職場のメンタルヘルス対策

メンタルヘルス問題の原因と現状

 経済状況が厳しさを増すなか、労働者一人ひとりにかかる負担も増大しています。

同時に、成果主義による人事評価制度や、社内IT化、英語の社内公用語化など、職場環境も人きく様変わりし、新たなストレスを生み出しています。

 こうした状況のなか、職場には余裕のない労働者が増え、他者との協調も生まれにくくなり、孤立を深めてしまうといった問題が生じています。

 厚生労働省の「平成29年 労働者健康状況調奄」によると、労働者の6割近くが「仕事でのストレスがある」と回答しています。

 その原因のトップ3は「職場の人間関係」、「仕事の質」、「仕事の量」となっており、メンタルヘルスの不調により連続1カ月以上の休業または退職に至った労働者がいる事業所は全体の7.6%にのぼっています。

 近年、「メンタルヘルスの不調は仕事が原因だ」と考える労働者が増え、精神障害等による労災の請求件数も年々増えています。

 仕事上の過度な負担やストレスによる病気も労災の対象として認められるようになったことによるものですが、年代別にみてみると30歳代がトップで、もっともストレスを感じている世代だといえます。

 メンタルヘルスの問題は、もはや労働者個人だけではなく、会社全体の問題であり、メンタルヘルス不調者を出さない職場づくりがいま求められています。

 

メンタルヘルスの問題が会社に与える損失

 メンタルヘルスの問題は、労災の請求だけでなく、民事訴訟に発展するケースも増えています。

 業務との因果関係を厳格に審査したうえで認定の可否を決める労災認定に対し、民事訴訟は労働者の過失なども考慮したうえで損害額を算定するため、結論が異なることも珍しくありません。

 民事訴訟における損害賠償額は、企業規模や支払能力に関係なく決定し、高額化の傾向もみられることから、場合によっては会社の存続にも影響を及ぼしかねません。

 不幸にも労働者が過労死や過労自殺をしてしまった場合、非常に重い賠償責任を問われる可能性があることを想定しておかなくてはなりません。

 職場内でメンタルヘルスの不調を訴える労働者が増加すれば、業務の生産性が低下するだけでなく、さまざまなリスクが生じてきます。

 おもなリスクは次のとおりですが、メンタルヘルスの不調を訴える労働者が減れば、これらのリスクが減るだけでなく、労働者も安心して生産性を上げることができます。

 メンタルヘルス対策を放置することは、会社の損失を甚大にすることにもつながります。

 

メンタルヘルス対策への取り組み

 厚生労働省の「平成29年 労働者健康状況調査」で、実際にメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合をみてみると、労働者1000人以上の事業所では9割を超えているものの、全体では58.4%にとどまっており、50~99人規模で83%、30~49人規模で67.0%、10~29人規模で50.2%となっています。

 その具体的な取り組み内容としては、「労働者のストレスの状況などについて調査票を用いて調査(ストレスチェック)」(64.3%)、「メンタルヘルス対策に関する労働者への教育研修・情報提供」(40.6%)、「メンタルヘルス対策に関する事業所内での相談体制の整備」(39.4%)の順になっています。

 なお、メンタルヘルス対策に取り組んでいない事業所は、「専門のスタッフがいない」(44.3%)、「取り組み方がわからない」(42.2%)といった問題点をあげています。

 調査の結果から、いかにして労働者からの相談に対応するか(専門スタッフとの連携など)がメンタルヘルス対策のカギといえますが、社内での対応が難しい場合には外部の専門機関による支援も視野に入れて体制を整備していくことが重要です。

 

まずは法令遵守の体制整備から

 訴訟リスクを低くするには、法令を遵守した社内ルールづくりが大切です。

・就業規則に書かれている内容は最新の労働基準法に対応できているか

・労働基準監督署に「時間外・休日労働に関する協定書」を届け出ているか

・労働安全衛生法で義務づけられている産業医や衛生管理者、衛生委員会や安全委員会を設置しているか

などを確認してみましょう。

 訴訟に発展した場合、会社側がメンタルヘルス対策を講じていたかが争点となるわけですが、法令違反が指摘されれば状況は不利になってしまいます。

 まずは、法令を遵守した体制を整備することが重要です。

 

