差別化を促す人事施策を実践

 企業の持続的な成長は、経営戦略に連動した人事施策が下支えします。特に企業が新たな成長ステージへ進むときには、人事制度改革によって社員に求める行動を明確にする会社が少なくありません。しかし、意図通りに制度が機能せず、社員が疲弊してしまう会社も散見されます。何がその成否をわけるのでしょうか。

 

課題認識

 人事戦略はどれだけ機能するかが重要。現場での運用力が問われる

 人事戦略を施策に展開し、実行まで徹底できるか

 

人事戦略を立てても実行しきれない現実

 かつての年功序列・終身雇用型の人事管理から、職務や成果に注目する人事管理へ、人事制度の潮流は時代に応じて変化してきました。特に、近年は、採用から育成、定着・活躍まで一貫性をもった人事戦略をつくり、強い組織を目指す取り組みはどの会社でも取り組まれています。

 しかし、プレイングマネージャーばかりで、育成まで手が回らない現実、配置のミスマッチで起こる退職、多様な人材を活かしきれないジレンマなど、戦略通りに事は進まない実態も見えてきています。人事戦略を描いても実行されなければ、意図した人の活躍も寄与するはずの経営成果も生まれてきません。

 

人事は実行まで含めた戦略業務

 そこで、改めて考えるべきは、これからの人事が行うべき業務とは何かという点です。給与計算や勤怠管理も人事の重要な業務ですが、多くの時間を占めていた事務作業は、ITやアウトソーシングの活用で効率化が進んできました。代わりに、人事の中核となるのは戦略業務です。どれだけ有効な戦略をたて実行を推進できるかが組織力を左右します。オペレーション業務中心だった仕事を戦略業務中心へ、「HRトランスフォーメーション」と言われる人事業務のシフトを意図的に行っていく必要があります。

 戦略業務は、ただ戦略を描き制度を設計するだけではありません。たとえば、求める人材像に基づき評価制度を大きく変更したとしても、社員が評価軸を理解しなければ、混乱が起こってしまいます。また、現場が納得できていない制度運用をしても、意図した成果にはつながりません。評価者研修等で評価者視点の目合わせをしないと、評価のばらつきが生じることもあります。

 

個人と組織のパフォーマンスを最大化

 人事戦略の実効性を高めるには、社員一人ひとりの定着・活躍と連動した取り組みも欠かせません。「人手不足の深刻化」や「就業価値観の多様化」といった環境下の近年は、特に社員一人ひとりの特性を活かし、成果創出に貢献することが求められます。もし、強みを活かせず配置のミスマッチが起こると、モチベーションやパフォーマンスの低下、時には離職まで引き起こしかねません。

 人事戦略を個々人の配置や行動まで落とし込むために、先進企業が着手しているのがピープルアナリティクスです。すなわち、能力・性格・行動といった「人」にまつわるデータと社内に蓄積された あらゆる情報を分析し、組織の課題解決を図っていく取り組みです。採用や配置、離職率改善、業務効率化、生産性向上などに活用されています。

 

人事課題解決への道筋が経営課題解決にも寄与する

 ピープルアナリティクスの活用が進む企業は、共通して自社に存在する課題を発見し、ビジネス課題解決の手段としてデータを扱っているのが特徴です。人事戦略の実現は、人事課題の解決を進め、ひいては経営課題解決に寄与します。たとえば、データを基に人材要件を再定義し、経営計画に沿った効果的な「採用」を進めている会社もあります。また、埋もれている社員をなくしたいという人事課題を「異動配置」と連動させ、経営成果に直結するチームづくりを進めている例もあります。いずれも、運用の徹底を軸に、個人と組織のパフォーマンスを最大化する人事戦略の実行が進んでいるのです。

 ピープルアナリティクスは、人事課題を解決するための基盤です。必要な情報収集を徹底し、目的にあわせた分析・実行を進め、その結果をもとにPDCAを回し続けることは、経営に資する人事としての重要な手段になりつつあるのです。

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