市場戦略の実践はお客様への定期訪問

細分化した市場に対し、どういった行動を取れば良いのでしょうか。

一倉先生が指導していたのは、お客様(得意先)への定期訪問です。これが市場戦略を実践に落とし込んだときの具体的な行動になります。 

一倉先生が最重要だと考えていた行動は、「社長のお客様への定期訪問」です。

定期訪問は、売り込み”ではありません。お客様の確保です。
これを営業の売り込みのように話を持って行くと、売った後に訪問しなくなったり、営業マ

ンの都合で顧客を回ったりするようになります。そうなるとお客様からそっぽを向かれてしまいます。

「訪問しなければお客様を他社に取られるのだ」と認識して、「お客様の確保」を目的として定期訪問をおこなってください。
 ここで大切なことは、得意先別売上年計表や売上高ABC分析表を元に営業担当の意見も聞いた上で「得意先の格付」を行うのです。

最重要得意先をS、重要得意先をA、安定得意先をB、その他Cといったように、分類をします。
 そして、Sランクの得意先へ、社長は月に1回訪問、部長は月2回訪問、担当は週に2回のように「得意先訪問基準表」を策定します。
 これが定期訪問の基準になります。
 次に、基準表に基づいて、各人一人ずつ月のカレンダーを用意します。それに訪問計画を具体的に書き込みます。
 例えば、社長を含め8人が訪問するとしますと、8名分のカレンダーを用意し、計画と実績を人目で分かるようにするのです。
 計画の◯と実績の◯を→で結びますと、計画と実績がどうなっているのかが、一目で分かる

ようになります。
ただ、この計画を何がなんでも厳格に守らせようとしてもいけません。クレーム処理が発生

したり、急な出張が入ることもあるからです。

1ヵ月の範囲では、どうしても回れないときがあれば、無理やり訪問を入れるところまではしなくて、次月に回れば良いと思います。

要は、1ヵ月の未達は理由があればOKとして、2か月の中で定期訪問を確実にやればよいというルールにすればよいでしょう。

 

営業マンの定期訪問のポイント

訪問計画もでき、実際に営業マンが定期訪問することになったとしましょう。定期訪問は売

り込みではなく、お客様確保である。では、どのような訪問をすれば良いかが次のポイントになります。

訪問時間はアポなしで、10分くらいが良いでしょう。格付の高い得意先へは曜日を決めて訪問してもよいと思います。担当者が不在の場合、出てくれない場合は、置き名刺にメッセージを残しておきます。担当者とお会いできた場合は長居をすることなく、日頃のお礼を述べて「何か弊社の商品(サービス)でご迷惑をおかけしておりませんか?」とお聞きするくらいで良いでしょう。もし、サービスを提供している期間が過ぎていたら、先方が興味を持つような面白い情報をコピーして持っていくのも手だと思います(新聞、雑誌、ブログなど)。

話すのが上手ではなくてもよい。定期訪問をきちんと守れる女性なり、男性を営業に雇うことがベストです。

営業マンには、次の2つを報告するように指導してください。

・お客様に言われたこと

・競合会社について見たり、聞いたりしたこと
この2つは、社長が知るべき優先的な情報になります。

「何時から何時にどこの会社に行きました」のような日報がありますが、そうした内容に意味はありません。
 上記の2つだけを報告するように義務付ければ良いと思います。ここに大きなヒントが隠されています。
 受注等は また別の形式で報告するようにすればよいのです。

 

ノンカスタマーに注目せよ

もう一つ重要なことは、市場の変化の最初の兆候は、非顧客(ノンカスタマー)に現れることです。

ノンカスタマーの関心が今どこにあるのかを研究するようにしてください。

ノンカスタマーとは、本来わが社の顧客なってもおかしくないのに、顧客になっていない人のことです。

ノンカスタマーに市場の変化の兆候が現れます。

 

中小企業が大手に勝つ唯一の法則とは  ランチェスター戦略

ランチェスター戦略とは、市場を細分化し、優先順位を決め、これに従って一つのテリトリーまたはチャンネルに、敵に勝る戦力を投入することにより、その地域またはチャンネルの占有率を高めていく戦略である。(『社長の販売学』)
 一倉先生は、企業の生死をきめるのは、占有率だという考えでした。これはドラッカーの『現代の経営』に書いてあります。おそらく、先生はドラッカーの経営理論を参考にしたのでしょう。
 自社の売上が増えていても、市場がそれ以上に拡大していたら自社の占有率は下がっていることになります。
 そして、占有率の低い会社から淘汰されていくということです。
 特に低成長の時代や消費が落ち込むときには、占有率の低い企業の商品から売れなくなります。
 それゆえ、一倉先生は占有率の拡大を指導しておられたようです。