 近年、「メンタルヘルスの不調は仕事が原因だ」と考える労働者の増加に伴い、労災の請求だけでなく、民事訴訟に発展するケースも増えています。

 厚生労働省は、平成21年度における脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況について発表しましたが、精神障害等に係る労災請求件数は前年比2割超の増加となりました。

 今では職場のメンタルヘルス不調者の発生は他人事ではなく、その原因が業務上の理由となれば企業の安全配慮義務が問われ、損害賠償請求まで及ぶこともあります。

 平成19年の調査ですが、対策に取り組めていない事業所が約3分の2あり、42.2%の事業場が、その理由として取り組み方がわからないと回答していました。(労働者健康状況調査)

 そこで、メンタルヘルス対策の具体的推進事項として、厚生労働省が通達において示しているポイントを整理してみます。

衛生委員会等での調査審議の徹底

 ・メンタルヘルス対策を審議する場があるか

 ・その議事内容を労働者に周知徹底しているか

職場における実態の把握

 ・メンタルヘルス上の理由による休業者がいるか

 ・休業者がいる場合は人数を把握しているか

心の健康づくり計画の策定

 ・「心の健康づくり計画」という言葉を知っているか

 ・事業者がメンタルヘルス対策を積極的に推進する旨を表明しているか

職場内の体制の整備

 ・産業医がいるか(50人以上の事業場)

 ・職場にメンタルヘルスの推進担当者がいるか

教育研修の実施

 ・メンタルヘルスに関する研修会を開催したことがあるか

・管理監督者(上司その他の労働者を指揮命令する者)への教育研修を実施しているか

職場環境等の把握と改善

 ・職場環境に関するアンケートを実施しているか (作業内容、労働時間、仕事量、人間関係等)

不調者の早期発見と適切な対応の実施

 ・メンタルヘルス不調者の相談体制があるか

 ・メンタルヘルス不調者に対し、医療機関等につなぐ体制があるか

 ・長時間労働者に対し、面接指導を行う仕組みがあるか

職場復帰支援

 ・メンタルヘルス不調で休業した人の職場復帰支援プログラムがあるか

 メンタルヘルス対策は、企業の労務リスク対策であると同時に、企業の生産性の向上対策でもあります。

 厚生労働省が設置した「メンタルヘルス対策支援センター」の次のような無料相談も活用して、対策の具体的な進め方を検討してみてはどうでしょう。

 ・職場のメンタルヘルス対策の取り組み方法

 ・不調な労働者の対応方法   

 

メンタル面の不調による休業者の職場復帰支援

企業に求められる「心の健康対策」

 変化の激しい現代はストレス社会とも呼ばれています。厚生労働省の「平成29年労働者健康状況調査」によると、職業生活などにおいて強い不安やストレスなどを感じている労働者は、全体の58.3%に上っています。

 また、過去1年間にメンタル面の不調により連続1ヵ月以上休業または退職した従業員がいる事業所は全体の7.6%となっています。

 同調査によると、なんらかの心の健康対策に取り組んでいる事業所の割合は、全体では58.4%で、その取り組みのひとつに、職場復帰支援があります。

 ストレス社会において、メンタル面の不調は誰もがなる可能性があり、一定期間休業したとしても、円滑に職場復帰してもらうことが大切です。

 そのため、会社は積極的に従業員の心の健康対策に取り組むことが求められています。

 このようななかで、「メンタル面の不調で休業していた従業員からの職場復帰の申し出を認めたところ、再び不調になり、再休業してしまった」といった例も多くみられます。

 会社は従業員に対して安全配慮義務を負っており、このような事態は避けなければなりません。そこで、職場復帰支援のルールを整備し、会社が責任をもって職場復帰できるかを見極めることが必要になります。

 

