ベンチマーキング
ベンチマーキングとは
自社の経営力向上のために、日頃から「他企業のよい点は積極的に取り入れたい」と考えている社長は多いでしょう。
すでに成功している企業の経営手法を参考にすれば、自社でゼロから考えるよりもスピーディーに成果につなげることも可能です。
しかし、「もっと上手な商売や仕事のやり方はないかな」と漫然と探しているだけでは、自社に役立つ成功事例に出会う確率は低いでしょう。
より効果的に成功企業の経営手法を取り入れるための、ベンチマーキングの手法について考えてみましょう。
近年ベンチマーキングが注目されているのには理由があります。
多くの中小企業では、今もって従来型の目標設定である「対前年比10%の生産性の向上を図る」といった、過去の延長線上に目標が設定されます。
しかし、今まで通りのやり方で目標を設定していたのでは、経営の革新はできません。
今後、他社よりも優れた経営を行うため、迅速に経営に結びつけるスピードが大切になりま
す。
良い知恵をどんどん学んでそれを取り入れるベンチマーキングの手法が、経営革新の近道になるとして注目されているのです。
自社の課題解決のために、競合他社、異業種企業の優れた経営手法(「ベストプラクティス」)を持つ企業を見つけだし、自社をその企業に近づけさせる手法のことをいいます。
成功企業の優れている部分を自社流にアレンジして取り込むということです。
ベンチマーキングとは、視察による表面的な「観察」に留まらず、なぜそれらができているのかという、理由やプロセスも含めて分析・研究しようというものです。
また、ベンチマーキングは自社ですでに行っている事業の参考にするだけではなく、新規事業を行う際の重要な情報とすることができます。
ベンチマーキングとは、競合他社、異業種企業の優れた経営手法を研究し、自社と比較検討することで、業務の問題点と改善の方向を明確にし、自社経営の革新につなげていくものです。
成功企業の優れている部分を自社流にアレンジして取り込むということです。
比較的大きな会社であれば、社内の他部門から学べることもあるでしょう。
たとえば、飲食店の社長であれば、近所に繁盛店ができれば必ず視察に出かけるでしょう。
客として入店し、料理の味、接客、価格、調度品などを確認します。
自店よりも優れていて、かつ導入可能なものについては自店に取り込もうとするはずです。
これらの一般的な視察だけでも、有力な情報が得られることはあります。
しかし、ここで確認できるのは、最終的な味や接客であり、「なぜこの値段でこのような味が出せるのか」「なぜこんなに心地よい接客が提供できるのか」といった、より本質的な部分まではわかりません。
ベンチマーキングとは、視察による表面的な「観察」を超えて、なぜそれらができているのかという理由やプロセスも含めて分析・研究しようというものです。
また、ベンチマーキングは自社ですでに行っている事業の参考にするだけではなく、新規事業を行う際の重要な情報とすることができます。
たとえば、飲食店が新たにデリバリーサービスを開始する際には、すでに宅配ビジネスを行っている企業を調べることで、ビジネスモデルの基本を理解することができます。
近年ベンチマーキングが注目されているのには理由があります。
多くの中小企業では、今もって従来型の目標設定である「対前年比10%の生産性の向上を図る」といった、過去の延長線上に目標が設定されます。
しかし、今まで通りのやり方で目標を設定していたのでは、経営の革新はできません。
今後、他社よりも優れた経営を行うため、迅速に経営に結びつけるスピードが大切になります。
良い知恵をどんどん学んでそれを取り入れるベンチマーキングの手法が経営革新の近道になるとして注目されているのです。
ベンチマーキングの対象
ベンチマーキングの対象は次のように分類できます。
(1)内部ベンチマーキング
内部ベンチマーキングとは、組織内、自社内、グループ内など、似通った業務を行っている内部の成功事例から学ぶことです。
たとえば、長時間残業が続くスタッフ部門のなかで、経理部だけはほぼ定時帰宅ができているとすれば、緻密なスケジュール管理や集中できる環境づくりといった独自の取り組みが功を奏している可能性があります。
同様に、営業一課と営業二課の比較、第一工場と第二工場の比較などから、優れている点を抽出することもできるでしょう。
社内部ベンチマーキングは、細かいデータまで収集できるため、より緻密な分析が可能であるというメリットがあります。
