サービスマーケティング

 そもそも、サービスとはどういうものでしょうか。アメリカの経営学者、フィリップ・コトラーは、「サービスとは、一方が他方に対して提供する行為やパフォーマンスで、本質的に無形で何の所有権ももたらさないものをいう」と定義しています。

 

サービスの特性

 サービスには、有形財と異なる特性があります。具体的には、①無形性、②品質の非均一性、③需要の変動性、④不可分性、⑤非貯蔵性です。

1 無形性

 サービスには、形がない、目には見えない、触れたりできません。これを無形性といいます。

 サービスの無形性には可視化できるような対応をします。例えば、ホテルなどでトイレットペーパーを三角折にしたり、お試し体験させたりすることで、顧客がサービスをイメージできるようにすることが重要です。また、パンフレットの作成など有形性(可視化)を高めることも重要となります。

2 品質の非均一性(変動性)

 サービスは、それを提供する者や提供される時間や状況によって品質が変わることがあります。これを品質の非均一性といいます。

 品質の非均質性に対応するには、接客マニュアルの作成や従業員教育、顧客アンケートを実施して改善ポイントを探るなどの方法があります。

3 需要の変動性

 サービスの需要が季節や曜日、時間帯によって変動することを需要の変動性と言います。

 需要の変動性に対応するには、季節料金や時間帯割引を適用したり、予約システムで待ち時間を解消したり、ピーク時には対応スタッフを増やすなどが考えられます。

4 不可分性

 サービスの提供と消費が必ず同時に行われることを不可分性といいます。

 不可分性に対応するには、例えば、予備校のWeb授業のように、一度に提供できるサービスの量を増やしたり、サービスを記録・保存するなどが考えられます。

5 非貯蔵性(消滅性)

 サービスは在庫できないことを非貯蔵性といいます。そのため、需要と供給の管理をすることが重要になります。

(1)需要管理の例
・非ピークの時間帯・季節にサービスの利用料金を割引することで、ピーク時の需要を非ピーク時へ移動
・レストランのカクテルラウンジなど補完的なサービスの開発
・予約システムの導入

(2)供給管理の例
・パートタイム従業員の活用で、ピーク時の供給力の向上
・セルフサービスを導入するなど、消費者のサービスへの参加
・共同購入で供給設備を共有

 

サービスマーケティング

 サービスマーケティングは、5つのサービスの特性に対応したマーケティングです。

 サービスマーケティングでは、「サービス提供企業」「サービス提供者(従業員)」「顧客」の間で 3つのマーケティング活動が行われています。これは「サービストライアングル」とも呼ばれています。

 

エクスターナルマーケティング

 サービス提供企業が顧客に対して行うマーケティングであり、伝統的な4Pマーケティングのことです。

 4Pとは、Product(製品)、Price(価格)、Place(場所)、Promotion(促進)のことです。

 

インタラクティブマーケティング

 サービス提供企業の従業員であるサービス提供者(CP:コンタクトパーソン)が顧客に対して働きかけるサービスです。顧客からの反応もあり、CPと顧客の双方向コミュニケーションの結果、良好な関係が築けるかどうかで顧客満足度は変わります。

 

インターナルマーケティング

 サービス提供企業が従業員に対して行うマーケティングです。サービスマーケティングでは、直接お客様と接する従業員の対応が顧客満足度に大きな影響を与えます。そのため、企業は従業員が高いモチベーションと十分な品質を持って顧客対応できるように、彼らに対してコミュニケーションを行います。

 

経験価値マーケティング

 経験価値マーケティングとは、消費者の経験を刺激するマーケティング手法のことです。サービスを実際に経験できるイベントを通して、サービスへの認知度と好感度を高めます。経験価値は、サービスそのものではなく、サービスを利用した経験から得られる感動や満足感など、感覚的な価値を指します。

 経験価値には以下の5つの要素が含まれます。

SENSE・・・顧客の五感「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」に訴求します。

FEEL・・・斬新なアイディアやサービスの展開をすることで、顧客の好奇心を喚起します。

THINK・・・顧客に、高揚感や感動を想起させます。

ACT・・・顧客の身体的な変化や、実際のライフスタイルへ訴求します。

RELATE・・・他人との交流によって人間の所属欲求に働きかけます。

 テーマパークや高級アパレルブランド、体験型イベントなどが例として挙げられます。

 

 サービスは目に見えないものですので、有形財のように客観的に数値で表現するのは困難ですが、顧客のサービスに対する満足度がモノサシになります。

 顧客は、知覚したサービスと期待していたサービスを比べ、期待通り、もしくはそれ以上であれば再度利用しようと考えます。また、従業員のモチベーションと品質の高さが顧客満足度に直結しますので、従業員に対するインターナルマーケティングも重要になります。

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