戦略評価 BSC

BSC(Balanced Scorecard)

 

バランス・スコアカードは、ビジョンと戦略を明確にすることで、財務数値に表される業績だけではなく、財務以外の経営状況や経営品質などから経営の状態を評価し、バランスのとれた業績の評価を行うための手法です。

バランス・スコア・カードは、経営の様々な面について戦略的な目標を定め、その数字の推移をチェックすることよって、企業組織内の問題点や強化すべき点を早いうちに見つけ出し、対応策を立てて実行に移していくものです。

企業によっては、「戦略的目標管理」や「多面的目標管理」とも呼ばれています。

このBSCの特徴としては、財務的な結果だけでなく、プロセス面もバランスよく重視していること、そして、それらの測定に数値化を徹底することによって、あいまいさを排除していることが挙げられます。

BSCでは、全社・部門・部署・個人の各レベルで目標を作成し、具体的な数値指標を使って管理していきます。

主に重要な指標となる視点は、「財務」「顧客」「社内ビジネスプロセス(業務プロセス)」「学習と成長」の4つです。そのため、個人の努力をはじめとする実際の業績に表れないプロセス面または個別要素から客観的に人材を評価することができます。

BSCによる評価は、米国のGE(ゼネラル・エレクトリック)やHP(ヒューレット・パッカード)といった企業で導入されており、日本企業でも導入が進んでいます。

このBSCの数値指標を管理するためのソフトウェアも開発されており、大手ソフトウェア開発企業から専用のソフトウェアが提供されています。

 

 

戦略目標の設定

設定したビジョンと戦略を達成するための戦略目標を設定します。

次の重要成功要因の分析・作成と合わせて戦略目標を設定することで、抽象的に表されているビジョンと戦略を業績評価指標に置き換えやすくします。

 

重要な成功要因の設定

設定したビジョンと戦略または戦略目標を達成するために必要な具体的要因を考えます。

バランス・スコアカードの手法で成功に導くためには、経営トップから従業員1人1人にまで設定したビジョンと戦略を浸透させることが肝要です。

 

バランス・スコアカードは、ビジョンと戦略を明確にすることで、財務数値に表される業績だけではなく、財務以外の経営状況や経営品質などから経営の状態を評価し、バランスのとれた業績の評価を行うための手法です。

BSCの考え方は、財務的な指標の他に、顧客視点や業務プロセスの指標、学習や成長(社員能力、教育、研修など)の指標を取り入れています。

BSCを導入することで、企業ビジョンの実現・目標の達成を目指し、財務視点、顧客視点、業務プロセス視点、学習と成長の視点の4つの視点から戦略を立てていきます。

BSCの導入方法は、戦略の内容から重要な成功要因を導き出します。

そして、それらの業績評価指標を決定し、アクションプランと現場の業務に反映させます。

その結果、従業員は日々の業務がどのように目標達成に影響していくのかを認識することができ、日々の業務改善を意識するようになります。

 

 

戦略目標の設定

設定したビジョンと戦略を達成するための戦略目標を設定します。

次の重要成功要因の分析・作成と合わせて戦略目標を設定することで、抽象的に表されているビジョンと戦略を業績評価指標に置き換えやすくします。

 

重要な成功要因の設定

設定したビジョンと戦略または戦略目標を達成するために必要な具体的要因を考えます。

バランス・スコアカードの手法で成功に導くためには、経営トップから従業員1人1人にまで設定したビジョンと戦略を浸透させることが肝要です。

基本的な考え方

 BSCを一言で表現すると、目的・目標達成のための手段です。 

 バランススコアカードの考え方はシンプルです。

 BSCの「バランス」とは、会社の戦略、経営方針など現在の経営状況について、売上や利益などの最終的な業績の数字面だけではなく、人材や業務プロセスがどのように変化しているかなど、目に見えにくい部分も含めて会社全体をバランスよくみていくという意味です。

