広報戦略

 広報戦略の最も重要な目的は、社会における自社の「名前」の認知度を上げることです。そもそも、自社の名前が社会に認知されていなければ、良い評価はおろか悪い評価すらされず、誰にも相手にされません。

 次に重要なことは、自社がしていることを伝えることです。社名の認知度が高いとしても、何をしている会社か伝わっていなければ、「名前は知ってるけどよくわからない会社」としてしか認識されず、存在感が薄くなってしまいます。

 そして、最後の目的は、ポジティブな印象を与えることで、ステークホルダーと信頼関係を築いていくことです。いくら名前が有名でしていることも認知されていたとしても、会社に対するイメージが悪ければ意味がありません。

 広報活動において重要なことは、ブランドを育て上げることと言えます。これらの理由から、コカ・コーラ社のような世界的に人気のブランドを築くには、ただの広告や宣伝だけではなく、広報戦略が求められるのです。

 今日、広報戦略の重要性が高まっており、さまざまな企業が注目しています。その背景には下記のような要因があります。

情報量の増加

 現代はスマホやインターネットが普及したことにより、社会に発信される情報が著しく増えました。情報量が増えた現代においては、従来のようにテレビや新聞などで大勢にアプローチする広告の効果が薄くなってきたのです。

 このような問題を解決する方法として、より戦略的に情報発信をする必要性が生まれたと言えます。

新聞・雑誌・テレビ・ラジオの衰退

 従来であれば、テレビやラジオ、新聞、雑誌といったオールドメディアに広告を出せば、ある程度の成果を得ることができました。しかし、今やインターネットやSNSのコンテンツのほうが消費者との距離が近く、心に刺さりやすくなっています。

 2019年のテレビ広告費はおよそ1兆86,00億円だったのに対し、インターネット広告費は2兆1,000億円と、インターネット広告費がテレビ広告費を抜いているのです。

費用対効果の問題

 次に費用対効果の問題が挙げられます。オールドメディアであるテレビで広告を出すなら少なくとも4,000万円以上必要になり、新聞広告であれば1,000万円以上かかります。このように莫大な広告費がかかり、さらに効果測定も難しいという問題もあります。

 しかし、適切な広報戦略に沿った広報活動が実現できれば、この10倍から50倍以上の結果も期待できます。また、それに付随して企業の印象が良くなることで、採用活動や対面営業に良い影響をもたらすといったメリットもあるため、より広報戦略の重要度が増しているのです。

小さく始めることができる

 オールドメディアでは、コストが大きいうえに効果測定が難しく、費用対効果がどれほどかわからないという課題があります。

 広報戦略も効果測定が簡単ではありませんが、小さく始められるという点がメリットです。小さく始めつつ消費者の反応を見てから、少しずつ規模を大きくしていくという方法を取ることができます。

 

広報戦略はデジタルマーケティングと相性が良い

 広報戦略を深く理解するためには、デジタルマーケティングとの相性の良さを理解しておくべきでしょう。

 スマホやインターネットが普及し、デジタルコンテンツと消費者との距離が近い現代においては、広報戦略とデジタルマーケティングを組み合わせることで、大きな成果を得られるようになっています。

 その要因には、消費者のコミュニティが小さくなったことが挙げられます。テレビCMや新聞広告が主流だった時代においては、皆同じ広告を見て同じものを欲しがっていました。

 しかし、現代では、一人ひとりが自由に好きな情報にアクセスできるため、消費者の関心がより細分化しているのです。

 また、「企業の公式サイトが好きでよく見ている」という人は少ないのですが、「企業のSNSアカウントの投稿はよく見ている」という人が多い今、TwitterやInstagramなどで企業アカウントが人気になることも珍しくありません。

 このような背景もあり、デジタルマーケティングと広報戦略を組み合わせることで、低コストで大きな効果を得られるため、費用対効果が高く、多くの企業がこの組み合わせに注目しています。

 

広報戦略を実践することで期待できるメリット

長期的なブランド構築

 伝えたいことが不明瞭な広報では、本来伝えたかった内容とは異なる受け取り方をされることもあり、自社が望むブランディングができません。

対して、戦略的に広報活動を行えば、時代の流れや社会情勢、環境の変化に対して適応しながら、自社のブランドを長期的に構築していくことができます。

一貫したコミュニケーションが可能

 戦略的な広報活動は伝えたいことが一貫していて、ブレ ることがないため、統一感のあるコミュニケーションが可能です。時と場合によってメッセージの内容が異なる情報発信を続けていると、ステークホルダーからの信頼を損ねるでしょう。

 誰にどのようなことを伝え、自社が社会においてどのようにあるべきかを明確にする必要があり、広報戦略はそれらを可能としています。

費用対効果が高い

 オールドメディアでの広告はコストが大きく、インターネットが普及した現代では消費者の心に刺さりにくいというデメリットがあります。

 しかし、広報戦略であれば、コストを抑えながらも大きな効果を得られる可能性があり、長期的な利益にもつなげやすいのです。

さらに、近年は飛び込み営業やテレアポなどのプッシュ型営業の効果も薄れてきていますが、広報戦略であれば、プル型営業をすることで消費者から連絡がくるようになります。その結果、営業にかかる費用も抑えられるでしょう。

