自社の戦略を自覚する

 日常業務を振り返れば、現場レベルから経営陣まで日夜会議が行われています。戦略がなかったわけではなく、自覚されなかった意思決定があったはずなのです。

 産業全体と自社、もしくは自社と競合他社を照らし合わせて過去の傾向を知ることは難しいことではありません。

 長く続いている産業であれば、日銀や総務省のWEBサイトから、産業全体の売上や費用などの統計データを調べることができます。

 過去数十年の推移について、産業全体の売上高、経常利益、研究開発費、広告宣伝費などを折れ線グラフで表現してみるとよいと思います。また、自社の推移でも、同様の項目をグラフにして、産業全体と比較してみましょう。

 過去のデータ分析という事実に向き合うことで、現在の意思決定会議の参加者に、共通の認識を持たせることができます。それは、未来への正しい戦略に向けて積極的な議論の礎となるでしょう。

 景気はときに大きく落ち込むものです。売上高に変化があるにもかかわらず、研究開発費や広告宣伝費などの絶対額を変えないならば、気がつかないうちにそのコスト割合が高くなっている可能性があります。これが無自覚となって投資され続けた結果なのです。

 例えば、勘定科目ごとに対売上高比率の過去データをグラフで表現してみれば、このようなことが発見できるかもしれません。

 このような視覚化を経て、現在の市場や競合はどのような状況なのか、代替商品が出ていないか、新しいテクノロジーを取り込めないかといったことを検討します。その結果、前年同様に投資をするという決定をするならば、それはそれで立派な戦略なのです。

 一つ事例を挙げます。シェアトップの企業と比較したとき、自社がほぼ同じ品質で同じ数の商品ラインアップを持つとしましょう。

 単純に現在の比較だけをしたのでは、シェアが引き離される理由がわかりません。ここで、過去にさかのぼって、投じられた商品数とその時期について各社比較をしてみましょう。

 すると、自社の開発数は多いにもかかわらず、商品ライフサイクルが短いということが判明することがあります。開発効率が悪かったのです。商品数が多かった分、営業への負担も過大になっていることが考えられます。

 今一度、その事業の在り方を検討することで、未来の戦略がみえてくるのです。

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