タイムベース戦略

「ベンチマーク」は、他社のベストプラクティスを見つけて、それをそのまま自社に適用・実行することで、それ自体ケイパビリティ(企業能力)の向上策ですが、「戦略」そのものではありませんでした。BCGのジョージ・ストーク、トーマス・ハウト、フィリップ・エヴァンズの3人が、日本企業からの学びを元にしたケイパビリティ重視の「タイムベース戦略」を生み出しました。

 

ストークは、1979年に世界最大の農機具メーカー、ディア(Deer)からの依頼を受け、提携先の日本企業ヤンマーの工場を視察しました。そこで彼が目にしたのは、「生産性が大幅に高く、生み出す製品の品質が高く、在庫が著しく少なく、使用スペースが小さく、生産時間がはるかに短かった」理想的な工場の姿でした。ストークは、東京オフィスでトヨタの研究もしながら考え続けて、「時間をベースにした戦略」という概念と「あらゆるものの(コストでなく)時間を測る」という手法を編み出しました。

付加価値を上げるには、顧客の要望から対応までの時間を短縮する、 コストを下げるには、あらゆるプロセスにかかる時間を短くする でした。

 

その頃の加工組み立て産業は、規格品の大量生産・大量販売のビジネスモデルから、顧客の多様なニーズを取り込んだ多品種少量生産を強いられて、既存の「ものづくり」プロセスでは、製品開発から量産までのプロセスを柔軟に変更したり、素早く変化に対応したりすることが競争優位のためのポイントになっていたのです。ストークが目を付けたのは、「顧客に、より新しく多様で安いものを素早く提供するための戦略」、それが「タイムベース戦略」だったのです。

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