営業活動の成否は事前の情報収集

営業活動の成否は事前の情報収集

 営業活動においては、事前準備として「顕在情報収集」が非常に重要です。

 顧客に連絡したり訪問したりする際には、事前に顧客や競合他社などについて情報収集したーズや状況などの仮説を立て、訴求力の高い提案ストーリーを組み立てることが成果を挙げる方法の一つだからです。

 しかし、「どのような情報を収集すればよいか迷う」「情報収集しても営業活動に生かすことができていない」といった営業担当者の存在も少なくありません。

 この解決策としては、

 ・事前に収集する情報の項目を定型化する

 ・収集した情報を活用したトークパターンを覚えておく

 営業活動は、個々の営業担当者のノウハウに頼る属人的な活動が多数見られますが、「顧客を訪問する際には、直近3年間の業績、ニュースリリース、関連する新聞記事を必ず確認する」「確認した情報に基づいて顧客のニーズをヒアリングする際は、このように質問する」など定型化して身に付けることで、誰もが同じように情報収集することができるようになり、組織的な営業力強化につながります。

 また、情報収集を定型化することによって、営業活動の効率化を図れるというメリットもあります。

 

営業活動に重要な「顕在情報」と「潜在情報」

 営業活動で活用する情報には、「顕在情報」と「潜在情報」があります。

 顕在情報は営業担当者が知っておくべき基礎的な情報、潜在情報は営業活動において、受注に大きく関連するポイントとなる情報を指します。

 

顕在情報を活用するためのポイント

1 当事者の立場

 顕在情報とは、自社や競合他社のサービスの特徴、関係する法改正情報などを指します。

 「事前の情報収集の定型化」は顕在情報を収集する際に効果的です。

 顕在情報の多くは、テレビ、日刊紙、業界誌、パンフレット、インターネットなどから容易に収集することができます。

 この顕在情報を有効に活用するためには、営業活動におけるトークに落とし込む必要があります。

 例えば、多くの営業担当者は、自社と競合他社のサービスについて、品質、金額などの違いを知っているはずです。

 しかし、それはパンフレットなどに記載された内容を比較しているだけで、最も重要な「当事者の立場」というエッセンスが欠けています。

 同じサービスであっても、顧客、競合他社、自社とでは評価が大きく異なります。

 営業担当者が自分では万全だと思うトークを展開しても、顧客の反応が芳しくないことがあります。それは、そのトークが顧客の立場に立って練られたストーリーではないためなのです。

 このような点を踏まえ、営業担当者は、自社と競合他社のサービスを、少なくとも顧客の立場に立って比較した「情報マトリクス」を作成してみることです。

 こうすることで、自社サービスのポジショニングや顧客ニーズをより鮮明にイメージすることができます。

2 情報マトリクスの活用例

 情報マトリクスを活用する際に重要なのは、どのように顧客へのトークにつなげるかという視点です。

 トークを考える際に常に念頭に置いておきたいキーワードは「理由」です。

 実際のトークでは、「顧客にとっての具体的なメリット」「競合他社に対する自社の優位性」が分かるようにストーリーを組み立てることが重要です。

 ここでいう顧客にとっての具体的なメリットとは、「なぜ顧客は、そのサービスを導入したほうがよいのか」という導入の理由です。

 また、「競合他社に対する自社の優位性」とは、「なぜ顧客は、自社(のサービス)を選択したほうがよいのか」という選択の理由です。

 こうした導入、そして、選択の理由が具体的で分かりやすいものであればあるほど、顧客に対して訴求力が高まる可能性があるといえます。

 

潜在情報を収集するためのポイント

1 潜在情報とは

 潜在情報とは、通常は表に出てこない、「顧客の本音」「競合他社の営業戦略」「自社従業員のモチベーション」などを指します。

 このうち、競合他社の営業戦略は日刊紙などで紹介されることがありますが、日刊紙に紹介される内容は顕在情報にしかならないともいえます。

 潜在情報は、顕在情報からさらに踏み込んだ情報であり、この場合は、競合他社の営業戦略について実際にそれを遂行する(競合他社の)営業担当者がどのように感じているのか、あるいは現場でどのような戦術を実行しているのかといった情報です。

 こうした情報を把握していれば、顧客へのアプローチ方法や提案内容がより的を射たものとなってきます。

 この潜在情報を収集するために欠かせないのが社内外での人脈形成です。

 潜在情報の収集は、社内外とのコミュニケーションが重要になってくることや、相手があって成り立っていることなどから、定型化するのが難しいものです。

 ただし、どこからどのような潜在情報を収集することができるのかという情報源や収集可能な主な情報などは押さえておくとよいでしょう。

2 社内からの潜在情報を収集

 社内から潜在情報を収集するためのポイントは、営業担当者を中心とした良好なコミュニケーションの実現にほかなりません。

 営業担当者は、自分一人が営業活動を取り仕切っていると考えがちですが、実際は異なります。

 自社の商品・サービスをセールスする際は、同じ営業部門の上司や部下のほかに、製造・開発・企画などの他部門の従業員の協力が必要です。

 そこで、営業担当者はこうした協力者とコミュニケーションを取り、仕事の状況や本音を聞き出すことのできる良好な関係を構築することが重要となります。

 その際、営業担当者のほうからも、営業活動の進捗度合いや自分の本音を伝えることがポイントとして重要です。

 こうしたコミュニケーションの結果、営業担当者に社内の雰囲気やモチベーションなど、貴重な潜在情報が集まってくるようになります。

 営業活動では、とかく社外に目が向けられがちですが、前提は磐石な社内体制であり、それを把握する上で社内の潜在情報は非常に重要です。

 例えば、営業担当者が一生懸命に新規顧客を獲得しても、そのフォローを担当する従業員が不足する状態では、本来喜ぶべき新規顧客の獲得が逆に不満の原因になってしまいます。

