EQ
EQは、そもそも ビジネスで成功する要因を探るなかでみつかった概念です。従来は、学歴が高いこと、つまり、IQ(知能指数、Intelligence Quotient)が高い人ほどビジネスで上手くいくと考えられていました。しかし、実際は、IQが高くてもビジネスで失敗している人がたくさんいます。
そこで、サロベイ博士たちは、ビジネスで成功している人の共通点を探りました。そして、ひとつの答えが出たのです。「ビジネスで成功した人は対人関係能力に優れている」というものでした。
EQとは人間的魅力を支える資質
サロベイ博士たちが対人関係能力を研究したところ、ビジネスで成功している人たちが次の能力を持っていることを見つけました。
・自分の感情の状態を把握している
・自分の感情を管理、調整できる
・他者の感情の状態を感知できる
・前向きな感情を生み出している
・対人コミュニケーションをうまく保つことができている
そして、これらを総合して「人間的魅力」としました。人間的魅力こそがビジネスを成功に導くカギとなります。
そして、EQは「人間的魅力を支える資質または能力」といえます
エグゼクティブたちがEQに驚嘆した
EQの理論の価値に最初に気がついたのは、アメリカのビジネス界でした。大企業のCEOなどのエグゼクティブたちは、EQ理論を知り、EQを身につければ正しく意思決定できると確信しました。
エグゼクティブたちには、気持ちが落ち込んでいるときと楽しい気持ちでいるときでは判断に違いが生じているという自覚がありました。EQを身につければ感情をコントロールできます。
リーダーやリーダーを志望する人がEQを身につけなければならないのは、このエピソードからもわかると思います。
リーダーとEQは相性がよい
リーダーは以下の4つの「仕事」がある。
・自分自身が自律性を持ち、自律的に行動できる部下を育成する
・多様性を生かす
・優秀な従業員を集める
・結果を出すコミュニケーション能力を身につける
EQの4つの能力を紹介しながら、リーダーの4つの仕事と比較してみます。
EQの一つ目の能力は「感情の利用」です。リーダーがこれを身につけると、特定の仕事に有利に働く感情を生み出し、パフォーマンスを上げることができます。
これは自律的な行動を取ることに役立ちます。自分を律するには、ときに我慢が必要になります。我慢は負の感情です。
そして、感情を利用するには、物事に対する見方を変える必要があります。下積み生活は誰にとってもつらいものですが、「将来に役立つ」と考える人は負の感情を使って成長できます。一方、「つらいだけ」と考える人は負の感情に押しつぶされてしまうでしょう。
自律とは自分が立てた規範を守ることであり、そのためには目先の利益を追うのではなく、将来に目を向ける必要があります。そのときEQの感情の利用が役立ちます。
EQの2つ目の能力は「感情の識別」です。これは自分や他人の感情をしっかり把握する能力です。
多様性を受け入れることは、自分と異なる価値観を持つ人と仕事をすることになるので、大きなストレスを抱えることになります。そして、多様性を持つ側はアウェーで働くことになるので、より大きなストレスを抱えることになります。
したがって、リーダーが多様性を受け入れるときは、自身の感情と多様性を持つ人の感情に敏感になる必要があります。
EQの3つ目の能力は「感情の調整」です。感情を思慮深く調整して、行動につなげることです。
例えば、ある人と感情的に対立してしまったとします。このとき、ある程度時間が経過してから、明るく謝れるかどうかで「リーダーの器」が問われます。それには、自分のプライドを捨てる必要があります。この能力を身につけると、優秀な従業員を集めることができるでしょう。
EQの4つ目の能力は「感情の理解」です。
感情には、
1)変化や出来事に対する反応
2)突然やってくる
3)思考や知的活動に影響を与える
4)行動を変える
という4つの性質があります。
コミュニケーションが苦手な人の多くは、感情の4つの性質を理解していません。感情の性質を理解していないと、相手の突然の大きな感情の変化を「モンスター」のように感じるでしょう。それではコミュニケーションを取る気が失せます。
コミュニケーションを良好に保つには、感情の性質を理解して、感情を調整して、感情を利用する必要があります。