新規開拓の基本ロジック

新規開拓の考え方と心構え

 新規開拓の基本ロジックは、色々な販売手法構築に応用可能であり、各種販売手法のベースになっています。
 基本ロジックに則って新規開拓を進めれば、効果・効率的な新規開拓が可能になる。
 自ら販売戦略・戦術を考える際の羅針盤として、また、各種販売手法の体系的な整理として活用できます。
・イニシャル&新規、 個人&法人、 バランス良く取り組む必要がある。
・プロジェクト的な取り組みに、原則として全営業時間の3割を超える時間を投入してはならない 。
・先入観を排除。根拠のない判断はしない。それは自らの可能性を自ら否定することになる。根拠のない話は否定するくらいの強いスタンスが必要。
・原因作り=仕組み作りを大切にする。
 原因のない結果はない。
 成果という結果を導くためには周到な原因作りが必要。
 原因作りを大切にすれば結果は自然とついてくる。
 結果がでてくるまで一定の時間がかかる事を覚悟しておく必要がある。
・隣の芝生は青く見えるかもしれないが、施策をころころ変えて成功することは殆どない。施策を徹底することで改善点が見えてくる。

 

新規開拓とは

 新規開拓とは、『「どこに」「何を」「どのようにして」販売する?』かということです。
 これが「行動プロセスの全体像」です。
 新規開拓を効率・効果的に進めるには、「行動プロセスの全体像」を考えただけでは不十分です。
 成功事例を分析すると、これにもう一つの要素が絡んできます。
 この要素=共通キーワードが「着眼点」です。
 具体的には以下の通りです。
 ・先入観の排除
 ・新商品
 ・新状況
 ・新設事務所
 ・調べる
 ・支払い能力
 ・コスト節減
 ・すき間
 ・組織の活用
 ・スピード
 ・執念

 新規開拓の成功事例を客観的に分析すると、戦略的にせよ、結果的にせよ、着眼点を念頭におきながら行動プロセスを進めていることがわかります。
 例えば、ターゲットの選定に際し、利益が上がっているところと上がっていないところ、あなたはどちらを選ぶか?
 言うまでもなく前者でしょう。
 ニーズがあっても、支払い能力がなければ、契約は成立しないからです。

 ここから「ターゲットの選定」-「支払い能力」というリンケージが出来てきます。
 従新規開拓とは、着眼点と行動プロセスの合理的・現実的な組み合わせ、もしくは、着眼点を念頭に置きながら、合理的かつ現実的に行動プロセスを進めること と言うことが出来ます。 

 

新規開拓セールスの基本

 「案件見込み客との会話が続かず、苦労する」「担当者と仲良くなるが、肝心の商談が進まない」など、営業に関する悩みで最も多いのが「新規開拓セールス」に対するものでしょう。

 新規開拓を行う際の取り組み方には、次に挙げる三つの押さえるべき原理原則がある。

 

「目的と手段」
 業績や顧客基盤の維持・拡大などを目的とし、その目的をかなえる手段か

「考え方」
 いかに「良い客」に「良い接触」を行い「良い提案」へ結び付け、成果を上げるか

「行動」
 リピート受注、固定客化に結び付ける行動が取られているか

 

1 新規開拓の目的
 「何のために新規開拓を行うのか」という目的として、一般的に、大きく分けて次の2点があります。

(1)業績を補填する“守り”的発想
 既存顧客に既存の商品やサービスを、しかも従来のやり方でセールスをしても「平均10%は業績がダウンする」といわれています。

 守りを意識した新規開拓とは、こうしたダウン分を見越して、「自然減の業績を補うために新規開拓をする」という考え方から出発した発想です。

(2)顧客選別を推進するための攻め的発想
 ダウンする業績を補いつつも、「顧客選別」、つまり、赤字受注先や与信不安先などの不良客の排除も併用して、新規開拓をする考え方である。

 まず、「顧客選別」の新規開拓を行うためには、新規顧客の取り込みに加え、適正利益の確保や与信条件の設定などにも積極的に取り組まなければ、新規開拓の目的を果たすことはできません。

 自社が提供する商品・サービスの特徴やメリットについて、顧客に理解させたところで、安売り受注に歯止めをかけない以上は、せっかく獲得した新規開拓の効果も半減することになります。よって、まず「新規顧客数ありき」ではなく、社内で新規開拓の目的を明確に方針として打ち出すことが先決です。

 

2 新規開拓の手段

 

