リーダー次第で会社は変わる

リーダー(管理者)教育のあり方

 社長にとって、管理者とは、自分の経営理念を理解し、その実現のために高い能力をもって支援してくれる存在です。

 会社の規模や方針などによっては、社長がすべてを掌握し、とくに管理者をおかない場合もありますが、会社の規模が拡大したり組織化が進んだりした際に、片腕となって組織運営を行い、会社の発展を共に目指してくれる存在がいるというのは大変心強いものです。

 そうしたことを任せられる人材がいるということは、自社にとっても大きな強みであるはずです。

 人材教育のなかで あらためて管理者教育に注力する企業が増えている背景には、管理者のスキルアップが会社自体の活力の増大に大きく結びつくと見直されていることがあげられます。

 管理者といっても、いくつかの段階に分かれますが、最終的には社長の理念や考え、気持ちを十分理解し、その意向に沿った方向に組織を導くことができ、また、社長のいないときには、社長の代わりとして業務を遂行できるような、そんな人材を育てていかなくてはなりません。

 

組織における管理者の存在価値

 会社経営をとりまく環境の変化が激しい今日、いちはやく その変化に適応し、適切な施策を迅速に進めていくことの実現は、会社が継続的に成長するための鍵となります。

(1)現場の管理者が、経営者と同じ経営意識(現状認識、問題意識、経営方針への理解や、それによって得られる判断力など)をもって、次々と発生する問題にいちはやく手を打っていく

(2)経営者は、打たれた施策についての報告を受け、全社的な視点から改善を加え、各部署に指示していく

(3)管理者は、経営者の新しい方針・施策を正確に理解し、自部門の部下に速やかに伝え、確実に、そして迅速に実行させるということです。

 すなわち、これらの実現においては、組織の要である管理者が社長の分身として、自分の組織を率いる職責をいかに適切に果たせるか否かがポイントとなります。

(1)~(3)を実現するための成否は管理者で決まり、管理者次第で会社は成長もすれば衰退もすると考えることができるのです。

 現在では、より迅速な意思決定を行うために、組織の職階を減らし、できるだけフラットな組織をつくることが主流になっています。

 これら3点のマネジメントを実行できる管理者はその存在価値を高め、これらのマネジメントを妨げるような存在に過ぎない管理者は、居場所を失っていくことになるでしょう。

 

求められる管理者とは

 現代において、管理者が期待される役割とはどのようなものでしょうか。

 管理者とは、本来 経営者の分身として、与えられた組織の力を最大限に引き出し、集積をあげるべき存在です。

 具体的には、

・会社および自部門が泡えている問題を正しく理解する

・トップの立案した経営戦略にしたがって、部門の成長戦略を立案し、その実行計画を立てる

・部門目標の達成に向けて部下を動機づけ、自ら先頭に立って業務を遂行する

という3つの行動をすべて行う必要があります。

その際、管理者に求められる具体的な行動、また、それを可能にする能力・資質は、任された組織の社内での位置づけや、その部門の現状、業務内容などの要件によって個々に異なってきます。

 たとえば、人材の育っていない組織では、管理者はプレイング・マネージャーとして組織の稼ぎ頭となり、かつ、部下の育成やモチベーションの技術も持ち合わせていることが求められます。

 また、十分に人材が育っていれば、マーケティング戦略や管理システムの見直しを行い、部下がより高度な仕事をする環境をつくったり、自部門の、さらには自社全体の有効な成長戦略を経営者に提言したり といった行動も求められるようになります。

 したがって、管理者教育の方針を考える際には、

 ・自社の進むべき方向性

 ・将来の自社の組織図と、そのなかに占める各管理者の位置

 ・各管理者に将来果たしてもらいたい役割

 ・現在の各管理者の能力・行動

を明らかにし、そのうえで「期待像」と「現状」のギャップを埋めるために どのような教育を行うべきかを考える必要があるでしょう。

 

最低限これだけは身につけさせる

 管理者が身につけるべき能力や資質はさまざまですが、最低限身につけさせる能力を整理します。

 管理者の仕事を、

 ・抱えている問題を発見する段階

 ・戦略や計画を策定し意思決定する段階

 ・立てた計画を遂行する段階

というように3段階に分けると、各段階で必要とされる能力は次のようにまとめることができる。

 

<管理者の仕事>     <必要とされる能力>

 ・問題発見段階    情報収集能力と経営者とのコミュニケーション能力

 ・意思決定段階    戦略立案能力と決断力

 ・計画遂行段階    管理能力と実務能力

 

