新入社員研修

 新入社員研修は、社会人として必要なマインドセット、企業理解、仕事の進め方・マナーを身に付けてもらうために行います。実施方法により効果には差があり、定着のためには振り返りが必要です。

 

新入社員研修の目的

 新入社員研修の狙いは、社会人になるにあたって必要不可欠なマインドセットや組織の仕組み、企業の事業内容、仕事の進め方、社会人のマナー・スキルなどを習得することにあります。

 早くからスキルを習得し、成功体験を積むことで、早期離職防止にもつながります。

 

新入社員研修の内容

 新入社員研修の具体的な内容は次のようなものです。

マインドセット

 上司の目が届かないリモート環境下でも仕事を進められる主体性、会社の利益を左右するコストの意識、また、研修が終わった後も学び続ける自律性、論理的思考力、イノベーションの重要性など、ビジネスパーソンとして必要不可欠なマインドセットを学びます。

ビジネス文書・メールの書き方

 誰が読んでも伝えたいことが一目で分かる、ビジネス文書・ビジネスメールの作成ノウハウを学びます。

企業の業容、数字の見方・コスト意識

 まずは、会社全体の業容を理解することが重要です。どんな製品・サービスを提供しているのか、その製品やサービスにどんな特徴があるのか、また、競合会社との比較や強み・弱みなどを把握するのは必須となります。売上や利益、費用といった企業の数字を知ることは、どうすれば企業が成長するのか、どのようにして給与が決まるのか、といったビジネスそのものの理解につながります。いくら製品がヒットして大きな売り上げを得られても、その製品をつくる費用がかさめば利益を圧迫します。製品の生産部門が、売上ではなく粗利(=売上―売上原価)を意識しながら仕事をしているのは そのためです。

ビジネスの基本スキル「報連相」と「PDCA」

 「報連相」とは報告・連絡・相談のことです。仕事は1人でするものではなく、上司や先輩社員らと連携しながら進めるものです。そのためには、タイムリーな情報共有が不可欠。報告・連絡・相談が徹底されていれば、新人が進めている仕事の状況を周囲がきちんと把握でき、その結果 トラブルを未然に防ぐことができます。

 「PDCA」とは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返して業務を継続的に改善する手法のことです。まず、行動計画を立て、その計画に基づいて業務を実行、実行の結果を評価し、必要に応じて改善を加え、また、新たな計画を立てる。このサイクルを回し続けるのです。PDCAを習得することで、自分がやるべきタスクが明確になり、業務効率もアップします。

PCスキル

 PCの起動方法、タッチタイピング (ブラインドタッチ)、ショートカット、ワード・エクセル・パワーポイントなど、ビジネスパーソンとして必須のPCスキルを学びます。スマートフォンの時代となり、学生たちのPCスキルの低下が危惧されている昨今ですが、PCスキルは、業務効率や正確性に直結し、ビジネススキルとして必須 です。新人の時点で体系的に学ぶ機会を提供するのが望ましいといえます。

コンプライアンスの重要性

 新入社員研修では「コンプライアンス」に関する教育も欠かせません。コンプライアンスは「法令遵守」と訳されますが、実際には法令のみならず、より広く「社会的規範や企業倫理、就業規則などを守る」といった意味で使われています。特に、近年は、個人情報の漏洩など情報セキュリティ上のトラブルが発生したり、SNSの利用で炎上騒ぎを起こしたりするケースも散見されます。新入社員研修の時点でコンプライアンスに対する理解を深めておく必要があります。

メンタルヘルスの注意点

 ストレスの予防やストレスとうまく付き合う方法、ポジティブな気持ちを維持して仕事に向かうための方法などを学びます。自らメンタル不調の兆しを発見し、早期に専門機関に相談することができれば、休職や離職といった事態も回避できるかもしれません。

社会人に必要なマナー

 あいさつ・身だしなみ、電話応対での言葉遣いなど、社会人として必要なビジネスマナーを学びます。「名刺を渡すのは訪問した側が先」「来客を案内するときは自分が2、3歩前を歩いて先導する」など、細かい立ち振る舞いをひとつ誤るだけで、相手に不快な思いをさせかねません。また、職場におけるパワハラ、セクハラは全方向で発生する可能性があります。 新人の段階から、「何がハラスメントにあたるのか」「ハラスメントをしないために何が必要か」などを学ぶ必要があります。