 新規開拓の手段として、「顧客」「商品・サービス」という二つの切り口で考えられる。

 一般的に、新規取引とは「①既存顧客に対する新規提案」である、または、「②新規顧客に対する既存提案」である のパターンが多く見られる。

 この新規取引のうち、最も重要であるとされる②のケースについて、その考え方と行動について見てみます。

 まず、新規開拓に関する考え方として次の3点を押さえておきます。

(1)「良い客」を狙う
 業績が伸びている、または、独自性があり将来性の高い相手先をターゲットとしているか

(2)「良い接触」を得る
 顧客のニーズを引き出すべくタイムリーな情報提供を継続しているか

(3)「良い提案」を行う
 キーマンに会い、予算に合ったタイミングの良い提案ができているか

①リストアップ
 ターゲットを明確にし、いつまでに(期限)、だれがやる(担当)のかを明確にする。
 ただし、「ターゲット先=見込み先」ではない。
 顧客に接触して、提案を受け入れられる素地をつくり上げる段階である。

②見込み化
 顧客のこだわりを早期につかみ、自社の強みを生かした提案を行う。
 見積もり提出の前提である「キーマン」を押さえ、自社の「提案の優位性・付加価値」をキーマンに理解させることである。

③ランクアップ
 顧客(キーマン)に自社の提案価値を理解させた後、受注見込をいかに「見極めるか」が重要となる。
 自社商品の採用に当たりネックとなることは何か。
 また、今後フォローすべき案件かどうかの見極めを「正しく」「早く」行う段階である。

④フォロー
 売りっぱなしにせず、購入後にも相手先の状況を確認し、不具合があれば即対応する。
 チェックリストなどによる組織的なフォロー、リピート受注づくりのための仕組み(型決め)を行い、個人のフォローに関するバラツキをなくすことが必要です。

⑤提案
 購入頻度基準などによる重要順位付け、定期フォローによる顧客の選別・囲い込みを行う。
 例えば、キャンペーン・イベントやアンケートによるヒアリングを通じて、自社のPRや販売促進と同時に、過去の購入動機の分析や新たなニーズへの対応により、新規顧客の固定化(ファンづくり)を図る段階である。

 「なぜ新規開拓をするのか」。
 多くの会社は、その目的理解が不十分なままセールスを展開し、価格競争 に終始しているのです。
 そのため、結果に対しても正しい評価がなされぬまま、うやむやに済まされるのです。

 

3 新規開拓のアプローチ段階

 「なかなか担当者に会えない」「時間をかけてヒアリングした割には、提案・成約件数が伸びない」などの対策として、一般的に大きく分けて次の二つがある。

(1)新規の狙い先に対し、「会う(ご来店いただく)」ためには、既存取引先と違い、きっかけが必要である。

 例えば、訪問目的として「ごあいさつ」や「新商品の案内」では アポイントさえままならないでしょう。

 顧客志向であれば、「コストダウンに関して、お役に立てるのではとご連絡しました」「品ぞろえのお役に立つアイテム(サービス)を、一度ご検討になりませんか」などという、相手の立場に立ったトークの研究も必要です。

 また、自社の会社案内を一言集約できるか、相手に合わせた内容が可能かも確認する必要があります。

(2)必要なこと(こだわり)を「聞く」ためにも工夫が必要。
 「何か(お困りごとは)ありませんか?」と単なる御用聞きに終わらず、相手が気付いていない問題を気付かせることができれば、営業主導のセールスにつながりやすい。

 例えば、想定できるセールストークとして次のようなものが挙げられる。

①相手の状況を引き出すために、まず、相手が話しやすい内容から聞き出していく
 例1 重点の考え・方針
 例1 重点の考え・方針
  「今、一番何に力を入れていらっしゃいますか?」
 例2 理由・きっかけ
  「なぜ、その取り組みを始められたのですか?」
 例3 成果・進捗状況
  「(当初の予定通り)順調に進んでいらっしゃいますか?」
 例4 良し悪しの原因
  「何が良い(悪い)のでしょうかね?」
 例5 今後の対策
  「今後どのような取り組みをお考えですか?」

②自然にヒアリングするための工夫
 例6 聞きづらい雰囲気であれば、他社での活用事例を通じて相手の状況を聞き出す。
 例7 相手の話に相づちを打ちながら、手帳などに記録する。
 例8 確認すべき内容(「キーマン」「予算」「時期」)の聞き出し方も事前に決めておく。
 例9 相手の業務内容やスケジュールを聞き、繁閑の時間・日・週・月を押さえて聞く。
 例10 断り文句が本物かどうかを見極められなければ、先輩・上司に同行してもらう。

