価格弾力性

 価格弾力性とは、製品や商品、サービス価格の変動に対して、需要がどのように変化するかを定量的に示したものです。

 顧客は、「商品をできる限り安く手に入れたい」と常に思っているため、価格が安くなれば需要が増加し、価格が高騰すれば需要が減少します。

 製品や商品、サービスを販売する際には、利益率を上げるために単価の向上を図りつつ、売上が最大になるポイントに設定することが大切です。

 

価格の弾力性が小さいとは

 「価格弾力性が小さい」とは、価格の増減幅に対しての需要の増減幅が小さいことです。「価格弾力性の小さい商品」というのは、価格の値上げに対して顧客が離れづらい商品であることを意味します。

 価格弾力性の基準値は「1」になるので、価格弾力性が「1」を下回った場合は価格弾力性が小さいと表現します。

 

価格の弾力性が大きいとは

 「価格弾力性が大きい」とは、価格の増減幅に対して需要の増減幅が大きいことです。

 「価格弾力性が大きい商品」とは、価格が一度上がってしまえば顧客が商品を買わなくなってしまう商品を意味します。価格弾力性が「1」を上回ると、価格弾力性は大きいと言えます。

 

価格弾力性の計算方法

 価格弾力性とは、価格の変化に対して需要がどのように変化するかを示します。

  価格弾力性 = 需要の変化率(%)/価格の変化率(%)

 「需要の変化率」とは、価格変更後にどれだけ需要に影響があったかを示します。

 「価格の変化率」とは どのくらい幅価格を変更したのかということを指します。

 

価格弾力性の具体例

 ブランドバッグを例に挙げて考えてみましょう。バーゲンセールでブランドバッグが15%値下がりした際に、需要は30%増加したと仮定します。

  価格弾力性 = 需要の変化率(30%)/価格の変化率(-15%)

 価格の弾力性は 2 と割り出せるので、価格弾力性が高いということが言えます。すなわち、このブランドバッグは価格が変化すれば、急激に需要も変化する商品だと判断できます。

 

価格弾力性の要因

 価格弾力性を決定づけるのは以下の3点です。

①必需性

 必需性が高いか否かで価格弾力性は変化します。

 一般的に、その商品、サービスが生活と深く結びついていればいるほど、消費者は価格の上昇・下落にかかわらず、継続して商品を購入する可能性が高いと言えます。

 必需性が高い財は価格弾力性が低く、高級品などの必需性が低い財は価格弾力性が高いのが一般的です。

②代替可能性

 代替可能性が高い商品は価格弾力性は高くなります。

 その商品でなくとも、他の商品で代替できるのであれば、なるべく安く済ませたいという顧客の心理が働くことが主な原因です。逆に、代替可能性が低い商品は価格弾力性は低くなります。

③心理的影響

 価格弾力性は顧客の心理的影響を受けます。

 例えば、端数価格です。あるものの値段が3,000円に設定されている時よりも、2,999円になっている時のほうが買いたくなってしまう、ということが消費者行動の研究により明らかになっています。

このような値段設定が行われた際は、価格弾力性が高まる傾向にあります。

 

実際の商品の具体例

 価格弾力性が高い商品と低い商品の具体例を確認します。

(1)価格弾力性が大きい商品

 価格弾力性が大きい商品は、以下に挙げる2つの条件を満たしている場合が多い。

①嗜好

 一般的に、嗜好品は価格弾力性が大きいといわれています。

 嗜好品は、生きていくために必ずしも必要ではないことから、値段が高くなれば安くなるまで我慢できる商品だといえるでしょう。一方、普段よりもお得に手に入れることができるならば、手を出してしまう商品だともいます。

 このように、価格の変化に対して需要の変化が高いため、一般的に価格弾力性は大きいのです。嗜好性が高い商品は、価格弾力性が高い傾向があると理解しておきましょう。

②代替可能品

 代替がきく商品も、価格弾力性が高くなる傾向があります。

 例えば、今まで使っていた普通の鉛筆が急に値上がりをした場合を考えてみましょう。おそらく、大勢の方は別の安い鉛筆を買うのではないでしょうか。

 似たような他の商品で済むのであれば、安い方を利用したいという顧客の心理が働くためです。

 価格の変化に対して顧客の需要が大きく変化するため、代替がきく商品は価格弾力性が高くなります。

(2)価格の弾力性が小さい商品

 価格弾力性が低い商品例は以下の2点です。

・流行りの商品(今どうしても欲しい)

 流行りの商品や「今、どうしても手に入れたい」と思ってしまう商品は、価格弾力性が低くなります。値上がりしていたとしても、「今欲しい」「今手に入れないとさらに高くなってしまう可能性がある」という顧客心理が働くことが要因です。

・必需品

 必需品も価格弾力性が低くなる傾向があります。

 高かろうとも、商品を購入しなければ生活できない場合、どれほど値段が高くても顧客は購入以外の選択肢がないことが理由です。しかし、例えば、近くのスーパーのみで必需品が値上がりした場合には、顧客は少し遠出をして、より安いスーパーで必需品を買うという選択ができます。

 カルテルが禁止されているのは、こうした必需品の不要な一斉価格引き上げを避けるためです。

 

価格弾力性を有効活用する

1 新商品の価格を設定するとき

 価格弾力性は、新商品の価格を設定する際に活用できます。

 新商品の価格を設定する際には、まず利益率を検討する必要性がありますが、それと同時に、競合分析も必要です。自社の製品、商品の競合の価格弾力性を分析することで、下記の2点について検討できます。

・自社商品をどこまで値上げしても需要がついてくるのか

・競合より値下げをすることで どれだけの顧客を奪取できるのか

 また、模倣可能性が低く、希少性が高い商品であれば、他社より大幅な値上げを検討することができます。

2 売値の再検討をするとき

 売値の再検討をする際にも価格弾力性を考慮する必要があります。

 薄利な商品の利益率をあげたい場合や、そもそも値段が高すぎて需要が全くない場合などは、競合商品を調査し、価格弾力性をふまえた上で価格の再検討をすることがマーケット戦略には欠かせません。

 マーケットの分析は欠かせないのです。

3 商品分析をする

 商品分析にも価格弾力性は欠かすことができません。

 自社製品が価格弾力性の低い商品であるはずなのに、売れていない場合は、値段設定ではなく、商品自体に問題がある可能性が高いのです。

 ものが売れない際には、商品が悪いのか、価格設定が悪いのか、それともプロモーションの仕方が悪いのかなど様々な理由があります。

 理由や原因の検討にも価格弾力性を利用することができます。

4 セールスやキャンペーンを打ち出す時

 セールスやキャンペーンを打ち出す際には、そもそも価格弾力性が高い商品でなければ安売りをする必要性がなくなります。ただ商品価格を安くするのではなく、価格弾力性を検討した上でプロモーションを促進しなければなりません。

 

 価格弾力性は価格を決定する際には欠かすことのできない概念ですが、価格弾力性だけでは全ての商品、サービスの価格は決めることはできません。

 商品、サービスの特徴によって、顧客心理をうまく利用した価格設定をすることが必要になるのです。

 また、商品だけでなく、会社を売却する際も、買収先の深層心理をつくことで売却価額を引き上げることができます。

 何かを売る際には、顧客のニーズに合った価格で提示額を算出することが大切です。

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