 その他、職種別にテーマを絞った研修もあります。例えば、営業職向けのプレゼンテーション研修、事務・アシスタント向けの接遇マナー研修などです。

 

新入社員研修の手法

 新入社員研修にも いくつかの手法があります。代表的な手法として「Off-JT」「OJT」があげられます。「Off-JT」はOff-the-Job Trainingの略称であり、オンライン研修を含むこともあります。業務から離れた場所に講師を招き、主に「知識」を習得します。これに対し「OJT」はOn-the-Job Trainingの略称で、職場で働きながら、上司や同僚から直接指導を受け、主に実務の能力を磨いていきます。
 「自己啓発」も新入社員研修の形態の1つです。eラーニングなどを活用して従業員が自発的に学ぶことを指します。企業はそこで発生する費用を負担したり、勉強時間を捻出できるよう就業時間を融通したり、といった後方支援を行います。なお、自己啓発はOff-JTやOJTを経て、新人の自主性・自律性を養ったあとに取り入れるのが望ましいとされます。
 さらに細かくみれば、オンライン研修を含めたグループワーキング、ケーススタディ、ロールプレイングなどがあります。グループワーキングは、あるテーマに沿ってチームで議論を行う研修、ケーススタディは事例研究、ロールプレイングは、営業職と顧客など仕事中によくある場面を想定し、それぞれの役割を演じることで実践力を磨く研修です。

 

新入社員研修の実施フロー

 新入社員研修の実施フローは次のとおりです。

1 企画

 自社が必要としている受講者のレベルに合った実施方針・時期期間などを踏まえて企画を策定する。

2 内容策定

 研修目的と受講者レベルに合わせた研修形態・手法と研修項目を策定する。経営陣や現場の担当者に話を聞き、新人に何を教えるべきかヒアリングすることも有効。

3 案内

 研修日時・内容・会場(オンライン)に関する案内を新人に送付。

4 実施

 1~3に沿って研修を実施。一方通行の研修で終わりにせず、受講生の様子から理解度を推し量りながら進める。

5 振り返り

 研修内容の理解度を測るためのアンケートや振り返りのディスカッションなどを行う。そこで課題が見つかれば、次回の新入社員研修までに改善する。

6 課題抽出

 研修の成果を高めるために、研修内で研修終了後のアクションプランを作成してもらい、一定の時期に実行状況をレポートさせたり、場合によってフォローアップ研修を実行したりする。

 

新入社員研修成功のポイント

誰に・何を・なぜ研修するのか明確に

1 新入社員のレベルと自社が本当に求める人材像を把握する

 研修内容を決めるには、新入社員の現在のレベルと自社が求める人材像を把握する必要があります。新入社員のレベル把握のためには、入社時の試験・面接に加え、事前アンケートも有効です。自社が求める人材像と現在の新入社員の間に どんなギャップがあるのか把握することで、そのギャップを埋めるための研修内容も自ずと明らかになります。

2 なぜそれを学ぶのかを明らかにする
 研修内容をより効率的に・より深く理解するためには、学ぶ目的を示す必要があります。研修で教える項目それぞれについて、最初に「なぜ・何のために学ぶのか」を必ず説明しましょう。

3 事後の効果測定を必ず行う
 どんな学習でもそうですが、一度学んだだけでは知識は定着しません。優れた内容の研修も、終わったところで満足してしまうと、新入社員の身にはならないのです。知識の定着のためには、後で振り返りの時間を設けて理解度を確かめるなど、研修後のフォローも忘れずに行いましょう。

4 新入社員のタイプを知る
 1990年代後半に生まれた昨今の新入社員は「Z世代」と呼ばれる世代です。子どもの頃からスマホやSNSも使いこなしてきた生粋のデジタル・ネイティブ世代であり、一方ではリーマンショックなどの不況の影響下で、仕事やお金に対して堅実な考えを持つリアリストでもあります。特に、昨今は、大学でキャリア形成についてカウンセリングを受けており、キャリアアップ機会の獲得にも熱心です。業務にどのような意味や目的があるのか、自分のキャリアにどう役立つのかを理解できると、仕事に対するモチベーションがアップする傾向があります。

5 配属後のフォロー担当を決めておく

 どんな研修においても、肝心なのは研修内容を日々の実務に生かせるかどうかです。また、OJTを経るからこそ知識が定着するともいえます。特に、OJTの初期における手とり足とり指導は非常に重要です。教える側の負担は大きくなりますが、大切な新入社員を手厚く指導できる体制を整えたいところです。

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