 

4 新規開拓のプレゼンテーション段階

 プレゼンテーションの段階では、「相手のこだわり=自社の強み=ライバルのみ」となるよう提案の趣旨を整理して、キーマンに理解させ、かつ、納得させなければならない。

 ポイントは次の3点です。

(1)確認を怠らない
 「前回の宿題でありました○○のご提案(概算見積もり)をお持ちしました」と、持参した企画書を提出しても、「そんなことあったかな?」と返答されるケースがある。

 これは、提案の際に「前回確認した課題」の事前再確認が不足しているためです。

 特に、提案まで時間が経過した場合、ヒアリング内容がすでにピンボケになっている可能性もあるので、相手への念押しが必要である。

(2)「説得する」のではなく「納得させる」
 相手に自社の強みを理解させるには、提案商品(サービス)を新規に利用する動機づけ(メリット、きっかけ)が必要。

 そのためには、「商品説明」をするのではなく、「効用説明」こそが必要になる。

 「自分が言いたいこと(商品)」ではなく、「相手が聞きたいこと(効用)」を、相手に合わせる形で Q&A形式の説明ツールや活用事例などを紹介できるように準備しなければならない。

(3)提案書は簡潔・明瞭・迅速に
 相手に提出する提案書は、要領を得た内容で分かりやすさを意識する。

 提案書を初めて見た人でも理解できるように、「趣旨・目的→内容→期待する成果→条件」という一連の流れを整然と表現することが大切。

 また、提出までのスピードも速ければ速いほど価値を生む。

 「速い=誠実・ヤル気がある」という評価につながりやすく、相手への印象が良いはずです。

 

 

5 新規開拓のクロージング段階

 クロージング段階では、成約はもちろんのこと、先々のリピート受注も見据えた取り組みが必要となる。

 そのためには、次の3点がポイントとなります。

(1)値引きは「一時の利益」、品質は「長期の利益」
 「最終提案価格」の値引き交渉にとらわれるよりも、安定的な品質保証を求める方が“得”であることを、セールス自らが理解し、また、相手にも理解させることで、複数年(回)契約に持ち込む。

(2)ベストセラーよりロングセラー
 「今売れているもの」と「今まで売れ続けているもの」とを比較し、「顧客の評価こそすべて」の視点に立って、自社ロングセラー商品が売れ続けている理由や実績を訴える。

 これによって、「ほかにない=オンリーワン」の要素を盛り込んだ自社提案の付加価値を認めさせ、満足度を高めてもらうのである。

(3)業績づくりは「縁づくり」から
 「アフター(ファロー)の弱いトップセールスは存在しない」という言葉通り、担当セールスの社内外のファンからの後押しで、普段の取引先や社内へのフォローの成果が左右されるものである。

 新規開拓ほど、自らの存在価値を賭けてセールスの醍醐味を味わえるものはない。

 「顧客の評価」は、自己の「諦めない」努力によってのみ実を結ぶと信じて、目標達成に向けた挑戦をしていただきたい。

 

既存客の固定化の原理原則

1 引き継ぎ

(1)顧客にメリットを提供する

 担当者の引き継ぎで最も重要なことは「いかに顧客に不便を感じさせないか」であるが、中でも押さえるべきポイントは次の3点である。

①顧客にメリットを提供する
 担当変更を「顧客へのサービスアップ」のきっかけとする。

 通常、担当者の変更は、顧客からすれば、「また一から当方の事情を説明するのは面倒だ」「時間をかけてつくった人間関係が失われる」などのマイナスイメージが付きまといます。
 したがって、この対策として次の2点で対処しなければならない。

・「自社の存在価値(創業の精神)の再確認」
 自社が顧客にとって かけがえのない存在となるために何が必要か
 後任担当者が引き継ぐ際、「わが社が顧客に与えるメリットは何か」 
 「なぜ顧客はわが社と取引しているのか」をあらためて検証する必要がある。
 引き継ぎを、取引のきっかけや経緯、自社がライバルと差別化を図っている優位性など、顧客との間で確認し合う場としなければならない。

