組織の基本形

 組織の基本形は3つあります。「ライン組織」「ライン&スタッフ組織」「ファンクショナル組織」です。

 

ライン組織

 ライン組織は直系組織ともいわれます。多くの企業では、これにもとづいて組織が作られます。指揮や命令が伝わりやすいシンプルな形ですが、上位者の権限のコントロールが課題にもなるタイプです。

 ライン組織は、組織構造として古くからあります。上位の立場による下位への命令が中心です。すべての職位において、いちばん上から下まで単一の命令系統で結ばれます。

 どの職位も全て上からの命令を受けます。横同士では商品開発、製造、販売、広報など単位別に組織が一列に並ぶ形です。単純な職務内容だったり、経営規模が小さかったりするときに役立つでしょう。

 ライン組織のメリットは、指揮や命令がスムーズに伝わりやすいことです。上位が命令を発し、下位が従うという単純な構図だからです。

 以上のようなシンプルな形なら、責任もはっきりさせやすいでしょう。命令をした人やそれに従った人がわかりやすいからです。そのため、失敗の責任を明確にできるでしょう。そうすれば、トラブルの早期解決にもつなげられます。

 しかし、デメリットとして、横のコミュニケーションが保てなかったり、上位者への権限集中などのリスクが挙げられます。上位から下位への命令でしか人が動かないために、グループに課題が生まれる可能性があるのです。

 横のコミュニケーションが保てないのは、上位からの命令に従うのがメインだからです。機能別や部署別の情報共有という、自分が考えて進める行動をしないケースがあります。ライン組織では、社員が指示待ちになりやすいので、リーダーが一定の自主性を認める工夫も必要でしょう。

 上位者に権限が集中しやすくなるのも難点です。独断にもとづいた指揮で組織が乱れる結果、トラブルになるかもしれません。事態を避けるためのコンプライアンスの徹底がカギになるでしょう。

 このように、ライン組織はシンプルな指揮系統からビジネス業界に受け入れられやすいのですが、部下や権限のコントロールに注意を要します。

 

ライン&スタッフ組織

 ライン組織の応用としてライン&スタッフ組織があります。上位から下位への命令がメインなのは変わりません。しかし、ここでは専門家による補足的なアドバイスが加わります。ビジネスの組織構造の基本を守りながら、仕事をスムーズに進めるための一工夫が加わっているのです。

 ライン&スタッフ組織では、従来のライン組織に対し、専門家によるスタッフの部門が加わります。この専門家はラインの機能のサポートを望まれているのです。

 専門家は企業の状況を見ながら、指揮をする人に適切な命令内容を伝えます。部下に対しては上司の命令をすみやかに達成するためのアドバイスも可能です。このように、専門家という要素が加わって、仕事が効率化するケースがあります。

 メリットは、ライン管理者の負担軽減と、意思決定のスピードです。ライン管理者はメインの業務に専念しやすいでしょう。専門家のサポートにより情報伝達が効率化するからです。

 専門家のサポートがあれば、命令を受けた人はその場でするべきことを理解しやすくなります。上司が命じた仕事を効率的に済ませるためのアドバイスも専門家の仕事です。

 意思決定のスピードが速いのもポイントです。上意下達を原則としながら、専門家の後押しが加わるためです。

 専門家の存在は、生産性を上げるのに有効とされます。命令をする側とされる側の間に立ち、仕事をスムーズに進めるためのアドバイスを担当するからです。命令を出す人には適切な方針を、命令を受けた側にはそれを忠実に実行するための助言を与えられます。

 以上から、ライン&スタッフ組織ではスタッフの働きが生産性にかかわるでしょう。

 しかし、デメリットとして、ライン組織のメンバーと専門家の人間関係が課題になります。ラインとスタッフの間で調整が難しくなるほか、専門家が組織を乱すリスクにも注意しなければなりません。ラインと専門家のコミュニケーションが難しくなるのは、メインの指揮命令者と専門家の権限の関係がはっきりしない場合です。組織内でどちらの発言が優先されるかで、もめるかもしれません。そうした場合の判断について、組織はマニュアルを設ける必要があります。

 専門家が組織を乱すリスクにも組織は注意しなければなりません。専門家が組織を乗っ取るように勝手な動きを見せると、チームワークが成り立たなくなります。

 ライン&スタッフ組織では、専門家が自身のサポートの役割を超えて権限をコントロールするおそれがあるのです。ライン組織の上位者が専門家の言いなりになってはいけません。公正な判断基準を持ち、専門家が権限を踏み超えるようなら、それを引き止めることも重要です。

 以上からライン&スタッフ組織では、命令の提案やアドバイスを送る専門家の存在が重要です。しかし、専門家の暴走を止めるための組織力も重要になります。

 

ファンクショナル組織

 ファンクショナル組織とは、それぞれの事業分野に複数の管理者を設けたタイプです。管理者たちは それぞれの専門分野を担っているため、自身の得意なところだけ部下に命令したり、アドバイスを送ったりできます。

 ファンクショナル組織では、各職位において、特定分野に応じた複数の管理者が設けられています。ひとつの職位に複数の管理者がいる状態で、彼らにそれぞれ「ファンクショナル権限」が与えられているのです。

 ファンクショナル権限によって、管理者は自身の専門機能における命令を下せます。特定業務に詳しい人が自身の担当する仕事や得意分野について指示を出す形です。複雑な業務では、各専門分野に詳しい人がそれぞれ命令を出すことで、仕事をスムーズに進められます。

 ファンクショナル組織のメリットは、的確な指示やチームワーク、部下が命令をわかりやすく受け取れる可能性です。専門分野に詳しい管理者が複数いるのがポイントです。管理者の一人が指示を迷っているときは、もう一人がフォローして的確な指示をまとめられます。

