「コントロール型」から「自律共感型」の時代

 年功序列型の賃金制度が崩壊して久しいといわれますが、日本のマネジメントは上司が部下を過去の経験に基づいて「コントロール」するマネジメントが続いてきたといえます。

 コントロール型マネジメントは、大量生産、大量消費を前提とし、ノウハウを蓄積しながら会社が持続的成長を遂げる時代には適したものだったのです。

 この時代では「過去の成功モデル」が非常に重要だったからです。
そのやり方をしっかりと身につけて応用していけば、これまでと同じような成功を得る可能性が高くなります。

 よって、新しく入った社員には、「うちの会社はこのようなやり方でやってきた」「この業界で成功するためには、このような売り方をしなければならない」「まずは、先輩の仕事を見て、まねしてやってみるのがよい。仕事の意味はそのうち分かる」といった教育をされることが多かったのです。
 「コントロール型マネジメント」では、一人ひとりの社員には情報も権限もあまり与えずに、できるだけルールをつくって社員をコントロール(規制)していきます。

 組織として過去の成功モデルからはずれないように、慎重に意思決定をすることが求められるのです。

 しかし、徐々に社会の多様化や国際化が進み、IT技術を活用した情報化とソーシャルメディアが発達することにより、そのようなマネジメントではサービスや商品が進化するスピードについていけなくなるばかりか、消費者からの多種多様な要求にこたえることができなくなってきたのです。

 「多様化」「情報化」「スピード化」が進んだ現在では、現場スタッフ一人ひとりが自社の方向性ややるべきことを理解したうえで、より早く、それぞれの現場で判断することが求められるようになってきています。

 いちいち上司に確認していたのでは、判断が遅れ、チャンスを失うばかりかクレームになってしまうのです。

 このような職場で管理職に求められるのは、「コントロール型マネジメント」ではなく、組織の理念や志を理解、共感し、同じ方向に向かって使命感をもって皆が自律的に行動できるようになる「自律・共感型マネジメント」の実践なのです。

 この「自律・共感型マネジメント」ができるこれからの管理職像とはどのようなものなのでしょうか。

 

非金銭的報酬

労働基準法でいう管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいいます。

 例えば、部下の採用や解雇の権限をもち、自身の出勤時間や退勤時間は当然自分で決めることができなければなりません。

 管理職になって、得られるものは? という問いに対して、「給料が高くなる」ということが真っ先に思い浮かぶような人は、管理職としての適性に疑問を持たざるをえません。

 当然ながら、管理職になれば給与や手当は増えるでしょう。

 過去の判例でも そのような待遇を求めていることは事実です。

 しかし、これからの時代に求められる「自律・共感型」の組織のリーダーは、金銭的報酬以上に、以下のような「非金銭的報酬」を感じることができなければ、役割を全うすることば難しいでしょう。

 ・会社から、それまでの働き方、努力が認められ、これからも期待されているという承認の報酬

 ・より大きな権限、責任をもって仕事をやっていくことができる、やりがいという報酬

 ・職位が上がることによって、これまでに見ることができなかった世界を見ることができるようになるという相酬(例えば、これまで参加できなかった会議や会合にでることができたり、取引先のトップと直接話ができる機会が増えることもあるでしょう)

 ・会社のトップや経営陣と、直接話や仕事をする機会が増え、自身のさらなる成長のチャンスを得るという報酬

 管理職になった人自身が、単に給与や待遇がよくなることを求めるのであれば、おそらくすぐに「こんなにたいへんになって、これだけしか給料があがらないのであれば、割に合わない」と思って、モチベーションがさがってしまうでしょう。ついには、「残業代がでない」「責任が重過ぎる」「会社が十分な部下をつけてくれない」などの愚痴ばかりがでてきてしまうのです。

 非金銭的報酬を感じることのできない人は、会社の理念に共感し、その方向性にそって自律的に働くことなどできません。

 仮にスキルだけはあったとしても、いずれそのスキルを、会社が目指す方向とは逆の方向に使うことにすらなりかねないのです。

 「自律・共感型マネジメント」を実践していかなければいけないこれからの時代、今の会社・職場の中で非金銭的報酬を感じることができる、ということが管理職となるための前提条件ということができるでしょう。

 

管理職への昇格とは「経営に参画させる」こと

 会社の経常的視点からみると、昇格させることは、社内の格付(等級)が上がり、責任と権限をより大きくすることを意味します(それに伴い、もちろん賃金も高くなります)。

 責任と権限が大きくなっていくとは、「経常に参画させる」ことです。そのための評価は、賞与の支給時や毎年の昇給の評価とは違った視点をもって行わなければなりません。

 一般的に、成果を出した者には賞与をたくさん支給し、仕事で能力をつけた者や発揮した者には昇給させたり手当を支給したりします。

 昇格には、一定の成果や能力を求めるのはもちろんですが、それ以上に会社の理念や方向性、やり方といったことを理解しているかどうかが重要になってくるのです。

 とある「昇進・昇格実態調査」において、「昇進・昇格選考において期待し、求める要件」(部長クラス)は何かという問いに、多くの企業が挙げたのは以下のとおりでした。

 ・戦略的・革新的思考力

 ・目的達成に向けての実行力

 ・大局的な視野

 ・適切なリスクに挑戦する判断力

 これらの要件によって最終的に企業が求めているのは、「組織が持続的に成長するための新たな付加価値を創造し続ける」こと、つまり、新たなビジネスを生み、成長を続けるということです。

 会社経営は、社長や役員だけが新たな事業を考えるだけでは成長できない時代になってきています。

 すべての社員が自律的に新たなやり方を考え、管理職を中心に現場から新たな事業を生み出していくことが強く求められています。

 今の管理職は、10年前であれば役員のみがやっていたような役割以上に創造的な役割を担わなければならない時代になっているのです。

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