・「メリットを提供しているか」

 個人の力量に頼った一人よがりセールスになっていないか
 「担当者同士の個人的つながり」を「会社同士の組織的つながり」とするため、引き継ぎを全社挙げての「顧客のお役に立つ」体制づくりの機会とする。
 これにより、顧客に商品の「品質」「価格」以外で、どんな{付加価値」をメリットとして提供できるかを再提案するきっかけにつなげることができる。

②「後任担当者を認知してもらう」
 後任のセールス担当者が取り組みやすい環境をつくる

後任担当者が顧客の「お役に立つ」ためには、いかに早い段階で担当者として顧客に認知してもらうかが重要となる。
 セールスの現場では、意外とこの「認知」が軽視されがちです。そのため、後任担当者が膨大なエネルギーを費やして顧客との関係を再構築することになったり、担当変更を機に顧客と疎遠になって取引が大幅に減ったり、なくなったりするなど、不幸な結果を招く可能性がある。
 そこで、「後任担当者を認知してもらう」ためには、次の3点に留意する必があります。

・後任担当者を立てる
 前任者からすれば、顧客との関係が深いほど「思い入れ」も強く、感傷的になりやすい。
 特に、自身が新規開拓した顧客や過去のクレーム対応など、しがらみがあればなおさらです。
 一方、後任担当者にしてみれば、しがらみの多い引き継ぎ先ほどやりにくい顧客はない。
 ともすれば、顧客からの期待を必要以上にプレッシャーに感じ、引き継ぎ後は足が自然と遠のいてしまう。
 このような「やりにくさ」を引きずったままでは、期待された成果など上げられるはずがない。
 顧客の立場に立てばこそ、前任者は自社の次なる代表として後任担当者を「立てる」余裕を持つべきである。

・演出する
 後任担当者の「あるべき姿」を描き、前任者がそれを演出する。
 前任者は、後任担当者と顧客担当者との接点を見出し、「互いの共通項目」を通じた関係づくりをフォローする。
 併せて、自分にない後任担当者の強み(長所や実績)の紹介を「さりげなく」行う工夫も必要となる。

・割り切りの心を持つ
 引き継ぎ時のタブーとして、前任者が過去の思い出話や顧客との苦労話に花を咲かせ、必要以上に「個人的な縁」に感謝したり、「何かあれば私に言って下さい」などと、本当に引き継ぐ気があるのか疑うような言動・やり取りが挙げられる。
 これら顧客への個人的なお礼が必要であれば、あいさつ回り以前に済ませておくべきです。
 いかに後任担当者が取り組みやすい環境を整えるか。
 そのためには、引き継ぎ後、前任者はしばらく顧客とは直接連絡を取り合わない割り切りも時には必要となる。

(2)顧客の要望をかなえる

 今まで表面化しなかった自社のネックを解消する。

 担当者の変更を、今まで表面化していなかった自社の「ネック」(=「不安」「不満」「不足」「不快」)を解消する場面として利用することもできる。

 そのためのポイントとして、次の2点がある。

①「おかげさま」意識への変革を行え
 まず、ネックとして、前任者の持つ おらが客意識 に基づいた「思い込み」「押し売り」「お願い」セールスがある。
 これらからの卒業が必要です。
 そのためには、前任者自身が「開拓したのはオレ」ではなく、「自社が開拓した顧客の初代担当者」という意識変革が必要。
 顧客との縁に感謝し、その機会を与えてくれた自社にも感謝する。
 顧客のためを思えばこそ、「引き継ぎ業務」を優先・先行してスケジュール管理し、滞りなく引き継ぎを行うことができる。

②組織営業で臨め
  引き継ぎ時の あいさつ回り では、普段はめったに会えない先方担当者の上司、決定権者(キーマン)と面談できることがある。
 「おかげさま精神」に基づいたアポイントを取り、自社トップ・上司を同行させ、先方トップとの面談の場にすることも可能なのです。
 顧客の要望をかなえるには、このような全社オールセールス体制により、今までは聞き出すことをためらっていた自社のネックをヒアリングし、解消することが必要。
 諸先輩が築き上げた自社の顧客基盤を揺るぎないものとするためにも、担当引き継ぎを新旧担当者任せの「作業」とせず、「チャンス」となるよう、心して取り組んでいただきたい。

 