一方、あくまでも組織風土や仕事の進め方が似通った内部での比較になるため、革新的な改善にはつながりにくいというデメリットがあります。
(2)競合ベンチマーキング
競合ベンチマーキングとは、自社と競合する業種の企業から学ぶことです。
自社が飲食店であれば、競合する繁盛店の秘訣を学ぶということになります。
究極のベンチマーキングでは、自社の課題解決のために、すべての成功企業におけるもっとも効果的・効率的な実践方法(「ベストプラクティス」)を学ぼうとしますが、実際には世界中の繁盛店をすべて訪問することは不可能です。
しかし、それでもできるだけ多くの繁盛店を参考にするほうが、より自社にフィットした解決策のヒントを得られる確率は高くなります。
したがって、物理的に訪問が容易な地域を中心に数多くの繁盛店の事例を比較・分析することが大切です。
また、ときには自店が存在する地域と食文化や生活習慣が全く異なる地域(海外含む)の店を訪問することで、斬新なアイデアが得られる可能性もあります。
(3)機能ベンチマーキング
ベンチマーキングの対象は競合他社にとどまりません。
機能ベンチマーキングとは、比較対象となる機能を有する自社業界以外の企業をベンチマーキングすることです。
大手企業の機能ベンチマーキングの例としては、ゼロックスが全くの異業種であるLLピーンの倉庫内業務からベストプラクティスを探求したことが有名です。
たとえば、飲食店の「接客」については、多くの小売業やサービス業の接客をベンチマーキングの対象とすることができます。
異業種であるため、業界内の慣習や常識の範囲では解決できない問題についての新たな突破口が開けることもあるでしょう。
ベンチマーキングの方法とプロセス
ベンチマーキングのプロセスは、「ベストプラクティス」を発見し、取り入れ、そのベンチマーク(指標)を計測し、目標値を設定し、そして、目標に達するよう実行します。
これを継続的に実施することにより、具体的なシステム改善の状況、効果を把握します。
一般的なベンチマーキングのプロセスをまとめると、次のようになります。
1 適用範囲の選定
まず、どの業務にベンチマーキングを適用するかを検討します。
例えば、「工場から小売店店頭までの物流の見直し」「検品作業の効率化」「残業を減らすための手法」「アウトソーシングによるコスト削減」「営業方法のマニュアル化」「発注方法の短縮化」など、ありとあらゆる企業活動がその対象となります。
まずは、自社が他社よりも劣っているのではないかと思われる業務をいくつか選び、その中から特に早急に改善すべき項目を絞り込んでいくのが取り組みやすいでしょう。
できることから着手し、ノウハウを身につけた後で高度なベンチマーキングにチャレンジするようにします。
改善する業務が決定したら、ベンチマーキングにより問題点を明確化します。
この段階では、公表資料を中心に他社と自社との比較検討を行います。
新聞、雑誌の記事、インターネット、あるいは官庁や業界団体の各種統計資料、調査報告書など、比較的簡単に手に入る情報を入手します。
自社のデータについては、把握できるものは数値化し、「なぜ改善が必要なのか」「最終的に何を目指すのか」など、自社の課題と目標をある程度整理しておきます。
2 ベンチマーキング対象企業の選定
調査した各種データをもとに、すでに成功していると思われる企業の経営手法を選定します。
対象相手は1社である必要はなく、複数の企業からそれぞれの優れているところを比較対象とすることもできます。
この対象相手の選び方によって目指すべき目標が定まりますので、非常に重要な作業となります。
対象相手の選び方はベンチマーキングしたい業務によって異なりますが、選び方をまとめると次のように分類できます。
(1)社内をベンチマーク
社内のほかの事業部や関連会社などを比較対象とする方法です。
(2)競合企業をベンチマーク
同業他社を比較対象とするベンチマーキングでは、当然業界トップ企業が対象となります。
同業他社という点で直接交渉して情報を得ることは難しいかもしれませんが、その分さまざまな媒体において成功の秘訣や業務構造が紹介されていることがあるので、概要をつかむことはできるはずです。
(3)業務部門をベンチマーク
他業種の同一部門を比較対象とするベンチマーキングです。
直接事業に関わる部門では比較しにくいのですが、総務、人事、広報など、間接部門においては共通した部分が多いはずです。
他業種のため、比較的容易に情報を公開してもらえます。
「学び」に対する意識改革