 そして、「スコアカード」は、その状態(計画とその達成度合い)をできるだけグラフ等で数値化して目に見える形で明確にしていくということです。

経営課題を絞り込む

 最近では、BSCを活用した中期経営計画を策定する会社が増えています。

 従来型の中期経営計画は、ビジョン実現のために必要な戦略を列挙し、それを部門ごとに分解してそれぞれの部門が何をすべきかを示すという流れで策定されます。

 この方法では、戦略や施策を網羅的に抽出できる半面、網羅的であるがために戦略の優先順位がつけにくく、総花的な計画になってしまう可能性があります。
 また、部門ごとに必要な施策が設定されるため、それぞれの部門が何をなすべきかについては明確ですが、結果として現場の改善課題一覧となってしまう可能性もあります。

 この場合、それぞれの改善が最終的にどの程度ビジョン実現につながるのかが不明確になってしまいます。
 一方、BSCを活用した中期経営計画では、ビジョン実現のための重要な経営課題をあらかじめ視点ごとに整理して絞り込んでおくため、その課題実現に向けて集中した取り組みが行いやすくなります。

 これから新たに中期経営計画を策定する場合や、既存の計画の見直しの際には、BSCの活用も検討してみましょう。

 

計画と進捗状況を「見える化」する

 中期経営計画にBSCを活用するもうひとつの大きなメリットは、課題解決の進捗状況が定量的に把握しやすくなることです。

 会社の状況を表す資料としてもっとも一般的なのは、貸借対照表や損益計算書などの財務指標でしょう。

 中期経営計画通りに自社の売上は増加しているのか、資産状況はどのように変化したのかなどは、社長にとって重大な関心事です。

 しかし、仮に各種の財務指標が計画通りに改善していないとしても、それが「なぜそうなっているのか」ということは財務指標だけから読み取ることは困難です。財務指標は会社活動の「結果」として表れますが、結果につながったさまざまな要因がどのように変化しているのか、結果との具体的な因果関係についてはわかりにくいものです。計画未達の本当の理由がわからない限り、有効な対策を講じることはできません。

 BSC活用によって、財務指標以外の目に見えにくい部分も数値化することによって、「なぜ財務指標が改善していないのか」「今どのような問題が、どの程度の深刻さで起こっているのか」「最終的な財務指標にどのような影響を及ぼしそうなのか」などを把握し、より具体的な対策につなげることができます。

ビジョンと戦略の明確化  

 

ビジョンと戦略

 BSC作成にあたっては、まずはその前提となる自社のビジョンと戦略を明確化する必要があります。

 ビジョンとは、自分たちは将来こうなりたいという会社としてめざすべき姿であり、会社としての成長の方向性を決定づけるものです。

 また、戦略とはビジョン実現のためのいくつかの道筋のなかで、自社はどの道を選んでビジョンに近づいていくという基本的な方針です。

 たとえば、現在飲食店を経営している会社のビジョンとしては、「お客様に感動を与える地域一番のレストランになる」、そのための戦略としては、「他店にまねできないパフォーマンスの料理・接客を提供する」などが考えられます。
    

SWOT分析による環境分析

 ビジョンや戦略検討のための代表的な手法としてSWOT分析があります。

 SWOT分析とは、会社にとっての経営環境を内部環境・外部環境の2つに分けて、内部環境においては会社の強みと弱みを検討し、外部環境については その会社にとって「追い風」となる機会と「逆風」となる脅威を検討するものです。

 分析にあたっては、「S」「W」「0」「T」のそれぞれの領域にあてはまる事項について一項目ずつ書き出して、その関係性(因果関係、主従関係、反対関係など)を整理して、グループ化したり、取捨選択をしていきます。
 そのなかで、
 ・ビジョンのあり方や実現可能性はどうか

 ・どのように「強み」をいかせば「機会」をものにできるか

 ・どのように「強み」をいかせば「脅威」を最小限にできるか

 ・どのように「機会」をいかせば「弱み」を克服できるか

 ・どのように「脅威」と「弱み」の影響を最小限にするか 

などについての検討を行い、ビジョンやその実現に向けた戦略を決定します。

 戦略については、優先順位をつけて特に重要なもののみに絞り込み、経営資源を集中的に投下できるようにすることが大切です。

 ここで決定したビジョンと戦略について、BSCを使って4つの視点で整理・展開していくことになります。

BSCの4つの視点

 BSCは、通常4つの視点で構成されます。

 そして、それぞれの視点ごとにもっとも重要な目標として「戦略目標」を設定します。

 