 

勝てるところで勝負する

 ランチェスターの第二法則について見てみましょう。

 第二法則は店舗面積に現れたりします。

 ある町に2つのスーパーマーケットがあったとします。Aスーパーは1000㎡、Bスーパーは200㎡ だとします。店舗面積を単純に比べれば5倍の差になります。しかし、この場合は総力戦を2乗で計算しますから、100万㎡ 対4万㎡ となり、25倍差になります。これではBスーパーに勝ち目はありません。

しかし、Bスーパーにも生き残る道はあります。AスーパーもBスーパーも、生鮮食品から日用品、衣料まで扱う総合スーパーだった場合、Bスーパーは取扱い品目を絞るという選択肢が残っています。たとえば、取り扱う商品を医療だけに絞るとします。Aスーパーは1000㎡ の面積があっても、衣料品コーナーに関しては100㎡ しかなかったとします。すると、Aスーパーは100の2乗で1万、Bスーパーは200の2乗で4万となり、Bスーパーのほうが4倍の戦力を持つことになります。

店舗面積だけを見れば、総合スーパーよりもはるかに小さい ユニクロ や しまむら がお客様を集めることに成功しているのは、こうした理由によります。

 ユニクロや しまむら のように、特定分野の商品に絞って豊富な品揃えを実現し、低価格で販売する専門店のことを「カテゴリー・キラー」といいます。

 もちろん、実際の競争では、商品の品質や従業員のサービスマインド、立地の良さなど、様々な要素がからみあって勝敗が決まるので、こんなに単純に売場面積だけで事業の成否が決まるわけではありません。しかし、販売戦略、市場戦略を考える上では、最初に押さえてくべき重要論点になります。

 「勝てるところで勝負せよ」ということです。そのためには、「勝てるところはどこか」を明確にしなければなりません。

 ・「わが社と競争する企業はどこか」  同業者との競合も忘れずに

 ・「その企業の戦力はどのくらいか」  販売人員や取扱品目、品質、生産量など

 ・「競業企業よりも販売人員が多くなるテリトリー(地域)はどこか」

 ・「競合企業よりも取扱品目が増えるジャンルは何か」

 ・「競合企業よりも品質の高い商品はどれか」

 ・「競合企業よりも生産性(利幅)が高い商品はどれか」

 以上のような問いかけについて明確な答えを出し、「勝てるところ」に人員を集中させることが大事です。

 

行商の理論

「徒手空拳の商人は、まず行商から始める。わずかな商品を背に、鄙びた山村漁村を回る。山中の炭焼小屋、峠の一軒家、海岸の見張小屋まで訪れる。こういうところには競争相手がいない。まさに独占業者である。爪に火を燈す思いで金をためて、大八車を1台買い、今度は多少ましな商品を積んで、町から町、町から村へと回って商売をする。これで元手を貯めると、小さな町の場末に店を借り、次に丁稚小僧を1人雇う。ここで商売がうまくいくと、いよいよ城下町の一流の商店街に店を構え、ついにはお城への出入りを許される ということになる。

これがものの順序である。行商の理論こそたいせつである。ムリや高望みは破綻のもとになる。」(「一倉定『経営の思いがけないコツ』」p-473)

 

 これは一倉経営学の中心思想の一つで、販売戦略・市場戦略のキモの部分が盛り込まれています。「ランチェスターの法則」にも則っています。もちろん、人々に喜ばれる商品やサービスが提供できるという前提があっての話です。

幸福の科学大川隆法総裁は、以下のように説かれました。

「商売というのは何でもそうですが、最初は小さいところから始めていって、流れができてから、だんだん大きくしていくと、失敗することはほとんどないのですが、最初から一か八かの勝負に出て賭けをしますと、成功することはほとんどないのです。

たまたま、その方面に人があまり出ていない、裏道に咲いているようなこともたまにありますが、普通はあまりないのです。そんなうまい商売があるなら、他の人がやっているはずです。しかし、みんなが探していても見つからないということは、そういう仕事というのは、たいてい誰かがやろうとしてもうまくいかない分野なのです。そういうところに入っていくわけですから、最初から大金を注ぎ込んで成功させようとしても、現実には成功しないものです。

ですから、小さなところから始めたり、他人の庇を借りて始めた商売が失敗しないとよく言われるように、小さなところからだんだん大きくしていった場合には失敗しません。」(『理想国家日本の条件』P-182~183)

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