なぜ「経営戦略」が必要なのか

戦後の日本経済は、高度経済成長や人口増加に伴い、特徴ある経営戦略を打ち出さなくても右肩上がりの成長を遂げてきました。しかし、バブル崩壊以降リーマンショックなどの金融危機、国際競争の激化など日本を取り巻く経済状況は刻々と変化してきました。

また、技術の発達や新興企業、異業種からの参入も相次ぎ、市場シェアが脅かされることも当たり前の時代になりました。

変化する経済環境に対応するため、企業は自社の強みを正確に把握し、長く企業を存続させるための計画や具体的な戦略を打ち出し、それを競合他社よりも早く実現していくことが求められています。そのために「経営戦略」が必要なのです。

 

経営戦略を一言で言えば「強みを活かして戦う」ということです。

 

 

「強み」という言葉に内包される「競合」と「顧客」

 

強み:競合他社にはない、自社の独自能力

強みは2つに分けられます。商品・サービスなどの短期的につくれる「差別化ポイント」と、人・文化、大規模設備などの長期的に育成する「独自資源」です。

 

1)顧客に価値をもたらす「差別化ポイント」

商品・サービスなど、顧客に直接意味をもつものです。具体的には、4P(商品・サービス、流通・チャネル、広告・販促、価格)で表せるものです。

マクドナルドの差別化ポイントの一つは「低価格」です。

 

2)差別化ポイントを支える「独自資源」

人・文化、大規模な工場・設備、特許などの資源は短期的に育成できるものではありません。他社にない「独自」な資源です。独自資源は、工場などのハード資源と、人などのソフト資源にさらに分けられます。

マクドナルドの「低価格」という差別化ポイントを支えるのが、国際的な牛肉調達網などです。ハンバーガーの価格を下げることは、短期的には誰にでもできます。ハンバーガーの価格競争が起きました。しかし、マクドナルドのような全世界的な調達網や国内数千店舗の規模の経済という「独自資源」がなければ、低価格を維持できません。結局、マクドナルドには誰も価格競争で勝てませんでした。

「強み」とは、「競合他社にはない自社の独自能力」ですが、それは「差別化ポイント」と「独自資源」に分けて考える必要があります。

 

 

顧客:自社の強みを重視する顧客セグメント

顧客は絞るのが鉄則です。顧客とは、全ての顧客ではなく、ある特定の「顧客セグメント」を指します。

全ての顧客はターゲットにできませんし、するべきではありません。顧客を広く取ると、絞ってきた競合に負けるからです。「国民万人向けの雑誌」より「30代女性用雑誌」や「パソコン雑誌」の方が売れるに決まっていますし、事実雑誌の本棚はそうなっています。

 

顧客は以下の2つの方法で絞ります。

1)自分が売りたい顧客

市場が十分に大きい、利益率が高い、他の顧客への影響力があるなど、自分が売りたい、というのが一つの条件です。

 

2)自社の強みを重視する顧客

戦略とは強みを活かして戦うことです。自社の強みを重視する顧客を選べば競合に勝てますし、そうでなければ負けます。マクドナルドの強みが低価格なら、低価格を重視する顧客を選べばマクドナルドは勝てます。

「売りたい顧客」と自分の強みを重視する「買ってもらえる顧客」をすりあわせる(最適化する)のが、「強みと顧客」ということです。これは、言うは易しですが、大変なことです。

自分が売りたい顧客が自分の強みを評価してくれないなら、そのような強みを育てていくことになります。それも戦略です。

自社の強みは何か、それを評価してくれる顧客は誰か、というのは極めて重要な問いです。答えがすぐアタマに浮かばなければ、それを知るだけでも大変有益です。

 

 

強みと顧客を結ぶ「価値」

顧客は、自分が実現したい「価値」を買っているのです。「強み」があるということは、より高い「価値」を顧客に提供できることです。「価値」が「顧客」と「強み」を結ぶのです。

最終的には、

・自社の強みを顧客の「価値」に変え、顧客に伝える
・顧客の「価値」を実現するために、自社の強みを使う・育てる

これが経営戦略の本質です。

 

「利益」は「結果」であって、それ自体が目標ではありません。

自社の強みを活かして、その強みが活きる顧客に対して価値を提供すれば、価値の対価を売上に変換して利益が産まれます。強みがあるということは、競合他社にはできないことのはずなので、競合より高い価格がつけられ、その結果利益が上がるはずです。

もし、利益があがらない場合は、

・本当は強みではない(競合他社にもできる)
・その強みには価値がない(顧客がそれに対してお金を払わない)
・顧客の選択を誤っている(お金が無い、または強みを評価しない顧客を選んでいる)

など、戦略に問題があると言えるのです。

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