財務

財務に関する目標を達成するために、チームや従業員が何をするべきか指標を定めます。経営戦略におけるゴールとして、企業の「純利益」「営業利益」「純資産額」「投資収益率」などのキャッシュフローを細分化する必要があります。利益の算出方法は「売り上げ-コスト」であるため、売上高ばかりに注視せず、コストのミニマム化も考慮しましょう。

 

顧客

企業経営において大切なのは、利益を追求することだけではありません。顧客に対する行動指標を設定して、それを実現することがビジネスの成果に繋がります。「顧客にどのような価値を提供できるのか」「収益に繋がる現実的な価格設定であるか」という自社視点、顧客満足度を客観的に見た顧客視点の2つをもとに指標を作成しましょう。顧客価値は経営の質にも大きく作用するポイントです。

 

業務プロセス

「財務目標の達成」や「顧客満足度アップ」を実現するためには、業務プロセスの再構築が必要です。これまでの業務を見直し、「無駄な作業や不要なコストを削減できているか」を基準に指標を設定します。業務プロセスの改善は、効率性や生産性のアップに繋がり、財務面にも良い影響を与えてくれます。企業における業務は、「開発」「オペレーション」「アフターサービス」の3段階に大きく分けられます。各業務にかけた時間や費用などのコスト、割いたリソース、導入ツールなどをチェックしておきましょう。

 

学習と成長

「組織や個人をどのように育成し、スキルアップを図るのか」といった指標を設定します。会社全体のビジョンをもとに、「各々に身につけてほしいスキル」「目標達成のための育成方法」などを選び、自社における理想的な人材像を明確にしましょう。人材の成長度を具体化するためには、各従業員の「リーダーシップ指標」「資格の保有数」「労働時間」「こなした仕事量」「仕事のクオリティ」などを把握しておく必要があります。

 

このように、4つの視点はそれぞれ独立した並列の関係ではありません。

 財務はあくまで会社活動の「結果」ですから、それを向上させるためにはまず何が必要であるかを考えると、それは売上の源泉となる顧客に直結します。
 そして、顧客により高い価値を与えるためには社内での業務プロセスのあり方を変える必要があり、さらにそのためには人的な変革が必要です。

 逆の流れも同様に因果関係があります。

 人的な変革はたんに特定の社員だけが属人的な際だった能力を獲得するのではなく、それが仕組みとして業務プロセス改善にいかされるものでなくてはなりません。

 このように、4つの視点の整合性を保つことがBSCの考え方のなかでも大きなポイントとなっています。

 

バランススコアカードの5つのプロセス

 

ビジョンの設定

まずは、プロジェクトの方向性を定めるためにも、各ミッションの定義やコア・バリューの定義を明確にする「企業ビジョンの設定」を行います。「ミッション」とは、企業における組織としての存続理由を指します。各部門の必要性や存在理由、価値の提供方法などを明確にし、戦略作りに活かします。その後、顧客・世間から見た企業の存在価値とは何なのかを再認識しましょう。

続いて、3年から10年程度にわたる将来的な目標を「企業ビジョン」とし、組織として掲げている使命や方針を定めます。ビジョンを設定する際は、創業者の起業動機やプロジェクトを立ち上げた人物の想いをベースに考えることで、方針がブレてしまう事態を防げます。

「コア・バリュー」とは、企業の価値観のことです。明確にしたミッションやビジョンと、企業の中核となる価値観を結びつけましょう。企業の価値観を「戦略」として打ち出すことで、競合企業との差別化も図れます。また、企業が長期的に成長していくためにも、自社の強みや個性を明らかにしておくことが大切です。

 

 

