分けて考えるための基本原則は「もれなくダブりなく」

 具体的な施策に落とし込めるまで細かい要素に分けていくには、論理的な思考が必要とされます。

 そのような場面で役に立つ考え方が、「MECE」と呼ばれるものです。日本語訳では「もれなくダブりなく」と表現されることが多く、ロジカルシンキングの基礎的な考え方となります。

 

MECEに分ける

 MECEとは、以下の単語のそれぞれの頭文字をとったものです。

 ・Mutually=要素が互いに

 ・Exclusive=重複がなく(原意:排除し合っていて)

 ・Collectively=集めると

 ・Exhaustive=全体を尽くす

 例として、ワインのマーケットを輸入業者の視点から考えてみましょう。

 ワイン市場は業務用市場と一般消費者市場に分かれる。一般消費者市場は、贈答用と一般家庭用に分かれる。一般家庭用は、30歳と50歳を区切りに男女別に考慮していく。

 このような思考は、要素を足し算することで、ワイン市場全体=100%として捉えることを意味します。

 ただし、現実の市場はこのようにすっきりと区分できるものではありません。業務用チャネルを考えても、大手酒類問屋から地域問屋があります。そこからレストランへ流れるルートのほか、酒類専門ディスカウントチェーンやスーパーのワインコーナーもありえるでしょう。それぞれのルートは、どこかで重複しているかもしれません。

 また、ピックアップできないような小さなチャネルや、区分できないチャネルは、「その他」としてまとめてしまいましょう。これは、引き算の考え方といえます。ただし、まとめてしまった「その他」にも、魅力的なマーケットが隠れていることがありますので注意が必要です。

 このように、まず、一つひとつの項目をあげて足し算をして100%に近づけていきます。また、100%に届かない項目は引き算でその他枠をつくるなどの工夫をしましょう。もれなくダブりなくMECEの原則に戻って考えることで、ヒントが見えてくるに違いありません。

 「分ける」と書くと、100のターゲットをいくつかの小分類にしていくイメージを持ちます。小売業であれば、売上は店舗の合計であり都道府県別にある支社の合計です。ただし、売上を考えるときは、掛け算で表現できる場合もあります。

 売上高=個数×単価

 売上高=客数×客単価

 売上高=店舗数×店舗当たりの売上

 足し算や引き算の場合には同質的なものが並びますが、掛け算の場合には異質な別次元のもの同士の結果となります。そして、これによりまた別の分析をすすめることができるのです。

 

具体的な施策を考えて分ける

 車の販売を例に考えてみましょう。

 1台目に購入する車は、家族全員が乗れる車で、購入者は家長であり年齢層が高いことが想定されます。2台目に購入する車は、近所での買い物利用やスポーツカーなど機能別に選定され、1台目に比べると購入決定権をもつ性別や年齢層が異なることが想定できるでしょう。

 つまり、1台目に保有する車として人気がある車種と2台目として需要のある車種とでは、マーケティング施策が異なってくることがわかります。

 何も考慮せずに、全社一律に一定の層に向けて広告費を増大させようとするより、家族の多い人が休日にみんなでお出かけするイメージの車種、結婚年齢に近い男女が夜景デートに行くときの車種、このように分析することで、施策は効果絶大になるのです。

 分析することに慣れてくると目的を忘れがちなのですが、経営に効果のある施策にするための分析であることを忘れないようにしましょう。

 

全体を把握して検討対象の位置づけを考える

 ここで、会社の実態を考えてみましょう。会社組織は、経営責任者をトップにした階級のピラミッド構造になっています。また、組織は部門という機能別にまとまっているため、部門にまたがる課題の解決について、正しい判断をすることは簡単なことではありません。

 ヒット商品がないことは開発部門のみの課題でしょうか。また、営業部門の努力が足らないから売上が低下したのでしょうか。ある部分に特化した対策ばかりに目を奪われてはいけません。

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