2 業績アップにつながる「顧客開拓」
 「業績=成果」を上げる顧客開拓には、次の三つのポイントがある。

「真の顧客はだれか」

 自社に貢献している顧客の特定

「顧客の声を聞いているか」

 思い込み、勘違いによるピンボケを解消する

「創客活動を進める」

 リピート受注、および新規開拓をにらんだ活動であるか

(1)真の顧客はだれか
 業績の主要素は「売上げ」「利益」「生産性」の3つである。

 業績責任者には、これらを向上させるマネジメントが求められるが、その際のポイントは、大きく分けると次の2点がある。

①なぜ売れたのか、売れなかったのか
 業績の出発点は「売上げ」の獲得である。
 結果に対する原因を考えるに当たって、法人客・個人客のどちらでも、まず「売上げ=取引件数(客数)×取引価格(客単価)」の式で考える。
 自社でのこれらの数値を、「昨年実績」「業界平均値」を参考にしながら、まず取引件数(客数)のアップを図っていく。
 取引価格(客単価)は、顧客主導の要素が強く、取引件数の方が自社主導で取り組みやすいためである。
 売上げの結果の原因を把握するには、件数(客数)の推移・増減から分析する。

②取引したい客はだれか
 取引件数(客数)を伸ばすためのステップとしては、「取引件数(購入客数)=見積件数(来店客数)×受注率(買上率)」の式で検証を行う。
 ここで、「利益」と「生産性」、つまり収益性と効率に関わる要素が加わる。
 「真の顧客」獲得には、自社の状況に合わせて業績への「貢献」という価値基準、すなわち、収益性や効率を物差しとして顧客を選別し、獲得しなければならない。
 自社の提供する商品・サービスのこだわりや強みを理解し、求める顧客こそが「真の顧客」となる。

(2)顧客の声を聞いているか

 顧客開拓の手段として、「得意先アンケート」の活用をお勧めします。

 顧客政策は独りよがりに行われがちで、思い込みや勘違いによるピンボケが業績低迷の一因となるケースもある。

 「顧客のこだわり=自社の強み=ライバルの弱み」となるためにも、自社に対する率直な意見を求め、実態を把握することも有効な手段です。

なぜ自社を利用するのか
 ある会社でモニター調査を実施したところ、提供商品のメリットやサービスの開発テーマ、適正価格や顧客への動機付け、セールスポイントに至るまで、モニターの協力で改善することができた。また、モニターには、自社の宣伝塔として地域内でクチコミ中心に活躍してもらったとする。
 モニター調査の効果は、同社の想像を超え、顧客向けサービスの原点を見つめ直す格好の機会となったのです。
 アンケートから見えてくる「顧客の声」を参考に、自社の業績向上のピントを合わせていただきたい。

(3)「創客」活動を進める

 新規顧客開拓は、既存顧客からのオーダーと比較すると5倍のコストとエネルギーが必要だと言われる。

 そこで、まず、既存顧客からのリピート受注(既存客の深堀)に絞った取り組みを進めることが優先します。

 そのために、次の3点を心掛けたい。

①リピート受注を支える仕組みづくり
 既存顧客へのリピートを促す仕組みは、「目的にかなった生産性」の物差しで考えること。
 費用対効果を念頭に置きつつ、平易性(だれでも分かる)・お買い得感・継続性の保持を重視する。

②顧客情報の管理
 顧客の趣向の複雑化により、「必要な時」に「必要なもの」を「必要なだけ」提供する顧客対応のノウハウも求められる。
 陳腐化した過去客の掘り起こしよりも、直近の購入顧客へのリアルタイムアプローチに絞ったスピード対応が求められている。

③顧客が顧客を呼ぶ紹介運動の展開
 「遠くの親戚より近くの他人」の言葉通り、近しい間柄の方がフォローしやすい。
 そして、「顧客の期待を裏切らない」「約束を守る」ことを前提に、紹介運動を実施すべきです。

 業績は「上がるもの」ではなく「上げるもの」です。
 顧客は自然にいなくなり、商品は売れなくなるものだと考え、これを顧客開拓の原動力とし、「正常な危機意識」で顧客獲得に臨んでいただきたい。

 

実践に活かす情報収集の方法

1 情報の重要性

 「情報なくして戦略なし」と言われるように、営業活動におけるさまざまな場面で情報は必要不可欠である。

 営業という戦いで成果を上げるには「3つの戦略」に基づいて戦わなければならない。その戦いを有利に、また、勝利の確率を高めるためには情報が必要である。営業とは、基本的に市場のパイの奪い合いであり、自社が他社に比べて優れているか、あるいは劣っているかを把握することが重要となる。
 優れていれば、それをどう維持し、さらに伸ばしていくか。

