心を開く「聴くパワー」

仕事とは幸せを提供すること

 どんな商売であっても、突き詰めれば「幸せ」を扱っているのだと思います。幸せを提供することが、結局は売り上げの増加にもつながると考えます。

 一人ひとり、幸せに感じるものは異なるので、それを知るためにも、お客様の話を聴くようにします。例えば、「年配の方は孫が好きだ」と思い込んで話をしても、各家庭の事情は違うので、お孫さんの話が歓迎されるとは限りません。思い込みや決めつけを捨てて、相手の関心を知ろうとすることが、「話を聴く」姿勢につながるのではないでしょうか。

参考

実践 聴く技術

衆生の声を「聴く」菩薩の心

 釈迦如来像をはじめ、仏像の耳はどれも大きく、耳たぶは肩まで届きそうなぐらい長い。これは、竜樹の『大智度論』などで説かれた「三十二相八十種好」(仏の身に備わる吉相。相好ともいう)に「耳輪」とあるのに基づいており、仏が全世界の衆生の声を聴き届けている姿を表している。

 観音様と呼びならわされている「観自在(観世音)菩薩」も、サンスクリット語でアヴァローキテーシュヴァラ、すなわち、「世の人々の救いを求める声(音)を自在に聴いて救済する」という意味とされる。千手観音や十一面観音などは、人々の声に応じて救いの手を差し伸べる菩薩の姿を具体的に造像したものである。

 聖徳太子の「一度に十人の訴えを聞いて誤たなかった」というエピソードも有名だが、「聖」という字が「耳を呈する」と書くように、普通の人の耳には聞こえない心の中の声を聴き、手に取るように その人の苦しみを理解するという神秘的能力を表しているのかもしれない。

 悩みの最中にいる人にとって、自分の声に耳を傾け、許し、包み込む存在がいることがどれほど心強いものか。「聴く」ことの極致にあるのは仏の姿であり、衆生済度に立ち上がる菩薩もまた仏の耳となって人々の悩みを聴き続けてきた存在なのです。

 「聴く」ことは、宗教の「救い」と切っても切れない関係にあると言えよう。

 

「聴く技術」基本編

(1) 相槌を打つ

 「話し好き」もまずは我慢して「聴き役」に回ってみよう。その際、黙って聴くのではなく、相槌を打てば相手も「聴いてくれている」と安心する。これは「応答性」といわれ、相手の話を加速する効果がある。ただし、スキルだのみの安易な相槌は時に反発を生みやすいのでご注意です。

(2) 繰り返し

 相手の言わんとすることを手短にまとめ、要点を繰り返してあげると、話している相手は手応えを感じられるし、頭も整理できて、話も深まる。

(3) 話の腰を折らない

 途中で口を差しはさんで話の腰を折るのは「聴き下手」の代表格です。相手の話を横取りしたり、「それならこうすればいいよ」と説教モードに入って、自分の意見を押し付け始めると、相手は気分を害してしまうこともある。

 

それでも「聴けない」あなたへ

 人間関係に劇的な変化をもたらす「聴く技術」。しかし、「それでも上手に話が聴けない」というなら、次のポイントをチェックしてみよう。

(1)プライドが邪魔していないか

 人の話が耳に入らなかったり、聴いてもちっとも面白くないというなら、プライドが邪魔していないか、点検してみては。自分を持ち上げ、人を見下す気持ちがあると、「右の耳から左の耳へ」ということも。

(2)自分なりの価値観でフィルターをかけていないか

 自分なりの価値観や思い込み、また、自己保身の気持ちが強いと、自分と異なる意見に反発してつい口をはさんでしまったり、聴いているつもりで聞き落とすこともある。相手の多様性を受け容れる寛容さや素直な心が大事です。

(3)柔軟に、自分を変える姿勢を持つ

 耳に痛い話になると、途端に「シャットアウト」ということもよくある。そういう時も聞き流さず、自分の身に引き当てて、自分を変えるヒントとして聴く。難しいことだが、他人の何気ないアドバイスで人生が開けたり、新生のきっかけになることもあるので、「聴く」ということはなかなか奥が深いのです。

 「聴く」うえで大切なのは、「理解する」という姿勢です。そして、相手を分かろうと努力することは「愛を与えている」ということにほかならない。

 『幸福へのヒント』には、次のように説かれている。

「『理解した』ということは、『愛した』ということと、ほぼ同義なのです。また、『自分は理解された』と思った人は、『自分は愛された』というように感じるのです」(P-215~217)

 悩みの渦中で誠実に耳を傾けてくれる人の存在は ほんとうにありがたいものです。そんなオアシス人間を目指して、家庭で職場で、「聴く技術」を磨いてみよう。

 

「聴く」という素晴らしい力

 どんな職場にも、「部下の話が聴けない」「一方的に自分の意見を押し付ける」というリーダーはいます。そういう人に限って、自分の態度に気づかず、「自分はよいリーダーだ」と思い込んでいることも多いものです。

