マニュアルの効用

 社員が行う繰り返し業務などは、標準化して「熟練していない人がやってもベテランと同じ水準でできるようにする」ことが大事です。

 作業する人によって仕事間品質にバラつきが出ないように、一定のレベルを担保するために標準化は効果的です。こうすれば教育効果もありますし、業務の生産性も上がります。

 ただし、これは多くの人が時間をかけて行っている繰り返し仕事を対象とするものです。たまにしか行わないような仕事について、一つひとつ手間の取り決めなどをしていると、それ自体が無駄な書類仕事になりかねません。

「標準化」とは「マニュアルをつくる」ということですが、その必要性について、幸福の科学大川隆法総裁はこのように述べています。

 

「仕事が確立し、会社として十分に機能するようになったら、次に、販売や広告など、最初は経営者自身がしていた仕事を、ある程度、他の人にやらせなくてはならなくなります。
 その際には、何らかのマニュアルの作成が必要になります。第一部第1章「商売繁盛のコツ」で述べたように、マニュアル主義の弊害には気をつけねばなりませんが、その仕事が他の人にもできるように、作業手順をまとめたものをつくる必要があるのです。
 ある程度の成功を収めた段階においては、経営者が“動物的直感”によって何もかも行うのではなく、他の人に仕事をさせなくてはなりません。そのためには、箇条書きでもよいので、自分のしている仕事について、その手順や考え方をまとめなくてはならないのです。
 こうして紙に書いたものが会社の運営の手引きになります。それはまだ、社是や社訓、あるいは社内規程といった、仕上がったかたちのものにはほど遠く、毎年毎年、変えていかなければならない内容を含んでいると思います。
 しかし、それでもよいのです。たとえ三カ月間しかもたなくても、とりあえず、それまで社長がやってきた仕事や今後やろうとしている仕事の手順と考え方について、時間をとって、手短にまとめなければなりません。
 会社がひけたあと、夜、自宅で書いてもよいですし、早朝でもけっこうです。あるいは、日中、手のすいた時間にまとめてもかまいません。とにかく、考えをまとめなくてはならないのです。
 また、紙に書くことで自分の考えがより明確になる面もあります。
 従業員は判断や行動の際に、社長の心の内を忖度したりはなかなかしないものです。また、何度も同じことを言わなければ、彼らは理解できません。三回、四回、五回と、繰り返さなければ分からないのです。
 そのため、何度も言わなくてはならないことについては、それをきちんと文字にしておくことが大事です。「今はこれが必要である」ということを紙に打ち出してもらうなどし、文字にして従業員に読ませるか、壁に貼っておくことです。こういう努力が必要になります。」
(『経営入門』148~151ページ)

 

 もちろん、マニュアルは万能ではありませんので、その限界も知っておく必要があります。マニュアルに縛られて「書かれている通りにしかしない」「書いていないことはしない」ということにならないようにしなければなりません。

 ここでのポイントは「文書にする」ということです。

 口頭による指示は右から左に聞き流されるものです。「言った」「聞いていない」の水掛け論になるものです。経営者に言われたことを一言一句覚えておいて、すべて実行に移せる社員などまずいません。一倉先生は、「口頭指示は独り言にすぎない」とまで言っています。

 必要なことを文書にすることで、「聞いていない」という言い訳を封じることができますし、意図を正確に伝えることができます。

 また、指示したことが実行できなければ、きちんと叱ることも大切になります。叱らなければ、「指示を実行しなくても問題ない」というメッセージを発信することになってしまうからです。すると、どんどん規律が緩んでいき、学級崩壊のごとき社内崩壊が始まります。倒産寸前の会社によく起こる現象です。

 したがって、指示が守られていなければ、人前で誰にでも分かるようにしなければなりません。でなければ、会社のルールは あってなきがごとし になってしまいます。

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