「お客様第一」は伝わる

   World Teacher’s Message No.263

 相手を詳しく知るのは、時間がかかりますし、そう簡単でないのは事実です。ただ思いのほか、いろいろな人がいろいろな目で見て、各人の能力や見識、人格などを感じ取っていることを知っておいたほうがいいでしょう。長い目で見て、それは外れません。

 「人前だけよく見せたら、それ以外のところで舌を出していても、分からない」と思っている方もいるかもしれませんが、やはり、人格は見抜かれます。

 上司がいる前ではよく振る舞って、いないところでは部下をぞんざいに扱うような裏表がある人もいます。分からないと思っているかもしれませんが、だんだん見えてきます。これは知っておいたほうがいいです。

 能力のある人が宝の持ち腐れで使われずに終わるということはほとんどありませんし、もしそうなれば、おそらくその会社や組織は傾いて潰れるだろうと思います。

 だから、「会社が潰れないようにするにはどうしたらいいか」とよく聞かれますが、『人格力』でも書いたように、「世の中に必要なものとなれ」と答えています。

 世の中に必要なものになろうと思えば、一番いい努力をしてみせなければいけません。それは、自分たちの持っている「強み」を出すことです。そのためには、お客様のためになることを仕事として考えている人間が前面に出て、上に上がってくる組織でなければ駄目です。お客さんのことを考えず、自分の保身しか考えていないような人ばかりでは、嫌な感じ、ぞんざいな感じがあります。

 

お客さんの気持ちを考える

 昔、店では新しい商品が入ってきたら、それを奥に置き、古い商品を前に出して売っていました。古い商品をなくさなければ在庫が残るという理由でしたが、だんだん経営学も変わってきて、「後入れ先出し法」といって、新鮮な商品を前に並べるとよく売れるということが分かってきました。

 コンビニで言えば、場合によっては朝と昼と晩の一日三回ぐらい、新しく商品をつくって工場から配達しています。時間がたてば味が変わりますから、できるだけできたてを食べていただきたいということでしょう。

 古い商品を捨てるのはもったいなく、一見、損なようにも見えますが、買う側から見れば、古く傷んでいるものを処分するために売りつけて、新しいものを後ろに隠すやり方は、「お客様第一主義」から外れていると知っておいたほうがいいです。

 商品の並べ方を見て、その店がどのように考えているかは、客も何となく分かります。例えば八百屋で果物を買う時、「これをください」と言っても、「そちらよりこちらのほうがおいしいですよ」と別の果物を出してくる八百屋は、お客さんのことを考えています。

 一番おいしいものを買おうとしているのに、「こちらのほうがおいしいので、前に並んでいるものから買ってください」と言われて、あまりおいしくないものが当たる場合もあります。

 一見さんであれば、うまくない果物を買ってくれたほうが、さばけていいでしょう。しかし一見さんにも、「こちらのほうが、味はいいです」と言うのは良心的です。初めて来た客にそうした態度を取れば、「また来ようかな」とリピート客になります。

 私も小中学校時代の八百屋の同級生に聞いたことがあるのですが、八百屋は、売れ残った野菜や果物を処分するのがとてもつらいそうです。昔はクーラーや冷凍・冷蔵庫の設備が十分ではなく、傷みやすかったのだと思いますが、処分するときは、涙が出るくらいのつらさがあったようです。

 

「人格」が客を呼び寄せる

 「お客様のことを第一に考えられるかどうか」は、言葉を換えれば、「自分の持っている能力を世の中への愛のために使えるかどうか」ということになると思います。

参考

経営と真理 へ

「仏法真理」へ戻る