 職位内における各管理者の専門的能力を存分に生かせるのがファンクショナル組織の魅力です。これにより、的確な指示やチームワークを達成できるでしょう。

 部下も命令をわかりやすく伝えてもらえるでしょう。状況によって指示を出す人間は異なります。しかし、複数の管理者がいればスムーズに命令を出しやすくなり、部下も動きやすいでしょう。

 特定のグループにおいて、必要な業務や設備について詳しくない人もいるでしょう。そこで専門知識のある管理者が知識を生かし、わかりやすく教えることが重要です。

 このように、管理者同士がフォローをしあいながら、部下を的確な行動へ導くのがファンクショナル組織になります。

 デメリットは、複数の管理者の存在による混乱のリスクです。別々の管理者から異なる命令を受けることで、正しい行動がわからなくなる人がいます。

 職位ごとに管理者が複数いるので、彼らの意思疎通がうまくいかないと部下が混乱するでしょう。とくに、新入社員のように経験の少ない人だと、何をしていいかわからず、大きな失敗をするかもしれません。

 そのような事態を避けるため、組織には命令のポイントを管理者ごとに分ける工夫が必要でしょう。

 また、管理者同士で意見がわかれたとき、結論がわからなくなるのもファンクショナル組織の難点です。管理者は職務の一部しか把握できないため、組織の全体像を知らないまま指示を出すこともあります。

 ファンクショナル組織では、管理者同士の意思疎通が重要です。これがない場合、別々の命令を解釈する方法がわからない人が現れるでしょう。指揮統制がとれずにグループが乱れるかもしれません。トラブルを避けるには、管理者同士での情報共有もカギになります。

 

事業規模に合わせた組織体制

 改善活動が無限に続くように、作業標準もできたその日からよりよいものへと見直しが始まります。業務分担や社内組織のあり方も常に最良のものを求めて柔軟に変更していくものです。顧客動向などの需要の変化に応じて、それにうまく適応できるように企業行動を変化させ、組織もそれに見合ったものに変化させます。

 事業規模が小規模の段階では、生産・販売から企画管理までを1人で行い、生産と販売の機能も分離していません。事業規模が大きくなってくると、社長の直接管理が難しくなってきます。そこで、管理を行き届かせるために、生産と販売(ライン部門)を分離し、その企画・管理を行う部門(スタッフ部門)も分離させたライン・スタッフ制と呼ばれる組織へと衣替えさせるのが一般的です。しかし、大企業でよくみられることですが、スタッフ部門が肥大化して、本来ならば、ライン部門が行うべき仕事にまでスタッフ部門が進出して抱え込んでしまうことが起こります。すると、官僚制化が進んでしまい、意思決定のスピードも格段に落ちてしまうのです。
 このような弊害を除くには、組織をなるべくフラットにして、意思決定の情報の流れをよくします。同時に、小グループ単位で担当領域のすべての仕事について担当し、PDCAサイクルを回すことで完結するように担当職務を再編する必要があります。その際は、一人ひとりが幅広い職務を担当することになるので、多能的な人材が養成されていなくてはうまくまわりません。また、このような組織にすることの目的に加え、具体的な命令系統や権限・責任の所在を従業員がきちんと理解することが重要です。

 

効率化と管理のために命令系統や権限・責任を明示

 とある大企業では、販売員個人にコンピュータ端末を持たせて、スタッフ部門で行っていた仕事を営業員に担当させているという。また、工場部門においても、専門の生産管理担当者は配置せずに、現場の人間が在庫管理や出荷情報についても扱うなど、より効率的に業務を行えるように権限・責任を柔軟に変更している。

 このほか、命令系統や権限・責任が曖昧な場合、従業員による費用の不正な使用や過大請求などが生じる可能性も否定できません。業務の効率性だけでなく、内部管理をきちんと行うためにも、命令系統や権限・責任の明確化が求められるといえるでしょう。

 

担当職場の運営上の責任と権限が明確にする

 組織運営の要は責任と権限です。特に何人かを束ねた職場の責任者(管理・監督者)がその職責を果たすためには、責任と権限が明確にされていなければ、判断の振れが大きくなり、部下からの信頼を得ることが難しいでしょう。責任もとらずに権限もないかたちだけの上司であったなら部下はついて行きません。
 部門長には、日常的な業務運営だけではなく、その職場内のメンバーに対する人材育成の責任もあります。いくら潜在能力があっても、磨いて顕在化させなければ活躍してもらえません。もうかる仕組みを構築すると同時に、部下を育てることができなければ、部門の付加価値生産性を高めることができません。その前提として、権限委譲をできるだけ進めると同時に、運営上の責任と権限を明確にしておくことが肝要です。

 

標準化・マニュアル化を進めると同時に、そのマンネリ化を防ぐために見直しや改訂をする

 標準化・マニュアル化は大事ですが、そこでとどまってしまってはマンネリ化は避けられません。厳格な職務給の世界では職務範囲が明確で責任と権限も明確に規定されます。しかし、決められたことを決められた通りに永遠にこなすだけでは、マンネリ化するだけで、ものごとは変わりません。変革を求めるには、決められたことを変えていく態度をつくり上げなくてはならないのです。そのためには自分たちの職域にこだわらずに、企業全体のことを考えて自律的に動ける人材の蓄積を図る必要があります。標準化・マニュアル化を自分たちなりに日常的に見直して改訂していく、あるいは、ミスが少なく、より使いやすいマニュアルを自分たち自身で作ってもらうといったことも効果的です。

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