職人気質を極める

   未来への羅針盤 ワールド・ティーチャー・メッセージ No.249

職人気質が経営者に変わる方法

 私は、年に150回ほどスパゲッティを食べているので、詳しいですよ。まずは味を見てみないと、経営診断はできませんね。

 5人ぐらいの店の経営でしたら、そこまで強力な経営能力が必要だとは思いません。まずは経営というよりも、味の戦いではないかと思うのです。他に似たような店はたくさんありますから、食べておいしいかどうかが大きいでしょう。

 他の店よりも安い、というだけではやはり駄目だと思います。努力に努力を重ねて、他では作れないスパゲッティを作る努力をしなければいけません。これは、どうやって創作を加えていくかということです。

 例えば、コーヒーなどは、とっくの昔にマーケットが飽和して、新しいものなど生まれないと思われていました。しかし今や、次から次へと新しいコーヒーが出てきています。イチゴが入ったコーヒーや柿が入ったコーヒー、抹茶のコーヒー、上にクリームやキャラメルを乗せるなど、これまでのコーヒーの定義に入らないようなものも出てきています。私も新しいもの好きなので、新しいものが出たら試してはいます。どういうふうに工夫したのかを見たくて、いろいろ手を出す癖はあるのです。

 

リピーターの口コミが鍵

 スパゲッティ屋も、「一度食べたら、もういいや」と言われるような、一見さんしか来ない店は売り上げが増えません。

 サービス業で経営を大きくしていくための基本的な考え方は一つなのです。それは、「一度うちの店へ来て、食べた客は逃さない」「一度食べたら、二度、三度、四度と、繰り返し来させる」「よその店には行けなくなるように、リピーターをつくる」ことです。まるでコカ・コーラを何度も飲みたくなるように、自分の店のスパゲッティを食べたら、取り憑かれたように、繰り返し行きたくなる店にするのです。

 もう一つは、口コミによる評判が大きいだろうと思います。

 やはり人は正直なので、うまいものはうまい、まずいものはまずいと思うのはどうしようもありません。リピーターをつくりつつ、口コミで新規の客を増やしていくのです。そうすると店にお客様が入りきらなくなるので、店を大きくせざるをえなくなります。リピーターが増え、新規のお客様も増えてくる。その繰り返しでだんだん大きくなっていくので、別に経営能力が要るわけではありません。単に、リピーターが繰り返し来てくれて、新しい人が増えていくシステムをつくれば、やがて店を大きくしたり、店舗を増やすなど、拡大せざるをえなくなるわけです。

 

品質維持のノウハウの確立

 これは私が幸福の科学を始めたころに経験したことと同じです。最初は自信がなくて、講演会も公会堂など、安くて小規模な会場で行っていました。しかし、だんだん、入れる人と断る人が同じぐらいの人数になってきたのです。それで、もう少し大きい所でやるか、値段を上げるかしなければいけなくなりました。

 大きい所で講演するとなると、民営の会場を借りなければいけないので値段が上がります。それでも来てくれるかどうかは、やはり不安でした。それでも人は増えていって、さらに大きな会場も借りられるようになり、会が大きくなっていったのです。

 その時に考えていたこともほとんど一緒でした。繰り返し聞いていただき、新しい方にも関心を持って来ていただけるようになれば、来る人は増えるということです。それを受け入れるためには、経営規模は自然に大きくならざるを得ません。

 もし店を二軒にしても、味がガタッと落ちると客は減りますので、店をたたまなければいけなくなります。味を落とさないようにするためのノウハウの確立が必要でしょう。

 とにかく、多数の人がおいしいと感じなければ、店は小さくなり、潰れます。逆に、おいしいと感じる人が増えればお客様は増えます。お客様が増えてきたときにサービスが落ちる傾向がありますので、そこのところの対応を怠らないことが大事です。こなせる量を増やしながら、質の維持に努力すれば大きくなっていきます。

 今は、マネジメントはそれほど必要がないレベルの規模なので、とにかく他の店と一味違う、おいしいものをつくることが大事です。

 

「本物の味」を知らせる

 ちなみに、日本のスパゲッティの問題はパスタの粉にあると思います。本場イタリアで食べて、日本で食べるとすぐ分かりますけれども、日本のスパゲッティは一般においしくないのです。イタリアの、星がたくさん付いている店のスパゲッティとは、味が全然違います。

 パンについてもそうです。日本のパン屋さんは、日本で売っているパンがパンだと思っているかもしれませんが、ドイツの本当においしいパンを食べると、日本のパンは、パンのうちに入らなくなります。スパゲッティもパンも、本場のものと比べるとほとんどが”偽物”です。日本のスパゲッティはソーメンの代わりに食べているようなものなのです。

 その意味で研究は必要だと思います。日本人は本場のパスタを知らないので、それで満足しているだけです。本当のスパゲッティは単なる味だけでなく、麺の舌触りから、切れ味や食感、要するに、食後に残る感覚が全部違います。”偽物”ばかりを食べさせられている日本人に、本物の味を知らせることは大事なのではないでしょうか。

 その上で工夫して、今までになかったものを開発することが必要かと思います。それも、自分で発想して新しいものをつくったと思うだけでは駄目で、お客様の支持を得なければなりません。「どうです? おいしいでしょう、おいしいでしょう」といくら押し込んでも、おいしくないものはおいしくないので、それでは駄目です。

 一般的に言えば、日本のスパゲッティの90%以上は”不合格”ですので、もう一段レベルを上げる必要があると思います。ほとんどは麺の問題なのですが、麺をクリアした場合は、次は味の問題になり、スープなどの問題も出てくると思います。

 

職人の道を極める

 まずは、マネジメントではなく、基本的には研究開発の努力のほうが大事であると考えてください。

 客が増えた場合は、サービスを落とさないための努力が必要です。客が少なければ、念入りなサービスができると思いますけれども、増えた場合はサービスが落ちないように努力する。そうすれば自然に客が増えますので、発展計画はその時に立てればいいと思います。

 客が来ないのであれば、「そのままの規模でやっているほうがいい」と世間が評価したということです。広告を出したり、マスコミに出たりすれば広がるわけではありません。一時期注目されても、内容を伴わなければすぐパタンと閉まる店もたくさんありますので、怖いものがあります。

 基本的には、職人肌であっても結構ですので、職人の道を究めてください。そこを究めたら、経営者への道につながるところがあります。必ずそうなりますので、大丈夫です。

 もちろん、全国チェーンになる場合は別にご相談ください。それはまた話が違いますので、マネジメントの指導が必要かと思います。今はまだそこまでいかないでしょうから、まずは、味のほうで努力しなければいけないでしょう。

参考

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