KPI管理

 企業の売上目標や営業目標を達成するために重要となるのがKPIの設定と管理です。

 KPIとは、「Key Performance Indicator」の頭文字を取った略称で、業績を評価する定量的な指標のことです。KPIは最終的な目標を達成するために設定する中間目標の役割を果たし、具体的な数値で管理する必要があります。

 例えば、企業が年間売上目標を設定している場合を考えてみましょう。この場合、KPIは企業の売上に直結すると思われる項目に設定する必要があり、営業部門であれば、受注件数や訪問件数といったものが適切だと予想されます。そのため、受注件数や訪問件数のようなKPIを達成できれば、自ずと最終目標到達に近付くものをKPIに設定することが重要です。

 数値化できる中間目標であるKPIを設定するメリットは大きく3つあります。

・社員の行動が明確になる

・社内評価基準が明確になる

・組織全体のモチベーションが上がる

 

1 社員の行動が明確になる

 企業に関わる人々の知識や経験は様々です。そのため、目標達成に関して、個人によって認識が異なることは珍しくありません。

 目標を達成するため、具体的にどのような行動をすれば良いのか分からない という人もいるでしょう。そこで、KPIを設定し評価指標を明確にすることで、社員間の認識のズレをなくし、迷いなく行動ができるようになります。

 KPIに対し自身の何が足りないのか把握することも可能になるため、社員は自らの行動の修正を容易に行えるようになるのです。

 

2 社内評価基準が明確になる

 組織において、評価基準とは曖昧になりがちなものです。その結果として、社員が会社に対して不満を述べるというケースも決して珍しくありません。

 客観的な数値をKPIとして設定することができれば、上司からすれば社員をどのように評価するのか一目瞭然であり、公平な評価をすることができます。

 また、社員にとっても、数値があることで自身に対する評価を自分で確認することができるため、会社に対する不満は減少するでしょう。

 社員への評価に透明性をもたらすという意味でも、KPIは要な役割を担います。

 

3 組織全体のモチベーションが上がる

 KPIを設定することで、それぞれの社員が目標を共有できるため、同じベクトルを持って業務に取り組むことができる点も大きなメリットです。

 社員が同じベクトルを持って業務に取り組むことで、効率的で生産性の高い仕事ができるようになるのはもちろん、目標に向かう途中で課題や問題点が浮上した際には、それを全員で共有することもできます。

 また、営業職などであれば、目標達成に向けて切磋琢磨する環境が生まれ、個人のモチベーションも上がるでしょう。

 KPIの設定は、組織の雰囲気が変わる可能性も秘めていると言えます。

 

KPI設定の手順

 KGIは、「経営目標達成指標」といわれる企業の経営戦略やビジネス戦略を達成するために何を持って目標達成するかを定めるものです。

 KPIは、このKGIを達成するための中間目標に過ぎません。これに対して、最終目標であるKGIは、多くの企業にとって売上目標などになるでしょう。

 KGIは、最終目標となるので、曖昧に定義してはいけません。

 将来的なビジョンや経営理念に従った、具体的、かつ、達成可能なものをKGIとする必要があります。

 また、KGI設定の際には、いつまでに目標を達成するのか期限を明確にするのもポイントの1つです。

 年間の売上目標など、1年単位でKGIを設定している企業も多く見られます。

 

目標と現実のギャップを知り、プロセスを確認する

 KGIを設定する際、認識しておかなければならないのが目標と現実のギャップです。

 企業の中には、高すぎる目標を設定したために、社員が目標を無視して仕事をしているケースもあります。

 例えば、会社が営業部に対して、新規顧客の開拓を進めるために達成困難な売上目標を設定しているケースを考えてみましょう。この場合、営業マンは目標を意識せず、新規開拓に力を入れない可能性が高まります。これは会社にとってマイナスの影響が大きい状況です。

