組織は年を重ねるごとに劣化する

自社の知識・ノウハウを伝承させる

 小規模な会社(組織)ほど劣化が早い。

 日々の糧を得ることだけに目が行ってしまい、組織は個人の集団となってしまっているからです。

 組織を永続的に維持し、拡大していくためには、マンパワーに頼った経営を続けていくわけにはいかないのです。

 小規模な組織体制だからこそチーム力で戦っていかなければならないのです。

 そのためには、業務の標準化が欠かせません。

 劣化は、少しずつ目に見えないスピードで組織を侵食していきます。そして組織のほころびが目に見えるようになった時には最悪の事態を招きかねない。

知識を見える化する

 技術を途切れず伝承させることは容易だが、創業時の理念、ビジョンはトップが代わるごとに薄まり、創業時の想いはたんなるお題目と化してしまう。

 企業30年説といわれるように、企業の歴史を振り返って見れば一目瞭然である。

 想いは情緒的であることで技術と比較しても長くは維持できない。

 そのためにも、社員がもっている「暗黙知」のままのノウハウ、スキルを「形式知」化させ、組織で共有化することです。

 「暗黙知」とは経験や勘に基づく知識、「形式知」とは文章や図表、数式などによって説明・表現できる知識を言い、暗黙知を形式知化することで技術として伝承できるのです。

 この抽象的な知識である「暗黙知」を見える(形式知)化する必要がある。

 それによって形式知化された知識は途切れることなく伝承することができます。

 この課題を解決しなければ、いつまでたっても勘と経験に基づいた経営に終始してしまう。

 結果、いつまでたっても社長のがんばりに頼るしかないのです。

 しかし、社長が頑張れば頑張るほど組織は形骸化され、赤字体質に陥ってしまいます。

 組織を劣化させないためにも、トップ自らが率先して業務改革を推進していくことです。

 そして、会社を後継者に任せられる体制整備が必要となります。

後継者育成

 自分が社長として会社を成長させていく部分を経営人生の前半部分とすれば、経営人生の後半部分とは、安心して経営を任せることができる優秀な後継者を育成することです。

 後継者の育成は経営課題と同様に、できるだけ早い時期から緻密、かつ、適切な計画性をもって成し遂げなければならない重要な責務である という強い認識をもつことが大切です。

 後継者育成にあたっては、可能な限り早いうちに後継者を決定し、育成を始めることが大切です。

 早いうちに後継者を決めておくことで、

 ・後継者として指名された人物に自覚が生まれ、行動の変革をもたらすことができる

 ・従業員に、後継者に対する統一した見解をもたせることができる

 ・実際の後継者教育を早くから始めることができる

 ・相続対策を早くから始めることができる

などのメリットが生じます。

 後継者を決めるのが退陣直前になった場合、

 ・後継者に経営者としての十分な心構えができていない

 ・経営に必要とされる知識が身についていない

 ・古参社員からの賛同を得られない

という状況が生じかねません。

 また、後継者不在のままで、現社長に不測の事態が発生した場合には、重要な意思決定が滞り、会社存続の危機に直面する可能性もあります。

後継者に必要な資質

 経営者の役割は、「会社の将来的なビジョンを描き、適切な戦略を策定し、戦略実行のために組織を効率的に動かすこと」にあります。

 後継者がその役割を果たすための「洞察力・先見性」、「統率力」を高めていくためには、
 ・経営全般に関する広範な知識

 ・豊富な実務経験

 ・ビジョン実現への情熱

の3つの要素の習得が必要不可欠になるのです。

 

後継者育成のポイント

1 経営全般に関する広範な知識を習得させる

 熱意と努力だけで企業経営を成功に導くことはできません。

 経営者として経営全般に関する広範な知識が必要になってきます。特に顧客ニーズが細分化し、かつ、変化のスピードが増す現在では、マーケティングに関する知識を習得することは不可欠となっています。

2 豊富な実務経験を積ませる

 後継者に実務経験を積ませるためには、自社で採用して行う方法と、一定期間他社に勤めさせる方法があります。

(1)自社で経験を積ませる

 後継者を自社で育てる場合のおもな狙いは、
 ・早くから自社の経営全般にかかわらせ、その勘所を学ばせる

 ・従業員に次期経営者として認知させる

点にあります。

 我が子が中学生、高校生の頃から、アルバイトなどの形で自社の事業に触れさせ、徐々に後継者としての自覚をもたせたり、従業員の間に馴染ませようとしたりする社長もいると聞きます。

社内で経験させるべき業務例

 ・子会社の社長業務

 ・現業部門の部門長業務(複数部門を経験させる)

 ・経理部門の部門長業務、決算書作成などの陣頭指揮

 ・新規事業の立ち上げと推進(不幸にして失敗した場合は撤退処理までやらせる)

 ・外部からのクレーム対応

 ・従業員からの相談対応

 ・各種経営計画策定の陣頭指揮

 ・社内会議体系の整備と運営

 ・主要取引先との交渉

(2)他社に勤務させる

 特に、社会人経験のない実子を将来的に後継者として指名する場合には、現社長の威光がまったく利かない他社で一定期間修行を積ませることで、精神的なタフさを鍛えることも有効でしょう。

 最初から自社に入社させて教育する場合に比べて、目が届きにくいというデメリットもありますが、社会人のスタート段階であえて「他人の飯を食わせる」ことは本人にとって貴重な経験になるはずです。

 また、他社に一定期間勤務することで、

 ・自社ではつくれないような外部の人脈がつくれる

 ・異なった分野の体験を通じて見識が広まる

といったメリットもあります。

3.ビジョン実現への情熱を喚起する

(1)経営にかける情熱を現経営者自身が伝える

 後継者に現在の事業に対する使命感を身につけさせるためには、現経営者自身が その事薫にかける思い入れや使命感、あるいは将来の夢を直接語りかける方法が最も効果的です。

 その際、伝えるべき内容としては、

 ・自社を将来どのような企業に成長させたいかという明確なビジョン

 ・後継者に対する信頼感

 ・事業の面白さや自社を大切にしてほしいという思い入れ

 従業員や得意先、株主に対して、ひいては社会全体に対して、確固たる使命感や情熱をもって経営に取り組める人物でなければ、トップとして自社を存続・発展させる重責に耐えることはできません。

(2)経営理念を十分に理解させる

 後継者には自社の経営理念を確実に理解させる必要があります。

 経営理念は、「自分たちはこうありたい」「社会に対してこのような貢献をしたい」、といった会社の存続意義を示すものであり、この認識に現経営者と後継者の間に少しでもズレがあると、事業承継後に会社が現経営者の意図しない方向に進んでしまう可能性が高くなります。

 経営理念には、それを策定した現経営者の信条、人生観などが色濃く反映されています。

 特に、「創業の経緯、当時の時代背景」「事業や従業員に対する社長の思い」「これまで直面した危機とそれを乗り越えられた理由」「理念実現のために自分が日頃から気をつけていたこと」、などについては詳しく説明すべきでしょう。

 さらに、経営理念は、ひとつの考え方として理解してもらうだけではなく、後継者にそれを事業運営における唯一無二の価値基準として実践してもらう必要があります。

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