組織開発

 近年、組織内の人材多様化に伴い、組織開発への注目が高まっています。個人よりもグループに着目し、円滑な組織運営を目指すための経営手法です。

 

組織開発とは

 組織開発とは、組織を良いものにするべく社内で抱えている問題を表面化させ、当事者間で解決策を考え、実行する一連のプロセスです。行動科学の論理を用い、市場の変化を捉えながら、当事者同士で組織が効果的で健全に機能する状態を目指します。

 

組織開発の目的

 組織開発の目的は、組織力を最大限に発揮することです。終身雇用が主流だった昔とは違い、現代では転職市場の活性化・ダイバーシティ推進により、外国人登用をはじめとした組織内の人材を入れ替える企業も珍しくありません。しかし、多くの企業が優秀な人材を活かしきれず、企業運営に支障が生じるといった問題を抱えています。組織力の最大化を目指して、組織内で方針を合わせ、目標達成に尽力することを全ての従業員が自分事として認識し、行動に落とし込みます。

 

人材開発との違い

 人材開発とは、組織で活躍する人材の能力を向上させるための取り組みで、社内研修・OJT・講習会が該当します。知識やスキルを高めることで能力の向上が期待できます。教育方針を最初に打ち立て、偏らないよう慎重に進める点が特徴です。

 従業員を対象とする人材開発に対し、組織開発は、個人間の関係性や相互作用を対象となっており、組織全体へのアプローチとなる点が大きな違いです。組織開発は役割や成長する方向性が異なる従業員間で協力関係を築くため、共通認識が生まれやすく、結果的に組織に良い変化をもたらします。

 

組織開発を実践するためには

 組織開発は長期的に取組む課題であり、長年かけて作られた組織風土と個人の意識改革を着実に遂行します。経営陣がどのような組織にしたいのか、理想の組織像を一貫して従業員に伝え続けることが最も重要です。

 その上で、目標設定、現状把握、課題設定、従業員へのアプローチ、効果検証とフィードバック、成功事例の展開という手順を繰り返し実施します。

 

組織開発に必要なスキル

 組織開発を実践する際に必須となる5大要素です。

1 チーム

 質の高いコミュニケーションを交わしながら、全員が同じ成果に向かうべく、小規模で柔軟なチームを作ります。経営陣・部門・部門を超えたプロジェクトの発足が組織開発にふさわしい組織といえます。

 目標と方針の明確化によって、チーム内の士気と行動レベルが高まり、プロセスの共有により作業効率が上がります。メンバーの多様性を認め、人間関係を活かした職場環境づくりに取り組むことが大切です。

2 ダイバーシティ

 従業員一人ひとりが持つ違いの多く(性別・年齢・国籍・学歴・職歴など)を受け入れ、その多様性を企業の競争力として活かす考え方です。多様性から得る考え方や価値観の違いを企業活動に活かし、ダイバーシティが効果的な組織開発に繋がることを社内に浸透させていきます。多様な顧客への対応力の強化・競争力を高めるべく、ダイバーシティを経営戦略に掲げる企業も増えています。

3 バリューズ

 バリューズとは「価値観」を指します。価値観は全ての組織で複数存在し、それぞれの従業員も異なる価値観を持っています。組織の価値観とは、従業員それぞれの価値観が掛け算となっており、従業員の行動や部署、組織の方向性に大きな影響を及ぼします。
 まず、従業員が自身のバリューズを明確にし、組織と自身のバリューズの合致を認識したとき、組織のバリューズが浸透します。健全で強固な組織の実現を目指し、組織のバリューズの明確化と個人のバリューズの方向性の合致が組織開発における重要な要素です。

4 チェンジ

 組織開発におけるチェンジは、能動的かつ内面の本質的な部分で意識的に変化することを指します。そのため、従業員全員が組織開発におけるチェンジを正しく認識し、推進する必要があります。