織場復帰支援の流れ

 メンタル面の不調により休業している従業員が円滑に職場復帰できるよう、職場復帰支援の手順や規定を整備し、復帰までの流れをあらかじめ定めておきましょう。

1 職場復帰支援の流れ

 メンタル面の不調により休業している従業員の職場復帰支援の流れの例は図のとおりです。

2 主治医による判断

 休業中の従業員に職場復帰の意思がある場合には、職場復帰希望日より一定期間前(1ヵ月前など)に申し出てもらうようにします。

 その場合に、会社は従業員に「職場復帰が可能である」旨が記載された主治医の診断書を提出するように求めます。

 ここで留意すべき点は、主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力の回復程度を判断しているとは限らないということです。

 また、従業員が職場復帰を急ぐあまり、本人の希望が反映されている場合もあります。

 そこで、あらかじめ主治医に対して「必要とされる業務遂行能力」や「社内勤務制度」などの情報を提供し、従業員が就業可能な回復程度にまで達しているかどうかを、主治医の意見として提出してもらうようにするとよいでしょう。

 この場合には、事前に「情報提供依頼書」などの書式を作成し、従業員の同意を得たうえで、本人から主治医に渡してもらうようにします。

 また、主治医だけではなく、産業医など会社に関与する医師にも主治医の診断書について意見をもらうことが大切です。

 そのうえで、従業員の状況を確認するために、本人との面談を実施します。

3 職場復帰の可否の判断

 主治医の診断書、情報提依頼供書の内容、産業医の意見、本人との面談結果など、収集した情報を勘案したうえで、職場復帰の可否を判断します。

 職場復帰できるかどうかについては、次のような観点から総合的に判断します。

 ・従業員の職場復帰に対する意思の確認

 ・治療状況および病状の回復状況

 ・業務遂行能力

 ・今後の就業に関する従業員の考え

 ・家族からの情報

 ・職場環境

4 職場復帰支援プランの作成

 次に、下記の項目について検討し、職場復帰を支援するための具体的プランを作成します。

・職場復帰予定日

・職場の上司による就業上の配慮
 業務サポートの内容や方法、業務内容や業務量の変更、段階的な就業上の配慮、治療上必要な配慮など

・人事労務管理上の対応など
 配置転換や異動の必要性、勤務制度変更の可否および必要性

・産業医などによる医学的見地からの意見
 安全配慮義務に関する助言、職場復帰支援に関する意見

・支援体制
 上司や同僚などによる支援の方法、就業制限などの見直しを行うタイミング、すべての就業上の配慮や医学的観察が不要となる時期についての見通し

・その他
 従業員が自ら責任をもって行うべき事項、試し出勤制度(職場環境に慣れることを優先した出勤制度)の利用、事業場外資源(職場復帰支援サービス)の利用

5 職場復帰の決定

 ここまでの流れを踏まえ、会社は従業員の状態の最終確認をしたうえで、最終的な職場復帰の決定を行います。

 その際に、可能であれば産業医に「職場復帰に関する意見書」を作成してもらい、それに基づいて確認しながら進めるとよいでしょう。

 決定の内容は、就業上の配慮の内容と併せて従業員に通知します。

 なお、復帰後の具体的な就業上の配慮の例は次のとおりです。

 ・短時間勤務

 ・軽作業や定型業務への従事

 ・残業や深夜業務の禁止

 ・出張制限

 ・交代勤務の制限

 ・危険作業、運転業務、高所作業、窓口業務、苦情処理業務などの制限

 ・変形労働時間制度の制限または適用

 ・異動や転勤についての配慮

6 職場復帰後の支援

 職場復帰後は、上司が状況を観察しながら支援を行い、下記の事項を定期的に確認し、必要であれば職場復帰支援プランの見直しを行います。復帰後は元の職場に戻すことが原則ですが、従業員の負荷を考慮し、段階的に元の職場に戻すなどの配慮が必要です。

・疾患の再発、新しい問題の発生などの有無の確認

・勤務状況および業務遂行能力の評価
 本人および上司の意見などを聞く

・職場復帰支援プランの実施状況の確認

・治療状況の確認
 通院状況、病状や今後の見通し等

・職場復帰支援プランの評価と見直し

 ・職場環境の改善など
 作業環境・方法や、労働時間・人事労務管理など、職場環境などの評価と改善

・上司・同僚などの負担への配慮

 

