ツリーで考える方法

 ツリー分析とは、自然の樹木がそうであるように、1つの事柄がいくつかの要素に枝分かれし、全体として意味をもつフレームワークを呼びます。

 「意思決定のための分析の技術」で、著者の後正武氏が挙げる、「ロジック・ツリー」「イッシュー・ツリー」「業務ツリー/テーマ・ツリー」「デシジョン・ツリー」の4つの分析について載せます。

 

ロジック・ツリー

 日本人の日常生活で、ロジックの正しさを指摘される場面はあまりないでしょう。国語の教育においても、どのような気持ちであったかといった情緒を優先させる傾向にあります。

 しかし、論理の抜けや漏れは分析の狂いに繋がりかねません。

 ロジック・ツリーの基本は次の4つです。

 1. 論理構造の基本は、帰納と演繹

  2. 論理構造は、ピラミッド型

  3. ピラミッドの下のレベルは、確からしさの度合いが高いものをおく

  4. 論理構造はMECEである

 既知の事柄から未知の事柄を明らかにするための論理構造には2つの方法があります。帰納法と演繹法です。

 帰納法は、多くの独立した事象から集約されることを抽象化して、結論を導く方法です。

 もう一方の演繹法は、三段論法ともいわれ、「Aは必ずBである」という大前提があり、「CはAである」という小前提をもって、「よって、CはBである」という結論を導く方法です。

 ヒトは必ず亡くなる→豊臣秀吉はヒトである→よって豊臣秀吉は亡くなる、という論理構造です。

 

イッシュー・ツリー

 イッシュー・ツリーとは、人によって主張が異なる場合に、より具体的な課題に対し、どの部分に力をいれるのか、どの事実が判明すれば何が解決するのかをフレームワークで検討するものです。

 ロジック・ツリーが事実や大前提の積み上げであるのに対し、イッシュー・ツリーは、明らかにすべき事実を検討するためのフレームワークといえます。ここで重要なことは2つです。

 1. 解決志向でツリーを構成するため、重要ではない事項を省くこともある

  2. 論理の組み立ては柔軟に行い、より的確なツリーになるよう再構成することもある

 売上高を改善するために、どのような切り口があるでしょうか。チェーン店舗なら、「店舗数×1店舗あたりの平均売上」であり、「客単価×客数」「地域別の足し算」「製品別の足し算」などの要素に分解することができます。

 イッシュー・ツリーは、思考のフレームワークとして、構成要素に分解して、事実をもとに考え方を発展させていくものです。

 

業務ツリー/テーマ・ツリー

 業務ツリーは、組織の効率化を検討するための分析手法です。こまごまとした作業をツリー状に集約して、組織のアウトプットまでつなげます。

 そして、ある役職(組織)に期待されるアウトプットを、人件費や経費などのコストとして算出するのです。アウトプットとコストのバランスを見極め、安いコストで似たようなアウトプットに置き換えられる外注を検討したり、アウトプットの頻度を変更して部門の人員削減の目途をつけたりします。

 このように、作業レベルごとにツリー階層を分けながら、部門としてのアウトプットの評価につなげていきます。

 

デシジョン・ツリー

 デシジョン・ツリーは、選択肢と確率から意思決定を助ける分析手法です。未来に起こりうることを定量的に把握できるようになります。

 例えば、海で貝を拾うか、山で鹿狩りをするか、どちらの選択を行うのかを次のように考えるのです。

 人間の判断には、リスクの主観的な要素がどうしても混じります。食料に飢えていれば、確実に食べ物を採取できる海に行くでしょうし、貯えがあるならば貴重な鹿の捕獲に出かけることも考えられるのです。

 企業経営の場合にも、一定期間における研究開発の成果が出るかでないかという場面においては、リスクを考慮した評価が必要でしょう。

 このリスクにも幅があり、貝の量が籠1杯なのか2杯なのかは確率の問題です。これらは、シミュレーションを繰り返して結果を算出します。これは、デシジョン・ツリーの応用編として、モンテカルロ・シミュレーションと呼ばれるものです。