 目標と現実のギャップを埋める作業として重要になるのが細分化です。

 事業別・部署別でどのようなプロセスを踏めばKGIを達成できるのか考え、目標達成の精度を高めましょう。

 

KSFの洗い出しをしよう

 KGIを設定したら、次はKSFを洗い出していきます。

 KSFは、「重要成功要因」と訳され、事業を成功させるために必要な要因のことです。

 この段階では、可能な限りKGIを達成するためのKSFを挙げていくようにしましょう。

 例えば、飲食店が売上アップを目指すのであれば、来客者数を増やしたり、客単価を上げたりする必要があります。

 また、来客数を増やすのであれば、集客に力を入れる必要があります。一口に集客といっても、Web広告を利用するのか、店頭に人が立ちチラシを配るのか、テレビCMを流すのかなど様々な手法が考えられます。

 KSFを洗い出す際には、以下の2点を考慮することも重要です。

1 企業戦略や経営方針に準ずる

 KSFのい出しの際には、企業戦略や経営方針から大きなズレがないことが重要であり、自社が向かう方向性を改めて認識する必要があります。

 企業が高い技術力を持っており、今後も技術力を駆使して競合と勝負していくという方針であれば、これに合わないKSFは排除していきましょう。

 KGIやKSFは業戦略や経営方針が元になっていることを忘れてはいけません。

 

2 「外的環境」「内的環境」など細分化して考える

 KSFの洗い出しの際には、どのように他社と差別化を図っているのか、自社の強みは何なのか、などの外的環境と内的環境も考慮する必要があるでしょう。

 例えば、席数が限られている高級料理店がテレビCMを流して集客するなどの行為は、環境要因を無視している可能性が高く、目標達成にはつながらなさそうです。

 環境要因の洗い出しに関しては、カテゴリーを細分化し、各要素を抜き出していくと分かりやすいので試してみて下さい。

 

3 KSFからKPIを設定しよう

 KGIの設定とKSFの洗い出しが完了したら、KPIを設定していきます。

 KPIは社員にとって分かりやすく、行動に移せるものであり、評価基準が明確なものでなければいけません。そのため、KSFで洗い出されたものの中で、特にKGIに直結するものに絞り、具体的な数値に落とし込むことが重要です。KPIは達成可能な数値にすることも忘れないようにしましょう。

 また、KSFからKPIを設定する際には、「KPIツリー」などの一目で全体像を把握できるものを活用するケースもあります。

 

KPI管理のポイント

KPIの設計は複雑にしない

 KPIは誰が見ても理解できるものでなければならず、設計を複雑にしてはいけません。

 社員を評価する具体性を欠いた設計をしてしまえば、社員の行動に迷いが生じる大きな要因となります。また、上司としても社員を評価する際に基準が複雑になり、結果的にKPIを設定した意味がなくなる可能性が高いのです。KPIの設計はシンプルにすることを心がけましょう。

 また、一度設計したKPIは柔軟に変更できるようにすることも重要なポイントです。

 KPIの値は自社の業績だけでなく、顧客の状況や競合他社の動きによっては変化を強いられることもあります。状況変化を念頭に置き、柔軟に変化へ対応できるようにしましょう。

 

KPIの評価システムにツールを活用する

 KPIは社員が毎日可視化できるものでなければいけませんし、目標を共有する全員の目に止まらなければ意味がありません。

 社内に成績表を張り出し、日々進捗を確認するのも一つの手段です。しかし、更新がしやすいエクセルやその他Webツールを使った方が、効率よくKPI管理ができるでしょう。

 ツールを活用する際のポイントは、KPIに対して目標数字を達成できたか入力するだけでは不十分です。KPIを達成するために、各社員がどのように行動したのかを文章で残しておくようにしましょう。

 この文章は、受注に至るまでどのように行動したのかが明確に記された貴重なデータです。情報が蓄積されていけば、他社にはない自社オリジナルのノウハウとなり、社員がより良い成果を出す手助けをしてくれます。