環境の変化が読みにくく、かつ変化のスピードが加速する今日においては、学びのスピードが会社の命運を左右するといっても過言ではありません。
ベンチマーキングは、自社の経営課題解決のための最適な解答を すでに成功している会社の事例から学ぶことであり、よりスピーディーな学習効果が期待できます。
社長は、従業員に対して「ベンチマーキングは成長の早道である」ことを説明し、従業員がそれぞれの立場からベンチマーキングに積極的に参加するように意識づけを行う必要があります。
社長自身がベンチマーキングから学んだことを従業員に詳細に説明することなども有効です。
SPDLIサイクルの設計と実践
ベンチマーキングは、通常のPDCAサイクルを応用したSPDLIサイクルに沿って進めていくのが一般的です。
PDCAサイクルは、すでに決まったことをいかにきちんと行っていくかに力点がおかれていますが、SPDLIサイクルでは、「何を学び、何を革新すべきか」という戦略段階から始める。また、成功例から徹底的に学ぶというフェーズ(側面)が入っていることも特徴です。
1 戦略策定(Strategy)
戦略とは自社のめざすべき姿に近づくためのシナリオのことです。
多くの企業では、中期経営計画などで戦略を策定していると思いますが、ベンチマーキングの本格導入を機に戦略を改めて確認してみましょう。
自社が今後さらに強化していきたい「強み」や、成長の妨げになっている「弱み」を明らかにして、そのために自社が何を学ぶべきかを抽出します。
ここからは、「顧客満足度向上」を戦略テーマの例として以下のフェーズを説明します。
2 計画(Plan)
実際にどのようにべンチマーキングを行うか明らかにします。
ベンチマーク先の候補企業(組織)の選定、ベンチマーキングのためのプロジェクトチームの組成、役割分担、スケジューリングなどを行います。
プロジェクトチームのリーダーは、当該戦略テーマについての責任を担っている役員クラスを任命し、その下に各部門のリーダークラスを配置します。
ここでは、ベンチマーク対象に応じた自社の業務プロセスを分解・分析することが特に重要になります。
戦略テーマが「顧客満足度向上」の場合の例
自社ではどの部署がどのような活動を行っているか、顧客評価をどのように吸い上げているか、実際の満足度評価の結果、リピート率、クレーム率などについて明らかにします。
これにより次のフェーズの「情報収集」でベンチマーキング企業との詳細な比較が可能になります。
3 情報収集(Do)
計画にしたがってベンチマーキング候補企業の情報を収集します。
情報収集には、新聞、経済誌、業界専門誌、業界団体が公開している統計資料、インターネットの専門サイト・企業サイト、テレビのビジネス番組などや、上場企業の場合は有価証券報告書などが活用できます。
また、商工会やコンサルティング会社が行っている「成功事例セミナー」、「視察ツアー」などからも有益な情報が得られるでしょう。
さらに先方企業から直接ヒアリングする方法もあります。
競合企業からのヒアリングは困難かもしれませんが、機能ベンチマーキング先の非競合企業からの協力は意外と得やすいものです。
「学びたい」という姿勢を前面に出して、疑問点を聞いてみましょう。
なお、その際に相手から求められた場合は自社の情報も公開することが必要です。
戦略テーマが「顧客満足度向上」の場合の例
ベンチマーキングシートを使って、自社の業務プロセスや満足度評価などの各種指標とベンチマーキング先のそれを比較できるようにヒアリングします。
4 学習・分析(Learning)
複数のベンチマーキング候補企業から情報が収集できたら、そのなかから特に優れており、かつ、自社でも対応可能と思われる手法を抽出します。
そして、自社の業務プロセスと比較して、そのギャップを明らかにし、ギャップを埋めるためには何をすればよいかを分析します。
分析結果をシートにまとめ、プロジェクトメンバー全員が認識を共有します。
そして、すべてのベンチマーキング項目について、「誰が、いつまでに、どの水準を達成するか」という具体的な実行計画を策定します。
計画は、実際に活動に取り組む現場の理解を十分に得ながら進める必要があります。
また、達成状況を正確に把握するために、目標はできるだけ数値化します。
戦略テーマが「顧客満足度向上」の場合の例
たとえば、ベンチマーキング先企業が10名の顧客対応専任者をおいている場合などは、自社でそれをすぐに実現することは難しいかもしれない。
その場合は、ベンチマーキング先企業と自社の企業規模や顧客数の違いなどから、自社が当面めざすべき体制を考えます。