 悩みのある人は深い劣等感を持っていて、「こんなことを言ったら、人はどう思うだろうか」と心を閉ざしていることもよくあります。組織のリーダーや子供を持つ親が「聴くためのスキル」を訓練することは、非常に大事なことです。

 また、悩みを持つ人は「この人なら打ち明けられる」と思う人を見つけて、よーく話を聞いてもらい、心をスッキリさせることで、解決の糸口をつかむことができます。

 それに、「聴く」ということは、人と人の心をひとつにするという素晴らしい力もあります。企業再建は心の再建と言われますが、コミュニケーションの力で組織の心をひとつにすることで、ボトルネックを突破するというケースはよくあります。

 経営の神様といわれた松下幸之助さんも、部下の話には 真剣に 徹底して耳を傾けたと言われています。上手に聴くことができれば、個人や組織に驚くような変化が起きるのです。

 

聴いてみよう

 聴き役になった場合は、「そうか、そうか」とただうなずいてあげるだけでもよいのです。なまじっか意見や解決策を出さねばと焦ると、かえって相手の話の腰を折ったり、話の通路を塞いでしまいます。「思い過ごしだよ」「気にするな」といった安易な励ましも、無責任にしか聞こえないこともあります。

 また、大事なことのひとつに、「言葉じり をとらえず感情をつかめ」という聴き方があります。カウンセリングでは、これを「明確化のスキル」といい、相手の「言語にならない感情の部分」をキャッチして言葉を返していく、「聴く技術」のひとつなのです。

 例えば、妻が夫に「今日も残業なの?」と聴いた時、邪けんに「当然だろう」と返すこともできますが、妻の「早く帰ってきてほしい」という気持ちを汲んで、「できるだけ早く帰るよ」と言ってあげられれば、妻も「分かってくれた」と安心します。

 

人格を磨く

 「聴く技術」があっても、それを真に生かせるかどうかは その人の人柄とも深くかかわってきます。相手の気持ちを温かく汲むことができれば、おのずと上手に聴け、聴いてもらったと満足した相手も、生きる勇気を取り戻したりすることができます。

 そのためにも、宗教などで心を磨き、人間性を高めることが、よく聴けるようになるための、大きな秘訣ではないでしょうか。

参考

人の心を開く 聴くパワー

クレームを「ありがたい」と受け取るマインド

 クレームを言われた時、こちらが「嫌だな」と思うと お客様に伝わってしまいます。しかし、クレームというのは本当はありがたいものです。

自分にとってマイナスの言葉も、裏返せばプラスになるので、プラスの面を見続けるマインドを保つように。

 

仕事とは幸せを提供すること

 どんな商売であっても、突き詰めれば「幸せ」を扱っているのだと思います。 幸せを提供することが、結局は売り上げの増加にもつながると考えます。

 一人ひとり、幸せに感じるものは異なるので、それを知るためにも お客様の話を聴くようにします。例えば、「年配の方は孫が好きだ」と思い込んで話をしても、各家庭の事情は違うので、お孫さんの話が歓迎されるとは限りません。思い込みや決めつけを捨てて、相手の関心を知ろうとすることが、「話を聴く」姿勢につながるのではないでしょうか。

 

「聴くパワー」を身に付けるPoint

・「おはようございます」など、相手が返せる挨拶から会話を始める

・「例えば、どういうことですか」「もう少し詳しく教えてください」という形で会話を深める

・「なるほど」「そうですね」と言って、相手の意見を肯定する

・「困っていることはありませんか」と聴く

・表情や髪形、服装などの相手の変化に注目し、「素敵ですね」「美しい」など、肯定的な言葉で素直に褒める

・持ち物などを観察し、相手の関心事を予測する

・相手の表情をよく観察し、興味がなさそうなら、話題を変える

・相手が一息つくまで聴く

・会話を進めて、趣味や好きなことを聴き、後でメモしておく

 

相手を変えようとする前に理解し、愛する努力を

 相手の心を開くためには、相手に関心を持って相手の意見を尊重する姿勢が必要なようです。伝えたいことや説得したいことがあると、一方的に話して相手の考えを変えようとしがちですが、それでは相手の心は閉じる一方です。

 一生懸命話す前に、まず「相手の考えを受け止めよう」と考えることが伝えるための一番の近道になります。相手の話を聴き、相手が「受け入れられた、理解された」と思うようになると、「自分は愛された」と感じ、心が開いてくるからです。その上で穏やかにアドバイスや説得をすれば、互いに傷つくこともなく、自然なコミュニケーションができるでしょう。

 工夫次第で実感できる「聴くパワー」を使って、仕事でも日々の生活でも より良い人間関係をつくってみてはいかがでしょうか。

参考

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