経営者はワンマンでなければならない

 一倉先生は、経営者はワンマンでなければならない と言い切ります。なぜなら、経営者の最も大事な仕事は「決定」にあるからです。

 一倉先生は、「能率がよくても決定の悪い会社」より「能率が悪くても決定のよい会社」のほうが優れているとさえ言っています。

 日本的なもの事の決め方として話し合いがあります。役員みんなで話し合って決める、会議を開いて話し合って決める、という考え方です。「民主経営」とか「合議制」とも言われるやり方です。

 多くの人が経営上重要な意思決定に参画できることは、一見よいことのように思えます。「一人ひとりの持ち味を生かす」「全員参加」などという説明を加えれば、なおさら悪くない気がしてきます。しかし、実際には様々な問題があります。

 まず、意思決定のスピードが遅くなることです。経営者トップが自分で決められれば一瞬で終わることが、話し合いをすると延々と議論をすることになります。

 無難な結論を導きやすい という致命的な問題もあります。「この案なら社長も専務も納得するだろう」「今回は専務の顔を立てて」などという判断の仕方をしやすいのです。しかし、そんな決定は、お客様の要求を満たすうえで何の関係もないことです。また、激しい外部環境の変化に対応できません。お客様の要求を満たすことができず、市場の変化に対応できず、経営危機に陥ったら、どういう事情があろうと、その責任は経営トップが負わなくてはなりません。したがって、最後は経営者が決めないといけないのです。

 

幸福の科学大川隆法総裁は、以下のように説かれました。

「「社長はワンマンでなくてはならない」と一倉定さんは言います。

通常、「ワンマン社長」は、マスコミからは独裁者のように言われ、嫌われますが、彼が言っているワンマンとはそういうワンマンではありません。彼は、「社長には全責任がかかっているのだ」ということを言っているわけです。

「社長は、『すべての責任は自分にある。電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも社長の責任である』と思わなくてはいけないのだ。

会社に関することで、何か失敗なり落ち度なりがあったら、全部社長の責任なのだ。やはり、そのくらいに思っておかなくては駄目なのだ。

そういう意味で、外部環境の変化も じっと見なくてはいけないのだ」

そのようなことを彼は言っています。」(『危機突破の社長学』P-123~124)

 

独裁はするが、独断はしない

 ワンマン経営というのは、人の話を聞く必要はないという意味ではありません。経営トップが最終結論を導き出すために、多くの経営幹部に意見を出させて参考にするのは大切なことです。社員の提案やアイデアを募ることも大事です。しかし、決断に関しては、経営者自身が一人で行う必要があります。

 

 

諌言する文化をつくれるか

 ワンマン経営の注意点としては、社長が好き勝手にやってよいということではなく、あくまでも、最後は一人で責任を負うということです。その意味で、「諌言する文化」をつくれるかどうかが大事になります。

 

大川隆法総裁は、以下のように説かれました。

「「耳に痛いことを言う」ということですが、今で言えば、ライバル会社と戦っている社長が、「今なら、うちのほうに力があるから叩いてやるか」という幹部がいたらどうなるかということです。

「あそこの商品はよく売れていて、人気があります。うちの商品は人気がなくて売れません。戦いを挑んだところで返品の山です。その後、在庫の山になって財政が圧迫され、倒産になるだけです。それより、今は耐え忍び、製品をよくするために、頑張って研究開発をしなければいけない時期です」というようなことを、営業をし、広告をかけて戦いたがっている社長に進言するのは、猫の首に鈴をつけるネズミと同じで、実に怖いことでしょう。

これを聞いて収まる社長ならよいのですが、収まらないひとであればクビにされてしまうこともあります。

そういう意味で、諌言とは実に難しいことなのです。この文化を取り入れるのは そう簡単ではありません。それがなかなかできないために、今コンサルタント業というものがあって、外部から言う場合もあるわけです。

ただ、それも外れる場合もあるので、これは難しいところです。その業務についてよく知らないので、理屈でやる場合、特に数式系の数字のほうを見て、チャートをいろいろ作ったりして分析してやるような系統では外れるものもあるわけです。

要するに、「人間の感情」のところで、「お客さんの好みと感情がどういう風に動くか」が分からなかったりする場合もあって、計算倒れになることもあります。このへんは難しいところでしょう。」(『危機突破の社長学』P-54~56)

 

 「諌言」は難しい問題です。

 部下にすれば命がけですから、なかなか本当のことを言ってくれません。特に小さな企業は、給料をいくらにするかも、昇格させるかクビにするかも経営者が自由に決められます。生殺与奪の権を握っているわけですから、基本的に経営者の顔色を窺い乍ら仕事をすることになります。

 したがって、そうとう努力しないと、反対意見は出してくれませんし、悪い情報も上がってこなくなります。裸の大将になってしまうわけです。

 

 中小企業はワンマン経営であるべきですが、それは専制君主のように振る舞うべきだという意味ではないので注意が必要です。

 「部下の意見になど耳を貸せるものか」と、どうしても抵抗のある経営者は、外部の経営コンサルタントなど叱ってくれるようなアドバイザーを個人的に持つことも考えたほうがよいでしょう。また、先輩格の経営者を師と仰いで、普段から意見していただくという方法もあります。経営者の自伝を読むと、ほとんどの経営者は そういうメンターを持っていることが分かります。

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