効果測定ができる

 テレビCMや新聞広告など、オールドメディアでの広告は効果測定が難しいという課題があります。また、オールドメディアではなくとも、一般的に広報活動の効果を確かめることは難しいため、誰もが課題として直面します。

 しかし、戦略的に広報を進めていけば、広報活動の効果測定がやりやすくなるというメリットがあります。広報活動の効果が明確になれば、今後の施策をどのように修正していけばよいのかもわかり、少しずつ改善をすることで、効果的な広報が可能になるでしょう。

他社との差別化

 独自の戦略広報を確立すると、独自のノウハウとして他社との差別化につなげられます。

 一般的に、広告を打ち出す際には広告代理店を介することが多いため、広告のノウハウは社外に漏れやすいという難点があります。ある広告ノウハウがうまくいけば、そのノウハウはパッケージ化されて売られることになるのです。

 しかし、独自の広報戦略で進めれば、そのようなリスクを回避することができます。

 

広報戦略を立てる方法・流れ

 ステップ1 経営戦略との調整

 まず、広報戦略を策定するにあたって最初にやらなければならないことは、経営戦略や事業戦略を理解することです。具体的には、下記のようなポイントを把握しておきましょう。

・企業の目指す姿やあるべき姿(経営理念やビジョン)

・ビジョンを実現するために具体的にどのような戦略をとるのか(事業戦略・経営戦略)

・ステークホルダーに伝えるべきことと伝わっていないこと

 これらを把握して、企業が関わる課題などを洗い出し、現状を把握します。

 

ステップ2 プランやプログラムの作成

 ステップ1で課題やステークホルダーとの関係が明確になったら、ステップ2では企業の理想の姿とのギャップを確認することが重要です。それを踏まえて、ギャップを埋めるために必要なことや課題を解決するために、具体的なプランを立案します。

 ここでは下記の要素を決めていきましょう。

 ・広報活動をする目的

 ・伝えるメッセージの内容

 ・予算

 ・広報のテーマ

 

ステップ3 プランに沿った広報活動の実施

 ステップ3では、ステップ1で明確にした課題の解決や目的の達成のために、ステップ2で策定したプランを実際に行っていきます。

 この際注意するべきことは、発信するメッセージの内容を統一させておくことや、企業が展開する事業やサービス、ブランドとの一貫性を守ることです。

 もし、発信した情報と実際に展開している事業とのイメージが異なっていると、ステークホルダーは会社に対して不信感を抱いてしまいます。

 

ステップ4 広報戦略の評価

 そして、最後には これまで行ったプランの評価を行います。

 従来では、広報の効果測定は困難であると考えられてきましたが、現代においては、インターネットの普及や情報量が増えたことにより さまざまなデータをとることが可能となりました。

 したがって、評価に関係あるデータを集めることで、どれだけ効果があったのかを確認することができます。

 

広報戦略を立案・策定する際のポイント

必要なスキルを身に着けておく

 適切に広報戦略を策定するには、下記のようなスキルが求められます。

 ・戦略的な思考能力

 ・プロジェクトを管理するスキル

 ・ファクトブックをつくるスキル

 ・効果的なプレスリリースをつくるスキル

 このようなスキルは、基本的に広報をする際には必要になるため、身につけておくべきでしょう。

環境に合わせて柔軟に変えていく

 広報戦略を立てる流れのステップ2でプランを立て、ステップ3でプランを実行していきますが、絶対にプラン通りに進めなくてはならないわけではありません。現代は環境の変化が激しく、常に変化する環境に対応していく必要があります。したがって、環境に合わせてプランを変える柔軟性が求められます。

効果測定を行い、改善を続ける

 一通り広報戦略のプランが終わったら、効果測定を行います。しかし、効果測定を行うだけではなく、効果測定の結果から「次の戦略の改善点はどこか」や「今回のプランの課題はどこか」などを考えることが重要です。

このように、PDCAサイクルを回し続けることで、効果的な広報戦略が可能になります。

 

広報戦略で成功した企業事例

スターバックスコーヒー

 広報戦略で成功した企業の代表的な事例が「スターバックスコーヒー」です。当時、一般的な価格よりも高い値段だったにも関わらず、世界的に成功しました。

 スターバックスコーヒーが他社よりも特に戦略的に行ったことが ブランディングです。会社や商品に対する印象を良くしたり、そのイメージを消費者に浸透させると同時に、従業員のマインドセットも大切にしていきました。

 スターバックスコーヒーのビジョンに共感し、その価値を提供できるようにインナーブランディングにも力を入れることで、数多くのファンを生み出すことに成功したのです。

 

全日本空輸株式会社

 大手航空会社である全日空は、フェイスブックなどのSNSを駆使して、戦略的に広報活動を行っています。ただ単に飛行機の写真をアップロードするのではなく、「恋人感」をコンセプトにするなどして、共感を呼ぶ写真を撮り、ファンを獲得しています。

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