 不確実性のある投資の場合には、オプション理論と呼ばれる考え方もあります。

 

不確定/あやふやな選択肢からいかに判断するか

 経営の意思決定は、科学的な判断で行われるのでしょうか。現実的には、不確実な要素があり、選択できない場合があったり、個人的な直観で決められたります。

 ここでは、そのような不確定なものをどのように判断していくかを検討していきます。

 判断することは、分析の結果で導かれたいくつかの選択肢に対し、総合的な観点で意思決定することだといえます。

 「意思決定のための分析の技術」で著者の後正武氏が挙げる判断方法は、次の4つです。

 ・信頼性のレベルにより情報を分類する

 ・ロジックとフレームワークを活用する

 ・プロセスを活用する

 ・多数の意見の集約を図る

 

1 信頼性のレベルにより情報を分類する

 1つ目の手法は、判断材料となりうる事象を書き出し、重要度を整理することです。情報を信頼性のレベル(事実ー法則ー経験則ー推定ー意見ー想像)に分けてみます。

 再現性はあるのか、個人的な好みなのかを自覚すれば、判断材料としても有益です。紙に書き出して、重要度の順に並べる作業を行いましょう。

 情報は、必ずしも正しいものだけではありません。そのために全体像を描けないときには、わかるまで推測で議論を進めることもあります。

 

2 ロジックとフレームワークを活用する

 2つ目の手法は、ロジックやなんらかのフレームワークを用いて整理をすることです。

 コンサルタントの仕事は、不確実性のあるものを整理し方向性を見出すことにあります。彼らは論理的な思考を持ち、課題の解決のためにもれなくダブりなく、重要度を勘案しながら結論を導き出すのです。

 そこで、有名なフレームワークをいくつか挙げます。

(1) 4C

 自社、競合他社、顧客、販路から現状分析を行う

(2) PPM(製品・市場ポートフォリオ)

 縦軸に市場の魅力度(市場成長率)、横軸に自社の強さ(市場占有率)をとり、事業をマッピングする  経営資源の投資配分の目安になる

(3) 7S

 戦略にそった組織のための要素(機構、制度、戦略、技術、人材、スタイル、共有価値)

 フレームワークには長所と短所があり、最適な使い方をしなければなりません。

 

3 プロセスを活用する

 3つ目は、プロセスを経て結論を出すということです。戦略立案のプロセスには、「課題の設定」「現状分析」「診断」「解決策の検討」「実行」などがあります。

 プロセス毎に最適なフレームワークを用い必要な関係者で共有することで、権力者の恣意的な判断のみで決定されることを防ぎ、結論がある程度の予測範囲内におさまることが期待されるのです。

 未来に実現したい事柄をロードマップとして表現することもあります。時間軸にそって各組織の実施プロセスが明確化されるため、万が一遅れる場合の影響範囲を予測しやすく、結果的に効率を高めることができるのです。

 

4 多数の意見の集約を図る

 4つ目は、複数の意見集約を図る方法です。アンケートを実施したり、テーマに対して自由に発言するブレーンストーミングをしたり、会議ではない意見集約も含みます。これにより、一人が持っている誤った認識で判断をすることを防止するのです。

 未知数の事柄に判断を下す方法として「デルファイ法」があります。

 与えられた課題に対して、匿名性を保った状態で関係者の判断や意見を聞き出し、判断のため必要な追加情報を挙げてもらうのです。この集計結果のフィードバックと再検討を複数回繰り返します。判断要因の見落としを防ぎ、論点が明確になり、徐々に意見が収斂されていくのです。

 デルファイ法は、単なるアンケートではないので、事務局が正しいハンドリングができるかが重要です。通常の会議が形骸化していたり、意見の一致の圧力を感じたりすることがみられるようになれば、この方法も検討しましょう。

 

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