「過程/プロセスを考える」ことで分析の漏れをなくす

 「シェアが下がった」という結果に対して、営業部門を強化するなど、原因を検討することなく直接的な対処をすることは珍しくありません。しかし、ここでやみくもに人員投入をしても、コストがかかる一方です。

 そこで、プロセスに注目することで、シェアが下がる原因を探る方法があります。

 サービスや商品を開発し、顧客のもとに届けられ、次の購買につなげるまでのモノや作業の流れ(過程やプロセス)を整理してみましょう。この場合、フロー図にすることが多いのです。

 たとえば、ワインの流通経路を調べたい場合には、流れ分析が最適です。また、開発にかかわる業務をまとめたい場合には、部門とタイムラインを軸に判断内容を書き込んだ業務フロー図などがよいでしょう。

 ここで、シェアの漏れ分析をしてみます。市場に対してシェアが20%であったとして、どのような打ち手があるでしょうか。営業プロセスを分解して考えることで、答えに近づきます。

 シェア20%のうち無条件で獲得できた案件を特定します。

 課題の1つ目は、「将来にわたってこのシェアが守れるか」です。

 次に、コンペになった案件とその勝率を特定します。勝敗の要因を分析して「勝率を高める対策をとる」が課題の2つ目です。製品やサービスそのものの品質、もしくは、価格や納期などの条件、また、営業アプローチなどの要因を特定していきます。

 3つ目の課題は、かつて顧客であったクライアントやアプローチできていないクライアントの特定です。これは、「営業のカバー率」が課題となります。

 最後に、企業系列などの問題でアプローチできないクライアント、また、潜在的な市場などを検討していくのです。

 このように、シェアを増やすための取り組みには さまざまな要因があることがわかります。この漏れ分析は製品開発などにも応用できるでしょう。

 「意思決定のための分析の技術」で、著者の後正武氏は、ビジネスシステムの概念は、1980年代にマッキンゼー社でビジネスプロセスと呼ばれ、主に物流の効率化や全体コストの最適化を目指す取り組みがもとになったと述べていました。

 プロセスに着目する分析には、マイケルポーター氏が提唱したバリューチェーンのフレームワークもあります。

 双方の概念は、企業の内部環境をプロセスに沿って検討するもので、同じように考えることができるのです。具体的には、「開発→調達→生産→マーケティング→販売」のように分解されます。

 この一連のビジネスシステムを見て、どのプロセスにヒト・モノ・カネを集中させるかは、それぞれの産業によって異なるでしょう。例えば、情報通信機器の場合には、新製品が次々と出るので、開発に集中していると考えられます。

 また、一般消費者をターゲットにした製品では、ブランドも大事です。コンビニエンスストアなどでは、商品の調達に力を入れています。

 チェーン展開するための販売店舗数も重要でしょう。このように、成功のためにかかせない要件をKFS(Key Factor for Success)やKSF(Key Success Factor)と呼びます。

 後正武氏によれば、ビジネスプロセスの検討には3つの概念が大切です。

・フィックス
 各プロセスにおいてコスト改善の工夫を行うなど、部分最適をすることを差します。

 品質管理活動QCで注力されるのもこの部分です。

・バランス
 業務の流れを最適化することです。物流の単位を検討したり、製造部品の備蓄と販売サイクルの整合を合わせたりするような活動を指します。

・リデザイン

 システム全体を見たときに、異なる視点から再設計することです。ダイナミックな変化が求められます。

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