 内発的で時間がかかる活動ですが、高い水準を持った組織状態を維持するためには、「チェンジマネジメント」の概念が役立ちます。変化を起こす際には、手段が目的化したり、新規と既存プロジェクトの目的と成果の関連性が不明確だったりと、社内が混乱しやすくなります。チェンジマネジメントは、組織開発のそのものであり、緊急性を持った意識改革に役立ちます。

5 リーダーシップ

 組織開発の成功には、経営陣やマネジメント層に加え、従業員一人ひとりのリーダーシップの発揮が必須です。リーダーシップは、想いや信念・価値観が根底にあるため「自分の生き様」と同義であり、熱心な探究により自ら強めることができます。リーダーは謙虚に自身を振り返り、継続的に研磨することを求められます。

 組織開発には「ファシリテーティブなリーダーシップ」の発揮が求められます。多様化するメンバーを尊重して自立を促し、チームの力を活かしきるコミットを持つ人が、急速に変化する現代の組織開発推進に不可欠な存在となります。

 

リチャード・ベッカード氏の7つのプロセス

 組織開発の権威として知られ、マサチューセッツ工科大学の補佐教授である故リチャード・ベッカード氏によると、組織開発は7つのプロセスが存在するという。

 下記プロセスを真摯に取組むことで、メンバー間の信頼が高まり、長期的な組織開発の成功に繋がります。

1 計画に基づく

 「何を、いつまでに、どのような状態にするのか」を細部まで明確に設定します。

2 組織全体にかかわる努力をする

 最初は小規模でスタートし、徐々に組織全体に働きかけます。

3 トップ主導でマネジメント

 企業理念や会社目標のメッセージを発進し、組織全体で共有しながら、組織トップが積極的に組織開発に関わります。

4 組織の有効性・健康を高める

 メッセージを発信し共有することで、トップと下部組織の関係性が強まり、組織全体が機能します。ベクトルが合うことで、経営陣がフォローしやすくなります。

5 行動科学の知識を活用して

 組織開発は、長期的に取り組むべき課題であり、目標達成のために強い志を持ち、率先して協力してくれる人材を巻き込むことが重要です。

6 各プロセスにおける微調整

 長期的な組織開発の中で その効果を随時確認しながら進めます。結果から原因を分析し、ときには目標を再設定します。

7 計画的介入

 目標に対する結果の共有はメンバーのモチベーション向上に繋がるため重要です。

 

組織開発に最適なフレームワーク

 組織開発は多種多様なフレームワークで実施されます。企業が内包する課題や将来のビジョンに応じて、フレームワークを選択し、組織の変革を促します。

コーチング

 コーチングは、今日注目が高まっている人材育成手法で、組織開発のために取り入れる企業が増えています。「その人の中に解決策がある」という前提で相手の話をよく聴き、相手の内側にある答えを引き出します。コミュニケーションを活発に取りながら進める点が特徴です。自主的に物事に取り組み、新しい価値観を達成するためのポジティブな気持ちなど、内面の変化を促します。

ワールドカフェ

 ワールドカフェとは、カフェのようにリラックスした雰囲気の中で参加者が4~5人のテーブルに分かれて対話を行うもので、人数に関係なく開催が可能です。
 一定時間が経過すると、テーブルのメンバーを入れ替え、多くの人と対話を繰り返します。少人数で対話するため、相手の意見を聴きやすく、自身の意見を言いやすい点が特徴です。

AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)

 AIとは、探究や質問の投げかけを通じて個人と組織の価値を認める手法で、Appreciativeは「価値がわかること」、Inquiryは「探究」を意味します。
 従業員へ質問し、自身の強みや情熱・夢、将来性の発見、視野の拡張、組織の将来像を共有し、全員で目標に向かうためのアクションプランを作成します。組織に変革を起こすべく各人材の可能性を広げ、新しい強みや能力を引き出すためのフレームワークです。

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