている企業は有望視されます。

・企業風土

 年齢・男女別の人員構成

 意思決定の仕組み(トップダウン型/ボトムアップ型 など)

 挑戦重視/伝統重視

 チーム力重視/個人裁量重視

 職場の雰囲気(真面目で堅実/自由闊達/体育会系/頭脳派集団 など)

 社員教育・育成環境(研修制度の充実/自ら先輩に学び成長 など)

 企業風土は、従業員が明確にあるいは間接的に感じている 表面化された価値観のことです。自然発生したルール化されていない価値観が、「就業規則」や「コンプライアンス規則」、「賞罰」や「人事評価制度」などとしてルール化されています。

 明文化されたものだけでなく「組織内のローカルルール」や「信頼関係」「暗黙の了解」など、明文化されていなくても組織内で常識とされているような決まりや行動パターンなども含まれます。

 企業風土は、従業員の行動や感情、モチベーションなどの「働きがい」に大きな影響を与えるものであるため、求職者が重要視している情報です。

・キャリア形成の環境

 昇給・昇進の仕組み(年功序列/成果主義/評価制度 など)

 女性登用率

 平均勤続年数/役職者の平均年齢

 新人研修やOJTなど人材育成にかける企業の情熱が計られます。

 若く上昇志向な者ほど、キャリア形成の意欲が強く、キャリア形成の環境が入社動機にも直結する傾向にあります。

・職種

 職種の種類  職種ごとに求められるスキル

 職種を理解する上で重要なポイントは、業種と職種を掛け合わせて考えることです。

 例えば、一口に営業職であっても、業種や職種が違えば扱う商材も仕事の手法も当然ながら異なります。自社の職種について正しく理解することは採用基準の策定にも不可欠です。

・勤務条件

 給与(月収/年収/昇給/賞与)]

 勤務地(転勤・駐在の有無 など)

 勤務時間(就業時間帯/定時内の実働時間/残業時間/フレックスタイム制度/時短勤務制度など)

 休日(固定休み/シフト制休み/夏季休暇/年末年始休暇/年間休日数/育休・産休制度など)

 手当(交通費支給/営業手当/資格手当/地域手当 など)

 福利厚生(社宅/家賃補助/資格取得補助 など)

 保険(健康保険/厚生年金保険/雇用保険/労災保険がそろっているか)

 新卒求職者は、待遇面よりもスキルアップのための育成環境やキャリア形成の環境を重視する傾向にあり、中途(キャリア)求職者は自身の持つスキルやキャリアを活かして働くことができるか、勤務条件が前職よりも悪くならないかを重視する傾向にあります。

 業界水準と比べ著しく勤務条件が悪い場合、予定採用数はおろかエントリー数すら確保できなくなる可能性ありますので、勤務条件が適正か否かも検証する必要があります。

 また、たとえ他社より勤務条件が悪くとも、そのマイナス面を補える強みを発見することで、自社の特長を訴求することに繋がりますので、勤務条件の比較は自社を客観的に見る上でも有効です。

・CSR(企業の社会的責任)

 人種・国籍・性・年齢・文化・宗教・障がいを問わず、多様性を重視し人材登用しているか

 CSRとは、Corporate Social Responsibility の略称であり、企業の社会的責任を意味します。具体的には企業が利益の追求だけでなく事業活動を通じて、社会に貢献する責任を指します。

 直接的な利益に繋がらないCSR活動は、企業にとってコストとして捉えられることもありますが、ステークホルダーとの信頼構築によって長期的な利益に結びつくことも少なくありません。

 CSR活動の内容によってはメディアに取り上げられることもあり、企業のブランディングに寄与する場合もあります。

・関連企業

 親会社・子会社  グループ会社  資本提携会社・業務提携会社

 関連企業の有無は企業の規模感を表すだけでなく、求職者のスキルアップ環境やキャリア形成にも強い影響を及ぼします。

 

採用活動をデザインする

 多くの企業から内定を得る有能な人材を獲得するには、採用ツールをどのように設計するか、採用活動そのものをデザインしなければなりません。

 自社の社風や今後のビジョン、現状の課題を見据えどのような人材を求めていくのかを抽出し、採用活動に関わる全ての関係者がひとつのコンセプトを共有できるよう全体設計していくことが大切です。それは、「見られたい姿と、見えている姿」のギャップを埋めていくことに他なりません。採用活動のためのデザインではなく、「自社らしさ」が採用ツールとしてデザインされていることが大切なのです。

 

採用案内の役割

 採用案内は、人材獲得の成否に関わる重要な役割を果たし、応募数の増加や内定辞退者の減少、離職率の低下など採用活動と定着率に多大な影響を及ぼします。

 新卒採用は企業に新しい風と活力をもたらし、実力を備えた中途採用は即戦力として企業を大きく躍進させる企業の宝です。また、の企業から内定を得る、有能な人材の興味を惹く採用案内を作成するには確かな採用戦略が必要不可欠です。

 大切なのは「どう伝えるか」ではなく「どう伝わったか」

 採用活動において最も大切なのは、「どう伝えるか」ではなく、「どう伝わったか」です。

 言語化しきれていないメッセージを明文化すると共に、写真やイラスト、音や映像などの様々な手法をもって具現化していくことで、本当に伝えたいこと、伝えるべきことを、正しく もれなく伝えるよう採用案内ツールをデザインしていきます。

理解の深化から共感へと導く、採用案内をデザインする

 どのような採用活動、採用案内を行うべきでしょうか。優秀な人材は企業の売り上げに多大な影響を及ぼし、企業の未来を形成する最重要要素の一つに挙げられることから、求職者への情報提供だけではなく、理解の深化から共感へと導くことで優秀な人材を確保すると同時に、求職者のモチベーションを高める採用案内が必要不可欠です。

 

長期ビジョンの上に成り立った採用計

 人手不足時代には、競って採用に奔走し、不況となると減量経営のために人員削減に頭を悩ます、というような場当たり的な雇用管理を行なっていては、中長期的視野に立った本当に必要な人材の確保はできません。

 こうした対応を続けていては、企業イメージが低下し、有能な人材から敬遠されることにもなりかねません。

 たとえば、「良い人材がいない」「人材が欲しいのだが、なかなか採れない」と悩むばかりで、欲しい人材のイメージを明確にしていなかったとします。これでは、募集広告にも「こういう人が欲しい」とはっきり打ち出すことができないので、インパクトの弱い広告になってしまいます。

 また、こうした状態では、説明会でも「どのような人に、どのように活躍してほしいか」ということを説明することもできず、ひととおりの会社説明で終わってしまいます。これでは人材が確保できなくても無理はないのです。

 人材を採用するにあたっては、どのような能力、技術、経験をもった人材が必要であるか、また、その人材に社内でどのように働いてほしいのかということまで具体化することが大切です。

 ただし、「能力があって、仕事ができて、バリバリと働いてくれる人」「我が社の将来を担ってくれるような、一流大卒の若い人材」といった人物像を描いても、それでは必要な人材を明確にしたことにはなりません。

 人材確保は、「経営目標を達成するため」に、「本当に必要な人材」を「必要なだけ採用する」ことが目的です。

 確たる採用計画をもってこそ それが実現できるのだということを十分に理解しなくてはなりません。

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