 

KPI管理は継続的にPDCAを回す

 KPIの管理にもPDCAは欠かせない重要な要素です。

  PDCA =『計画実行反省改善』

 KPIでPDCAを回す際に重要となるポイントは、反省を現状把握だけで終わらせないことです。

 原因の追及や問題の本質の分析を行い、課題の解決に向けた対策の検討を行いましょう。

 PDCAのサイクルを社内に定着させるためには、管理職が率先してこれを取り入れ、社員とのコミュニケーションにも活用していくことが重要です。

 PDCAを回して、社内全体のKPIを達成する意識を高めるようにしましょう。

 

KPIで管理すべき指標

 KPIで管理すべき指標は、マーケティング部門や営業部門によって異なります。

マーケティングにおける最重要指標はLTV(生涯顧客価値)です。KPIは、このLTVを最大化させるものに設定するケースが多くなっています。

 

LTVと相関性が高い2つの指標

客単価

 客単価は、1人のお客様が1回の買い物で何円のお金を使ってくれたのかを計る指標です。

 1回の買い物における客単価が高まればLTVは高まるため、KPIで管理する指標として客単価は重要な要素となるでしょう。

 客単価を上げる方法は、大きく分けると、商品価格を上げるアップセルと平均購入点数を高めるクロスセルの2つがあります。どちらの戦略を取る方が有効なのかという点に関しては、業種や企業によって異なるため、自社に最適な手段を考えてみましょう。

顧客リピート率

 マーケティングにおけるKPI管理に有効な指標の2つ目は顧客リピート率です。

 リピート率とは、商品を購入したお客様の内2回目以降も商品を購入してくれた人の割合のこと。通販会社は特にこの指標を重要視しており、リピート率が高まれば必然的にLTVも向上していきます。

 リピート率に関しては、同時にリピート回数も重要となり、1人のお客様に何度も商品を購入してもらうことが目標となるでしょう。

 日々分析を行い、リピート率に関して適切なKPI設定を行うことが重要です。

 

 マーケティングは、1人というよりチームでKPIに向き合うケースが多いのですが、営業部門は個人の力量に頼る部分も多いため、それぞれの指標を確認するようにしましょう。

 営業部門で指標となるのは以下の5つです。

訪問数

 営業は、社内にいるだけではなく、実際にクライアントと会って話すことが重要です。そこで、訪問数をKPIに設定し、営業に行動を促す会社も見受けられます。

 訪問数をKPIとして管理する場合は、興味を持った客先を見つけた件数や見積書を提出した件数などもKPIに設定するとよいでしょう。

成約率

 営業部門のKPIで成約率を管理している会社は、他の指標と比較しても多い。成約率は各営業パーソンの実力によるところも大きく、KPIを達成していけば個人の成長にも大きくつながります。

 成約率をKPIで管理する場合は、部署ごとで個人に対するフィードバックを徹底するようにしましょう。

顧客単価

顧客単価については、業種によっては KPIとして管理しづらいケースも考えられます。しかし、営業パーソン次第で販売単価を変えられる商品を販売している場合は、顧客単価は売上に直結する非常に重要な指標になるでしょう。

高い粗利を残せることで、営業活動をより効率的に行えるため、KPIとして管理するのは有効です。

営業案件数

 企業によっては個人の営業案件数をKPIに設定する会社もあります。

 営業案件数については個人の力量に加えて、営業経験年数も大きく関わってくるポイントです。そのため、必要であれば経験のある社員と経験の薄い社員をセットにして経験を積ませるのも一つの手段でしょう。

 個人に営業経験を積ませることで、会社全体の成長につながる可能性も高いのです。

受注期間

 営業においては、受注期間もKPI管理すべき重要な指標です。

 これまで契約に10ヵ月かかっていたところを9ヵ月に短縮することができれば、それだけで10%効率が上がったことになり、企業に残る利益も大きくなります。

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