 劣っているのであれば、どこが弱点で、どうすれば逆転できるか。

 こういったことを考えなければならない。そのためには、何が必要かをはっきりと認識し、どのような情報が必要で、どのように活用するのかという情報収集の目的を明確化しなければならない。

 その上で、市場の規模・立地・売り先(得意先)の業種や業態によって「3つの戦略」を立案するのである。

 

2 データを分析する
 戦略を立案する際には、現状把握のためにデータが重要となるが、単なる事実で終わってしまっては意味がない。

 データに基づく事実を踏まえた上で、どのように活かすかがポイントになる。

 例えば、ある地域でベビー服の店を出す場合、事前にその地域の商圏の範囲や人口、世帯構成などの調査をする。

 しかし、その調査結果を漠然ととらえるだけでは成功は怪しい。入手したデータをいかに活用するかが重要なのです。
 人口動向を調べるのであれば、実際にベビー服を着用する乳幼児の数はもち ろん、購入ターゲットとなる親の数、さらには孫を持つ世代の数なども調べた上で、具体的な戦略の立案を活かしてこそ、情報に価値が生まれる。さらに、分析の過程でグラフや表・マップなど、いわゆる「見える化」を図ることによって、情報の価値が高まる。併せてデータの細分化も重要なポイントである。
 商圏や人口・世帯調査も、単に面積や数を見るだけではあまり意味がないが、乳幼児や親の数、さらには孫を持つ世代の数まで見ることで活きた情報になる。

 細分化することにより、戦略が立てやすくなる。

 細分化するデータは、一般的に「地域別」「商品別」「顧客別」「担当者別」などが考えられる。

 

3 必要な情報とは?

 情報は大きく2種類に分けられる。

 1つは「定量的情報」、もう1つは「定性的情報」である。

 定量的情報とは数値で表せる情報のことであり、定性的情報とはそうでない情報である。

 別の見方をすると、情報は営業(販売)情報とエリア(地域)情報に分けることもできる。
それぞれを組み合せて考える。

 定量的な営業情報とは、得意先の売上高・仕入高・生産高に対する自社の商品別・拠点別の占有率(シェア)や、他社(ライバル)の情報(立地・拠点数・売上高・得意先内におけるシェア、その中でのナンバーワン(オンリーワン)比率・営業人員数・訪問件数など)がある。

 特に、ライバルに関する情報は、常に新しい情報に更新しなければならない。

 どのようなマーケットでもライバルがいないことはあり得ない。

 営業活動においては必ずライバルとぶつかるのだから、勝つには「敵」を知らないと戦えない。
 ライバルのことを知り、強いところは避け、弱いところを攻める。ライバルが嫌がることをして勝率を高めるのです。

 定性的な営業情報とは、得意先のトップや担当者の性格・嗜好や取引上の暗黙のルールなどが考えられる。

 定量的情報を活かすために押さえるべき定性的情報は多い。
 定量的なエリア情報とは、商圏人口・売りたい商品の需要高・事業所数・工場数・商品の販売額や製品出荷額など、量的に計測できる情報である。

これらの情報を細分化することで、より活きた情報になります。

 情報を見る時に、実数や伸び率が全体の総需要やシェアと関連しているかどうかを知ることも重要です。
 また、そのエリアが、商業エリアか工業エリアか、閉鎖的か開放的か、成長性があるか成熟しているか、隣接エリアと重複しているか独立しているか、などといった情報を見ることも必要になる。

 定性的なエリア情報とは、そのエリアの気候・風土・地形・歴史や人間性、商習慣など数値化できない情報です。

 これらの情報も定量的情報と組み合わせて活かす必要がある。

 情報収集の1つの方法として「ローラー調査」がある。

 ローラー調査とは、ある特定のエリアや業種を選定し、その中で得意先やユーザーの全件を対象に実施する調査である。

調査内容は、売上げ規模・インストアシェア・他社との競合状態・販売対象先・営業人員などが考えられます。

 ローラー調査を行う際の留意点は、調査機関など外部に依頼するのではなく、自社の人間(営業担当者)が行うこと。
 1人で専従的に、あるいは、複数の人間が一斉に期間を決めてチームを組んで、対象先をすべて調査できるまで徹底しなければならない。

 その結果、担当者は自分の足で稼いだ生の情報を手にすることができる。

 そして、予想とは違った生の情報や未訪問対象先の把握など、意外な発見が期待できます。

 そのことを実際に体験することが重要なのです。

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