1 問題発見段階

(1)情報収集能力

 「情報収集能力」とは、必要な情報が自分のところに入ってくるように工夫する能力を指す。

 問題を発見し戦略を立てるためには、自部門の状況や経営環境がどういう状態にあるのかを把握していなければなりません。

 そこで、管理者は、「戦略の立案に役立つ情報を収集する」という情報収集能力が必要なのです。

(2)経営者とのコミュニケーション能力

 一見順調にいっているような組織において、適切な情報管理を行っていても、解決すべき問題が発見できない場合があります。このような場合、管理者には、「将来的に自部門はどのような役割を果たすべきなのかを理解し、現状とのギャップを把握することで問題を発見する」という活動が求められます。

 その際、社長の意向や考え方を理解している管理者ほど的確に問題を抽出することができるため、「経営者とのコミュニケーション能力」が重要となります。

 

2 意思決定段階

(1)戦略立案能力

 「戦略立案能力」とは、収集した情報を基に、効果的な部門戦略を立案する能力です。

 それは、物事を正しく推論する能力であり、あるいは取り組まねばならないテーマを選び出す能力でもあります。

 それらを身につけるためには、論理的な思考とさまざまな経営理論・経営手法に対する知識・見識が必要といえます。

(2)決断力

 「決断力」とは、何か決めなければならないときに、あれこれと悩まずに決断できる能力です。

 方向性を定め、決断したならば迷わず、成功させるためにどうすればよいのか、何を調査しなければならないか、というように考えを前に進めます。

 管理者には、「とにかく決断して前に踏み出す」という姿勢が必要なのです。

 

3 計画遂行段階

(1)管理能力

 管理者は、それぞれの部門の長として部門戦略を部下に遂行させていくために、「自部門をマネジメントするための管理能力」が必要になります。

 適切な指示の出し方や進捗管理の技術、部下に対するモチベーショシアップ能力や部下の教育方法など、自部門に必要な管理手法・技術を実践できる能力が必要なのです。

 部下に進むべき方向を示し、部下の活動を支援していく、いわゆる「リーダーシップ」の発揮も この部分に含まれます。

(2)実務能力

 「実務能力」とは、実際にその部門の業務を行うために必要な知識と能力です。

 業種・職種によって必要となる能力は異なりますが、管理者自身が高い実務能力をもっていることは、部下を指導・育成していくうえできわめて重要なことであるといえる。

 現在の自部門における業務の進め方を改革し、部下がより成果を発揮しやすい環境をつくっていくうえでも、業務に対する専門知識やノウハウは欠かせない。

 

教育・育成のポイント

1 社長自身が教育する

 管理者教育において最も大切なことは、社長自らが管理者と共に自社の存在する価値や将来的な経営戦略を語り合い、また、社長が管理者各人に対し、期待するイメージを示すことです。

 このとき、「夢を共有する」ということは、管理者が社長に感情移入できるよう導くうえで、もっとも効果的な方法です。

 これによって、管理者が何か実行しようとする際、「社長ならどう判断するか」を自然に考えることができるようになるのです。

 管理者教育においては、

 ・自社は今後このような方向に向かって事業を進めていく

 ・そのためにこのような管理職を必要としている

 ・ぜひ君には管理者として将来このような役割を果たしてほしい

などといった、社長自らが管理者と親しく事を語り合い、各管理者に対する「期待像を示す」ことが必要です。

 これは、管理者に対し、

 ・社長と同じ判断をもって自部門の経営戦略を策定できるようになってもらう

 ・今後の研鑽への動機づけを行う

といったことを期待するならば、社長と管理者との間には上下関係だけでなく、「同志」としての信頼関係が必要であるからです。

 実際の業務遂行に関しても、社長自身が管理者の日常業務について指導を行うことによって、社長の高い見識や能力に触れさせ、管理者を教育することができます。

 これは同時に、社長が管理者に「自社の将来的な経営戦略について、具体的な情報を与える」ことにもつながるのです。

 

2 気づきを与える

 教育・育成で効果をあげるためには、管理者自身に「自分はこのままでよいのか」と考えさせ、「もっと成長したい」という意欲をもたせることが重要です。

 「自分は今のままでよい」と思っている管理者に どのような教育を行っても、一時的な効果しか得られません。

 教育の際には、管理者本人が「成長しなくては」と感じられるように、「このままではいけない」という「気づき」を与えることからはじめるとよいでしよう。

 自己啓発への動機づけのポイントとしては、

・本人への周囲(上司・部下)からの期待と評価を知らせ、本人の認識とのギャップを示す

・本人の、将来に対する希望や理想(ライフプラン)を明確にさせ、実現のために何が必要か、現実とのギャップはどれだけあるかを考えさせる

・管理者本人に、自分の優れた点と足りない点を考えさせる

・今後どのような能力を身につけるべきか、また、どのような方法でそれを実現すべきか、会社側の教育プランとキャリア開発プランを示す

・新しい力を身につけることで、会社にとってどのような存在になってほしいと思っているか、また、個人の生活がどのように豊かになるか といった将来像を示す

・自分で自分の能力開発プランを立てさせ、その進捗状況をチェックする

などがあげられます。

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