戦略の設定

企業のミッションやビジョンを設定した上で、企業戦略の方向性を可視化させます。「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」という4つの視点から、社内外の強みや弱み、企業に訪れそうな機会や脅威を分析し、戦略マップを作成しましょう。

戦略マップ作成のポイントは、一つひとつの因果関係を視覚化して繋げていくことです。目標を一つ達成したら、次の目標を達成するまでのステップが連鎖するように「行動テーマ」を定めます。初期段階の行動テーマにはじまり、段階ごとに上位の目標を達成していき、最終的に企業が目指す「ゴール」に到達するのが理想です。もちろん、数々の目標を達成するための「重要成功要因」も、マップに落とし込んでおく必要があります。

 

 

KFSの設定

KFSとは、ビジネス成功や事業戦略においてキーとなる「重要成功要因」です。KSF(Key Success Factor)と呼ばれることもあります。バランススコアカード作成にあたっては、社内外の状況を分析しつつ、商品やコスト管理、チャネル(集客経路)などあらゆる要因をチェックすることが大切です。

戦略の開発には、企業全体や各部門の外部・内部分析を多角的に行う分析ツールが役立ちます。分析ツールは多数ありますが、重要成功要因の策定ツールとしては「SWOT分析」がおすすめです。「Strengths(強み)」、「Weaknesses(弱み)」、「Opportunity(機会)」、「Thread(脅威)」という4つの要素から、自社の内外環境を分析できるツールです。

 

 

KPI・KGIの設定

続いてのステップは、重要業績評価指標(KPI)の設定です。

KPIとは、KGI(最終目標)を達成する過程での「中間目標」を指すビジネス用語です。例えば、飲食店のKGIを「売上高」とした場合、「客の数」や「回転率」などがKPIとなります。4つの視点ごとに複数のKPIを設定し、ゴールに向かう指標を設定していきましょう。

 

KPIの達成に向けて、取るべきアクションを具体的に設定するステップです。ロードマップをもとに、どのようなペースでアクションを起こしていき、どのようにKPIを達成するのかを考えます。アクションプランの具体化は、目標達成において重要なポイントです。

 

 

バランススコアカードで多角的に経営を評価

バランススコアカードは経営を多角的に評価するために有効な手法です。バランススコアカードを採用することで、戦略目標をしっかりと立案でき、バランスの良い企業経営が期待できます。

例えば、売り上げが目標を達成しなかった場合でも、顧客の流出を防ぐことに成功していれば、次期以降の収益が見込めます。

また、業務プロセスの向上や人材の成長は、直接的に業績アップに作用することでしょう。バランススコアカードを上手に活用し、戦略的な経営を進めていきましょう。

 

 

バランス・スコア・カード(BSC)の導入事例

エクソン・モービル社では、1995年以降、原価低減と生産性向上によるコストリーダーシップだけでは競争優位性を継続していくことが困難と考え、「プレミアムガソリンの販売拡大」と「ガソリン以外の商品・サービスによる売上の拡大」を目指し、バランススコアカードを導入しました。当時6%だった総資本利益率を12%へするという高い財務目標を掲げ、その目標を達成するために財務の視点の戦略目標に収益性向上と生産性向上を設けました。導入から4年後の1998年には、総資本利益率は16%と飛躍的に改善されています。

この事例において成功へのポイントとなったものは次の3点です。

1) 戦略や目標の基盤となる顧客の視点、業務プロセスの視点、成長と学習の視点、それらとの因果関係を明確にしたことで、経営方針が具体化されたこと

2) 具体化されたテーマに指標と定量的な目標値を設定することで、改革の目指すところが明らかになり、かつ、改革の進捗状況の管理が可能になったこと

3) 全社のバランススコアカードを地域別ビジネス・ユニットや個人へと展開し、最終的に、社員ひとりひとりのバランススコアカードを策定したことで、全社員が目標と当事者意識をもって改革に取り組む風土が醸成されたこと

企業の目指す方向性を落とし込んで、定量的な数値目標が設定され、全社員が自分自身の目標と当事者意識を持って業務に取り組んだことによって、あらかじめ設定された目標を大きく上回る業績を達成することができたのです。

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