治療休暇制度

 会社員が長期の治療を要する病気にかかってしまった場合、通院しながら仕事を継続するのは容易なことではありません。

治療に伴う身体的・精神的・経済的負掛まもちろんですが、職場の理解や協力が十分に得られなければ、仕事と治療の両立が難しくなり、厳しい状況へと追い込まれてしまいます。

 たとえば、日本人男性の2人に1人、女性の3人に1人がかかる可能性があるといわれている「がん」では、化学療法やホルモン療法を行なう場合、長期にわたって定期的に通院する必要があります。

 また、夫婦の10組に1組が悩んでいるともいわれる不妊の治療についても同様です。これらの治療に対して会社のサポートがなければ、従業員は年次有給休暇を利用したり欠勤をしたりして通院せざるを得ません。

そこで、仕事と治療の両立を支援する制度、つまり、従業員が安心して通院治療を受けられる制度づくりが会社に求められています。

 治療休暇制度とは、長期的かつ定期的に治療しなければならない疾患をもった従業員が、通院のために休暇を取得することができる制度です。

 多くの会社では就業規則に休職制度を定めていますが、休職制度は、連続した一定期間の欠勤を想定しているため、通院などの断続的な欠勤については原則認めていません。そのため、通院には年次有給休暇を利用するのが一般的ですが、通院の頻度によっては有給休暇をすべて消化してしまい、欠勤が生じてしまうことも起こり得ます。

 そうした不利益を解消し、通院治療が必要な従業員のニーズに合った柔軟な対処法が治療休暇制度です。

 

安全配慮義務とプライバシー保護

 治療休暇制度を導入するに当たっては、適用対象となる疾患を具体的に特定することが望ましいといえますが、長期にわたって定期的に通院しなければならない疾患となると、がんを始め、人工透析が必要な腎臓病や心臓病といった循環器系の病気など、おのずと高度な治療を要する病気が中心となります。

 また、不妊治療に取り組む従業員も想定する必要があるかもしれません。

 これらの治療を受ける従業員の立場になってみると、まず「上司や同僚に病気のことを知られたくない」と考えるのではないでしょうか。

 非常にプライベートかつデリケートな間潜であるため、十分な配慮がなされぬまま必要以上に知れわたってしまうと、噂になったり誤解や偏見を招いてしまい、従業員のプライバシーを侵害してしまう恐れがあります。

 また、会社には、従業員が健康を害することなく安全に働けるよう配慮する義務(安全配慮義務)があります。

 そのため、会社は、従業員の健康に関する情報を把握しておく必要があり、従業員は、会社から求められたら健康に関する情報を提供する義務があります。

 会社は、その情報を基に仕事と治療の両立をサポートするわけですが、第一に優先すべきは、従業員のプライバシー保護に重点をおいた情報管理の徹底です。

 

社内規定に盛り込むポイント

 治療休暇制度の具体的な内容については、後からトラブルにならないよう、就業規則内もしくは別規定に明文化しておくことが重要です。

 規定に盛り込むおもな項目は次のとおりです。

 ・適用対象者(勤続年数などの要件)

 ・適用対象となる疾患(がん、精神疾患、難病、不妊症など)

 ・適用となる治療の内容(通院治療、検査、短期入院、経過観察など)

 ・取得できる休暇の単位(1日単位、半日単位、時間単位など)

 ・年間の取得日数の上限と繰越の可否

 ・休暇取得中の給与の有無

 ・休暇を取得する際の届出方法、提出書類の有無・種類(診断書、届出書など)

 ・休暇取得者に対する配慮(個人情報の管理、業務量の調整など)

運用のポイント

 運用のポイントは大きく分けて3つあります。

 

(1)従業員に対する十分な説明

 仕事と治療の両立について、一番悩んでいるのは従業員自身です。

 「職場に迷惑をかけたくない」、「悪いことをしているわけではないが、後ろめたさを感じてしまう」といった不安を解消すべく、治療休暇制度についての説明を十分に行い、利用に向けてサポートすることが重要です。