 その点、あらかじめ社内の潜在情報を収集していれば、営業担当者は、営業計画の修正、経営者への進言などによって、無用なトラブルを回避することができるでしょう。

3 社外の潜在情報を収集

 

 社外から潜在情報を収集する際の主な相手は、競合他社の営業担当者、顧客の取引先、顧客自身などです。 

 それぞれ付き合い方は異なりますが、競合他社の営業担当者と顧客の取引先から潜在情報を引き出すための基本は、「ギブアンドテイク」といえます。

 相手から情報を引き出すばかりの関係は長続きしないので、こちらからも何らかの情報を与えなければなりません。
 とはいえ、10の情報を教えてもらったお返しに10の情報を返す必要はありません。

 問題は情報の質です。

 こちらが10の顕在情報を与えても、相手は退屈するだけかもしれません。

 一つだけでも、相手が求めている潜在情報を与えたほうが相手からの感謝は大きいものです。

 また、その際、潜在情報のすべてを事細かに伝える必要はなく、本当に重要な部分は隠しておくことも必要です。

 潜在情報をめぐる「ギブ アンド テイク」の関係は一種の交渉であるため、「ここまでは、相手から聞き出せる」、あるいは「ここまでは相手に伝えてもよい」といった交渉の線引きを持つ必要があります。

 この線引きができていないうちは、外部からの潜在情報の収集は行わないほうが無難です。

 

潜在情報の情報源

1 競合他社の営業担当者

 競合他社の営業担当者は、自分と類似したサービスを取り扱い、共通したみを抱えているよき理解者であることが少なくありません。競合他社の営業担当者は打ち解けやすい相手といえます。競合他社の営業担当者との関係構築は比較的簡単で、はじめの一声さえかけることができれば、ある程度は打ち解けることができることもあります。

 問題は、「どこまで親密になるか」ということですが、やはり、一線を引いておいたほうが無難なことは間違いありません。営業担当者は、情報交換のつもりでも、競合他社の営業担当者と仲良く話している姿を不審に感じる人も少なくないためです。

 ただし、一線を引いた関係であっても、競合他社の営業担当者から得られる情報は非常に貴重です。

 例えば、「リテール用の商品を開発したが、一般家庭にまで販売先を増やしたことで訪問先が増え、十分に対応することが難しくなってきた」などの話を聞いたとします。

 一見、何気ない会話に思えますが、これは競合他社の営業の現場の本音です。

 あらかじめ、競合他社の営業戦略などをテレビ、業界誌などから顕在情報として収集していれば、なおさら使いやすい潜在情報となり得ます。

2 顧客の取引先

 顧客の取引先は競合他社の営業担当者と並ぶ貴重な情報源です。

 特に、同じ顧客に類似したサービスを導入していて、なおかつ、直接的に競合しない取引先は理想的といえます。

 こうした取引先は、顧客の担当部署が自社と同じであるケースが多く、場合によっては、顧客の窓口担当者も同じかもしれません。

 顧客は、直接的に競合しないサービスについては比較的よく話します。

 例えば、営業担当者が世間話からの流れで上手に誘導すれば、取引先のサービスに対する評価を聞き出すことができます。

 ただし、これとは逆に、取引先も顧客から自社サービスの評価を聞き出すことができるので注意が必要です。

 顧客の取引先から、自社サービスに対する顧客の評価を聞き出せる関係になれば理想的です。

 例えば、顧客の取引先から「顧客は、あなたのところの商品の○○を評価しているが、□□には改善の余地があると感じている。また、最近は競合他社が営業に来ているらしい」、といった顧客の本音を教えてもらうことなどが考えられます。

 このような潜在情報があれば、次の提案方針を決めるのに役立つでしょう。

3 顧客

 本来、潜在情報は顧客などから直接収集することが最も大切です。

 顧客としても、自分が導入しているサービスを今よりも良いものにしたいため、営業担当者が質問しさえすれば、少なからず潜在情報を提供してくれるでしょう。

 しかし、多くの営業担当者は顧客になかなか質問をしません。

 それは、顧客がサービス改善のために伝えてくれる潜在情報を、自社サービスに対する不満だと誤解して臆病になっているからです。

 営業の本質は、顧客にとってメリットのあるサービスを提供することで満足してもらう一方で、自社は適正な収益を受け取り、互いにメリットを享受できる関係を築き上げることだといえます。

 顧客への質問を通じて潜在情報を聞き出すことは そのための第一歩です。

 顧客に積極的に質問し、潜在情報を収集するように努めることです。

 顧客も、よく質問してきて、顧客の話に基づいてさまざまな提案をしてくる営業担当者を見て「自社のことをよく考えてくれている」と感じるでしょう。

 質問をすることは、結果として顧客との関係深耕化につながるといえます。

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