5 革新(Innovation)
「学習」の結果を踏まえた計画を実行します。
それぞれの活動について、プロジェクトリーダーは常に進捗状況を確認し、必要に応じて問題点の改善や計画の見直しを行います。
そして、すべてのベンチマーキング項目が達成された場合に、それが十分な経営革新につながっているかどうかを評価します。
不十分な場合は、ベンチマーキングの項目と達成水準を見直して、SPDLIサイクルの「計画(Plan)」の段階に戻ります。
このサイクルを粘り強く回し続けることが、より高いレベルでの戦略実現につながります。
留意点
1 本質をしっかりと学ぶ
ベンチマーキングは、単なる「ものまね」ではありません。
優れた会社の手法を学ぶためには、手法そのものだけではなく、「なぜその手法が採用できているのか」という点にまで踏み込んで考える必要があります。
「顧客満足度」についても、なぜ、ベンチマーキング先企業は高い顧客満足を提供できているのかについて、その本質を学ぶことが大切です。
ベンチマーク項目を検討する際には、その点を十分に留意する必要があります。
また、ベンチマーク先企業は、長年の取り組みの結果、成功手法を身につけています。
自社がそのレベルに短期間で追いつくのには、相応の努力を覚悟しなければなりません。
2 ヒントはどこにでもある
ベンチマーキングを進めるうちに、「あの会社(業界)だからできることであって、うちではできない」「うちの会社は事情が特殊だから」と早々に諦めてしまうケースもあります。
しかし、ベンチマーキングとは、自社内のこれまでのやり方だけでは解決が困難なことを、他社の知恵を借りて実現することです。
最初はベンチマーキング先の施策が特別にみえて当然なのです。
しかし、ライバル企業がまだ気づいていない「お宝」が得られる可能性もあります。
自社の常識や発想とはかけ離れたところに、問題解決のヒントが眠っていることも多いことを忘れないでください。
ベンチマーキングのプロセス
ベンチマーキングのプロセスは、「ベストプラクティス」を発見し、取り入れ、そのベンチマーク(指標)を計測し、目標値を設定し、そして目標に達するよう実行します。
これを継続的に実施することにより、具体的なシステム改善の状況、効果を把握します。
一般的なベンチマーキングのプロセスをまとめると、次のようになります。
ここでは、ベンチマーキングの基本的導入事例として、「業務改善」をテーマに進めていきます。
1 適用範囲の選定
まず、どの業務にベンチマーキングを適用するかを検討します。
例えば「工場から小売店店頭までの物流の見直し」「検品作業の効率化」「残業を減らすための手法」「アウトソーシングによるコスト削減」「営業方法のマニュアル化」「発注方法の短縮化」など、ありとあらゆる企業活動がその対象となります。
まずは、自社が他社よりも劣っているのではないかと思われる業務をいくつか選び、その中から特に早急に改善すべき項目を絞り込んでいくのが取り組みやすいでしょう。
できることから着手し、ノウハウを身につけた後で高度なベンチマーキングにチャレンジするようにします。
改善する業務が決定したら、ベンチマーキングにより問題点を明確化します。
この段階では、公表資料を中心に他社と自社との比較検討を行います。
新聞、雑誌の記事、インターネット、あるいは官庁や業界団体の各種統計資料、調査報告書など、比較的簡単に手に入る情報を入手します。
自社のデータについては、把握できるものは数値化し、「なぜ改善が必要なのか」「最終的に何を目指すのか」など、自社の課題と目標をある程度整理しておきます。
2 ベンチマーキング対象企業の選定
調査した各種データをもとに、すでに成功していると思われる企業の経営手法を選定します。
対象相手は1社である必要はなく、複数の企業からそれぞれの優れているところを比較対象とすることもできます。
この対象相手の選び方によって目指すべき目標が定まりますので、非常に重要な作業となります。
対象相手の選び方はベンチマーキングしたい業務によって異なりますが、選び方をまとめると次のように分類できます。
(1)社内ベンチマーキング
社内のほかの事業部や関連会社などを比較対象とする方法です。
社内ベンチマーキングは、細かいデータまで収集できるため、より緻密な分析が可能であるというメリットがあります。
一方、あくまでも組織風土や仕事の進め方が似通った内部での比較になるため、革新的な改善にはつながりにくいというデメリットもあります。
(2)競合企業ベンチマーキング