(2)人事担当者および上司との情報の共有

 仕事と治療を両立させるために、人事担当者および上司が中心となり、従業員から疾患に関する情報(今後の治療計画や配慮事項など)を収集します。

 場合によっては、主治医や産業医からも意見を聞くなど、疾患についての正しい知識をもち、理解することが重要です。

 病状や考えられる副作用について、出来ること・出来ないこと、業務中や業務内容における注意点など、安全配慮義務の観点からも情報を共有します。

 正確で具体的な情報が多いほど、今後予想されることに対して会社側も対応しやすくなります。

 場合によっては、業務の軽減や配置転換、短時間勤務への切り替え、残業のセーブなど、本人および医師の意見なども十分に聞いたうえで、柔軟に対応することも検討します。

(3)職場内の調整

 通院や体調管理のために働き方が変わることに対して周囲の理解と支援を得るためには、ある程度の情報を伝える必要が生じるでしょう。

 個人情報保護法では、第三者への個人情報の提供には本人の同意がなくてはなりません。

 社内の誰に対してどこまで伝えるのか、本人とも十分に相談したうえで職場内の調整を図ることが大切です。

 その際、誤解や偏見をなくすことを目的とした教育の実施なども効果的でしょう。

 そのうえで、上司はほかの従業員への配慮(業務量の調整、情報の共有など)とともに、治療中の従業員への声かけなどによって、相談しやすい体制づくりを心掛けるようにします。

 これらの点に留意して、通院治療を必要とする従業員が柔軟に働ける職場環境づくりに取り組んでいきましょう。

 

事業場における治療と職業生活の両立支援

 近年の医療技術の進歩で、かつては「不治の病」とされていたものが治療により生存率が向上し、「長く付き合う病気」に変化しています。

 たとえば、労働者が「がん」や「脳卒中」などにかかった場合、通院をはじめとする治療と仕事の両立が可能であったとしても、会社の就業体制が整備されていなければ、仕事の継続はおろか、休職をしたところで復職は困難となってしまいます。

 この課題に対し厚生労働省は、会社において適切な就業上の措置を行いつつ、治療に対する配慮が行われるようにするためのガイドラインを公表しております。

1 留意点

 対象となる病気は、「がん、脳卒中、心疾患、肝炎、その他難病」で、反復・継続して治療することが必要なものです。

 仕事の繁忙等を理由に必要な就業上の措置や配慮を行わないことがあってはならず、労働者から支援を求める申し出があれば、会社は、仕事によって病気の悪化、再発、労働災害が生じないよう、治療に対する配慮を行うことが必要です。

 

2 環境整備

 治療と仕事の両立支援に取り組むに当たり、会社は、まず基本方針や具体的な対応方法、社内ルールを作成することになります。

 その上で、当事者やその同僚となりうるすべての労働者に意識啓発をすることで、両立支援がより円滑に実施できるようなります。

 両立支援のための社内制度の例としては、傷病・病気休暇、短時間勤務、在宅勤務(テレワーク)、長期休業後の試し(慣らし)出勤などが考えられます。

環境整備のための検討・実施事項(例)

① 労働者や管理職に対する研修などによる意識啓発

② 労働者が安心して相談・申出を行える相談窓口を明確化

③ 時間単位の休暇制度、時差出勤制度などを検討・導入

④ 主治医に対して業務内容などを提供するための様式や、主治医から就業上の措置などに関する意見を求めるための様式を整備

⑤ 事業場ごとの衛生委員会等における調査審議

 

3 治療と仕事の両立支援を行うに当たっての進め方

 厚生労働省のガイドラインでは、両立支援の進め方について、次のような手順を示している。

 主治医からの情報をもとに、関係者間で情報共有や連携を図っていくことが重要となりますが、関係者には、主治医のほか、産業医、保健師等スタッフ、人事労務担当者、上司・同僚、労働組合、社会保険労務士などが挙げられます。

 会社の就業規則を見てみると、治療が定期的に繰り返される疾病に対応できるような、休職制度や休暇制度などが規定されていないものが見受けられます。

 就業規則の傾向として、労務リスクに対応するために作成してきたものが多いことと思われますが、労働者が安心して働けるように職場環境を整備し、離職率の低下などを実現させるためにも、「就労支援」という違った視点を取り入れ、今ある就業規則を見直してみることをお勧めします。

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