同業他社を比較対象とするベンチマーキングでは、当然業界トップ企業が対象となります。
同業他社という点で直接交渉して情報を得ることは難しいかもしれませんが、その分さまざまな媒体において成功の秘訣や業務構造が紹介されていることがあるので、概要をつかむことはできるはずです。
(3)業務部門ベンチマーキング
他業種の同一部門を比較対象とするベンチマーキングです。
直接事業に関わる部門では比較しにくいのですが、総務、人事、広報など、間接部門においては共通した部分が多いはずです。
他業種のため、比較的容易に情報を公開してもらえます。
(4)包括的ベンチマーキング
業界、業務に限らず、広く比較対象を選定するベンチマーキングです。
例えば、「検品について」なら検査を行う作業はすべてベンチマーキングの対象となりえます。
契約書の内容、領収証の発行の仕方、労務時間管理など、細かい業務工程の比較であれば、参考となる企業の範囲は大きく広がります。
3 分析
比較対象の選定が終わったら、「処理フロー」「保管方法」「スケジュール」「使用している機器の種類」「各作業の処理時間」「作業者数」「コスト」など、さまざまな観点からデータを収集、数値化します。
そして、「付加価値性」「利益性」「効率性」「迅速性」などのベンチマーク項目を設け、これと自社データを比較することにより自社の劣っている個所を明確にします。
4 ベストプラクティスの作成
ベストプラクティスには、「どれだけの業績、生産性を上げることが可能か」という結果を目標とする側面と、「どのようにして業績、生産性を上げることが可能か」というプロセスを目標とする側面があります。
自社の粗利益率は60%だが、同業他社は75%の場合、この結果を目標としてもよいのですが、より重要なのは、粗利益率75%に至ったプロセスを目標とすることです。
例えば、同業他社が自動機械導入による省力化、臨時雇用による人件費削減、ペーパーレス化による業務短縮によって粗利益率 75%を実現しているのであれば、このプロセスこそ学ぶべきベストプラクティスといえます。
5 目標設定
作成したベストプラクティスをベースに、目標に到達するまでの期間や費用、労力などを考慮しながら具体的な目標を設定します。
例えば、「納期短縮」をベンチマーキングの対象とした場合を考えてみます。
従来の自社の納期が6日でベストプラクティスが2日だった場合、いきなり2日にするのは困難かもしれません。
目標では、従来の半分である3日に設定するなど実現の範囲内で定めます。
これに限らず、現状が数値で把握され、ベストプラクティスにより近づけることが可能であれば、どんな目標でも設定できます。
6 改善計画の作成
目標を実現するための具体的な導入計画を作成するのが次の手順となります。
この段階では、あくまで実現させることが目的となり、詳細な計画を作成します。
7 実行と評価
計画を実行に移すのが最終段階ですが、ベンチマーキングの手法では、計画を実行して終わりではありません。
実際に「目標を達成できたのか」「効果はどの程度なのか」という評価を行うことも重要となります。
達成のレベルを把握するためには、ベンチマークの把握を継続的に行い、常に効果を把握していくことが大切です。
常に効果を把握していれば、さらにベストプラクティスに近づけるよう、再度目標を設定することも可能となります。
他分野の専門家、異業種の経営者と積極的に交流しているか
異業種では常識になっていることが、自社の業界や地域では当たり前ではないことはよくあります。高額な支払いが多いのにもかかわらず、最近まで(地域によっては今でも)日本のほとんどの病院でクレジットカードが使えなかったのはひとつの例としてあげられます。こうした常識を打破するのに最もよい方法は、業界の常識に染まっていない人に自社の事業をみてもらうことです。業界内の人脈づくりも大切ですが、時には他分野の専門家や異業種の経営者などとも、積極的に交流してみてはいかがでしょうか。
国内や海外の企業視察に行っているか
自社のプロセスの改善につながるような、他の企業のよい点を知るには、できるだけ多くの企業をみていくことが重要です。本や雑誌には多くの企業事例が紹介されていますし、テレビ番組でもさまざまな中小企業が紹介されます。もちろん、こうした情報源は大切ですが、本当にその企業を知ろうとするならば、やはり自分の目で実際に見るのが一番です。商工会・商工会議所や業界団体などの企業視察ツアーは、単独では訪問の難しい相手にアプローチするには有効な手段といえるでしょう。